妊娠中の痔(いぼ痔・切れ痔)はなぜできる?原因と対処法、市販薬の安全性を元看護師が解説

妊娠後期の女性がソファに座り腰のあたりに軽く手を添えているシーン|妊娠中の痔のイメージ

「排便のときに出血した」「肛門のあたりにいぼのようなものができた気がする」「座っているとお尻がジンジンする」——妊娠中にこうした症状が出て、誰にも相談しづらく一人で不安を抱えていませんか?

痔(じ)は、デリケートな部位の症状であるがゆえに、家族にも友人にも相談しにくく、産婦人科の健診でも切り出しづらいと感じる方が多いマイナートラブルのひとつです。しかし実は、妊娠中はホルモンや体の変化によって痔がとても起こりやすい時期でもあり、多くの妊婦さんが経験する症状です。

はじめまして、ちなみです。元看護師として病院勤務を経験し、現在は妊活・妊娠・子育てを中心に情報発信している男女2児のママです。私自身も妊娠中に痔に悩まされた経験がありますし、看護師時代も「恥ずかしくて誰にも言えなかった」と打ち明けてくださる妊婦さんに何度もお会いしてきました。この記事では、妊娠中に痔ができやすい原因・いぼ痔と切れ痔の違い・時期別の特徴・自宅でできる対処法・市販薬の考え方・受診の目安まで、順を追って解説します。

ちなみ(元看護師)

妊娠中の痔は、恥ずかしいことでも、特別なことでもありません。体の変化に伴ってとても起こりやすい症状です。一人で抱え込まず、まずは仕組みと対処法を一緒に整理していきましょう。

妊娠中に痔(いぼ痔・切れ痔)になりやすいのはなぜ?3つの原因

妊娠中の痔には、ホルモンの変化・子宮による圧迫・便秘や下痢によるいきみという3つの原因が関わっています。多くの場合、これらが複合して症状が出やすくなります。

①プロゲステロンが血管壁をゆるめ、静脈がうっ血しやすくなる

妊娠中は「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の分泌が大幅に増加します。プロゲステロンには血管の壁をゆるめる作用があり、肛門周囲の静脈がうっ血しやすくなります。もともと肛門周囲には細かい静脈が網の目のように集まっているため、血流が滞ると腫れやすく、痔になりやすい状態がつくられます。

このホルモンの影響は妊娠初期から続くため、「妊娠してから急に痔になった」という方の多くは、このホルモン変化が背景にあります。

②大きくなる子宮が骨盤内の静脈を圧迫する

妊娠が進むにつれて子宮は大きくなり、骨盤内の血管を物理的に圧迫するようになります。特に下大静脈(下半身からの血液を心臓に戻す太い静脈)が圧迫されると、骨盤内や肛門周囲の血液がうっ滞しやすくなります。これが妊娠中期以降に痔が悪化しやすくなる大きな理由のひとつです。

長時間座りっぱなし・立ちっぱなしの姿勢も、骨盤内の血流をさらに滞らせる要因になります。デスクワークが多い方や、立ち仕事の方は特に意識しておきたいポイントです。

③便秘・下痢によるいきみが肛門に負担をかける

妊娠中はプロゲステロンの影響で腸の動きが鈍くなり、便秘になりやすいことが知られています。便が硬くなって排便時に強くいきむと、肛門周囲の血管に圧力がかかり、いぼ痔(痔核)や切れ痔(裂肛)の直接的なきっかけになります。妊娠中の便秘の原因・対処法については、こちらの記事で詳しく解説していますので、便秘に心当たりのある方はあわせてご覧ください。

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反対に、下痢が続く場合も肛門周囲が頻繁に刺激されることで粘膜が荒れやすくなり、痔の原因になることがあります。便秘・下痢いずれの場合も、「排便のリズムを整えること」が痔の予防・改善の土台になります。

「いぼ痔(痔核)」と「切れ痔(裂肛)」の違い

妊娠中に多い痔には、大きく分けて「いぼ痔」と「切れ痔」の2種類があります。症状の特徴を整理しておきましょう。

  • いぼ痔(痔核):肛門周囲の静脈がうっ血して腫れ、いぼのようなふくらみができる状態。痛みは比較的軽いことが多いが、出血や、排便時に脱出して指で押し戻す必要があるケースもある。
  • 切れ痔(裂肛):硬い便の通過などで肛門の皮膚が切れてしまう状態。排便時の鋭い痛みと、紙に付着する程度の少量の出血が特徴で、便秘がきっかけになりやすい。

「出血の量・色」「痛みの強さ・タイミング」「いぼのようなふくらみの有無」を整理しておくと、産婦人科や肛門科で相談するときにも状況を伝えやすくなります。

【時期別】妊娠中の痔はいつから・どんな症状が出やすい?

妊娠初期(〜15週ごろ)——ホルモンと便秘が重なりやすい時期

妊娠初期は子宮による圧迫はまだ少ない一方、プロゲステロンの急激な増加と、つわりによる食事量・水分量の変化から便秘になりやすく、それに伴って痔の症状が出始める方がいます。妊娠初期に現れやすい症状全体については、症状ハブ記事でまとめて確認できます。

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妊娠中期(16〜27週ごろ)——子宮の圧迫が少しずつ強まる時期

子宮が急速に大きくなり始めるこの時期から、骨盤内の血管への圧迫が徐々に強まります。「初期は何でもなかったのに、中期に入ってから急にいぼができた」という方も少なくありません。便秘が落ち着いてきても、子宮の圧迫による痔の症状が単独で出てくることもあります。

妊娠後期・臨月——圧迫がピークになり、出産時のいきみで悪化しやすい時期

妊娠後期は子宮が最大限に大きくなり、骨盤内の血管への圧迫もピークに達するため、痔が最も悪化しやすい時期です。「臨月に入ってからいぼが大きくなった」「座るだけで痛い」という訴えが増えるのもこの時期です。

さらに、出産(分娩第2期)の強いいきみは、肛門周囲の血管に一時的に大きな圧力をかけるため、出産を機に痔が新たにできたり、もともとあった痔が悪化したりすることがよくあります。「出産で痔がひどくなった」という声が多いのはこのためで、出産直後・産後しばらくは痔の症状がもっとも強く出やすい時期のひとつとされています。多くは産後数週間〜数か月かけて少しずつ落ち着いていきますが、症状が長引く場合は産婦人科や肛門科に相談してください。

自宅でできる対処法——痔の悪化を防ぐ6つの工夫

①便秘・下痢を防ぎ、いきみすぎない排便を心がける

痔の予防・改善の土台は、排便時のいきみを減らすことです。食物繊維と水分をしっかり摂り、便を柔らかく保つことを意識しましょう。トイレで長時間いきみ続けるのは肛門への負担が大きいため、「出そうで出ないときは一度切り上げる」勇気も大切です。

②座浴・温める——血行を促して症状をやわらげる

ぬるめのお湯(38〜40℃程度)に肛門周囲をつける「座浴」は、血行を促して痛み・腫れをやわらげる効果が期待できる、妊娠中でも取り入れやすい対処法です。湯船にゆったり浸かることでも同様の効果が期待できます。長湯やのぼせには注意しながら、無理のない範囲で続けてみてください。

③長時間同じ姿勢を避け、こまめに体を動かす

長時間座りっぱなし・立ちっぱなしの姿勢は、骨盤内の血流をさらに滞らせます。1時間に1回程度を目安に、軽く立ち上がって体を伸ばしたり、ゆっくり歩いたりすると血行が促されやすくなります。デスクワークが多い方は特に意識してみてください。

④座るときはクッションを活用する

ドーナツ型クッションなど、肛門部分への圧迫を軽減できるクッションを使うと、座っているときの負担が和らぎます。長時間のデスクワークや移動の際に取り入れている妊婦さんも多くいます。

⑤患部を清潔に保ち、こすらず優しく洗う

排便後はトイレットペーパーで強くこすらず、ウォシュレットや温水でやさしく洗い流すようにすると、患部への刺激を減らせます。蒸れも症状を悪化させる要因になるため、通気性の良い下着を選ぶこともポイントです。

⑥体を締め付けない服を選ぶ

ウエストや太ももを締め付ける服・下着は、骨盤内や下半身の血流を妨げやすくなります。マタニティ用のゆったりとした服装に替えるだけでも、血行が促されやすくなります。

ちなみ(元看護師)

私自身、妊娠後期に座るのもつらいほど痔がひどくなった時期がありました。座浴とクッションを併用するようになってから、だいぶ楽に過ごせるようになりましたよ。

見逃したくない危険なサイン——「ただの痔」と決めつけないで

妊娠中の痔のほとんどは、ここまで紹介してきたような体の変化によるものです。ただし、なかには医療機関での対応が必要なケースも含まれます。次のような症状が伴う場合は、自己判断で様子を見ず、早めに産婦人科または肛門科に相談してください。

以下の症状が伴う場合は早めに産院・医療機関に相談を
  • 出血の量が多い、または出血が続いている
  • いぼが脱出したまま指で押し戻しても戻らない
  • 強い痛みで座ることも歩くこともつらい
  • 患部の腫れ・熱感とともに発熱を伴う(感染を起こしている可能性)
  • 便に血が混じる、または黒い便(タール便)が出た(痔以外の消化管出血の可能性も否定できない)
  • 市販薬を1週間ほど使っても症状が改善しない

「痔の出血だろう」と自己判断せず、出血の色や量、症状が続く期間を医師に伝えることが大切です。「これくらいで相談していいのかな」とためらう必要はありません。

参考 妊娠・出産に関するよくある質問日本産婦人科医会

妊娠中に市販薬は使える?ボラギノール・ポステリザンなどの考え方

妊娠中の薬の使用については、「妊娠中でも使える薬かどうか」を必ず産婦人科医または薬剤師に確認してから使うことが大原則です。自己判断での使用は避けましょう。

痔の市販薬には、軟膏・坐薬タイプなど局所(肛門周囲)に直接使用するものが中心で、ボラギノール・ポステリザンなど局所用の痔疾用薬は、全身への影響が比較的少ないと考えられています。ただし、含まれる成分(ステロイド・局所麻酔薬など)の種類や量によって考え方が異なるため、「妊娠中だから絶対に使えない」とも「市販されているから自由に使ってよい」とも一概には言えません。

市販薬を使う前に必ず確認したいこと

痔の市販薬を購入する前に、薬局・ドラッグストアの薬剤師に「妊娠中なのですが、使える痔の薬はありますか」と相談してください。妊娠週数や症状を伝えると、適切な薬を案内してもらいやすくなります。すでに使ってしまった場合も、自己判断で不安を抱え込まず、次の健診や薬剤師に率直に伝えましょう。

症状が強くて日常生活に支障が出ている場合は、自己判断で市販薬を使い続けるより、産婦人科で相談して適切な薬を処方してもらう方が安全で確実です。健診の際に「痔があって相談しにくかったのですが」と切り出してみてください。

何科を受診すればいい?——まずは産婦人科で相談してOK

「痔は何科に行けばいいの?」と迷う方も多いですが、妊娠中であれば、まずかかりつけの産婦人科で相談して問題ありません。妊娠中の体の変化を踏まえたうえで、市販薬の使用可否や、必要に応じて肛門科・外科への紹介を判断してもらえます。

症状が強い場合や、専門的な処置(脱出したいぼ痔の整復など)が必要な場合は、肛門科や外科を受診することもあります。その際は「妊娠○週です」と必ず伝え、妊娠中でも対応可能な検査・治療かどうかを確認してもらいましょう。一人で「恥ずかしいから」と我慢し続ける必要はありません。

あわせて起こりやすい消化器のトラブルもチェック

痔は便秘・下痢と密接に関わっているため、お腹まわりの不調が重なってつらいときは、それぞれの原因と対処法もあわせて確認しておくと安心です。

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ちなみから|妊娠中の痔とどう付き合ったか

少しだけ、私自身の経験をお話しさせてください。

1人目の妊娠(長男)のとき、妊娠後期に入って急にいぼ痔ができ、座るのもつらいほど痛みが出た時期がありました。誰かに相談するのも気が引けて、最初はひとりで我慢していたのですが、健診のときに思い切って助産師さんに相談したところ「妊娠中はとてもよくある症状ですよ」と言ってもらえて、肩の力が抜けたのを覚えています。座浴とクッションを併用するようになってから、だいぶ楽に過ごせるようになりました。

2人目(長女)の出産では、分娩のいきみがきっかけで産後しばらく痔の症状に悩まされました。産後は赤ちゃんのお世話で自分の体のことは後回しになりがちですが、産婦人科で相談して軟膏を処方してもらい、少しずつ落ち着いていきました。

看護師時代も、「恥ずかしくて誰にも相談できなかった」という妊婦さんに何度もお会いしました。痔はデリケートな話題ですが、産婦人科のスタッフは日常的に相談を受けている症状のひとつです。「こんなことを聞いてもいいのかな」と思わず、遠慮なく伝えてほしいと改めてお伝えしたいです。

ちなみ(元看護師)

痔は決して珍しい症状ではなく、多くの妊婦さんが経験するものです。一人で抱え込まず、健診のときにひとことだけでも伝えてみてくださいね。それだけで気持ちが軽くなることもありますよ。

まとめ|妊娠中の痔は多くが体の変化によるもの——一人で我慢しないで

この記事のポイント
  • 妊娠中の痔の主な原因は、プロゲステロンによる血管のうっ血、子宮による骨盤内静脈の圧迫、便秘・下痢によるいきみの3つ。
  • 「いぼ痔(痔核)」は静脈のうっ血による腫れ、「切れ痔(裂肛)」は便秘などによる肛門の裂傷が中心。
  • 痔が悪化しやすいのは妊娠後期〜臨月。出産時の強いいきみで新たにできたり悪化したりすることも多い。
  • 対処の基本は「いきみすぎない排便」「座浴で温める」「長時間同じ姿勢を避ける」「クッション活用」「患部を清潔に」「締め付けない服」の6つ。
  • 市販薬(ボラギノール・ポステリザンなど)は自己判断を避け、必ず薬剤師・産婦人科医に相談してから使う。
  • 出血が多い・いぼが戻らない・強い痛みが続く・発熱を伴う場合は早めに産婦人科・肛門科に相談を。

妊娠中の痔は、体が赤ちゃんを育てるために変化しているサインのひとつであり、多くの妊婦さんが経験する症状です。恥ずかしさから一人で抱え込まず、「いつもと違う」と感じるサインがあれば、我慢せず産婦人科に相談してください。無理をせず、自分の体の声に耳を傾けながらこの時期を過ごしてくださいね。

よくある質問(妊娠中の痔|FAQ)

Q妊娠中の痔はいつから出やすいですか?

A.妊娠初期からホルモンの影響で起こることもありますが、子宮による骨盤内の圧迫が強まる妊娠中期以降、特に後期から臨月にかけて悪化しやすい傾向があります。便秘が重なるとさらに症状が出やすくなります。

Q妊娠中の痔は出産後に自然に治りますか?

A.出産による子宮の圧迫がなくなることで、産後数週間〜数か月かけて少しずつ軽快する方が多いです。ただし、出産時の強いいきみで一時的に悪化することも多く、症状が長引く場合は産婦人科や肛門科への相談をおすすめします。

Q市販の痔の薬(ボラギノールなど)は妊娠中でも使えますか?

A.局所用の痔疾用薬は全身への影響が比較的少ないと考えられていますが、自己判断での使用は避け、必ず薬剤師または産婦人科医に確認してから使用してください。妊娠週数や症状によって案内が異なることがあります。

Q痔は何科を受診すればいいですか?

A.妊娠中であれば、まずかかりつけの産婦人科で相談して問題ありません。症状が強い場合や専門的な処置が必要な場合は、肛門科・外科への紹介を案内してもらえます。受診の際は妊娠週数を必ず伝えましょう。

Q排便時に出血しました。痔の出血かどうかはどう見分けますか?

A.痔による出血は、紙に付着する程度の少量で鮮やかな赤色であることが多いとされます。ただし、出血の量が多い・続く・黒っぽい便が出るといった場合は、痔以外の原因の可能性もあるため自己判断せず、早めに産婦人科または医療機関に相談してください。

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