赤ちゃんが泣いている。おっぱいをふくませても、うまく飲めていない気がする。搾ってみても、にじむ程度しか出てこない。まわりは「吸わせていれば出るようになるよ」と言うけれど、その「そのうち」がいつなのか、誰も教えてくれない。
産後の入院中、ナースコールを押すかどうか迷いながら、暗い病室でひとり検索している方が、本当にたくさんいます。
こんにちは、ちなみです。元看護師で、男の子と女の子の2児の母をしています。私自身、上の子のときは3日目までほとんど出ず、「私の体はおかしいんじゃないか」と本気で思いました。あのときいちばん欲しかったのは、はげましの言葉よりも「今どうなっているのか」という説明でした。
この記事では、母乳はいつから出るのか、産後すぐ出ないのは異常なのか、足りているかをどう見分けるのか、そして母乳が出ないのは母親の努力不足ではないということを、こども家庭庁・厚生労働省・MSDマニュアルといった公的機関や医学専門の資料をもとに整理していきます。
先に、この記事でいちばんお伝えしたいことを書いておきます。「母乳が出ない」と感じている時期の多くは、まだ出る準備の途中です。そして、たとえ思ったように出なかったとしても、国が定めた授乳支援の考え方は「母乳かミルクかにはこだわらない」とはっきり書いています。
目次
- 母乳はいつから出る?「出ない」の多くは、まだ出ていないだけ
- 母乳が出ない人はどのくらいいる?国の調査が出している数字
- 母乳が足りているかを見分ける方法|おむつと体重で見る
- 母乳が作られるしくみと、分泌が増える条件
- 産後の日数別に見る母乳の出方の目安
- 母乳は出ているのに、赤ちゃんが吸ってくれないとき
- 「母乳が出ない人の特徴」はあるのか
- 母乳が出る食べ物・マッサージ・サプリはどうなの?
- 母乳が急に出なくなった・減ったと感じるとき
- いつまで頑張ればいい?母乳育児に期限はあるのか
- 母乳の悩みが、こころを追いつめているとき
- 授乳のたびにお腹が痛くなるのはなぜ?
- まとめ
- よくある質問(母乳が出ない|FAQ)
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母乳はいつから出る?「出ない」の多くは、まだ出ていないだけ
まず、時間の話からいきます。ここを知らないまま産後1〜2日目を過ごすと、必要のない自責が生まれてしまうからです。
十分な量が出るまでには72〜96時間かかる
MSDマニュアル家庭版は、母乳の分泌についてこう書いています。「第1子の場合、十分な量の母乳が出るようになるまで普通は72〜96時間かかります」。
72〜96時間は、まる3日から4日です。医療者向けのMSDマニュアル プロフェッショナル版でも「初産婦では乳汁の産生が完全に確立されるまでに72〜96時間を要し、経産婦ではより早く確立される」と、同じ時間が示されています。
つまり、産後1日目・2日目に「ほとんど出ない」のは、資料に書かれているとおりの経過だということです。異常でもなければ、体質でもありません。まだその時間になっていない、というだけです。
ちなみ(元看護師)
最初に出るのは「初乳」というごく少量の液体
では、その72〜96時間のあいだ、乳房では何も起きていないのかというと、そうではありません。
MSDマニュアル家庭版は「最初に生産される乳汁は薄黄色の液体で、初乳と呼ばれます。初乳のカロリーは特に高く、タンパク質、白血球、抗体も特に豊富に含まれています」と説明しています。プロフェッショナル版はさらに、初乳は「高カロリー、高タンパク質の薄黄色の液体で、抗体やリンパ球、マクロファージが豊富に含まれているため、免疫防御の働きがある」「初乳はまた、胎便の排泄も刺激する」としています。
初乳は、量ではなく中身で勝負している乳汁です。にじむ程度しか出ないのは当然で、それでも赤ちゃんにとっては意味のあるものが届いています。
「搾ってもほんの少ししか出ないから、意味がないのでは」と思って搾乳や授乳をやめてしまうと、あとで説明する分泌のスイッチが入りにくくなります。量が少ない時期こそ、少量でも吸わせる・搾ることに意味がある、という順序です。
- 十分な量が出るまで、第1子では普通は72〜96時間(3〜4日)かかる
- 第2子以降はより速やかに確立される
- 最初に出るのは初乳。薄黄色で、量は少ないがカロリー・タンパク質・抗体が豊富
- 初乳には免疫防御の働きがあり、赤ちゃんの胎便の排泄も刺激する
初産のほうが時間がかかるのは、資料にも書かれている
「1人目のときは全然出なかったのに、2人目はすぐ出た」という話を聞いたことがある方も多いと思います。これは経験談ではなく、資料に明記されている違いです。
MSDマニュアルは家庭版・プロフェッショナル版ともに、第2子以降(経産婦)では母乳の分泌がより速やかに確立されるとしています。
ですから、初めての出産で「出ない」と感じるのは、いちばん多いパターンです。初産の方が周りの経産婦さんと自分を比べて落ち込む場面をよく見かけますが、比べる相手として適切ではありません。同じ条件ではないからです。
母乳が出ない人はどのくらいいる?国の調査が出している数字
「母乳が出ないのは自分だけなんじゃないか」。この不安に、感想ではなく国の調査の数字で答えます。
厚生労働省の「平成27年度 乳幼児栄養調査」は、0〜2歳児の保護者を対象にした全国調査です。ここに、授乳の実態がそのまま出ています。
生後1か月で「完全に母乳だけ」は約半数
同調査によると、生後1か月時点の栄養方法は母乳栄養51.3%・混合栄養45.2%・人工栄養3.6%でした。生後3か月では母乳栄養54.7%です。
ここを読み違えないでほしいのですが、生後1か月の時点で、ミルクを使っている人は合わせて約半数(48.8%)ということです。「完母じゃないと」と思いつめている方が多いのですが、数のうえでは、ミルクを併用している人は少数派ではありません。
ちなみに、同じ調査では母乳を与えている人(母乳栄養+混合栄養)は生後1か月で96.5%。つまりほとんどの人が「母乳もあげているし、ミルクも使っている」という状態を通るのが実際の姿です。
授乳で困ったことがある人は77.8%。最多は「足りているかわからない」
同じ調査の「授乳について困ったこと」の結果が、この記事の読者にとっていちばん効く数字かもしれません。
- 困ったことがある:77.8%
- 母乳が足りているかどうかわからない:40.7%
- 母乳が不足ぎみ:20.4%
- 授乳が負担、大変:20.0%
- 人工乳(粉ミルク)を飲むのをいやがる:16.5%
- 外出の際に授乳できる場所がない:14.3%
- 子どもの体重の増えがよくない:13.8%
- 卒乳の時期や方法がわからない:12.9%
- 母乳が出ない:11.2%
- 母親の健康状態:11.1%
出典:厚生労働省「平成27年度 乳幼児栄養調査結果の概要」
約8割が授乳で困っています。そして最も多い悩みは「母乳が足りているかどうかわからない」で40.7%。じつに4割の人が、量が見えないことに不安を抱えているわけです。
この「わからない」という悩みが最多だという事実は、それだけで大きな意味を持ちます。母乳は、目盛りのついた哺乳瓶と違って、どれだけ出ているかが見えません。だから、実際には足りていても「足りていないのでは」と感じる。逆に、感覚だけでは判断できないのが当たり前なのです。
「母乳が出ない」と答えた人は11.2%
検索で「母乳が出ない人の割合」を探している方に、この記事がいちばん直接に答えられる数字です。同調査で「母乳が出ない」と回答した人は11.2%でした。
さらに栄養方法別に見ると、母乳栄養の人で5.2%、混合栄養の人で15.9%、人工栄養の人で37.2%と差があります。
ただし、この数字の読み方には注意が必要です。これは「医学的に分泌不全と診断された人の割合」ではなく、「授乳について困ったこととして〈母乳が出ない〉を挙げた人の割合」です。感じ方を含んだ数字であって、体の状態を判定したものではありません。
それでも、10人に1人以上が同じ悩みを言葉にしているということは事実です。あなたが特殊なわけではありません。
この「おむつと体重で見る」という判断軸は、夜中に寝ている赤ちゃんを起こしてでも授乳すべきかを考えるときにもそのまま使えます。新生児期を過ぎて体重の増えが順調なら、無理に起こさなくてよいとされる時期が来ます。夜間授乳の月齢別の目安は、こちらの記事にまとめました。
夜間授乳はいつまで?月齢別の目安と「起こすべきか」の判断を元看護師が解説
母乳が足りているかを見分ける方法|おむつと体重で見る
いちばん多い悩みが「足りているかわからない」なら、次に必要なのは見分ける道具です。ここは感覚ではなく、資料に書かれた具体的な目安で見ていきます。

おむつの枚数で見る
MSDマニュアル家庭版は、医師が母乳の量が十分かどうかを「授乳回数、尿と便によるおむつ替えの回数、体重の増加から判断します」としています。
そのうえで、不足を疑う目安として「生後5日までに、尿によるおむつの濡れが1日6回未満、もしくは排便が1日4回未満」という数字を挙げています。プロフェッショナル版でも「生後5日までに、正常な新生児の場合、少なくとも1日に6枚のおむつを濡らし、少なくとも4枚を便で汚す」と、同じ基準が書かれています。
これは母乳が出ているかどうかを、乳房ではなく赤ちゃんの側から見るという発想です。乳房は量が見えませんが、おむつは数えられます。
- 尿でおむつが濡れる回数が1日6回以上
- 便でおむつが汚れる回数が1日4回以上
- 授乳の回数が24時間で8〜12回とれている
- 体重が成長曲線のカーブに沿って増えている
この4つがそろっていれば、乳房の張りや搾乳できる量が心もとなくても、まずは経過を見ていける状態です。
体重は「数字」ではなく「カーブ」で見る
もうひとつの指標が体重です。ただし、ここでも読み方があります。
厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」は、「母子健康手帳には、乳幼児身体発育曲線が掲載されており、このグラフに体重や身長を記入し、成長曲線のカーブに沿っているかどうかを確認する」「からだの大きさや発育には個人差があり、一人ひとり特有のパターンを描きながら大きくなっていく」としています。
大事なのは、平均値と比べることではなく、その子自身のカーブがついていっているかです。同ガイドは、身体発育について「計測値を標準値や他の子どもとの比較、増加の程度を意識してしまいがち」で、そのために自信を持てない母親がいることにも触れています。国のガイドが、比べてしまう心理そのものを課題として書いているわけです。
そのうえで、「体重増加がみられず成長曲線からはずれていく場合や、成長曲線から大きくはずれるような急速な体重増加がみられる場合は、医師に相談して、その後の変化を観察しながら適切に対応する」としています。判断のラインは「1回の数字」ではなく「はずれていく動き」です。
「乳房が張らない」「搾っても出ない」は目安にならない
ここは、多くの方が誤解しているところです。
乳房の張り具合や、搾乳して出てくる量は、資料が挙げている判断材料に入っていません。MSDマニュアルが挙げているのは授乳回数・おむつの回数・体重の増加であり、支援ガイドが挙げているのも「授乳回数や授乳量、排尿排便の回数や機嫌等の子どもの状況」です。
張らなくなるのは、分泌が減ったからではなく需要と供給が釣り合ってきたからということもよくあります。また、搾乳器や手で搾って出る量は、赤ちゃんが吸って飲み取る量とイコールではありません。赤ちゃんの吸い方は、器械や手よりずっと上手です。
ちなみ(元看護師)
足りているかは「総合的に判断する」と書かれている
支援ガイドは、母乳不足の判断についてこう述べています。「発育の程度は個人差があるため、母乳が不足しているかどうかについては、子どもの状態、個性や体質、母親の状態や家庭環境等を考慮に入れたうえで、総合的に判断する必要がある」。
言いかえると、ひとつの数字やひとつのサインで「足りていない」と決まるものではないということです。だからこそ、ひとりで判定しようとしないでください。健診でも、産後ケアでも、母乳外来でも、体重を測って一緒に見てもらうのがいちばん早いです。
- 生後5日を過ぎても、尿でおむつが濡れる回数が1日6回に届かない
- 体重が成長曲線のカーブからはずれていく方向にある
- 赤ちゃんの元気がない・ぐったりしている・泣く力が弱い
- 授乳のたびに強い痛みがある、乳頭に傷ができている
- 乳房の一部が赤く腫れて熱を持つ、発熱や悪寒がある
迷ったときに連絡していい相手は、出産した産院・1か月健診・お住まいの市区町村の母子保健の窓口(産後ケア事業)です。「こんなことで」と思う内容でかまいません。
参考 授乳や離乳について(授乳・離乳の支援ガイド 2019年改定版)こども家庭庁
母乳が作られるしくみと、分泌が増える条件
「どうしたら出るようになるのか」を考える前に、どういう条件で作られるのかを知っておくと、やることがはっきりします。
吸われることで、作られる
母乳は、ためておいたものを出しているのではなく、吸われる(出される)ことに反応して作られていくしくみです。MSDマニュアル家庭版は「母乳の分泌量は吸わせている時間が十分かどうかにかかっているため、十分な母乳の分泌を確立するためには、授乳時間をしっかりとる必要があります」と述べています。
この順番が逆に理解されていることがよくあります。「出るようになってから頻繁に飲ませる」のではなく、「頻繁に飲ませるから出るようになる」のです。
回数の目安は24時間で8〜12回、間隔は6時間以内
具体的な数字も資料に書かれています。MSDマニュアル家庭版は「一般的な頻度は24時間で8〜12回」とし、分泌を刺激するために最初の数日間は「授乳間隔を6時間以内にすべきです」としています。プロフェッショナル版では「母親は乳児の要求に応じて、または約1時間半〜3時間毎(8〜12回/日)の授乳が奨励されるべき」と表現されています。
この「回数」や「間隔」の目安が月齢ごとにどう変わっていくのか、授乳間隔の考え方はこちらで詳しく解説しています。
授乳間隔の目安は?月齢別の一覧と「空きすぎ・空かない」の不安に元看護師が答えます
そして原則として「授乳は時間を決めてするのではなく、乳児が欲しがったときに行うべきです」。時計ではなく赤ちゃんに合わせる、ということです。
- 授乳は24時間で8〜12回が一般的な頻度
- 最初の数日間は授乳間隔を6時間以内に
- 時間を決めず赤ちゃんが欲しがったときに
- 授乳時間をしっかりとる(分泌量は吸わせている時間に左右される)
- 直接飲ませられないときは1日6〜8回に分けて合計90分ほどの搾乳
すぐに出てこなくても、2分は待つ
吸わせ始めてもすぐに出てこないので「やっぱり出ない」とやめてしまう。これも、とてももったいないパターンです。
MSDマニュアル家庭版は、赤ちゃんが吸うことで「催乳反射という反射が起き、母乳の分泌が刺激されます」と説明しています。そしてプロフェッショナル版には「催乳反射が起こるまで少なくとも2分間かかる」と書かれています。
つまり、吸い始めから母乳が出てくるまでにはタイムラグがあるということです。30秒で判断しないでください。
直接飲ませられないときは搾乳が役に立つ
赤ちゃんがNICUにいる、うまく吸いつけない、乳頭が痛くて直接授乳が難しいなど、直接飲ませられない事情はいろいろあります。
MSDマニュアル プロフェッショナル版は「大抵は6〜8回に分けて1日に合計90分間搾乳を行えば、間接的に母乳を与える乳児には十分な母乳が得られる」としています。1日6〜8回・合計90分という具体的な目安があるのは心強いところです。
直接吸わせられないことは、母乳育児の終わりではありません。「出す」という刺激さえ続いていれば、分泌のしくみは働きます。
抱き方と含ませ方が痛みと量を左右する
MSDマニュアル家庭版は、授乳の姿勢について「母親は快適でゆったりした姿勢をとり、座るかほぼ横になります」「乳児を母親と対面するように抱きます」とし、乳房は「親指と人差し指を乳房の先端に、残りの指を乳房の下部に当てて乳房を支え」ると説明しています。
含ませ方については「乳首と乳輪を乳児の口に入れるときには、乳首が中央にくるように気をつければ、乳首が痛くなりづらくなります」。そして重要な一文として「乳首の痛みは、授乳中の姿勢が悪いことによるもので、予防する方が治すよりも簡単です」とあります。
また、授乳を終えるときに乳児を引き離すのではなく「乳児の口に自分の指を入れて、乳児のあごをそっと押し下げ、吸いつきを外します」という方法も書かれています。乳頭を傷めないための小さなコツです。
乳頭が痛いと授乳の回数が減り、回数が減ると分泌も減ります。痛みは我慢するものではなく、姿勢を見直すサインだと考えてください。入院中なら助産師さんに、退院後なら健診や母乳外来で、実際に見てもらうのがいちばん確実です。
産後の日数別に見る母乳の出方の目安
ここまでの内容を、産後の日数に沿って並べ直しておきます。今の自分がどのあたりにいるのかを確かめるための地図として使ってください。
- 産後0〜2日ごろ:出るのは初乳が中心で、にじむ程度のことも多い時期。量が少ないのが標準。まだ「十分な量が出る」段階には入っていない
- 産後3〜4日ごろ(72〜96時間):第1子で十分な量の分泌が確立してくるとされる時期。乳房が張ってくることも。第2子以降はこれより早い
- 生後5日ごろ:足りているかをおむつで確認できる時期。尿で6回以上・便で4回以上が目安
- 生後6〜8週ごろ:授乳のリズムが確立するとされる時期。間隔・回数・量が安定してくる。ただし個人差が大きい
※日数はいずれも目安です。子どもによって個人差があるため、この表と違っていても異常とは限りません。
この並びで見ると、産後1日目・2日目に「出ない」と落ち込むのが、いかに早い段階での自己採点かがわかると思います。そもそも、まだ判定できる時期に入っていないのです。
そして生後6〜8週まで見通しを伸ばすと、産後2週間はまだ折り返しにも来ていません。今つらいのは、あなたの努力が足りないからではなく、いちばん見通しが立たない時期のまっただ中にいるからです。
母乳は出ているのに、赤ちゃんが吸ってくれないとき
「母乳が出ない」と検索している方の中には、実際には出ているのに、赤ちゃんがうまく吸えていないというケースも含まれています。これは別の問題なので、分けて考えたほうが解決が早いです。
吸えていないのか、出ていないのかを分ける
見分けの入口は、やはりおむつと体重です。おむつの回数が足りていて体重のカーブも保たれているなら、量そのものは足りている可能性が高いということになります。そのうえで授乳のたびに苦労しているなら、問題は量ではなく吸い方のほうにあります。
MSDマニュアル家庭版は、「乳首の痛みは、授乳中の姿勢が悪いことによるもの」としたうえで、抱き方・乳房の支え方・含ませ方を具体的に説明していました。吸着がうまくいっていないと、赤ちゃんは疲れて途中でやめてしまい、乳房からもしっかり出しきれません。そして出しきれないと、次に作られる量も伸びません。
この連鎖は、姿勢と含ませ方を一度直してもらうだけで、するっと解けることがあります。
見てもらうのが、いちばん早い
授乳の姿勢と吸着は、文章や動画だけで直すのが難しい代表格です。角度が数センチ違うだけで痛みも飲み取り量も変わるからです。
支援ガイドも「子どもが欲しがるサインや、授乳時の抱き方、乳房の含ませ方等について伝え、適切に授乳できるよう支援する」ことを、産後の支援の内容として明記しています。これは、あなたが独学で身につけるべきものではなく、支援として提供されるべきものという位置づけです。
入院中なら助産師さんに「今から授乳するので見ていてください」とお願いしてください。退院後なら、1か月健診・母乳外来・産後ケア事業が使えます。「うまく吸わせられないので見てほしい」は、まったく遠慮のいらない相談です。
ちなみ(元看護師)
「母乳が出ない人の特徴」はあるのか
検索窓に「母乳 出ない人 特徴」と打ち込んだことがある方は多いと思います。裏返しの「母乳がたくさん出る人の特徴」も、よく調べられているキーワードです。
その気持ちはとてもよくわかります。自分がどちら側なのか先に知っておきたい、あるいは出ない理由を自分の中に見つけて納得したい、という気持ちです。

ただ、ここは正直にお伝えします。
公的な資料は「特徴」のリストを示していない
今回この記事を書くにあたって公的機関・学会・医学専門の資料を確認しましたが、「こういう人は母乳が出ない」という特徴を、根拠つきで一覧にしている資料は見当たりませんでした。
あるのは、先ほど引用した支援ガイドの一文です。「母乳が不足しているかどうかについては、子どもの状態、個性や体質、母親の状態や家庭環境等を考慮に入れたうえで、総合的に判断する必要がある」。
これは裏を返せば、ひとつの特徴で決まるものではない、と国のガイドが明言しているということです。検索結果に並ぶ「出ない人の特徴◯選」の多くは、商品を扱うページに載っているものだという点も、頭の片隅に置いておいてください。
乳房の大きさや形は関係するのか
よく気にされるのが乳房の大きさです。これについても、大きさや形と分泌量の関係を示した公的な資料は確認できませんでした。
しくみの面から言えば、母乳は乳房の脂肪ではなく乳腺で作られ、吸われる刺激に反応して量が決まっていくものです。前の章で見たとおり、資料が挙げている条件は「授乳の回数」「授乳の時間」であって、乳房のサイズではありません。
母乳が出ないのは、努力不足ではない
これは、この記事でいちばん伝えたいことです。
厚生労働省の乳幼児栄養調査によると、妊娠中に「ぜひ母乳で育てたいと思った」人が43.0%、「母乳が出れば母乳で育てたいと思った」人が50.4%で、合計すると母乳で育てたいと思っていた人は9割を超えています。
そして同じ調査では、「ぜひ母乳で育てたい」と思っていた人でも、生後1か月時点で母乳栄養だったのは67.6%でした。「母乳が出れば母乳で」と思っていた人にいたっては、いちばん多かったのは混合栄養で55.6%です。
つまり、強く望んでいた人の3人に1人は、望んだとおりにはならなかったということです。願いの強さで決まるものではない、という何よりの証拠だと思います。
もし今、「私が下手だからだ」「愛情が足りないからだ」と考えているとしたら、その考えだけは手放してください。それは、事実ではありません。
ちなみ(元看護師)
母乳が出る食べ物・マッサージ・サプリはどうなの?
「母乳が出る食べ物」「母乳を増やす方法」も、たくさん検索されています。ここは、書けることと書けないことをはっきり分けます。
特定の食品が母乳を増やすという公的な根拠は示されていない
「これを食べれば母乳が出る」という特定の食品を挙げて、その効果を根拠つきで示している公的機関の資料は確認できませんでした。
支援ガイドが授乳中の食生活について述べているのは、「妊婦及び授乳中の母親の食生活は、母子の健康状態や乳汁分泌に関連があるため、食事のバランスや禁煙等の生活全般に関する配慮事項を示した『妊産婦のための食生活指針』を踏まえ、妊娠期から食生活の改善を促す支援を行う」という内容です。特定の食品ではなく、食事全体のバランスという書き方になっています。
反対に、同ガイドはアレルギー予防の文脈で「母親の食事は特定の食品を極端に避けたり、過剰に摂取する必要はない。バランスのよい食事が重要である」とも明記しています。何かを極端にがんばる必要はない、というのが一貫した姿勢です。
もっと現実的なことを言えば、産後は自分の食事を用意すること自体が難しい時期です。「母乳のために特別なものを食べなければ」という課題を、これ以上増やさないでください。水分をとること、食べられるものを食べること。まずはそれで十分です。
マッサージやサプリについて
乳房マッサージや母乳用サプリ、ハーブティーなども広く売られていますが、この記事では効果の有無を判断しません。公的機関の資料に、これらの分泌量への効果を示した記載を確認できなかったためです。
お伝えできるのは次の2点です。ひとつは、資料が分泌の条件として挙げているのは、授乳の回数と時間であるということ。もうひとつは、使わなかったからといって出なくなるわけではないということです。
迷ったときは「授乳中です」と伝えたうえで、医師・薬剤師に確認してください。
なお、母乳の出方の変化に胸の一部の赤み・硬いしこり・熱感・発熱をともなうときは、別の問題を考えます。MSDマニュアルは「授乳開始から数週間後の発熱は、しばしば乳腺炎によるものです」と書いています。乳腺炎は、授乳を続けながら対処するのが基本とされている状態です。見分け方と対処法は、こちらの記事にまとめました。
乳腺炎とは?なりかけのサイン・症状と対処法・授乳を続けていいのかを元看護師が解説
母乳が急に出なくなった・減ったと感じるとき
ここまでは「最初から出ない」話でしたが、いったん出ていたのに減ってきたという悩みもあります。
授乳の回数が減ると、分泌も減る
母乳は吸われることで作られるので、出す回数が減れば作られる量も減ります。支援ガイドも混合栄養について「母乳の授乳回数を減らすことによって、母乳分泌の減少など母乳育児の継続が困難になる場合がある」と述べています。
赤ちゃんがまとめて眠るようになった、外出が増えた、職場に戻った、体調を崩して授乳を休んだ。こうした変化のあとに減ったと感じるのは、しくみのとおりです。
逆に言えば、回数を戻していくことで持ち直すこともあります。ただし同ガイドは、その判断は母親の思いを聴いたうえで行うべきものだとしており、「母子の状況を見極めた上で、育児用ミルクを利用するなど適切に判断する」としています。無理に回数を戻すことだけが正解ではありません。
張らなくなった=減った、ではない
産後1〜2か月ごろに「張らなくなったので出なくなったと思う」という相談がよくあります。
ですが、先に見たとおり張りは資料が挙げる判断材料ではありません。支援ガイドは「授乳のリズムの確立とは、子どもが成長するにつれて授乳の間隔や回数、量が安定してくることをいう」としています。安定してきた結果として張らなくなることもあります。
やはり見るのは、おむつの回数と体重のカーブです。
生理が再開すると母乳はどうなる?
「生理が来たら母乳が出なくなる」「味が変わる」という話も、よく検索されています。
結論を先に書くと、生理の再開によって母乳が出なくなる・味が変わるという因果関係を示した公的な資料は確認できませんでした。生理が戻ったことを理由に、卒乳や断乳を決めなければいけないわけではありません。
産後の生理の再開時期や、授乳との関係については別の記事で詳しくまとめています。
産後の生理はいつから?授乳との関係・再開前の妊娠・量や周期の乱れを元看護師が解説
痛みや熱をともなうときは、別の問題を考える
「出が悪い」と同時に、乳房が赤く腫れる・熱を持つ・熱が出るという場合は、分泌の問題ではなく乳腺炎を考える必要があります。
MSDマニュアル家庭版は乳腺炎について、「感染した乳房は通常、腫れて赤くなり、熱感と圧痛がみられます」「通常は出産後の6週間に発生し、ほぼすべてが授乳している母親に起こります」「授乳開始から数週間後の発熱は、しばしば乳腺炎によるものです」と説明しています。
そして「出産後に乳房の感染症が起きた場合でも、通常は授乳を続けるべきです」とし、「授乳または搾乳により乳管が充満したら、乳房から完全に母乳を出しきるべきです」としています。痛いから授乳をやめる、が正解とは限らないということです。
ただし「乳房が赤くなっている、発赤が広がっている、あるいは発熱や悪寒があるなど、感染症の症状が軽減しない場合や症状が重篤な場合」は受診が必要です。自分で判断せず、産院に連絡してください。
この「いつまで」という問いは、母乳が出るようになったあとも、形を変えてついてきます。WHOは2歳かそれ以上までをすすめている一方で、日本の「授乳・離乳の支援ガイド」は終了時期に一律の基準を置いていません。まわりが1歳前後でやめていくなかで、自分はどうすればいいのか——そのねじれをほどく話と、卒乳のサイン・やめたあとに体に起きることは、こちらの記事にまとめました。
母乳はいつまで?授乳をやめる時期と卒乳のサイン・体の変化を元看護師が解説
そして「やめる」と決めたあとに待っているのが、どう減らしていくか・張った胸をどうケアするかという実務です。急にやめると乳腺炎につながりやすいため、進め方には順序があります。断乳の具体的なやり方と胸のケア(絞る/絞らないの判断)は、こちらにまとめました。
断乳のやり方|進め方と胸のケア・絞る絞らないの判断を元看護師が解説
「夜の授乳だけでも先に減らしたい」という方は、夜間断乳という選択肢もあります。いつから始められるか、昼と夜のどちらを先にやめるか、進め方の目安をこちらの記事にまとめています。
夜間断乳はいつから?やり方と昼夜どちらを先にやめるかを元看護師が解説
いつまで頑張ればいい?母乳育児に期限はあるのか
「母乳 出ない いつまで頑張る」。この言葉で検索している方がいます。私は、この検索窓に打ち込まれた言葉こそ、この記事がいちばん答えなければいけないものだと思っています。
その言葉の裏にあるのは、たぶん「もうやめたい。でも、やめていいと言ってくれる人がいない」という気持ちだからです。

授乳のリズムが確立するのは生後6〜8週以降
まず、時間の見通しから。支援ガイドは「授乳のリズムが確立するのは、生後6〜8週以降と言われているが、子どもによって個人差があるので、母親等と子どもの状態を把握しながらあせらず授乳のリズムを確立できるよう支援する」としています。
生後6〜8週。1か月半から2か月です。産後2週間で「もう限界だ」と感じるのは、早すぎるどころか、まだリズムが立ち上がる前の時期にいるということです。
ただし、これは「6〜8週までは頑張れ」という意味ではありません。同じ文に「個人差がある」「あせらず」と書かれているとおり、期限として使うための数字ではないからです。
国のガイドは「母乳かミルクか」にこだわっていない
ここが、この記事でいちばん知ってほしい一文です。厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」は、授乳支援の基本的な考え方としてこう書いています。
「授乳の支援に当たっては母乳だけにこだわらず、必要に応じて育児用ミルクを使う等、適切な支援を行うことが必要である。」
「母子の健康等の理由から育児用ミルクを選択する場合は、その決定を尊重するとともに母親の心の状態等に十分に配慮し、母親に安心感を与えるような支援が必要である。」
国が保健医療従事者に向けて定めた公式のガイドが、「乳汁の種類にかかわらず」「母乳だけにこだわらず」「その決定を尊重する」と、三重に書いているのです。
そしてガイドが最終的な目的として置いているのは、母乳の量ではなく「健やかな母子・親子関係の形成」と「育児に自信をもたせること」です。母乳は目的ではなく、手段のひとつとして書かれています。
ミルクを足すのは「あきらめ」ではない
混合栄養についても、ガイドははっきりした立場を書いています。
「母乳を少しでも与えているなら、母乳育児を続ける為に育児用ミルクを有効に利用するという考え方に基づき支援を行い」。
読んでいただきたいのは「母乳育児を続けるために、ミルクを利用する」という語順です。ミルクは母乳育児の対義語ではなく、続けるための道具として位置づけられています。
また、混合栄養になる要因についても「混合栄養を取り入れる要因としては、母乳分泌不足、母親の健康上の要因、疲労等があげられる」と書かれています。疲労が理由として明記されていることに注目してください。疲れたからミルクを使う、は正当な理由として国のガイドに載っているのです。
「ミルクを足すと不利になる」という誤解について
ミルクをためらわせる情報として「完全母乳のほうが肥満になりにくい」といった話を目にすることがあります。
これについて、支援ガイドは注記でこう書いています。「完全母乳栄養児と混合栄養児との間に肥満発症に差があるとするエビデンスはなく、育児用ミルクを少しでも与えると肥満になるといった表現で誤解を与えないように配慮する」。
国のガイドが、わざわざ「誤解を与えないように」と注意書きを入れているのです。それだけ広まってしまっている誤解だということでもあります。
ちなみ(元看護師)
参考 授乳や離乳について(授乳・離乳の支援ガイド 2019年改定版)こども家庭庁
母乳の悩みが、こころを追いつめているとき
母乳の話は、体の問題であると同時に、こころの問題になりやすいテーマです。
国のガイドが、産後うつの予防に言及している
支援ガイドには、次の一文があります。「母親が授乳や育児に関する不安が強い場合には、産後うつ予防や安心して授乳や育児ができるように、早期からの産科医師、小児科医師、助産師、保健師等による専門的なアプローチを検討する」。
授乳の支援ガイドの中に、産後うつという言葉が出てくる。それだけ、授乳の不安とこころの不調は近いところにあるということです。
「母乳のことで悩んで泣いてしまう」は、大げさな反応ではありません。国のガイドが、専門的なアプローチを検討すべき状態として書いている状況です。
ひとりで抱えなくていい
ガイドは、退院後の支援について「母乳育児を継続するために、母乳不足感や体重増加不良などへの専門的支援、困った時に相談できる母子保健事業の紹介や仲間づくり等、社会全体で支援できるようにする」としています。
「社会全体で支援する」と書かれているテーマを、あなたひとりの責任にしないでください。
相談先は、出産した産院・1か月健診・お住まいの市区町村の母子保健の窓口(産後ケア事業)です。夜間や休日でつらいときは、厚生労働省「まもろうよ こころ」に24時間対応の窓口がまとめられています。
「母乳のことで」と切り出しても大丈夫です。そこから話が始まります。
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参考 母子保健・不妊症・不育症など(産後ケア事業)こども家庭庁
授乳のたびにお腹が痛くなるのはなぜ?
産後まもない時期に、授乳を始めると下腹部がぎゅーっと痛くなることがあります。「母乳が出ていないのに痛いのはなぜ」と不安になる方もいます。
これは後陣痛(こうじんつう)です。MSDマニュアル家庭版は「子宮の収縮力は母乳を与えると強まります。授乳がきっかけとなって、オキシトシンというホルモンの分泌が刺激されます」と説明しています。
つまり、授乳という行為そのものが、子宮を縮ませるスイッチになっているということです。母乳がまだ十分に出ていない時期でも、吸われる刺激があれば起こります。しくみどおりの反応であって、異常ではありません。
後陣痛とは?いつからいつまで続く・どんな痛み・和らげ方を元看護師が解説
まとめ
- 第1子では、十分な量が出るまで普通は72〜96時間(3〜4日)かかる。産後すぐ出ないのは経過どおり
- 最初に出る初乳は量が少なくて当たり前。カロリー・タンパク質・抗体が豊富で免疫の働きがある
- 生後1か月の栄養方法は母乳51.3%・混合45.2%・人工3.6%。ミルクを使っている人は約半数
- 授乳で困ったことがある人は77.8%。最多は「母乳が足りているかわからない」40.7%
- 足りているかはおむつの回数(生後5日までに尿6回・便4回以上)と体重のカーブで見る。乳房の張りや搾乳量は判断材料ではない
- 分泌の条件は授乳の回数と時間。24時間で8〜12回、最初の数日は間隔6時間以内。催乳反射には少なくとも2分かかる
- 「出ない人の特徴」を根拠つきで一覧にした公的資料は見当たらない。ガイドは「総合的に判断する」としている
- 妊娠中に母乳で育てたいと思った人は9割超。それでも「ぜひ母乳で」と思った人の母乳栄養は67.6%。願いの強さで決まるものではない
- 国のガイドは「乳汁の種類にかかわらず」「母乳だけにこだわらず」と明記。ミルクは母乳育児を続けるための道具と位置づけられている
- 乳房が赤く腫れる・発熱・悪寒があるときは乳腺炎を考えて受診を。不安が強いときは産後うつ予防の観点から早めに相談を
母乳の話は、なぜかいつも「できたか、できなかったか」の採点になってしまいます。産院でも、実家でも、SNSでも。
でも、国が定めたガイドが目的として置いているのは「健やかな母子・親子関係」と「育児に自信をもたせること」でした。母乳の量は、そこに至るための手段のひとつでしかありません。
今、暗い部屋で赤ちゃんを抱えながらこの記事を読んでいるとしたら、伝えたいのはひとつだけです。あなたはもう、じゅうぶんやっています。そのうえで、しんどいときは誰かに言ってください。それも、産後にあなたがしていい選択のひとつです。
よくある質問(母乳が出ない|FAQ)
Q母乳はいつから出るようになりますか?
A.MSDマニュアル家庭版は「第1子の場合、十分な量の母乳が出るようになるまで普通は72〜96時間かかります」としています。まる3〜4日です。プロフェッショナル版も「初産婦では乳汁の産生が完全に確立されるまでに72〜96時間を要し、経産婦ではより早く確立される」と同じ時間を示しています。産後1〜2日目にほとんど出ないのは、資料に書かれているとおりの経過です。
Q母乳が出ない人はどのくらいの割合ですか?
A.厚生労働省「平成27年度 乳幼児栄養調査」で、授乳について困ったこととして「母乳が出ない」を挙げた人は11.2%でした。ただしこれは医学的な診断ではなく、困りごととして挙げた人の割合です。同じ調査で生後1か月の栄養方法は母乳栄養51.3%・混合栄養45.2%・人工栄養3.6%。ミルクを使っている人は約半数で、少数派ではありません。
Q母乳が足りているかは、どうやって見分けますか?
A.MSDマニュアルは「授乳回数、尿と便によるおむつ替えの回数、体重の増加から判断します」としています。不足を疑う目安は「生後5日までに、尿によるおむつの濡れが1日6回未満、もしくは排便が1日4回未満」。体重は数字そのものより成長曲線のカーブに沿っているかで見ます。乳房の張りや搾乳できる量は、資料が挙げる判断材料には入っていません。
Q乳房が張らない・搾っても出ないのですが、母乳は減っていますか?
A.張りや搾乳量は分泌量の目安になりません。張らなくなるのは、需要と供給が釣り合ってきた結果ということもあります。また搾乳器や手で搾って出る量は、赤ちゃんが吸って飲み取る量とイコールではありません。赤ちゃんの吸い方は器械や手よりずっと上手です。見るべきはおむつの回数と体重のカーブのほうです。
Q母乳を増やすには、どうすればいいですか?
A.資料が挙げている条件は授乳の回数と時間です。MSDマニュアル家庭版は「母乳の分泌量は吸わせている時間が十分かどうかにかかっている」とし、頻度は24時間で8〜12回、最初の数日間は授乳間隔を6時間以内としています。また催乳反射が起こるまで少なくとも2分間かかるため、吸い始めてすぐ出なくても判断を急がないでください。直接授乳が難しいときは1日6〜8回に分けて合計90分ほどの搾乳が目安として示されています。
Q母乳が出ない人には、何か特徴がありますか?
A.「こういう人は母乳が出ない」という特徴を根拠つきで一覧にしている公的機関・学会の資料は見当たりませんでした。厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」は、母乳が不足しているかどうかは「子どもの状態、個性や体質、母親の状態や家庭環境等を考慮に入れたうえで、総合的に判断する必要がある」としています。ひとつの特徴で決まるものではないという立場です。乳房の大きさや形と分泌量の関係を示した公的資料も確認できませんでした。
Qミルクを足すと、母乳育児をあきらめたことになりますか?
A.なりません。「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」は「母乳を少しでも与えているなら、母乳育児を続ける為に育児用ミルクを有効に利用するという考え方に基づき支援を行い」と書いています。ミルクは母乳育児を続けるための道具という位置づけです。混合栄養になる要因としても「母乳分泌不足、母親の健康上の要因、疲労等」が挙げられており、疲労も正当な理由として明記されています。
Q母乳が出ないとき、いつまで頑張ればいいですか?
A.「ここまで頑張るべき」という期限を示した公的な資料はありません。支援ガイドは「授乳のリズムが確立するのは、生後6〜8週以降と言われているが、子どもによって個人差があるので…あせらず」としており、これは期限ではなく見通しの数字です。同ガイドは授乳支援の基本を「母乳や育児用ミルクといった乳汁の種類にかかわらず…育児に自信をもたせることを基本とする」と定めています。眠れているか、食べられているか、赤ちゃんといる時間がつらくなっていないかを判断の基準にしてください。
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