妊娠中の胃痛・胃が痛い——初期・後期のキリキリ痛みの原因と対処法を元看護師が解説

妊娠中の女性がみぞおちのあたりに軽く手を当てて椅子に座っているシーン|妊娠中の胃痛のイメージ

「空腹になるとみぞおちがキリキリ痛む」「食後にいつも胃が重くて痛い」「これって普通のこと?お腹の赤ちゃんに影響はない?」——妊娠中の胃の痛みに不安を感じて、この記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。

妊娠中の胃痛は、つわりや胃もたれ・胸焼けと並んで多くの妊婦さんが経験するマイナートラブルのひとつです。とはいえ「胃のあたりの痛み」は、ごくありふれた生理的な変化のこともあれば、まれに受診が必要なサインのこともあり、自己判断が難しい症状でもあります。

はじめまして、ちなみです。元看護師として病院勤務を経験し、現在は妊活・妊娠・子育てを中心に情報発信している男女2児のママです。私自身も2度の妊娠で胃の痛みに悩まされましたし、看護師時代も「胃が痛いんですけど大丈夫でしょうか」と相談してくださる妊婦さんに何度もお会いしてきました。この記事では、妊娠中に胃が痛くなる原因・時期別の特徴・自宅でできる対処法・見逃してほしくない受診のサインまで、順を追って解説します。

ちなみ(元看護師)

妊娠中の胃の痛みは多くの場合、体の変化に伴う自然な反応です。ただし中には注意したいサインもあります。原因と見分け方を知って、安心して過ごせるよう一緒に整理していきましょう。

妊娠中に胃が痛くなる・キリキリするのはなぜ?4つの原因

妊娠中の胃痛には、ホルモンの変化・空腹時の胃酸・子宮による圧迫・自律神経の乱れという4つの原因が関わっています。多くの場合、これらが複合して症状が出ます。

①プロゲステロンが胃酸の分泌・消化管の動きを変化させる

妊娠中は「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の分泌が大幅に増加します。プロゲステロンには消化管の平滑筋をゆるめる作用があり、胃酸の分泌バランスや胃の動き(蠕動運動)に影響を与えます。これにより、胃の粘膜が刺激を受けやすくなったり、消化のスピードが遅くなったりして、痛み・不快感として感じやすくなります。

このホルモンの影響は妊娠初期(4〜6週ごろ)から始まり、妊娠を通じて続きます。「妊娠してから急に胃が痛くなりやすくなった」という方の多くは、このホルモン変化が背景にあります。

②空腹の時間が長くなると胃酸が胃の粘膜を刺激する

「空腹になるとみぞおちがキリキリする」というのは、妊娠中の胃痛の中でも特によくあるパターンです。空腹時は胃の中に食べものがない状態で胃酸が分泌され続けるため、胃の粘膜が直接刺激を受けて痛みが出やすくなります。

つわりで食べられない時期や、食べづわり(空腹になると気持ち悪くなるタイプのつわり)の時期は、この「空腹による胃痛」が起こりやすくなります。つわり全体の症状については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

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③中期以降、大きくなる子宮が胃を圧迫する

妊娠が進むにつれて子宮は大きくなり、腹腔内の他の臓器を圧迫するようになります。妊娠中期(5か月ごろ)以降、子宮が上方にある胃を押し上げ始め、後期(8〜9か月)になると胃がかなり圧迫された状態になります。

この物理的な圧迫によって、一度に食べられる量が減るだけでなく、食後に胃のあたりが張ってキリキリ痛むことがあります。赤ちゃんが胃のあたりを蹴ったり動いたりする刺激で、一時的にズキッとした痛みを感じる方もいます。

④ストレス・自律神経の乱れ

妊娠中はホルモンバランスの急激な変化に加えて、体調の変化・出産への不安・生活リズムの変化などから自律神経が乱れやすくなります。自律神経は胃腸の働きをコントロールしているため、ストレスや緊張が続くと胃の血流が低下し、痛みや胃もたれにつながることがあります。

「特に思い当たることがないのに胃が痛い」という場合でも、知らないうちに緊張・不安を抱えていることはよくあります。体だけでなく心の負担にも目を向けてみてください。

「胃痛」と「胃もたれ・胸焼け」の違い——似ているようで別の症状

妊娠中のお腹まわりの不快感には、「胃痛」のほかに「胃もたれ」「胸焼け」もあり、混同されがちです。それぞれの特徴を整理しておきましょう。

  • 胃痛:みぞおちのキリキリ・チクチクとした痛み。空腹時や食後に強くなりやすい。
  • 胃もたれ:みぞおちが重い・つかえる感じ。痛みというより「消化されていない感覚」が中心。
  • 胸焼け:みぞおちから胸にかけてジリジリ・ヒリヒリする感じ。酸っぱいものが上がってくる感覚を伴うことが多い。

実際にはこれらが同時に起こったり、入れ替わったりすることも多く、はっきり区別できないケースも珍しくありません。胃もたれ・胸焼けが中心の方は、原因と対処法をより詳しくまとめた記事もあわせてご覧ください。

妊娠中の女性が胸に手を当てて胃もたれ・胸焼けを感じているシーン 妊娠中の胃もたれ・胸焼け——初期・中期・後期の原因と楽になる対処法を元看護師が解説

【時期別】妊娠中の胃痛はいつ・どんな痛み方をする?

妊娠初期(〜15週ごろ)——空腹時のキリキリ・つわりと混同しやすい時期

妊娠初期は子宮による物理的な圧迫はまだ少なく、胃痛の主な原因はホルモンによる胃酸分泌の変化と、つわりによる空腹・食事リズムの乱れです。「気持ち悪いのか、胃が痛いのか自分でもよくわからない」という状態になりやすい時期でもあります。

特に「食べづわり」(空腹になると気持ち悪くなるタイプ)の方は、空腹による胃痛とつわりの吐き気が重なりやすく、常に何か少し口にしていないと落ち着かないという方も多くいます。妊娠初期の症状全体については、症状ハブ記事でまとめて確認できます。

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妊娠中期(16〜27週ごろ)——一時的に落ち着くが、じわじわ圧迫が始まる

つわりが落ち着く妊娠5〜6か月ごろは、胃痛も一時的に軽くなる方が多い時期です。食欲が戻り「ようやく普通に食べられる」と感じる方も増えます。

ただしこの時期は子宮が急速に大きくなる時期でもあり、20週を過ぎたころから「食後に胃のあたりが張る」「少し食べただけでみぞおちが痛む」という感覚が出始める方もいます。食欲が戻ったからといって以前と同じ量を一度に食べようとすると、胃への負担が大きくなりやすいので注意しましょう。

妊娠後期(28週〜)——子宮の圧迫がピーク、食後のキリキリが増える時期

胃痛が最も強くなりやすいのが妊娠後期(7か月〜)です。子宮が最大限に大きくなり、胃への圧迫もピークに達します。「少し食べただけで苦しい」「食後にみぞおちがキリキリする」という訴えが急増するのもこの時期です。

後期には、後期つわりと呼ばれる胃のむかつき・不快感が再び現れる方もいます。胃痛と後期つわりは原因が重なることも多いため、あわせて確認しておくと安心です。

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なお、臨月(36週ごろ)に赤ちゃんの頭が骨盤に降り始めると(「入胎」と呼ばれる変化)、子宮の上端が少し下がり胃への圧迫が軽減します。「臨月に入ったら急に胃が楽になった」と感じる方も多く、出産が近いサインのひとつでもあります。

自宅でできる対処法——胃痛をやわらげる6つの工夫

①空腹の時間を作らない——少量頻回食を意識する

空腹による胃痛には、空腹の時間を作らないことが最も効果的です。1回の食事量を通常の半分〜2/3程度に減らし、1日3食から5〜6回に分けて食べる「少量頻回食」を意識しましょう。

おにぎり1個・クラッカー・バナナなど、すぐに食べられる軽食をバッグや枕元に常備しておくと、外出先や夜間の空腹時にもすぐ対応できます。

②消化の良いものを選ぶ・刺激物を控える

脂っこいもの・辛いもの・酸味の強いもの・カフェイン・炭酸飲料は胃酸の分泌を増やしたり胃の粘膜を刺激したりするため、症状が強い時期は控えめにしましょう。おかゆ・うどん・豆腐・白身魚・バナナなど、消化の良い食品を中心にすると胃への負担が減ります。

③よく噛んでゆっくり食べる

早食いは胃に負担をかけ、痛みや胃もたれを悪化させます。一口ずつよく噛んでゆっくり食べることで、消化の負担を減らし、満腹感も得やすくなります。

④お腹を締め付けない服・楽な姿勢を選ぶ

きつい服やウエストを締め付ける腹帯は腹腔内の圧力を上げ、胃の痛みを悪化させることがあります。マタニティ用の伸縮素材の服や、締め付けの少ない腹帯・腹巻きに替えるだけで楽になる方も多いです。食後すぐに前かがみになる動作も避けましょう。

⑤お腹を冷やさない

体が冷えると胃腸の血流が低下し、痛みや不快感が強まることがあります。腹巻きやひざ掛けを活用し、冷たい飲みものより常温・温かい飲みものを選ぶと胃が楽になりやすいです。

⑥ストレスをためすぎない・休息をとる

自律神経の乱れが胃痛につながっていることも多いため、無理をしすぎず、こまめに休息をとることも大切な対処法です。「完璧にこなさなくていい」と割り切り、家事や仕事はできる範囲に留めましょう。深呼吸やゆったりとした音楽、軽いストレッチなど、自分に合ったリラックス方法を見つけておくのもおすすめです。

ちなみ(元看護師)

私自身、空腹になるとみぞおちがキリキリするタイプで、常にカバンにビスケットを入れていました。「ちょっとつまむ」を習慣にするだけで、かなり楽になりましたよ。

見逃したくない危険なサイン——「ただの胃痛」と決めつけないで

妊娠中の胃痛のほとんどは、ここまで紹介してきたような生理的な変化によるものです。ただし、なかには医療機関での対応が必要なケースも含まれます。次のような症状が伴う場合は、自己判断で様子を見ず、早めに産婦人科または医療機関に連絡してください。

以下の症状が伴う場合はすぐに産院・医療機関に連絡を
  • 妊娠後期に、みぞおちの強い痛み+頭痛・視野のかすみ・手足や顔のむくみが重なる(妊娠高血圧症候群・HELLP症候群の可能性。みぞおちの痛みはこれらの代表的なサインのひとつとされています)
  • 胃痛とともに発熱・嘔吐・下痢が続く(感染性胃腸炎・食中毒の可能性)
  • 右下腹部に痛みが移動する、または痛みが急激に強くなる(虫垂炎など外科的な疾患の可能性)
  • 吐血(血が混じった嘔吐)や黒い便(タール便)が出た
  • 水分もとれないほどの強い痛みが続いている
  • 痛みが治まらず、日常生活に支障が出るほどつらい

特に妊娠後期の「みぞおちの痛み」は、妊娠高血圧症候群やHELLP症候群といった、母体と赤ちゃんの両方に関わる病気のサインであることがあります。「いつもの胃痛と少し違う」「むくみや頭痛も気になる」と感じたら、次の健診を待たずに連絡してください。「これくらいで連絡していいのかな」とためらう必要はありません。

参考 妊娠・出産に関するよくある質問日本産婦人科医会

市販の胃薬は妊娠中に使える?

妊娠中の薬の使用については、「妊娠中でも使える薬かどうか」を必ず産婦人科医または薬剤師に確認してから使うことが大原則です。自己判断での服用は避けましょう。

市販の胃薬に含まれる成分の中には、妊娠中への影響が懸念されるものがあります。特にNSAIDs(イブプロフェンなど)を含む胃薬・痛み止めは妊娠中、特に後期は避けるべきとされています。症状が強くて日常生活に支障が出ている場合は、自己判断で市販薬を使うより、産婦人科で適切な薬を処方してもらう方が安全で確実です。健診の際に「胃が痛い」と遠慮なく伝えてみてください。

あわせて起こりやすい消化器の不調もチェック

妊娠中はプロゲステロンの影響で消化管全体の動きが鈍くなるため、胃痛と同時に便秘や下痢などの不調が起こることもあります。お腹まわりの不調が重なってつらいときは、それぞれの原因と対処法もあわせて確認しておくと安心です。

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ちなみから|妊娠中の胃痛とどう付き合ったか

少しだけ、私自身の経験をお話しさせてください。

1人目の妊娠(長男)のときは、妊娠初期から「空腹になるとみぞおちがキリキリする」タイプの胃痛に悩まされました。つわりの吐き気と区別がつかず、「これって普通のことなのかな」と不安になったこともありましたが、健診で相談したところ「空腹時の胃酸が刺激しているだけで、心配ない範囲」と言ってもらえてほっとしたのを覚えています。それからは常に軽食を持ち歩くようにして、だいぶ楽になりました。

2人目(長女)の妊娠後期には、食後に決まって胃のあたりがキリキリする時期がありました。子宮に押し上げられた胃の感覚は独特で、「もう少ししか食べていないのに苦しい」という日々でした。少量頻回食に切り替えてからは、食後の痛みがかなり軽減しました。

看護師時代も、「胃が痛くて受診していいのか迷った」という妊婦さんに何度もお会いしました。多くは生理的な変化によるものでしたが、中にはみぞおちの痛みが妊娠高血圧症候群のサインだったケースもありました。「ただの胃痛だろう」と決めつけず、気になる症状があれば早めに相談してほしいと改めてお伝えしたいです。

ちなみ(元看護師)

「これくらい大丈夫かな」と我慢しすぎないでくださいね。多くの胃痛は心配のいらない変化ですが、迷ったときは産院に連絡するだけでも安心につながります。一人で抱え込まないでください。

まとめ|妊娠中の胃痛は多くが自然な変化——でも「いつもと違う」サインは見逃さないで

この記事のポイント
  • 妊娠中の胃痛の主な原因は、プロゲステロンによる胃酸・消化管の変化、空腹時の胃酸刺激、中期以降の子宮による圧迫、ストレス・自律神経の乱れの4つ。
  • 「胃痛」はキリキリ・チクチクとした痛み、「胃もたれ」は重さ・つかえ感、「胸焼け」は焼けるような感覚が中心。同時に起こることも多い。
  • 胃痛が最も強くなりやすいのは妊娠後期(28週〜)。初期はつわりと混同しやすく、中期は一時的に落ち着く方が多い。
  • 対処の基本は「空腹を作らない少量頻回食」。消化の良い食品・締め付けない服・体を冷やさないことも効果的。
  • 妊娠後期のみぞおちの強い痛み+頭痛・むくみ・視野のかすみは妊娠高血圧症候群・HELLP症候群のサインのことがあるため要注意。
  • 市販の胃薬は自己判断を避け、必ず産婦人科医・薬剤師に相談を。

妊娠中の胃痛は、体が赤ちゃんを育てるために変化しているサインのひとつです。多くは心配のいらない自然な変化ですが、「いつもと違う」と感じる痛みやサインがあれば、我慢せず産婦人科に相談してください。無理をせず、自分の体の声に耳を傾けながらこの時期を過ごしてくださいね。

よくある質問(妊娠中の胃痛|FAQ)

Q妊娠初期の胃痛はいつまで続きますか?

A.つわりが落ち着く妊娠14〜16週ごろにかけて、空腹時の胃痛が軽くなる方が多いです。ただし個人差が大きく、中期以降は子宮の圧迫による胃痛に切り替わっていくこともあります。「いつまでに必ず治る」という決まりはないため、つらい場合は無理をせず産院に相談してください。

Q妊娠後期に食後だけ胃が痛くなります。何が原因ですか?

A.妊娠後期は大きくなった子宮が胃を圧迫しているため、食後に胃のあたりが張ってキリキリすることがよくあります。少量頻回食に切り替え、食後すぐに横にならず座った姿勢で過ごすと和らぎやすいです。臨月に近づき赤ちゃんの頭が骨盤に降りると圧迫が軽減し、楽になる方も多いです。

Q胃痛がひどいとき、市販の胃薬を飲んでも大丈夫ですか?

A.妊娠中の薬は自己判断を避け、必ず産婦人科医・薬剤師に相談してから使うことが大原則です。成分によっては妊娠中への影響が懸念されるものがあります。症状が強い場合は、産婦人科で適切な薬を処方してもらうのが最も安全です。

Q胃痛と胃もたれ・胸焼けの違いがよくわかりません。

A.胃痛はみぞおちのキリキリ・チクチクとした痛み、胃もたれは重さ・つかえる感じ、胸焼けは焼けるような感覚や酸っぱいものが上がってくる感覚が中心です。妊娠中はどちらも同時に起こることが多く、完全に区別できないケースも多いため、対処法を組み合わせて対応するのが現実的です。

Q妊娠中の胃痛で受診の目安はありますか?

A.妊娠後期にみぞおちの強い痛みと頭痛・視野のかすみ・むくみが重なる場合や、発熱・嘔吐・下痢を伴う場合、痛みが右下腹部に移動する場合などは、早めに産院・医療機関に連絡してください。「これくらいで連絡していいのか」と迷う必要はありません。

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