「立ち会うと決めたけれど、自分が何をすればいいのか分からない」「正直、見るのが怖い」「途中で倒れたらどうしよう」——立ち会い出産について調べている方の多くが、期待よりも不安を抱えています。
妻の側も「立ち会ってほしいけれど、本当は嫌がっているのでは」と気を遣っています。そしてお互いに本音を言えないまま当日を迎えるのが、いちばん失敗しやすいパターンです。
先にお伝えします。「見たくない」「怖い」と思うことは、まったく普通です。そして、その怖さの大半は「何が起きるか分からない」ことから来ています。流れが分かると、怖さはかなり減ります。
この記事では、当日の流れ、夫が具体的にすること、よく検索される「臭い」「トラウマ」「離婚率」への答え、立ち会わない選択、そして産前に確認しておくことまでを整理します。元看護師で2児の母である私が、MSDマニュアル家庭版と公的機関の情報をもとにお伝えします。
ちなみ(元看護師)
目次
- 立ち会い出産とは——どこからどこまでが「立ち会い」?
- 当日の流れ——夫は何をして、どこにいるのか
- 夫は具体的に何をすればいい?
- 「見たくない」「怖い」——旦那の本音を正面から
- 「臭い」と言われるけれど、実際のところは
- 立ち会うと後悔する?——トラウマ・離婚率の話
- 立ち会わない、という選択もあります
- 立ち会いたくても、できないことがあります
- 実母や上の子が立ち会う場合
- 写真・動画はどこまで撮っていい?
- 立ち会ってよかったこと・期待しすぎないほうがいいこと
- 産前に確認しておくこと・決めておくこと
- ちなみから|いてくれるだけで違う、は本当です
- まとめ|決めるのは当日ではなく、今日です
- よくある質問(立ち会い出産|FAQ)
- 続けて読みたい関連記事
立ち会い出産とは——どこからどこまでが「立ち会い」?
まず、言葉の範囲を確認します。ここを勘違いしていると、当日の想像が大きくずれます。
産院によって範囲がまったく違います
「立ち会い出産」と一口に言っても、実際に許される範囲は産院ごとに違います。
- 陣痛室までか、分娩室まで入れるか
- 分娩室のどこに立つか(頭側のみか、自由か)
- 誰が立ち会えるか(夫のみ/実母も可/上の子も可)
- 人数の制限
- 写真・動画の撮影可否
- 臍帯(へその緒)を切らせてもらえるか
- 帝王切開のときはどうなるか
- 事前の両親学級の受講が条件になっているか
この情報は、通っている産院に聞かないと分かりません。ネットで調べた内容が自分の産院に当てはまるとは限らないので、この記事を読んだあと、必ず産院の案内を確認してください。
陣痛室と分娩室が分かれている場合・同じ場合
MSDマニュアル家庭版によれば、病院での出産では、陣痛から分娩が同じ部屋で行われる場合もあれば、陣痛室から分娩室に移る場合もあります。
同じ部屋で最後まで過ごす形式(LDRと呼ばれます)なら、移動がないぶん夫も落ち着いていられます。分かれている場合は、移動のタイミングでいったん外に出されることがあります。
医学の資料は「付き添いが勧められる」としています
立ち会いの是非は価値観の問題と思われがちですが、医学の資料には記載があります。MSDマニュアル家庭版は、分娩について「通常、妊婦のパートナーなどが付き添うことが勧められます」と記しています。
ただしこれは「付き添う人がいるとよい」であって、「夫が分娩室で最後まで見なければならない」という意味ではありません。ここは分けて考えてください。
どれくらいの人が立ち会っているの?
「割合」を知りたい方が多いのですが、全国を対象にした公的な統計は見当たりません。産院の方針、地域、年によって差が大きいためです。
数字を断言している情報を見かけたら、その根拠を確かめてください。大事なのは平均ではなく、あなたたち二人がどうしたいかです。

当日の流れ——夫は何をして、どこにいるのか
ここがいちばん知りたい部分だと思います。産院によって細部は変わりますが、大きな流れは共通しています。
入院してから、陣痛が進むまで
入院してすぐ生まれるわけではありません。初産では陣痛が始まってから生まれるまでに半日以上かかることも珍しくありません。
この時間、夫はほとんど分娩室にはいません。陣痛室や待合で過ごし、妻のそばにいられる産院なら付き添います。ここがいちばん長い時間であり、いちばん役に立てる時間でもあります。
陣痛の間——実はここが本番
多くの人が「生まれる瞬間」を立ち会いだと思っていますが、妻がいちばん助けを必要とするのは陣痛の時間です。
痛みの波が数分おきに来て、そのたびに息を整える。この繰り返しが何時間も続きます。ここで腰を押してもらえるかどうかで、体感はまったく違います。
分娩室に呼ばれてから
子宮口が全開大になると、いよいよ分娩の段階です。MSDマニュアル家庭版によれば、胎児の娩出が近づくと、妊婦はあお向けと起き上がった状態の中間の、上体を半分起こした姿勢を取ります。背中に枕や背もたれをあてて支えます。
夫は多くの場合、妻の頭側に立ちます。手を握る、背中を支える、汗を拭く、声をかける——ここが定位置です。
生まれる瞬間に何が起きているか
MSDマニュアル家庭版の記載に沿って、実際の流れを書いておきます。知っておくと、当日うろたえません。
- 子宮口が完全に開いたら、陣痛に合わせていきむよう指示される
- 助産師が会陰部をマッサージし、温罨法(温めること)を行う。組織がゆっくり伸びて裂傷の予防に役立つ
- 赤ちゃんの頭が3〜4cm以上見えるようになったら、医師か助産師が頭に手を当てて娩出をコントロールする
- 必要な場合のみ会陰切開が行われる(局所麻酔をしてから)
- 頭が出ると、体が回転して肩が片方ずつ出て、あとはするりと出てくる
- 赤ちゃんの鼻・口・のどから粘液を吸引し、臍帯をクランプで留めて切断する。この処置に痛みは伴わない
「へその緒を切らせてもらえますか」と聞かれることがありますが、臍帯を切る処置に痛みはありません。切らせてもらえるかは産院の方針によります。
生まれたあと——ここも終わりではありません
赤ちゃんが生まれても、まだ処置は続きます。
MSDマニュアル家庭版によれば、胎児が出てきてから3〜10分以内に胎盤がはがれて娩出され、続いて出血がみられます。多くの病院では、赤ちゃんが生まれてすぐ母親にオキシトシンを投与し、腹部をマッサージして子宮の収縮と胎盤の娩出を促します。
その後、裂傷の修復や会陰切開の縫合が行われます。この時間に、初めて動揺する夫の方がいます。「生まれたら終わり」と思っていると、その後の出血や処置に驚くためです。あらかじめ知っておいてください。
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産後1時間
MSDマニュアル家庭版は、「きずなが生まれるよう、通常は母親と新生児、そしてパートナーは個室で1時間以上一緒に過ごします」と記しています。
多くの方が「いちばん良かった」と挙げるのが、この時間です。分娩室での数分より、このあとの1時間のほうが記憶に残るという方は少なくありません。
夫は具体的に何をすればいい?
「そばにいるだけでいい」と言われますが、それだと手持ち無沙汰で不安になります。具体的に書きます。
腰をさする・押す——いちばん喜ばれます
陣痛の痛みは腰に響きます。痛みの波が来ているときに、腰やお尻の上のあたりを手のひらでぐっと押すと楽になる方が多いです。
ポイントは、強さと場所を本人に聞くこと。「もう少し下」「もっと強く」と言われたらそのとおりに。波が引いたら手を止めます。ずっと押し続ける必要はありません。
テニスボールを使う方法もありますが、手のほうが加減しやすいので、まず手で試してみてください。
水分・氷・タオル
陣痛中は汗をかき、口が乾きます。ペットボトルにストローをさして、波が引いたタイミングで差し出すだけで助かります。
氷やゼリー飲料が許される産院もあります。汗を拭くタオル、リップクリーム、髪をまとめるゴムも役に立ちます。
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声かけ——言っていいこと・避けたいこと
- ◎ 「今の波、乗り切ったね」——終わったことを認める言い方は届きます
- ◎ 「水飲む?」「腰押そうか?」——具体的な提案
- ◎ 黙ってそばにいる、手を握る
- × 「がんばれ」——すでに全力なので、追い詰める言葉になりがちです
- × 「あとどれくらい?」——本人にも分かりません
- × 「痛いの?」——痛いに決まっています
- × スマホを見る・寝る・食事のにおいを持ち込む
返事がなくても気にしないでください。陣痛の波の最中は、話せません。無視されているわけではありません。
記録係になる
陣痛の間隔をメモする、産院への連絡をする、家族に報告する。この役割は夫にしかできません。妻は自分の痛みで手一杯です。
何もしなくていい時間もあります
処置が入っているとき、医療者が集中しているときは、邪魔をしないことが役割です。声をかけられるまで頭側で静かにしていて構いません。
ちなみ(元看護師)

「見たくない」「怖い」——旦那の本音を正面から
検索でいちばん多いのがこの領域です。ここは正直に扱います。
そう思うのは、普通のことです
血が苦手、痛がる姿を見るのがつらい、自分が役に立てる気がしない——どれも珍しい感覚ではありません。そして、そう感じることは愛情の有無とはまったく関係がありません。
問題なのは、その本音を隠したまま当日を迎えることです。「怖い」と言えないまま立ち会って、途中でつらくなるほうが、二人にとってよくありません。
何が怖いのかを分解してみる
- 血を見るのが怖い→ 立ち位置を頭側に固定すれば、ほとんど見えません
- 妻が苦しむ姿がつらい→ つらいのは当然。腰を押すという「できること」があると気持ちが持ちます
- 自分が倒れそう→ 座れる椅子を確保しておけば対処できます
- 何をすればいいか分からない→ この記事の前の章がそのまま答えです
- 邪魔になりそう→ 医療者は慣れています。指示に従えば大丈夫です
立ち位置で、見えるものは変わります
これは知っておく価値があります。分娩室で妻の頭側に立っていれば、出産の場面が直接見えることはほとんどありません。
「立ち会う=全部見る」ではないのです。手を握って顔を見ているだけでも、立派な立ち会いです。産院によっては立ち位置を指定されることもあります。
気分が悪くなったら、迷わず言ってください
分娩室で夫が気分を悪くすることは、実際にあります。これは体質や緊張の問題で、恥ずかしいことではありません。
大事なのは無理をしないことです。ふらつく前に「すみません、少し外します」と言って退室してください。倒れると、医療者の手がそちらに割かれてしまいます。妻のために、無理をしないほうが正解です。
当日その場で「抜けたい」と言うのは、とても言いにくいものです。あらかじめ許可を出し合っておくと、お互いが楽になります。
途中で退室しても、失敗ではありません
陣痛の途中で休憩する、分娩の場面だけ外に出る、生まれたあとに入る——どれも立派な参加の形です。ゼロか100かで考えないでください。
「臭い」と言われるけれど、実際のところは
この検索が多いことに驚く方もいると思いますが、気にしている人が多いということです。妻の側が気にしていることもあります。正面から書きます。
分娩室のにおいの正体
分娩の場では、いくつかのにおいが混ざります。
- 羊水のにおい——独特ですが、強烈なものではありません
- 血のにおい——分娩では出血があるため、鉄のようなにおいがします
- 消毒薬のにおい——処置に使われるもの。病院特有のにおいです
- 汗のにおい——何時間も陣痛と闘うので当然です
もうひとつ、あまり語られませんがいきむときに便が出ることがあります。これは体の構造上ごく自然に起こることで、医療者にとっては日常です。すぐに処理されるので、気づかないことがほとんどです。
知っておくと、動じません
においで動揺するのは、予想していなかったときです。「そういうものだ」と知っていれば、ほとんどの人は問題なく過ごせます。
どうしても気になる場合は、マスクをするだけでかなり違います。産院によっては着用が求められることもあります。
妻が気にしている場合
「においが気になるから立ち会ってほしくない」と妻が言うことがあります。この気持ちは尊重してください。出産は本人の体で起きることで、どこまで見せるかを決める権利は本人にあります。
逆に夫が気にしている場合は、本人に伝えないほうが賢明です。言われた側は、産後もその言葉を覚えています。
立ち会うと後悔する?——トラウマ・離婚率の話
「立ち会うと離婚率が上がる」に根拠はあるのか
はっきり書きます。立ち会い出産と離婚率の関係を示す信頼できる統計は、見当たりません。
この話が広まっているのは、「立ち会って夫婦仲が悪くなった」という個別の体験談が印象に残りやすいためだと考えられます。うまくいった大多数の話は、わざわざ語られません。
数字を挙げて「離婚率が◯%上がる」と書いている情報を見かけたら、出典を確かめてください。
トラウマになるのは、どんなときか
立ち会いがつらい記憶になるケースには、共通点があります。
- 何が起きるか知らないまま入った(想定外の連続になる)
- 緊急の事態が起きた(急な帝王切開・大量出血など)
- 本人が立ち会いたくなかったのに、断れなかった
- 役割が分からず、ただ立ち尽くしていた
- 医療者の慌ただしい動きを、説明のないまま見た
注目してほしいのは、1つ目と4つ目は準備で防げるということです。この記事を読んでいる時点で、すでに対策できています。
緊急の事態が起きたときは
分娩の途中で状況が変わり、緊急の対応になることがあります。このとき夫は退室を求められるのが一般的です。
突然「外でお待ちください」と言われると不安になりますが、これは医療者が処置に集中するために必要なことです。締め出されているわけではありません。落ち着いて指示に従ってください。
帝王切開とは?流れ・痛みはいつまで・入院期間や費用を元看護師が解説
後悔を減らすいちばんの準備
二人で事前に話しておくこと——結局これに尽きます。どこまで立ち会うか、途中で抜けていいか、写真は撮るか、緊急時はどうするか。
当日はどちらも余裕がありません。決めるのは今日です。
立ち会わない、という選択もあります
この記事は立ち会いを勧めるためのものではありません。選ばない自由も、同じだけあります。
立ち会わないほうがいいケース
- 夫本人が強く望んでいない
- 妻が見られたくないと感じている
- 血を見て失神した経験がある
- 上の子を預ける先がなく、連れて行くしかない状況
- 産院が推奨していない・条件を満たせない
立ち会わなくても、参加はできます
立ち会い=分娩室にいること、ではありません。
- 陣痛の間だけ付き添う(ここがいちばん助かる時間です)
- 入院の荷物を運ぶ、手続きをする
- 上の子を見る
- 生まれたあとに駆けつけて、親子3人の時間を過ごす
- 退院までの準備を整えておく
MSDマニュアル家庭版が触れている「産後に個室で1時間以上一緒に過ごす」時間は、分娩に立ち会っていなくても持てることが多いです。
妻が望んでいない場合
「立ち会いたい」と夫が思っていても、妻が望まないことがあります。この場合は妻の意思が優先です。体験するのは本人の体だからです。
がっかりする気持ちは自然ですが、責めないでください。陣痛中の付き添いや産後の時間で、関われる場面はいくらでもあります。
立ち会いたくても、できないことがあります
準備していても、当日の状況で変わることがあります。知っておくと、そのときに落ち込みません。
緊急帝王切開になったとき
分娩の途中で帝王切開に切り替わることがあります。緊急の帝王切開では、立ち会いができないことがほとんどです。予定帝王切開なら立ち会いを認めている産院もありますが、方針は産院によって大きく違います。
お産の進み方が予想と違ったとき
急に進んで間に合わなかった、逆に何日もかかって仕事に戻らざるを得なかった——どちらもよくあります。お産の進み方は誰にもコントロールできません。
産院のルール・感染対策
感染症の流行状況によって、立ち会いの可否や条件が変わることがあります。直前に方針が変更されることもあるので、入院が近づいたら最新の案内を確認してください。
間に合わなかったとしても
立ち会えなかったことを引きずる方がいますが、お産の善し悪しは立ち会いの有無では決まりません。その後の時間のほうが、はるかに長く続きます。
実母や上の子が立ち会う場合
立ち会うのは夫だけとは限りません。ここも産院によって扱いが違います。
実母(自分の母親)の立ち会い
実母の立ち会いを認めている産院もあります。経験者が近くにいる安心感は大きい一方で、注意点もあります。
よくあるのが、実母が「昔はこうだった」と口を出してしまうケースです。お産のやり方は時代とともに変わっているので、いまの方針と食い違うことがあります。
もう一つ、夫が居場所をなくすことがあります。実母が全部やってしまい、夫が廊下で待っているだけになる——これは産後の関係にも影響します。両方が立ち会うなら、役割を先に分けておいてください。
上の子を立ち会わせるかどうか
きょうだいの立ち会いを認めている産院もあります。ただし、判断は慎重にしてください。
- 子どもの年齢と性格——痛がる母親の姿に強い不安を感じる子もいます
- 子どもだけを見る大人が別にいるか——夫が妻の付き添いをしていると、子どもを見る人がいなくなります
- お産が長引いたとき、途中で帰れる段取りがあるか
- 夜間になる可能性をどう考えるか
- 子ども本人が望んでいるか
「見せたほうが情操教育になる」といった理由だけで決めないほうがよいと思います。お産の場面は大人でも動揺します。
人数が増えるときの注意
立ち会いの人数に制限がある産院がほとんどです。また人が多いほど、妻が気を遣ってしまうという面もあります。
お産の最中は集中したい方も多いので、「誰に見られたいか」は妻の希望を最優先にしてください。
写真・動画はどこまで撮っていい?
あとでトラブルになりやすいところなので、先に決めておいてください。
まず産院のルールを確認する
撮影を全面的に認めている産院、分娩の場面だけ不可としている産院、生まれたあとのみ可としている産院——方針はさまざまです。医療者やほかの患者さんが写り込む可能性もあるため、ルールは必ず守ってください。
撮ることに集中しすぎない
「記録を残したい」と思うのは自然ですが、カメラ越しにしか立ち会っていなかったという後悔はよく聞きます。
撮るなら生まれた直後と、産後の親子3人の時間に絞るくらいでちょうどいいと思います。陣痛の間は、手を空けておくほうが役に立ちます。
SNSに載せる前に、必ず本人に確認する
これは強くお伝えしたいところです。出産直後の写真をSNSに載せてよいかどうかは、妻の判断です。
本人が見られたくない状態で写っていることがありますし、産後は判断する余裕もありません。「あとで見せてから決める」と決めておいてください。
立ち会ってよかったこと・期待しすぎないほうがいいこと
立ち会った人が挙げること
- 陣痛の長さと大変さを、実際に知ることができた
- 産後の体がどういう状態かを想像できるようになった
- 自分にもできることがあると分かった
- 生まれた直後の時間を一緒に過ごせた
注目してほしいのは、1つ目と2つ目です。産後の育児で夫婦がすれ違う原因の多くは「産後の体がどれだけ大変か伝わらない」ことにあります。立ち会いは、そこを実感として共有できる数少ない機会です。
産後クライシスとは?症状のセルフチェックといつまで続くか・夫婦で乗り越える方法を元看護師が解説
「絆が深まる」は自動的には起きません
立ち会えば必ず夫婦の絆が深まる、というものではありません。役割が分からないまま立ち尽くしていた場合、記憶に残るのは無力感だけということもあります。
差が出るのは、「何かをした」という実感があるかどうかです。腰を押した、水を渡した、名前を呼び続けた——小さなことで構いません。
期待値を、二人でそろえておく
「感動して泣くと思っていたのに、何も感じなかった」という方もいます。これは冷たいのではなく、緊張と情報量で処理が追いつかないだけです。
逆に、妻の側が「泣いて感動してほしい」と期待していると、そこでずれが生まれます。反応は人それぞれだと、先に共有しておいてください。
産前に確認しておくこと・決めておくこと
この記事でいちばん実用的な部分です。いまのうちにやっておけば、当日ほぼ困りません。
産院に確認するリスト
- 立ち会いができるのは陣痛室までか、分娩室までか
- 立ち会えるのは誰か(夫のみ/実母/上の子)・人数の制限
- 事前に受けておくべき教室(両親学級など)があるか
- 写真・動画の撮影は可能か
- 臍帯を切らせてもらえるか
- 帝王切開になった場合はどうなるか
- 付き添いの食事・宿泊はどうなるか
- 感染対策で条件が変わることはあるか
バースプランに書いておく
立ち会いの希望は、バースプランに書いておくと医療者に伝わります。「立ち会う/立ち会わない」だけでなく、「気分が悪くなったら外に出ます」まで書いておくと、当日スムーズです。
バースプランとは?書き方・例文から思いつかないときのヒントまで元看護師が解説
連絡と移動の段取り
陣痛が始まったとき、どうやって連絡を取り、どうやって病院に向かうか。夫が仕事中・出張中のパターンまで決めておいてください。
陣痛のサインや連絡のタイミングについては、別の記事にまとめています。
陣痛とは?間隔・痛みの強さ・病院へ行くタイミングを元看護師が解説
上の子の預け先
2人目以降でいちばん詰まるのがここです。夜中や早朝に陣痛が来る前提で、預け先を複数用意しておいてください。「夫が立ち会う=上の子を誰かに預ける」がセットになります。
荷物と置き場所の共有
陣痛バッグの中身と置き場所は、夫も知っている必要があります。妻が動けない状態で「どこにある?」と聞くことになるからです。

ちなみから|いてくれるだけで違う、は本当です
看護師として分娩に関わっていたころ、立ち会いの形は本当にさまざまでした。ずっと腰をさすり続ける方、緊張で固まったまま手を握っている方、途中で青くなって廊下で座り込む方。
でも、どの形でも、妻の様子は変わりました。痛みの強さは変わらなくても、そばに誰かがいるだけで、耐え方が変わるのです。
印象に残っているのは、「何もできませんでした」と落ち込んでいた方に、奥さまが「いてくれたから乗り切れた」と言っていた場面です。役に立った実感がないことと、実際に支えになっていないことは、別のことでした。
私自身も2人を産みましたが、覚えているのは上手な励ましの言葉ではなく、波が来るたびに黙って腰を押してもらっていた感覚のほうでした。
ちなみ(元看護師)
まとめ|決めるのは当日ではなく、今日です
- 立ち会いの範囲は産院ごとに違う。陣痛室までか分娩室までか、誰が何人まで、撮影の可否——必ず自分の産院に確認する
- MSDマニュアル家庭版は「通常、妊婦のパートナーなどが付き添うことが勧められます」と記載。ただし「夫が分娩室で最後まで見る」という意味ではない
- いちばん役に立てるのは陣痛の時間。腰を押す・水分を差し出す・記録する。「がんばれ」より「今の波、乗り切ったね」
- 頭側に立てば、出産の場面はほとんど見えない。「立ち会う=全部見る」ではない
- 「気分が悪くなったら外に出る」を事前に約束しておく。倒れると医療者の手が割かれる。無理をしないほうが妻のためになる
- においは羊水・血液・消毒薬・汗。知っていれば動じない。気になるならマスクで足りる
- 立ち会いと離婚率の関係を示す信頼できる統計は見当たらない。トラウマになりやすいのは「知らないまま入った」「役割が分からなかった」ケースで、これは準備で防げる
- 立ち会わない選択も同じだけ正しい。陣痛中の付き添い、産後の1時間、上の子の世話——参加の形は他にもある
立ち会い出産で失敗する原因のほとんどは、本音を言わないまま当日を迎えることです。逆に言えば、いま話しておけば、たいていのことは防げます。
今日できるいちばん確実な行動は、産院の案内を二人で開いて、「どこまで立ち会えるのか」と「気分が悪くなったらどうするか」の2つを決めてしまうことです。
よくある質問(立ち会い出産|FAQ)
Q立ち会い出産はしたほうがいいですか?
A.MSDマニュアル家庭版は分娩について「通常、妊婦のパートナーなどが付き添うことが勧められます」と記しています。ただしこれは付き添う人がいるとよいという意味で、夫が分娩室で最後まで見なければならないという意味ではありません。陣痛の時間だけ付き添う、産後に駆けつけるといった形も参加です。夫婦それぞれの希望と、産院の方針を確認したうえで決めてください。
Q血を見るのが苦手です。立ち会っても大丈夫でしょうか?
A.分娩室で妻の頭側に立っていれば、出産の場面が直接見えることはほとんどありません。「立ち会う=全部見る」ではないので、手を握って顔を見ているだけでも立派な立ち会いです。そのうえで、気分が悪くなったら遠慮なく退室してください。倒れると医療者の手がそちらに割かれてしまうため、無理をしないほうが妻のためになります。事前に夫婦で「つらくなったら外に出る」と約束しておくと当日が楽です。
Q立ち会い出産で夫は何をすればいいですか?
A.いちばん役に立てるのは陣痛の時間です。痛みの波が来ているときに腰やお尻の上のあたりを手のひらで押す、波が引いたタイミングで水分を差し出す、汗を拭く、陣痛の間隔を記録する、家族へ連絡する——このあたりが実際に助かる役割です。声かけは「がんばれ」より「今の波、乗り切ったね」のように終わったことを認める言い方が届きます。処置中は静かにしているのも役割のうちです。
Q立ち会い出産は臭いというのは本当ですか?
A.分娩の場では羊水・血液・消毒薬・汗のにおいが混ざります。強烈なものではありませんが、独特ではあります。またいきむときに便が出ることもありますが、これは体の構造上ごく自然に起こることで、すぐに処理されるため気づかないことがほとんどです。においで動揺するのは予想していなかったときなので、知っておけば問題なく過ごせます。気になる場合はマスクの着用でかなり違います。
Q立ち会い出産をすると離婚率が上がるというのは本当ですか?
A.立ち会い出産と離婚率の関係を示す信頼できる統計は見当たりません。この話が広まっているのは、うまくいかなかった個別の体験談が印象に残りやすいためだと考えられます。数字を挙げている情報を見かけたら出典を確かめてください。なお、つらい記憶になりやすいのは「何が起きるか知らないまま入った」「役割が分からず立ち尽くしていた」ケースで、これは事前の準備で防げます。
Q立ち会い出産はどれくらいの人がしていますか?
A.全国を対象にした公的な統計は見当たりません。産院の方針、地域、年によって差が大きいためです。数字を断言している情報を見かけたら、その根拠を確かめてください。割合よりも、二人がどうしたいかと、通っている産院で何が可能かを確認するほうが実際的です。
Q帝王切開でも立ち会えますか?
A.産院によって大きく違います。予定帝王切開なら立ち会いを認めている産院もありますが、緊急の帝王切開ではできないことがほとんどです。分娩の途中で緊急帝王切開に切り替わった場合、夫は退室を求められるのが一般的で、これは医療者が処置に集中するために必要なことです。締め出されているわけではないので、落ち着いて指示に従ってください。
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