「昼間は元気なのに、夜だけは何度も起きて、そのたびに授乳。もう体力の限界かもしれない」——夜中に暗い部屋でうとうとしながらそんなふうに感じているお母さん、本当にお疲れさまです。「夜間断乳」という言葉を目にして、「うちもそろそろ試したほうがいいのかな」「でも、いつから始めていいの?」「そもそも昼と夜、どっちを先にやめるものなの?」と、検索するほどわからなくなってしまった方も多いのではないでしょうか。
こんにちは、ちなみです。元看護師で、男の子と女の子の2児の母をしています。今日は「夜間断乳」というテーマを、そもそも夜間断乳とは何かという定義から、いつから始められるかの月齢別の判断、昼と夜どちらを先にやめるか、具体的な進め方、お母さんの胸のケア、うまくいかないときの考え方、赤ちゃんのストレス、夜の睡眠環境の安全まで、公的機関の情報をもとに順番に整理していきますね。
先に、いちばん大切なことをお伝えしておきます。夜間断乳は「何ヶ月から始めなければいけない」「何日で終わらせなければいけない」という決まった正解があるものではありません。始めていい時期にも、進み方にも、とても大きな個人差があります。だからこそ、まわりの子や情報サイトと比べて焦る必要はありません。この記事では、あなたと赤ちゃんのペースで判断するための材料を、一つひとつ並べていきます。
ちなみ(元看護師)
夜間断乳とは?断乳・卒乳との違い
まずは「夜間断乳とは何か」をはっきりさせておきましょう。ここがあいまいなまま進めると、「断乳」や「卒乳」と混ざってしまって、判断がぶれてしまうからです。
夜だけやめて昼は続ける——それが夜間断乳
夜間断乳とは、昼間の授乳は今までどおり続けたまま、夜のあいだの授乳だけをやめることを指します。母乳やミルクをすべてやめる「断乳」とは違って、日中はこれまでどおりおっぱいやミルクを飲みます。あくまで「夜だけ」お休みするイメージです。
だから、夜間断乳をしても栄養や水分をまったく取らなくなるわけではありません。日中にしっかり飲めていて、離乳食も進んでいることが前提になります。「夜だけやめる」というのは、赤ちゃんにとっても、いきなり全部をやめるよりゆるやかなステップだと考えるとイメージしやすいと思います。
断乳・卒乳・夜間断乳、この3つの違いを整理する
言葉が似ていて混乱しやすいので、いったん整理しておきます。ざっくり分けると、次のような違いです。
- 卒乳:赤ちゃん自身のペースで、自然に母乳・ミルクを飲まなくなっていくこと。時期を親が決めるというより、赤ちゃんが少しずつ離れていくイメージ。
- 断乳:親の側で時期を決めて、母乳・ミルクを(昼も夜も)やめること。24時間すべての授乳を区切りをつけてやめる方法。
- 夜間断乳:昼の授乳は続けたまま、夜の授乳だけをやめること。断乳や卒乳の「手前の一歩」として選ばれることも多い。
つまり夜間断乳は、「まだ完全にやめるつもりはないけれど、夜の授乳だけはお休みしたい」というときの選択肢です。卒乳・断乳という時期論そのものについては、別の記事でくわしくまとめています。「そもそも母乳っていつまで続けるものなの?」という大きな見通しから知りたい方は、あわせて読んでみてください。
母乳はいつまで?授乳をやめる時期と卒乳のサイン・体の変化を元看護師が解説
何のためにやるの?夜泣きへの期待値も正直に
夜間断乳を考える理由は、多くの場合「お母さん(やお父さん)の睡眠を確保したい」というものです。夜中に何度も起きて授乳するのは、心身にじわじわ負担がかかります。眠れない日が続けば、日中の余裕もなくなっていきますよね。「自分が少しでも眠りたい」という理由で夜間断乳を考えるのは、まったくわがままではありません。お母さんが倒れないことは、赤ちゃんにとっても大切なことです。
ただ、期待値については正直にお伝えしておきたいことがあります。夜間断乳をしたからといって、必ずしも夜泣きがすぐになくなる・夜通し寝るようになる、とは限りません。夜中に起きる原因は授乳だけではなく、赤ちゃんの睡眠のリズムそのものが関わっていることも多いからです。「授乳をやめたのに、まだ起きる」ということは十分に起こりえます。そこは後半の「うまくいかないとき」でくわしく触れますね。
そもそも「夜間の授乳はいつまで必要なのか」「夜中に起きても起こしてまで授乳すべきなのか」という一段手前の疑問がある方は、まずこちらの記事で見通しを持ってから戻ってくると、判断しやすくなります。
夜間授乳はいつまで?月齢別の目安と「起こすべきか」の判断を元看護師が解説
夜間断乳はいつから始められる?
ここが多くの方がいちばん知りたいところだと思います。「夜間断乳はいつから?」——結論から言うと、月齢だけで「◯ヶ月になったら始めてOK」と一律に言い切れるものではありません。大切なのは、月齢に加えて「赤ちゃんの育ちの状況」を見て判断することです。ここでは、その判断のしかたを具体的にお渡しします。
月齢だけで決めない——見ておきたい3つの判断軸
夜間断乳を始めていいかを考えるとき、月齢と一緒に次の3つを確認してみてください。この3つがそろっていると、「夜の授乳をお休みしても、栄養や水分の面で無理がない」と考えやすくなります。
- 体重が順調に増えているか:成長曲線に沿って、その子なりのペースで体重が増えているか。夜の授乳を減らしても発育に影響が出にくいかの目安になります。
- 離乳食が進んでいるか:日中の食事から、ある程度の栄養が取れるようになっているか。1日3回食に近づいているかどうかもひとつの目安です。
- 日中の授乳でしっかり飲めているか:夜に飲まなくても、昼のあいだに必要な母乳・ミルクが取れているか。日中の授乳回数や飲みっぷりを見てみましょう。
体重の増え方やおむつの回数から「足りているかどうか」を見る考え方については、こちらの記事でくわしく整理しています。「母乳(やミルク)が足りているか不安」という方は、あわせて確認してみてください。
母乳が出ないのはなぜ?いつから出るか・足りているかの見分け方を元看護師が解説
月齢ごとの考え方(生後6ヶ月ごろ〜1歳以降)
そのうえで、月齢ごとの大まかな考え方を見ていきましょう。あくまで「その月齢だからこう考えやすい」という目安であって、「この月齢になったら必ず始める」というものではないことを、先にお断りしておきますね。
生後6ヶ月ごろ:離乳食が始まったばかりで、栄養の多くをまだ母乳・ミルクに頼っている時期です。夜間断乳を考えるにはやや早めで、この時期に急ぐ必要はありません。もし検討するとしても、体重の増え方に不安がないか、より慎重に見ておきたい月齢です。
生後7〜8ヶ月ごろ:離乳食が1日2回に進み、食べられるものが少しずつ増えてくる時期です。日中の食事と授乳で栄養が取れてきているなら、夜間断乳を選択肢として考え始める方が出てくる時期でもあります。ただし個人差が大きいので、上の3つの判断軸で確認してからにしましょう。
生後9〜10ヶ月ごろ:離乳食が1日3回に近づき、日中の食事の割合が増えてくる子が多い時期です。多くの情報で夜間断乳が話題にのぼりやすいのもこのあたりからです。体重・離乳食・日中の授乳がそろっていれば、比較的取り組みやすいタイミングと考えられます。
1歳以降:離乳食が3回食に定着し、食事からしっかり栄養が取れるようになってくる子が多い時期です。夜間断乳を始める方が多く、比較的スムーズに進みやすいと感じる方もいます。もちろん、1歳を過ぎても夜に飲んでいること自体は何も問題ではないので、「まだ飲んでいるからおかしい」と焦らなくて大丈夫です。
表にすると、こんなイメージです。もう一度言いますが、月齢はあくまで目安で、最終的には前の項目の「3つの判断軸」で決めるのが基本です。
| 時期の目安 | 離乳食・栄養の状況(一般的な傾向) | 夜間断乳の考え方 |
|---|---|---|
| 生後6ヶ月ごろ | 離乳食が始まったばかり。栄養の多くを母乳・ミルクに頼る | やや早め。急がず、体重の増え方をより慎重に見る |
| 生後7〜8ヶ月ごろ | 離乳食が1日2回へ。食べられるものが増えてくる | 判断軸がそろえば選択肢に。個人差が大きい |
| 生後9〜10ヶ月ごろ | 離乳食が1日3回に近づく。日中の食事の割合が増える | 比較的取り組みやすいと考えられる時期 |
| 1歳以降 | 3回食が定着し、食事から栄養が取れる子が多い | 始める方が多い。ただし続いていても問題ではない |
離乳食の進め方そのものの一般的な流れは、こども家庭庁の「授乳・離乳の支援ガイド」が公的な一次資料としてまとまっています。目安を確認したいときの参考にしてください。
完全母乳の場合/ミルク・混合の場合で違う?
「完母(完全母乳)だと夜間断乳は難しいの?」「ミルクだとどうなの?」という疑問もよく聞きます。基本的な判断軸(体重・離乳食・日中の授乳)は、完母でもミルク・混合でも変わりません。どちらの場合も、日中にしっかり栄養と水分が取れていることが前提です。
ちがいがあるとすれば、お母さんの胸のケアの部分です。完全母乳で夜もよく飲ませていた場合、夜だけ授乳をやめると乳房が張りやすくなります。これは後半の「お母さんの体のケア」でくわしく触れますね。一方、ミルク中心・混合の場合は、寝かしつけがミルクの哺乳びんとセットになっていることが多いので、「哺乳びんなしでどう寝かせるか」という置き換えの工夫が中心になります。
どちらが「向いている・向いていない」というものではありません。完母でも、ミルク・混合でも、夜間断乳をしているお母さんはたくさんいます。ご自分の授乳スタイルに合わせて、無理のない進め方を選んでいきましょう。
早すぎる夜間断乳で気をつけたいこと
「早く夜通し寝てほしいから、できるだけ早く始めたい」という気持ちは、とてもよくわかります。でも、月齢が低いうちの夜間断乳には、少し慎重になってほしい理由があります。低月齢の赤ちゃんは、まだ栄養の多くを母乳・ミルクに頼っていて、夜の授乳が体重の増加や水分補給に関わっていることがあるからです。

夜間断乳と昼間の断乳、どちらを先にやめる?
ここは、多くの記事があまり触れていないけれど、実はよく検索されている疑問です。「昼と夜、どっちを先にやめるのが正解なの?」——結論からお伝えします。
「夜だけをお休みしたい」「お母さんの睡眠を確保したい」という目的であれば、多くの場合まず夜からお休みする(=夜間断乳する)という順番が選ばれます。昼の授乳は続けるので、赤ちゃんにとっては日中に飲める安心感が残ります。栄養や水分も日中に取れるため、いきなり全部をやめる完全断乳よりも、ゆるやかなステップとして進めやすいと考えられます。
一方で、「昼間だけをやめる(=昼間断乳して夜は続ける)」を先にする、という進め方は、目的とかみ合わないことが多いです。お母さんがいちばんつらいのは夜の授乳であることが多く、昼を先にやめても夜の負担は残ってしまうからです。もちろん、日中の生活リズムを整えたい、外出時の授乳を減らしたい、といった別の目的があれば、昼を先に減らす選び方もありえます。大切なのは「何のためにやめたいのか」という目的から順番を決めることです。
逆に「昼を先」が向くのはどんなとき?
では、昼を先に減らすほうが合うのはどんな場合でしょうか。たとえば、職場復帰や保育園入園を控えていて、日中は自分が授乳できなくなるケースです。日中はお茶や離乳食、ミルクで過ごせるように少しずつ慣らしておき、夜と朝晩の授乳は当面続ける——という形にすると、生活の変化に無理なく合わせられます。この場合は「夜を残して昼を先に手放す」ほうが、家庭の事情にかみ合います。
反対に、日中は一緒にいられて夜の睡眠だけを何とかしたい、というお母さんは、迷わず夜からお休みするほうが目的に直結します。つまり「昼と夜どちらが先か」に唯一の正解はなく、あなたの生活のどこがいちばん立ち行かなくなっているかで決まる、ということです。復帰や入園などの予定があるなら、そのスケジュールから逆算して、余裕をもって数週間前から慣らし始めると安心です。
完母とミルク・混合で順番は変わる?
授乳スタイルによっても、進めやすい順番の感じ方が少し変わります。完全母乳の場合、夜の授乳は寝かしつけと一体になっていることが多く、夜を先にやめると寝かしつけの置き換えと胸の張りのケアを同時に進めることになります。負担が集中しやすいぶん、下準備(後述の寝かしつけの置き換え)をしっかりしてから始めるのがコツです。それでも、お母さんの睡眠を守る目的なら、やはり夜からお休みする順番が選ばれやすいです。
ミルク・混合の場合は、夜の授乳が哺乳びんとセットになっていることが多いので、「夜の哺乳びんをどう減らすか」が中心になります。母乳ほど胸の張りに悩まされにくい一方、哺乳びんが寝かしつけの合図になっている子は、その合図を別のもの(トントン・抱っこ)に置き換える工夫が必要です。どちらのスタイルでも、「昼と夜のどちらかは安心して飲める状態を残す」という考え方は共通しています。いきなり昼も夜も一度に変えようとせず、片方ずつ進めるほうが、赤ちゃんにもお母さんにも無理がありません。
ちなみに、「夜のおっぱいをやめると虫歯になりにくい/なりやすい」といった話を目にすることもあるかもしれませんが、夜間の授乳と虫歯の関係については、はっきり断定できるものではありません。虫歯の予防は、授乳の有無だけでなく、歯みがきや食事の習慣など複数の要素が関わります。「虫歯が心配だから夜間断乳を急がなきゃ」と、そこだけを理由に焦る必要はありません。気になるときは、かかりつけの歯科や小児科で相談してみてください。
そして、夜間断乳はあくまで「夜だけお休み」なので、そのまま昼も含めて完全にやめる「断乳」へ進むかどうかは、また別の判断です。夜間断乳が落ち着いてから、「このまま昼もやめていくか」「もうしばらく昼は続けるか」を、あらためて考えれば大丈夫です。完全な断乳へ進む場合の具体的なやり方や、胸を絞る・絞らないといったケアの詳細は、こちらの記事にまとめています。
断乳のやり方|進め方と胸のケア・絞る絞らないの判断を元看護師が解説
夜間断乳の進め方
ここからは、実際にどう進めていくかを見ていきましょう。ただし、これから紹介するのは「絶対にこの手順どおりにやれば成功する」というマニュアルではありません。特定のネントレ(睡眠トレーニング)の方法や、「◯日でうまくいく」と断言する手順に寄せることは、あえてしていません。赤ちゃんの個性や家庭の状況はそれぞれ違うので、いくつかの考え方の中から、ご家庭に合いそうなものを選んでいくイメージで読んでください。
始める前に整えておくこと
いきなり夜だけやめると、赤ちゃんもお母さんも負担が大きくなりがちです。始める前に、次のような下準備をしておくと、少しやわらかいスタートになります。
- 日中にしっかり飲ませ、離乳食も食べさせておく:夜に飲まないぶん、昼のあいだに栄養と水分を取れるようにしておきます。
- 寝る前の1回をていねいに:就寝前の授乳(またはミルク)は、しっかり飲ませてから寝かせると、夜中の空腹で起きにくくなることがあります。
- 家族に事前に共有しておく:夜泣きが増える可能性を、パートナーや同居の家族に伝えておくと、いざというときに協力を得やすくなります。
- お母さんの体調がいい時期を選ぶ:体調が万全でないときや、引っ越し・保育園入園などの環境変化と重なる時期は避けたほうが無難です。
何時から何時までを「夜間」とするか
「夜間断乳の『夜間』って、具体的に何時から何時まで?」というのも、よくある疑問です。これも決まった正解はありませんが、家庭ごとに「この時間帯は授乳をお休みする」という区切りを、あらかじめ決めておくとぶれにくくなります。
授乳以外の寝かしつけ手段に置き換える
夜間断乳でいちばん工夫がいるのが、「授乳で寝かしつけていた分を、どう置き換えるか」です。これまで「泣いたらおっぱい(ミルク)」で寝かせていた場合、その代わりになる方法をいくつか用意しておくと安心です。
- 背中やおなかをやさしくトントンする
- 抱っこして落ち着かせる、少し揺らす
- お茶や湯冷まし(月齢に応じて)を少し飲ませる
- やさしく声をかける、子守唄など静かな声を聞かせる
どれが効くかは、その子によってまったく違います。「これでダメでも、次はこっち」と、いくつか引き出しを持っておくと、夜中にあわてずにすみます。最初はうまくいかなくても、数日〜数週間かけて「授乳以外でも落ち着ける」ことを少しずつ覚えていく子も多いです。
添い乳をどうするか
添い乳(横になったまま授乳して、そのまま一緒に寝る方法)で寝かしつけていた方も多いと思います。添い乳は、お母さんが起き上がらずにすむのでラクな一方、夜間断乳では「添い乳をやめる/続ける」が悩みどころになります。
ここで、添い乳を全否定するつもりも、逆に強くおすすめするつもりもありません。ただ、判断の材料として知っておいてほしいのは、後で触れる「赤ちゃんはあおむけ(仰向け)で寝かせるのが安全」という睡眠環境の指針です。添い乳のまま一緒に寝落ちすると、赤ちゃんの姿勢や大人の寝具との位置関係に気をつけたい場面が出てきます。夜間断乳をきっかけに添い乳を見直すなら、寝かしつけの置き換えとあわせて、赤ちゃんをあおむけの安全な姿勢で寝かせられる形を意識してみてください。
明け方に起きたときの対応
夜間断乳をしていると、「明け方(朝方)に起きてしまったとき、どうすればいいの?」という場面がよく出てきます。ここも、あらかじめ「朝の授乳は何時から」と決めておくと迷いません。
たとえば「朝◯時までは授乳しない」と決めているなら、その時間より前に起きたときは、授乳以外の方法(トントン・抱っこ・声かけ)で落ち着かせ、決めた時間になったら授乳する、という形が一つのやり方です。ただ、明け方はおなかがすいて起きていることもあるので、赤ちゃんの様子を見て、つらそうなら無理をしすぎないことも大切です。ガチガチにルールを守ることより、「だいたいこの時間から」というゆるやかな目安でかまいません。
パートナーや家族と分担する
夜間断乳を、お母さんひとりで抱え込む必要はありません。むしろ、おっぱいのにおいがしないパートナーが寝かしつけをすると、赤ちゃんが授乳を求めにくくなって落ち着くということもあります。夜中の対応をパートナーと交代したり、週末だけでも分担したりできると、お母さんの負担がぐっと軽くなります。
私も看護師時代、産後のお母さんから「夜間の対応を全部自分がやっていて、もう限界」という声を何度も聞いてきました。夜間断乳は、家族みんなで取り組むものだと考えて大丈夫です。始める前に「この時期はちょっと夜が大変になるかも」と共有しておくだけでも、いざというときの協力体制が違ってきます。
お母さんの体のケア——夜だけ授乳をやめると胸はどうなる?
夜間断乳の話では、つい赤ちゃんのことばかりに目が向きますが、お母さんの体のケアもとても大切です。とくに母乳をよく飲ませていた方は、夜だけ授乳をやめると乳房が張りやすくなります。ここを知らずに進めると、つらい思いをしたり、トラブルにつながったりすることがあります。
夜間の分泌は多い——張りやすいことを知っておく
母乳は、飲ませていた分だけつくられます。これまで夜も授乳していた場合、体はまだ「夜も母乳が必要」というつもりで分泌を続けているので、夜間の授乳を急にやめると、乳房が張って苦しくなることがあります。「夜だけやめれば胸はラクになる」と思っていたら、逆にパンパンに張ってつらかった——これは実際によくあることです。まずは「張るのは自然なこと」と知っておくと、あわてずにすみます。
この張りは、体が「夜は飲ませない」という新しいリズムに合わせて分泌量を調整していくにつれて、少しずつ落ち着いていきます。落ち着くまでの日数には個人差があり、数日でラクになる方もいれば、もう少しかかる方もいます。急に一気にやめるより、少しずつ夜の授乳を減らしていくほうが、胸への負担はゆるやかになります。たとえば、いきなり夜ゼロにするのではなく、夜中の授乳を1回だけ残す→それも減らす、というように段階を踏むと、張りのつらさを抑えやすくなります。
張ったときにどうするか(出しすぎない・冷やす)
張ってつらいときは、我慢しすぎず、少し楽になる程度に搾乳して圧を抜きます。ただし、すっきり空になるまで出しきってしまうと、体が「まだ必要」と判断して、かえって分泌が減りにくくなります。「苦しさが和らぐ程度に少しだけ」がコツです。手でもよいですし、搾乳器を使ってもかまいません。パンパンに張って痛むときだけ、そのつど少量を抜く——というイメージで、こまめに全部出しきる方向には持っていかないのがポイントです。
夜間の授乳をやめると、日中も含めた授乳間隔やリズムが変わっていきます。月齢別の授乳間隔の目安を知っておくと、張りやリズムの変化にも落ち着いて対応できます。
授乳間隔の目安は?月齢別の一覧と「空きすぎ・空かない」の不安に元看護師が答えます
あわせて、冷たいタオルや保冷剤(タオルで包んで)で冷やすと、張りや痛みがやわらぐことがあります。逆に、長くお風呂やシャワーで温めすぎると、血流が増えて張りが強く感じられることもあるので、つらい時期は温めすぎに気をつけてください。締めつけの強すぎない下着で支えることや、うつぶせで胸を圧迫しないことも、地味ですが助けになります。なお、これはあくまで「夜だけお休みする」場合のケアです。昼も含めて完全にやめていく段階での胸のケア(絞る・絞らないの判断や、しこりが残るときの対応の詳細)は、別記事にくわしくまとめているので、そちらへ進むときに参考にしてください。
乳房の張り(乳房緊満)への対応や冷やし方の考え方は、MSDマニュアルのプロフェッショナル版でも解説されています。医療者向けの資料ですが、基本的な考え方の裏づけとして挙げておきます。
参考 産褥の管理(乳房緊満への対応)MSDマニュアル プロフェッショナル版
母乳育児に関するお母さん向けのQ&Aは、日本ラクテーション・コンサルタント協会のサイトも参考になります。困ったときの相談先を知っておくと安心です。
参考 母乳育児に関するQ&ANPO法人 日本ラクテーション・コンサルタント協会
乳腺炎のサインが出たら早めに対応を
張りを放っておくと、母乳がたまったところが炎症を起こして乳腺炎につながることがあります。乳房の一部が赤くなる、しこりや強い痛みがある、熱っぽい・発熱するといったサインが出たら、早めに対応してください。夜間断乳のように急に授乳を減らす時期は、乳腺炎が起こりやすいタイミングでもあります。
症状が強いときや、発熱を伴うときは、自己判断で我慢せず、母乳外来・助産師・産婦人科に相談しましょう。乳腺炎のサインや対処法については、こちらの記事でくわしくまとめています。夜間断乳を始める前に、目を通しておくと安心です。
乳腺炎とは?なりかけのサイン・症状と対処法・授乳を続けていいのかを元看護師が解説
うまくいかないとき——泣き続ける・夜泣きが減らない
「夜間断乳を始めたのに、赤ちゃんが泣き続ける」「夜泣きがぜんぜん減らない」「むしろひどくなった気がする」——これは本当によくある悩みです。ここでは、うまくいかないと感じたときの考え方を整理します。大切なのは、「うまくいかない=失敗」ではないということです。
何日で終わるの?「◯日」と断定しない理由
「夜間断乳は何日で成功しますか?」という質問はとても多いです。ネット上には「3日で泣かなくなる」といった情報も見かけますが、公的な資料に「何日で終わる」という確立された数字はありません。数日で落ち着いたように見える子もいれば、数週間かけてゆっくり慣れていく子もいて、個人差がとても大きいからです。
だから、「◯日でやめさせなきゃ」と期限を区切ってしまうと、その日数で結果が出なかったときに、必要以上に落ち込んだり、無理をしすぎたりしがちです。日数はあくまで「そういう子もいる」という参考程度にとどめて、あなたの赤ちゃんのペースを基準にしてください。
泣き続けるとき・泣き叫ぶときの考え方
赤ちゃんが激しく泣き続けたり、泣き叫んだりすると、「かわいそうなことをしているのでは」とつらくなりますよね。まず、泣いている赤ちゃんを放置する必要はありません。抱っこしたり、トントンしたり、そばにいて安心させてあげてかまいません。「授乳はしないけれど、そばにいて安心させる」という関わり方は、夜間断乳と両立します。
それでも泣きやまず、赤ちゃんもお母さんも消耗しきってしまうときは、無理に続ける必要はありません。あまりにつらそうなときや、お母さんの心と体が限界に近いときは、いったん授乳して落ち着かせても、それは「負け」ではありません。
夜泣きが減らない・かえって増えたとき
前にも触れたとおり、夜間断乳をしても夜泣きがすぐになくなるとは限りません。夜中に起きる原因は授乳だけではなく、睡眠のリズムや、日中の刺激、体調などいろいろな要素が関わっているからです。「授乳をやめたのに夜泣きが減らない」のは、あなたのやり方が間違っているからとは限りません。
むしろ、始めた直後は生活の変化に赤ちゃんが戸惑って、一時的に夜泣きが増えたように感じることもあります。多くの場合は少しずつ落ち着いていきますが、あまりに長く続く、日中もぐずりが強い、体調が悪そうなど気になることがあれば、小児科や地域の保健師に相談してみてください。
中断・仕切り直しは失敗ではない
「やっぱり今はタイミングじゃなかったかも」と感じたら、いったん中断して、しばらくしてから仕切り直しても大丈夫です。赤ちゃんの体調、月齢の進み、生活の落ち着き具合によって、うまくいきやすい時期は変わります。一度うまくいかなくても、それは失敗ではなく「今はまだ早かった」というだけのこと。数週間〜数ヶ月あけて再チャレンジしたらすんなり進んだ、というのはよくある話です。
ちなみ(元看護師)
夜間断乳は赤ちゃんにストレスにならない?
「夜だけおっぱいをやめるなんて、赤ちゃんにストレスやかわいそうな思いをさせているのでは」——この罪悪感で悩む方は、本当に多いです。まず、その気持ちを持てること自体が、赤ちゃんを大切に思っている証拠です。そのうえで、いくつかお伝えしたいことがあります。
夜間断乳は、母乳・ミルクを完全に取り上げるものではありません。昼はこれまでどおり飲めますし、夜も「授乳はしないけれど、そばにいて抱っこやトントンで安心させる」ことはできます。愛情を減らすわけでも、スキンシップを断つわけでもありません。関わり方の形が少し変わるだけ、と考えてみてください。むしろ、授乳以外の方法で安心させてもらえる経験は、赤ちゃんが「おっぱい以外でも落ち着ける」ことを少しずつ知っていく過程でもあります。
いちばん引っかかりやすいのが、「泣かせてしまうこと=かわいそう・愛情不足なのでは」という気持ちだと思います。ここははっきりお伝えしたいのですが、そばにいて、抱っこやトントンで応じながらの夜間断乳は、赤ちゃんを突き放すこととは違います。泣いている赤ちゃんを放置しているわけではなく、「授乳という形ではないけれど、ちゃんとそばにいて安心を渡している」のです。泣くこと自体は、赤ちゃんが気持ちを表現する自然な手段でもあります。泣いた=失敗、泣かせた=愛情不足、と受け取る必要はありません。
始めた直後は、生活の変化に赤ちゃんが戸惑って、ぐずりが強くなることもあります。これは多くの場合、新しいリズムに慣れていく途中の一時的な反応で、少しずつ落ち着いていくことが多いです。ただ、慣れるまでの日数や感じ方には大きな個人差があるので、「うちの子はまだ泣くのに、よその子はもう平気そう」と比べて落ち込まないでくださいね。あなたの赤ちゃんには、あなたの赤ちゃんのペースがあります。
また、お母さんが眠れずに心も体も限界の状態でいるより、少し眠れて日中に笑顔で向き合えるほうが、赤ちゃんにとってもうれしいことのはずです。「自分が休むために夜間断乳する」ことに罪悪感を持つ必要はありません。日中にたっぷりスキンシップを取り、笑顔で関わる時間があれば、夜の関わり方が少し変わっても、赤ちゃんとのつながりが薄れることはありません。
それでも、赤ちゃんがつらそうで進めるのが苦しいと感じるなら、前の章でお伝えしたように、いったん立ち止まってもかまいません。中断は失敗ではなく、「今はまだそのタイミングじゃなかった」というだけのことです。お母さん自身が「これはつらすぎる」と感じるなら、それも立派に立ち止まる理由になります。あなたと赤ちゃん、どちらかだけが我慢する形にならないこと——これを何より大切にしてくださいね。判断に迷うときや、赤ちゃんの様子が気になるときは、地域の保健師や小児科に気軽に相談して大丈夫です。

夜間断乳のあいだも守りたい睡眠環境の安全
夜間断乳は、寝かしつけの方法を変える時期なので、赤ちゃんの寝る姿勢や寝床が変わりやすいタイミングでもあります。だからこそ、あらためて確認しておきたいのが睡眠環境の安全です。乳幼児突然死症候群(SIDS)を防ぐために、こども家庭庁が示しているポイントがあるので、判断の材料としてそのままお渡しします。
- 1歳になるまでは、寝かせるときはあおむけ(仰向け)に:うつぶせ・横向きではなく、あおむけで寝かせることが安全とされています。添い乳のまま寝落ちしそうなときも、赤ちゃんはあおむけの姿勢に戻すことを意識しましょう。
- たばこをやめる:妊娠中・出産後の喫煙は、赤ちゃんにとってリスクになります。家族の分煙・禁煙も大切です。
- できるだけ母乳で育てる:母乳育児は、赤ちゃんの体調管理の面でもよいとされています(ミルクがいけないという意味ではありません)。
なぜ夜間断乳とこの話がつながるかというと、夜間断乳をする時期は「添い乳のまま寝落ち」から「別の方法で寝かしつける」へと切り替わるタイミングだからです。寝かしつけの形が変わると、赤ちゃんをどこで・どんな姿勢で寝かせるかも見直すよい機会になります。せっかく夜の関わり方を変えるなら、あわせて安全な寝床の形も整えておくと安心です。
あわせて、赤ちゃんの周りに顔が埋まるようなやわらかい寝具・枕・ぬいぐるみを置かない、掛け物は口や鼻をふさがない軽いものにする、大人用の布団やソファで一緒に寝落ちしない、といった環境づくりも意識したいところです。寝室は同じでも寝る場所は分ける(同室・別床)と、大人の寝具に赤ちゃんの顔が埋まったり、大人が寝返りで覆いかぶさったりする心配が減ります。夜中に授乳以外の方法で落ち着かせたあとは、赤ちゃんを自分の安全な寝床に、あおむけで戻してあげてください。
これらは「夜間断乳をしているかどうか」に関係なく、赤ちゃんが1歳になるまで共通して大切にしたいポイントです。夜の授乳を減らすことに気を取られて、寝床の安全がおろそかにならないよう、ここは判断の材料としてそのまま押さえておいてくださいね。くわしくは、こども家庭庁の情報を確認してみてください。
参考 赤ちゃんが安全に眠れるように(乳幼児突然死症候群 SIDS)こども家庭庁
なお、夜間断乳は睡眠不足の解消が目的のひとつですが、それでも眠れない日が続いて、気分の落ち込みや不安が強くなってきたときは、無理をしないでください。産後の心の不調は、誰にでも起こりうるものです。つらいときの相談先や見分け方については、こちらの記事も参考にしてください。
マタニティブルーとは?妊娠中と産後の違い・いつまで続くか・乗り越え方を元看護師が解説
よくある質問
最後に、夜間断乳についてとくによく寄せられる質問に、ここまでの内容もふまえてお答えします。
Q夜間断乳は何ヶ月から始めますか?
A.「何ヶ月から」と一律に決まっているわけではありません。月齢よりも、体重が順調に増えているか・離乳食が進んでいるか・日中の授乳でしっかり飲めているかの3つがそろっているかを目安にします。一般的には離乳食が進む生後9〜10ヶ月ごろ以降に検討する方が多いですが、個人差が大きいので、迷うときや発育に不安があるときは小児科・助産師に相談してください。
Q夜間断乳は何日で成功しますか?
A.公的な資料に「何日で終わる」という確立された数字はありません。数日で落ち着く子もいれば、数週間かけてゆっくり慣れていく子もいて、個人差がとても大きいためです。「◯日でやめさせる」と期限を区切るより、赤ちゃんのペースを基準に進めるほうが、お母さんも無理をしすぎずにすみます。
Q夜中だけ断乳するのはどうですか?
A.昼の授乳は続けたまま夜だけお休みする「夜間断乳」は、いきなり全部をやめる完全断乳よりゆるやかなステップとして選ばれることが多い方法です。日中に栄養と水分が取れていることが前提になります。お母さんの睡眠を確保したいという目的なら、まず夜からお休みする順番が選ばれやすいです。
Q夜間断乳の効果は何ですか?
A.いちばんの目的は、夜中の授乳によるお母さんの睡眠不足をやわらげることです。ただし、夜間断乳をしたからといって必ず夜泣きがなくなる・夜通し寝るとは限りません。夜中に起きる原因は授乳だけではないため、夜泣きへの期待は控えめに持っておくと、うまくいかなくても落ち込みにくくなります。
Q夜間断乳の進め方は?
A.日中にしっかり飲ませて離乳食も進めておく、寝る前の1回をていねいに飲ませる、授乳以外の寝かしつけ(トントン・抱っこ・声かけ)に置き換える、「夜◯時〜朝◯時はお休み」と時間帯を決めておく、パートナーと分担する——といった準備をしてから始めるとやわらかいスタートになります。特定のメソッドや「◯日で成功」の手順に無理に合わせる必要はありません。
Q完母で夜通し寝るのはいつからですか?
A.完全母乳の場合でも、夜通し寝るようになる時期には大きな個人差があり、「◯ヶ月から」とは言い切れません。夜間の授乳が長く続くこと自体は問題ではなく、完母だから遅い・ミルクだから早いと単純に決まるものでもありません。まわりと比べて焦らず、その子のペースを見守ってあげてください。

まとめ
最後に、この記事の大切なポイントを振り返っておきます。
- 夜間断乳とは、昼の授乳は続けたまま夜だけお休みする方法。断乳・卒乳とは違う
- 始める時期は月齢だけで決めず、体重・離乳食・日中の授乳の3つで判断する
- お母さんの睡眠確保が目的なら、多くの場合まず夜からお休みする
- 夜だけやめると胸が張りやすい。出しすぎず冷やし、乳腺炎のサインに注意
- 「◯日で成功」は断定できない。うまくいかない・中断も失敗ではない
- 睡眠環境はあおむけ寝を基本に、安全を守る
夜中に何度も起きて授乳しているお母さん、本当に毎日おつかれさまです。夜間断乳は、うまくいく時期にも進み方にも大きな個人差があって、思うようにいかない日もあります。でも、どんな形であれ、夜中に起こされる時期は、必ずいつか終わります。焦らず、あなたと赤ちゃんのペースで、そして家族みんなで進めていってくださいね。この記事が、その一歩の判断材料になればうれしいです。
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