「そろそろと言われたけれど、怖くて踏み出せない」「試したら痛くて、途中でやめてしまった」「まったくその気になれない自分はおかしいのだろうか」——産後の性行為について、こうした不安を抱えたまま、誰にも聞けずにいる方はとても多いです。
このテーマは、友達にも家族にも相談しにくく、健診で聞くのもためらわれます。結果として掲示板の書き込みだけを頼りに、正解が分からないまま過ごしてしまうことになりがちです。
先にお伝えします。産後に痛みが出るのも、その気になれないのも、体に理由があります。気持ちの問題でも、愛情の問題でもありません。とくに授乳中の痛みには、はっきりした医学的な説明がつきます。
この記事では、再開の目安となる時期、痛い・入らない原因、いつまで続くのか、受診したほうがいいサイン、性欲の変化、そして避妊までを整理します。元看護師で2児の母である私が、MSDマニュアル家庭版と日本家族計画協会の情報をもとに、できるだけ率直にお伝えします。
ちなみ(元看護師)
目次
- 産後の性行為はいつから?——目安は4〜6週間、ただし日数だけでは決まりません
- 産後1か月以内にしてしまった場合
- 産後の体は、どこまで戻っているのか
- なぜ痛いのか——原因は1つではありません
- 痛みへの対処——順番があります
- 痛みはいつまで続く?——受診を考える目安
- 性欲がなくなった——これは自然な反応です
- 避妊——生理が来ていなくても妊娠します
- 再開のきっかけがつかめないとき
- 産後のセックスレスをどう考えるか
- パートナーに知っておいてほしいこと
- ちなみから|聞きにくいことほど、答えは単純だったりします
- まとめ|痛いのも、その気になれないのも、体に理由があります
- よくある質問(産後の性行為|FAQ)
- 続けて読みたい関連記事
産後の性行為はいつから?——目安は4〜6週間、ただし日数だけでは決まりません
公的な資料が示している目安
まず、2つの資料が何と言っているかを並べます。微妙に違うので、両方お伝えするほうが誠実だと思います。
- MSDマニュアル家庭版…性行為は希望すればすぐ再開してもかまわないが、一般的には分娩後少なくとも6週間、または裂傷もしくは会陰切開が完全に回復するまで待つことが勧められる。帝王切開後は傷が癒えるまで待つべき
- 日本家族計画協会…まず産後の定期健診を受け、経過が順調であることを確認する。会陰部が痛まず、精神的にも性交を受け入れられるようになったら性生活に戻れる。おおむね出産から4〜6週間後なら可能だが、心配なら医師に相談を
数字が「4〜6週間」と「少なくとも6週間」で少しずれています。どちらが正しいかというより、日数は目安にすぎないと受け取るのが正解です。
本当の条件は、日数ではなく3つ
2つの資料に共通しているのは、時期そのものではなく条件のほうです。
- 傷が治っている——会陰の裂傷・切開、帝王切開の傷が完全に回復している
- 健診で経過が順調と確認できている——1か月健診(産婦健康診査)で状態を見てもらう
- 自分の気持ちが受け入れられる状態になっている——日本家族計画協会は「精神的にも性交を受け入れられるようになったら」と明記しています
3つ目を条件として公的な資料が挙げている、というのは知っておいてほしい点です。気持ちが追いつかないことは、待っていい理由になります。
1か月健診で「もう大丈夫」と言われる意味
1か月健診では、子宮の戻り具合、悪露の状態、会陰や帝王切開の傷を確認します。ここで「順調です」と言われるのは、医学的に再開できる状態になったという意味であって、すぐに再開しなさいという意味ではありません。
この2つを混同すると、まだ準備ができていないのに「許可が出たから」と急いでしまうことになります。
帝王切開だった場合
MSDマニュアル家庭版は「帝王切開後の性行為は、傷が癒えるまで待つべき」としています。日本家族計画協会も「帝王切開で出産された方はもう少し時間を要する。人によって大きく経過が異なるので医師との相談が必要」と記しています。
おなかの傷は、表面が閉じていても内側の回復には時間がかかります。目安の日数で判断せず、健診で確認してください。
帝王切開とは?流れ・痛みはいつまで・入院期間や費用を元看護師が解説
「平均はいつ?」という問いについて
よく検索されますが、平均を知っても自分の答えにはなりません。産後半年で再開する人も、1年以上あく人も、どちらもいます。数字と比べて焦る材料になるくらいなら、見ないほうがいいくらいです。
大事なのは平均との比較ではなく、上の3条件がそろっているかどうかです。

産後1か月以内にしてしまった場合
検索されることの多い状況なので、正面から書きます。過ぎたことを責めても意味がないので、これから確認することだけをお伝えします。
気をつけたいのは、感染と出血
産後まもない時期の子宮の内側は、胎盤がはがれた大きな傷のような状態です。悪露が続いている時期は、細菌が入りやすい状態でもあります。会陰や帝王切開の傷が完全に治っていなければ、そこから出血したり痛みが出ることもあります。
日本家族計画協会も、「セックスで傷が完全に開いてしまうことはほとんどないが、完全に治癒していなかったり傷跡が化膿している場合などは、縫合部分から血がにじんだり、傷痕に痛みを感じることがある」と記しています。
こんなときは産院に連絡してください
- 出血が増えた/いったん減っていた悪露がまた赤くなった
- 悪露にいやなにおいがある
- 38度以上の発熱がある
- 下腹部の痛みが続く・強くなる
- 傷から出血している・膿のようなものが出ている
「性行為のあとから」と伝えにくければ、症状だけ伝えても構いません。医療者にとっては珍しい相談ではありません。
産褥熱とは?産後の発熱は何度から受診?37度台と38度以上の見分け方を元看護師が解説
妊娠の可能性もゼロではありません
MSDマニュアル家庭版は、早ければ分娩後2週間で妊娠することもあると記しています。月経が来ていなくても排卵は起こり得ます。心当たりがあり、次の妊娠を望んでいない場合は、この点も含めて相談してください。
産後の体は、どこまで戻っているのか
再開の判断をするには、いま体がどの段階にあるかを知っておくのが近道です。
子宮が戻るまで
胎盤がはがれた子宮の内側は、大きな傷のような状態から回復していきます。悪露が続いているのは、その回復が進行中というサインです。悪露が続いている間は、まだ子宮の内側が治りきっていないと考えてください。
悪露(おろ)とは?いつまで続く・色や量の変化・受診の目安を元看護師が解説
会陰の傷が治るまで
会陰切開や裂傷の縫合部は、表面が閉じたあとも内部の組織が落ち着くまでに時間がかかります。座ったときの痛み、排便時の違和感が残っているなら、まだ途中です。
骨盤底が戻るまで
妊娠中の重みと分娩の負荷を受けた骨盤底は、回復に数か月かかります。MSDマニュアル家庭版によれば、経腟分娩の後は肛門括約筋に損傷がなければ通常は分娩後数日以内にケーゲル体操を始めることができます。
体重・体型より、内側の回復が先
見た目が戻っていなくても内側は回復していることがありますし、その逆もあります。体型を判断材料にしないでください。確認するのは傷と悪露と、健診での評価です。
産褥期とは?いつまで続く?体の変化・過ごし方・働ける時期まで元看護師がまるごと解説
なぜ痛いのか——原因は1つではありません
ここがこの記事の中心です。産後の性交痛には、はっきりした理由がいくつもあります。「気持ちの問題」で片づけないでください。
授乳中のホルモン低下による腟の乾燥——最も多い原因
これがいちばん大きく、そしていちばん知られていません。
MSDマニュアル家庭版は、「授乳するとエストロゲン濃度が低下し、腟の乾燥につながることがあるため、授乳中の女性は腟の性交を不快に感じることがあります」と明記しています。
つまり授乳している間は、体の仕組みとして乾燥しやすくなっているということです。気分が乗らないから濡れない、のではなく、ホルモンの状態がそうさせています。順番が逆なのです。
日本家族計画協会も、産後に濡れにくくなる背景として、出産によるホルモンバランスの変化、育児によるストレス、出産時の痛みの記憶や会陰部の傷への不安を挙げています。
参考 産褥期のケアの大まかな説明(性行為と家族計画)MSDマニュアル家庭版
会陰の傷・帝王切開の傷
会陰切開や裂傷の縫合部は、表面が治ったあとも瘢痕(はんこん)として硬さが残ることがあります。引きつれるような痛み、特定の場所だけがピリッとする痛みは、ここが原因のことがあります。
傷の治り方には個人差が大きく、数か月かけて柔らかくなっていきます。
会陰切開とは?痛みはいつまで・傷跡ケアから保険適用まで元看護師が解説
骨盤底のダメージ
妊娠中の重みと出産による負荷で、骨盤底の筋肉は伸びたり傷んだりします。ここが回復しきっていないと、力の入れ方が分からない・うまく力を抜けないという状態になり、痛みにつながることがあります。
緊張と、痛みの記憶
一度痛い思いをすると、次から体が身構えます。身構えると筋肉が緊張し、緊張するとさらに痛くなる——この輪から抜けられなくなることがあります。
日本家族計画協会も、些細な違和感を痛みと感じ、その痛みから恐怖心を抱いてしまうことがあると記しています。これは意志の弱さではなく、体の防御反応です。
「入らない」と感じるとき
乾燥と緊張が重なると、物理的に入らないと感じることがあります。
出産で腟が広がったままになるのでは、と心配する方もいますが、日本家族計画協会は「出産の状況などで一時的に腟が伸びてしまうことがあるが、時間とともに回復する」としています。「広がったから入らない」ではなく、乾燥と緊張で入らないと考えるほうが実態に近いです。
奥のほうが痛いとき
入口ではなく奥に痛みがある場合は、子宮の位置や子宮の戻り具合、骨盤内の状態が関わっていることがあります。入口の痛みとは対処が変わるので、奥の痛みが続くときは婦人科で相談してください。
痛みへの対処——順番があります
やみくもに試すより、順番に沿うほうが早いです。
まず、時期を早めない
傷が治りきっていない時期に無理をすると、痛みの記憶が積み重なって、あとの再開がかえって難しくなります。急ぐことのメリットは、実はほとんどありません。
うるおいを補う
日本家族計画協会は、産後のうるおい不足による痛みへの対処として潤滑ゼリーの使用を挙げています。腟粘膜への安全性が確認されたものが、薬局・ドラッグストアの避妊具コーナーなどで購入でき、処方箋は必要ありません。
ボディ用のローションとは成分も用途も違うとされているので、粘膜に使える製品かどうかを必ず確認してください。迷ったら薬剤師に「産後で乾燥していて」と伝えれば選んでもらえます。
最後までしようとしない
日本家族計画協会は、傷が気になって踏み切れないときの対処として「無理に最後までしようとせず、体の触れ合いにとどめ、行為を重ねて徐々に恐怖感を取り除きながら先に進める」ことを挙げています。
段階を分けるという発想は、痛みの記憶を上書きするうえで理にかなっています。途中でやめることは失敗ではありません。
骨盤底のエクササイズ
MSDマニュアル家庭版によれば、経腟分娩の後は、分娩中に肛門括約筋に損傷がなければ通常は分娩後数日以内に骨盤底筋を強化する運動(ケーゲル体操)を始めることができます。帝王切開の場合は大きな手術のため、十分に回復して傷が癒えるまで待つ必要があり、通常この経過には約6週間かかります。
日本家族計画協会も、産褥体操や骨盤底筋のエクササイズを挙げています。
やらないほうがいいこと
- 痛いのを我慢して続ける——MSDマニュアル家庭版は「性交時に痛みがある場合は、性行為をやめて医師の診察を受けます」と明記しています
- 相手に合わせて時期を決める——条件がそろっていないと痛みが再生産されます
- 「慣れれば治る」と考える——原因が乾燥や瘢痕なら、慣れでは解決しません
- アルコールで緊張をほぐす——痛みを感じにくくなるだけで、傷めるリスクが上がります

痛みはいつまで続く?——受診を考える目安
多くは時間とともに軽くなります
原因の中心が授乳によるホルモンの状態であれば、授乳の頻度が減るにつれて改善していくのが一般的です。傷の瘢痕も、数か月かけて柔らかくなっていきます。
ただし「いつまで」に確立された数字はありません。授乳の状況、傷の程度、骨盤底の回復具合で大きく変わります。
婦人科を受診したほうがいいサイン
- うるおいを補っても痛みが変わらない
- 入口ではなく奥が痛い
- 出血をともなう
- 行為と関係なく、日常でも痛みや違和感がある
- 傷のあたりに硬いしこりや引きつれがある
- 痛みで再開できない状態が続き、それがつらい
- 尿もれや、何かが下がってくる感じをともなう
MSDマニュアル家庭版は、性交時に痛みがある場合は性行為をやめて医師の診察を受けるよう記しています。「このくらいで受診していいのか」と迷う必要はありません。
何科に行けばいい?
産後1年以内なら、出産した産婦人科がいちばん話が早いです。会陰切開の有無や分娩の経過を知っているためです。
1年を過ぎている場合や産院が遠い場合は、婦人科で構いません。骨盤底の症状(尿もれ・下がってくる感じ)が強い場合は、女性泌尿器科やウロギネ外来を掲げている施設もあります。
受診のとき、何と言えばいいか
言葉に詰まる方が多いので、そのまま使える言い方を書いておきます。
- 「産後から性交痛があります」
- 「入口が痛くて入らない感じがします」
- 「奥のほうが痛みます」
- 「授乳中で、乾燥している感じがあります」
あわせて出産日・分娩方法・会陰切開の有無・授乳の状況を伝えると、診察が早く進みます。
ちなみ(元看護師)
性欲がなくなった——これは自然な反応です
「まったくその気にならない」「夫をそういう対象として見られない」。この状態に罪悪感を持つ方がとても多いのですが、背景があります。
ホルモンの影響
日本家族計画協会は、妊娠中や産後しばらくはホルモンバランスの影響で性行為に消極的になることがあり、これはごく自然なことだとしています。そして、性欲を減退させる作用を持つホルモンの分泌は、母乳の分泌の終了とともに産前のように戻ると説明しています。
つまり授乳している期間は、そもそも性欲が抑えられる方向に体が働いているということです。愛情が減ったわけではありません。
「夫をそういう対象として見られない」
これも日本家族計画協会が正面から扱っています。ホルモンバランスの変化により一時的にそう感じることがあり、また子どもを守るために排他本能が高まるので、男性に対して不潔感を感じることもあるとされています。
この感覚に名前がつくだけで、かなり楽になる方がいます。あなたが冷たくなったのではありません。
睡眠不足も効いています
夜中に何度も起きる生活が続いていれば、性欲どころではないのが当然です。ここは意志でどうにかなる領域ではありません。
いつ戻るのか
日本家族計画協会の説明に沿えば、授乳が終わるころに自然に回復してくるのが一つの見通しです。ただし個人差があり、育児の負担や睡眠の状況にも左右されます。
「戻らなかったらどうしよう」と不安になる必要はありません。戻る時期がずれることはあっても、それ自体が異常ということではありません。
避妊——生理が来ていなくても妊娠します
ここは、この記事でいちばん実害に直結する部分なので、はっきり書きます。
排卵は月経より先に起こります
MSDマニュアル家庭版によれば、母乳を与えていない場合は通常、出産から4〜6週間くらいで排卵が起こり、排卵の約2週間後に月経が来ます。つまり最初の排卵は、最初の生理より前に来ます。そして早ければ分娩後2週間で妊娠することもあるとされています。
母乳のみで授乳している場合は再開が遅れる傾向がありますが、母乳を与えていても、与えていない場合と同じくらい早い時期に排卵が起こることがあります。「完全母乳だから大丈夫」は成り立ちません。
MSDマニュアル家庭版は、性行為を再開する前に避妊を開始する必要があると明記しています。
産後に適した避妊の方法
日本家族計画協会は、産後の避妊について次のように説明しています。
- 母体が回復するまではコンドームが適している
- ピル…授乳していなければ産後3週から、授乳中でも6週以降から服用を開始できる。ただし母乳の分泌量に影響を及ぼすため、母乳のみで授乳を続けるのであれば6か月以降からがおすすめ
- 出産後も性感染症の予防は怠らないこと
実際にどの方法を選ぶかは、授乳の状況や次の妊娠の希望によって変わります。健診のときに相談してください。
次の妊娠までにあけたい期間
MSDマニュアル家庭版は、少なくとも6か月間、できれば18か月間は妊娠を避けたほうがよいと多くの医師が勧めていると記しています。体の回復と、次の妊娠の安全性の両方が理由です。
産後の排卵・生理の再開と避妊については、別の記事で詳しくまとめています。
産後の生理はいつから?授乳との関係・再開前の妊娠・量や周期の乱れを元看護師が解説
再開のきっかけがつかめないとき
体は問題ないのに、どう戻ればいいか分からない。この段階で止まっている方も多いです。
段階を分けて考える
日本家族計画協会は、まずパートナーと二人で過ごす時間をつくること、何気ないボディータッチなどのスキンシップから始めることを挙げています。
いきなり元通りに戻そうとすると、お互いに構えてしまいます。手をつなぐ、隣に座る、背中に触れる——ここから数えていいと考えると、ハードルが下がります。
断り方に困るとき
日本家族計画協会は、「セックスのことだけを特別視せず、日常の他の行為と同様に考え、そのときの気持ちを素直に伝えること」を挙げています。
「今日は疲れていて無理」「まだ痛みが怖い」——理由を添えて伝えるだけで、拒絶ではないことが伝わります。黙って避けるほうが、相手には拒絶として伝わってしまいます。
赤ちゃんが同じ部屋にいる問題
現実的にいちばん多い障害です。日本家族計画協会は、子どもは2歳くらいから断片的な記憶として残る可能性があるといわれているが、行為自体を理解することはできないとしたうえで、「赤ちゃんへの影響を考慮するよりも、赤ちゃんにとって安全な状態を保ちつつ、かつ自分が集中できる環境・状況を整えることが大切」と説明しています。
「このままでもいい」という選択
日本家族計画協会は、この点についても「個人やカップルによってさまざまな考え方・かたちがあり、絶対に正しいということはない」としています。
性行為の有無だけで夫婦の状態が決まるわけではありません。二人が納得しているなら、それも一つの形です。問題になるのは、どちらかが我慢して黙っている状態のほうです。
産後のセックスレスをどう考えるか
再開しないまま時間が過ぎ、「うちはもうセックスレスなのでは」と感じている方へ。
産後は、レスになる条件がそろっています
ここまで挙げてきた要因を並べると、産後にそうなるのがむしろ自然だと分かります。
- 授乳によるホルモンの変化で、性欲が抑えられる方向に働いている
- 同じホルモンの状態で、乾燥して痛みが出やすい
- 傷の回復に時間がかかっている
- 睡眠が分断され、体力の余裕がない
- 赤ちゃんが同じ部屋にいて、場所と時間の確保が難しい
- 育児の分担をめぐって、そもそも関係がぎくしゃくしている
1つでもきついのに、産後はこれが同時に来ます。
期間そのものより、二人が納得しているか
一般に、特別な事情なく一定期間ない状態をセックスレスと呼ぶ考え方がありますが、産後は「特別な事情」が明確にある時期です。期間だけを当てはめて焦る必要はありません。
日本家族計画協会も、「個人やカップルによってさまざまな考え方・かたちがあり、絶対に正しいということはない」としています。判断の軸は期間ではなく、どちらかが我慢して黙っていないかのほうです。
パートナー側から見えている景色
断られ続けた側は、理由が説明されないと「自分が魅力を失った」「嫌われた」と受け取ります。そしてそう受け取ると、聞くこと自体が怖くなって黙るようになります。
つまり双方が黙り、双方が誤解したまま時間が過ぎるという構造になりやすいのです。ここで効くのは説得ではなく、理由の共有です。「痛いから」「授乳中でホルモンの影響があるらしい」——それだけでも受け取り方は変わります。
話し合うべきか、そっとしておくべきか
目安はシンプルです。片方でも「このままではつらい」と感じているなら話す。二人とも困っていないなら、急いで戻す必要はありません。
関係そのものがぎくしゃくしている場合は、性の話から入るとこじれます。先に睡眠と分担を整えるほうが順番として正しいことが多いです。

パートナーに知っておいてほしいこと
この記事を夫・パートナーの立場で読んでいる方、あるいは読んでもらいたい方へ。
痛みは、気持ちの問題ではありません
ここまで書いてきたとおり、産後の性交痛には授乳によるエストロゲンの低下、会陰や帝王切開の傷、骨盤底のダメージという物理的な原因があります。MSDマニュアル家庭版が、授乳中は腟の性交を不快に感じることがあると明記している事実は、知っておく価値があります。
拒否は、拒絶ではありません
日本家族計画協会は、産後に子どもを守るための排他本能が高まることにも触れています。相手の反応が変わったのは、あなたへの評価が下がったからではありません。
「いつまで待てばいい?」への答え
正直に言えば、明確な期限はありません。ただ、待っている間にできることはあります。
睡眠を確保する、把握する係を分担する、二人で話す時間をつくる。結果的にこれがいちばんの近道で、体力と気持ちに余裕が生まれない限り、時期だけが来ても状況は変わりません。
産後クライシスとは?症状のセルフチェックといつまで続くか・夫婦で乗り越える方法を元看護師が解説
ちなみから|聞きにくいことほど、答えは単純だったりします
看護師時代、このテーマの相談はいつも最後に出てきました。ひととおり話し終えて、帰り際に「あの、もうひとつだけいいですか」と。
そして内容は、驚くほど共通していました。「痛いんですけど、これって普通ですか」「まったくその気になれないんですけど、おかしいですか」。この2つがほとんどです。
つまりみんなが同じことで悩んでいるのに、誰も話さないから、自分だけだと思っているということでした。実際には、授乳中のホルモンの状態という共通の背景があって、答えは驚くほど単純だったりします。
私自身は2人を育てるなかで、産後は自分の体のことを後回しにしがちだと痛感しました。赤ちゃんのことは1日に何十回も観察するのに、自分の不調は「そのうち治る」で流してしまう。でも、痛みは我慢して慣れるものではありません。
ちなみ(元看護師)
まとめ|痛いのも、その気になれないのも、体に理由があります
- 再開の目安はおおむね産後4〜6週間(日本家族計画協会)/少なくとも6週間、または裂傷・会陰切開が完全に回復するまで(MSDマニュアル家庭版)。ただし日数より①傷が治っている ②健診で順調 ③気持ちが受け入れられるの3条件
- 気持ちの準備は、公的資料が挙げている正式な条件。待っていい理由になる
- 痛みの最大の原因は授乳によるエストロゲンの低下と腟の乾燥。MSDマニュアル家庭版が明記しており、気分の問題ではない
- ほかに会陰・帝王切開の傷の瘢痕、骨盤底のダメージ、痛みの記憶による緊張。「入らない」は広がったからではなく乾燥と緊張のことが多い
- 対処は時期を早めない/うるおいを補う/最後までしようとしない/骨盤底のエクササイズ。我慢して続けるのは禁物(MSDは痛みがあれば中止して受診と明記)
- 性欲の低下はごく自然。性欲を抑えるホルモンは母乳の分泌終了とともに戻るとされる
- 生理が来ていなくても妊娠します。早ければ分娩後2週間。完全母乳でも例外ではなく、再開前に避妊を始める必要がある
このテーマは、正解が一つに決まるものではありません。ただ、痛みには原因があり、対処があり、受診先があります。そこだけは、はっきりしています。
今日できるいちばん確実な行動は、次の健診や受診の機会に「産後から性交痛があります」と一言伝えることです。言いにくければ、メモに書いて渡すだけでも十分に伝わります。
よくある質問(産後の性行為|FAQ)
Q産後の性行為はいつからできますか?
A.日本家族計画協会はおおむね出産から4〜6週間後としており、MSDマニュアル家庭版は少なくとも分娩後6週間、または裂傷や会陰切開が完全に回復するまで待つことを勧めています。ただし重要なのは日数より条件で、傷が治っていること、健診で経過が順調と確認できていること、そして精神的に受け入れられる状態になっていることの3つがそろってからです。帝王切開の場合は経過に個人差が大きいため、医師に確認してください。
Q産後の性行為が痛いのはなぜですか?
A.最も多い原因は授乳によるホルモンの変化です。MSDマニュアル家庭版は「授乳するとエストロゲン濃度が低下し、腟の乾燥につながることがあるため、授乳中の女性は腟の性交を不快に感じることがあります」と明記しています。ほかに会陰切開や帝王切開の傷の瘢痕、骨盤底のダメージ、一度痛かった記憶による緊張も原因になります。いずれも気持ちの問題ではありません。
Q痛くて入らない感じがします。出産で広がったせいでしょうか?
A.逆のことが多いです。日本家族計画協会は「出産の状況などで一時的に腟が伸びてしまうことがあるが、時間とともに回復する」としています。入らないと感じる原因は、広がったことではなく乾燥と緊張であることがほとんどです。うるおいを補い、無理に最後までしようとせず段階を分けるのが対処になります。それでも変わらない場合は婦人科で相談してください。
Q産後の性交痛はいつまで続きますか?
A.確立された数字はありません。原因の中心が授乳によるホルモンの状態であれば、授乳の頻度が減るにつれて改善していくのが一般的です。傷の瘢痕も数か月かけて柔らかくなっていきます。ただし、うるおいを補っても変わらない、奥が痛い、出血をともなう、日常でも痛みがあるという場合は期間にかかわらず受診してください。MSDマニュアル家庭版は痛みがある場合は性行為をやめて医師の診察を受けるよう記しています。
Q産後まったく性欲がありません。おかしいですか?
A.おかしくありません。日本家族計画協会は、妊娠中や産後しばらくはホルモンバランスの影響で消極的になることがあり、これはごく自然なことだとしています。さらに、性欲を減退させる作用を持つホルモンの分泌は母乳の分泌の終了とともに産前のように戻ると説明しています。加えて睡眠不足も大きく影響します。愛情が減ったわけではありません。
Q生理が来ていなければ避妊しなくても大丈夫ですか?
A.大丈夫ではありません。排卵は最初の月経より先に起こるため、生理が来ていなくても妊娠します。MSDマニュアル家庭版によれば早ければ分娩後2週間で妊娠することもあり、母乳のみで授乳していても、与えていない場合と同じくらい早い時期に排卵が起こることがあります。同マニュアルは性行為を再開する前に避妊を開始する必要があると明記しています。
Q産後1か月以内にしてしまいました。大丈夫でしょうか?
A.出血が増えた、悪露がまた赤くなった、悪露にいやなにおいがある、38度以上の発熱がある、下腹部の痛みが続く、傷から出血や膿が出ているといった症状があれば産院に連絡してください。症状がなければ過度に心配する必要はありませんが、月経が来ていなくても妊娠の可能性はあるため、次の妊娠を望んでいない場合はその点も含めて相談しておくと安心です。
続けて読みたい関連記事
産後の生理はいつから?授乳との関係・再開前の妊娠・量や周期の乱れを元看護師が解説

