「陣痛バッグと入院バッグって、何がどう違うの?」「結局、何を入れればいいのか分からない」「調べるほどリストが長くなって、荷物が増えていく一方…」——出産が近づいてくると、入院の荷物づくりでこんなふうに手が止まってしまう方はとても多いです。ネットで見かける持ち物リストはどれも量が多くて、全部そろえたらとんでもない大荷物になってしまいますよね。
はじめまして、ちなみです。元看護師として病院勤務を経験し、現在は妊活・妊娠・子育てを中心に情報発信している男女2児のママです。この記事では、陣痛バッグと入院バッグの違いという基本から、それぞれに何を入れるのか、なぜ2つに分けるのか、バッグの大きさや形の選び方、いつから準備すればいいのか、帝王切開や里帰り出産の場合はどう変わるのかまで、順を追って整理していきます。
先にひとつお伝えしておきたいのは、この記事は「これを買いそろえましょう」という記事ではないということです。入院の荷物で本当に大事なのは、たくさん持っていくことではなく、陣痛のさなかに手が届く場所に、必要なものだけがある状態をつくることです。そして持ち物の半分近くは、あなたが出産する産院がすでに用意してくれています。読み終えたころに、あなたの荷物が「増えた」ではなく「減って、迷いがなくなった」となっているのが理想です。
ちなみ(元看護師)
陣痛バッグと入院バッグの違い|そもそも何が違うの?
まずは言葉の整理からはじめましょう。この2つは、どちらも「出産のために病院へ持っていく荷物」ですが、使うタイミングと、置かれる場所が違います。ここさえつかめれば、あとの中身は自然と決まっていきます。
陣痛バッグは「陣痛が始まってから赤ちゃんが生まれるまで」に使うもの
陣痛バッグは、陣痛が始まって病院へ向かい、分娩室(陣痛室)で赤ちゃんが生まれるまでのあいだ、手元に置いて自分ですぐ取り出すためのバッグです。この時間は人によって数時間のこともあれば、初産の方だと丸1日近くかかることもあります。その長い時間を少しでもラクに過ごすための道具が入る、と考えるとイメージしやすいと思います。
ここで大事なのは、陣痛の最中のあなたは、自分でバッグの中をごそごそ探せない状態になるということです。痛みの波が来ているあいだは、話すことすら難しくなります。だからこそ陣痛バッグは「たくさん入っている」よりも「少なくて、どこに何があるか付き添いの人でも分かる」ほうがずっと役に立ちます。
入院バッグは「産んだあとの入院生活」で使うもの
入院バッグは、出産が終わって病室に移ってから退院までの数日間、病室で使う生活用品をまとめたバッグです。日本では経腟分娩でおおむね4〜6日、帝王切開だと6〜10日ほど入院することが多く、その間の着替え・洗面用具・産後の体に必要なものが入ります。
入院バッグは、分娩が終わったあとで初めて開けるものです。つまりすぐ手元になくても困らない。この一点が、あとで説明する「なぜ2つに分けるのか」の答えに直結します。
3つ目の「退院バッグ」を用意する人もいます
最近は、退院の日に使うものだけをさらに分けて「退院バッグ」と呼ぶこともあります。中身は、あなたが着て帰る服、赤ちゃんの退院着とおくるみ、そして退院時の会計に必要なものなど。これは入院の途中で家族に持ってきてもらう荷物として用意しておくと、最初に持ち込む荷物をぐっと減らせます。
必ず3つに分けなければいけないわけではありません。「陣痛バッグ+入院バッグ」の2つでも十分回りますし、退院着だけ紙袋にまとめて夫に預けておく、というやり方でも問題ありません。分け方の名前にこだわるより、誰が・いつ・どこに運ぶのかで決めるのがいちばん実用的です。
- 陣痛バッグ:陣痛〜出産まで、分娩室で自分の手元に置くもの
- 入院バッグ:産後の入院生活で、病室のロッカーに入れて使うもの
- 退院バッグ:退院日に必要なもの(家族に後から持ってきてもらってもよい)
なぜ分けるのか|理由は「運ぶ人」と「置き場所」にあります
「わざわざ分けるのが面倒」と感じる方もいると思います。でも、分けるのにはちゃんと理由があります。看護師として産科の現場を見てきた経験からお伝えすると、理由は大きく3つです。
ひとつめは、分娩室と病室が別の場所だからです。多くの産院では、陣痛から出産までを過ごす部屋と、産後に入院する部屋が離れています。大きなキャリーケースを分娩室にまるごと持ち込むのは現実的ではなく、スタッフが移動のたびに運ぶことになります。手元に置く小さいバッグと、預けておく大きい荷物に分かれていると、その場のやりとりがぐっとスムーズになります。
ふたつめは、陣痛が来たとき自分で大荷物を運べないからです。陣痛は昼夜を問わず始まります。夜中にひとりでタクシーを呼んで向かうことも珍しくありません。そのときに持てるのは、片手で下げられる小さめのバッグだけです。大きい入院バッグは、あとから家族に届けてもらえばいい、と最初から決めておくと、いざというとき身軽に動けます。
みっつめは、付き添いの人に「これを取って」と伝えやすいからです。陣痛の合間に「そこの黒いバッグの、内ポケットのペットボトル」と説明するのは、痛みの中では本当に大変です。手元にあるのが小さな1つのバッグだけなら、「そのバッグの中」で通じます。
分けないという選択もあります
一方で、分けなくても困らないケースもあります。たとえば、予定帝王切開で入院日が決まっている場合。この場合は自分の足で歩いて入院手続きをして、荷物を病室に置いてから分娩に臨むので、陣痛バッグという発想そのものがあまり必要ありません。
また、分娩室と病室が同じ部屋(LDR)の産院や、家から病院までが近くて家族がすぐ荷物を届けられる環境なら、1つにまとめても実際には回ります。無理に2つ買いそろえる必要はまったくありません。1つの大きいバッグの中に、小さいポーチで「陣痛中に使うものセット」を作っておく——これでも分けたのと同じ効果が得られます。
迷ったときの判断はシンプルで、「陣痛が来た夜中に、これをひとりで持って玄関を出られるか?」と自分に聞いてみてください。持てるなら1つで大丈夫。持てないなら、手元用を分けたほうがラクになります。

陣痛バッグの中身リスト|使う順番に並べて考えます
ここからは中身に入ります。よくあるリストは「あったら便利なもの」まで全部並んでいるので、読むほど不安になってしまうんですよね。そこでこの記事では、使う場面ごとに層を分けて並べます。上から順に、上の層ほど「絶対に必要」です。時間がないときは、いちばん上の層だけ用意すれば病院にはたどり着けます。
これだけは絶対に必要な「受付で出すもの」
まず、これがないと受付で困る、という書類関係です。ここは家に置いてくることがいちばん多く、そしていちばん困る部分でもあります。
母子健康手帳は、妊娠中の経過・血液型・アレルギー・これまでの健診結果がすべてまとまった、あなたと赤ちゃんの大事な記録です。里帰りやかかりつけ以外の産院に運ばれた場合でも、これがあれば経過が一目で分かります。母子健康手帳は母子保健法に基づいて市区町村が交付するもので、出産後も予防接種の記録などで長く使い続けます。妊娠後期に入ったら、外出時は常にかばんに入れておくのがいちばん確実です。
健康保険の資格を確認できるものも必須です。ここは以前の記事や本と変わっている部分なので、少していねいにお伝えします。従来の紙やカードの健康保険証は2024年12月2日以降は新たに発行されなくなり、有効期限も2025年12月1日で終わりました。いまは、健康保険証としての利用登録をしたマイナンバーカード(マイナ保険証)を提示するか、マイナ保険証を持っていない方に交付される資格確認書を提示する形になっています。
つまり、少し前に書かれた持ち物リストの「保険証」という項目は、いまは「マイナンバーカード、または資格確認書」と読み替える必要があります。出産そのものは病気ではないため保険診療にはなりませんが、分娩の経過で医療処置が入ったとき、赤ちゃんに治療が必要になったときには保険が使われますから、どちらかは必ず持っていってください。手元にどちらもない、有効期限が切れているかもしれない、という方は、いまのうちに加入している健康保険の窓口に確認しておくと安心です。
参考 資格確認書について(マイナ保険証を使わない場合の受診方法)厚生労働省
そのほか、診察券、印鑑(同意書などで求められる産院があります)、そして現金。現金は「カードが使えるから要らない」と思われがちですが、夜間の売店やコインランドリー、テレビカード、タクシー代など、小銭でしか動かない場面が入院中は意外とあります。千円札と小銭を少し多めにしておくと、地味にとても助かります。
陣痛の長い時間を乗り切るためのもの
次が、陣痛室で実際に使う道具です。ここが陣痛バッグの本体と言ってもいい部分です。
ペットボトル用のストローキャップは、陣痛バッグの中でいちばん「持ってきてよかった」と言われるものかもしれません。陣痛中は横になったまま、あるいは四つん這いの姿勢のまま水を飲みたい場面が続きます。起き上がってキャップを開けて飲む、という一連の動作が、痛みの合間だと本当につらいのです。ストローがついていれば、寝たまま口を近づけるだけで飲めます。百円ショップやドラッグストアで手に入りますし、なければ普通のストローを何本か入れておくだけでも代わりになります。
テニスボールやゴルフボールも定番です。陣痛が強くなってくると、おしりのあたりを強く押されると少しラクに感じる方が多く、付き添いの人に押してもらうために使います。硬式のテニスボールが押しやすいと言われますが、握りこぶしでも代用できますし、押してもらうこと自体が合わない方もいます。「絶対に必要」ではなく、試して合えばラッキーくらいの位置づけで持っていくとちょうどよいと思います。
ゼリー飲料やひとくちで食べられるものも、あると心強いです。陣痛が長引くと体力を使いますが、食事の時間どおりに食べられるとは限りません。片手で吸えるゼリー飲料や、小分けのラムネのようなものが、途中のエネルギー補給になります。ただし、産院によっては分娩中の飲食に制限がある場合があります。特に帝王切開の可能性がある方は、飲食のタイミングに指示が出ることがあるので、持っていくのは自由ですが、その場でスタッフに一声かけてから口にしてください。
汗をふくタオル・リップクリーム・髪をまとめるゴム。この3つは小さいのに効きます。陣痛中は驚くほど汗をかきますし、口で呼吸を続けるので唇が乾きます。髪が顔にかかるのも地味にストレスになります。ヘアバンドやシュシュのように、寝たままつけられるものがおすすめです。
スマートフォンと充電器も忘れずに。ここでのポイントはケーブルを長めのものにすることです。分娩室のベッドはコンセントから遠いことが多く、短いケーブルだと充電しながら手元で使えません。1.5〜2メートルあると安心です。家族への連絡、陣痛の間隔の記録、音楽を聴いて気を紛らわせる——すべてスマホ頼みになるので、バッテリー切れは避けたいところです。
加えて、羽織るものと靴下。陣痛室は体温調節が難しく、汗をかいたあとに急に冷えることがあります。足元だけでも温かいと、体の力が抜けやすくなります。
- 母子健康手帳/診察券/マイナンバーカードまたは資格確認書/印鑑
- 現金(千円札と小銭を多めに)
- スマホ+長めの充電ケーブル
- ペットボトル飲料+ストローキャップ(またはストロー)
- ゼリー飲料など片手で摂れるもの
- タオル1〜2枚・リップクリーム・髪ゴムやヘアバンド
- 靴下・羽織るもの
- テニスボール(合いそうなら)
- ナプキンや産褥ショーツを1枚(破水に備えて)
破水して向かうときに助かるもの
陣痛より先に破水することもあります。破水すると羊水が流れ続けるため、移動中の座席が心配になりますよね。厚手の夜用ナプキンや産褥ショーツを1〜2枚陣痛バッグに入れておくと、そのまま当てて移動できます。バスタオルやレジャーシートを車に積んでおく、という備え方をしている方もいます。
なお、破水かどうか自分では判断がつきにくいこともあります。判断の目安や、破水したときにすぐすべきことは別の記事で詳しくまとめていますので、あわせて読んでおくと落ち着いて動けます。
破水とは?どんな感じ?色・匂いの見分け方から高位破水・前期破水、破水したらすべきことまで元看護師が解説
「あって良かった」と言われるもの、実は使わなかったもの
体験談で人気の高いアイテムほど、実際には使わなかった、という声も多く聞きます。ここは正直にお伝えしておきますね。
使わないことが多いものの代表は、うちわ・アロマ・カメラ・本や雑誌です。うちわは「暑いときにあおいでもらう」ためによく挙がりますが、実際には付き添いの人が別のことで手いっぱいだったり、そもそもエアコンで十分だったりします。アロマは香りに敏感になっている時期なので、気分が悪くなる方もいます。本や雑誌は、陣痛が本格化したら開く余裕はまずありません。
逆に「これは正解だった」と言われやすいものは、地味なものばかりです。ストローキャップ、長い充電ケーブル、髪ゴム、靴下、小銭。どれも数百円で、かさばりません。陣痛バッグは、高いものより小さくて安いものが活躍する——これは覚えておいて損のない感覚だと思います。
そしてもうひとつ。SNSで見かける「陣痛バッグの中身」の写真は、きれいに並んでいてつい真似したくなりますが、あれは撮影のために全部出して並べたものです。全部そろえないと不安、と感じる必要はまったくありません。あなたの産院が何を用意してくれるかによって、必要なものは大きく変わります。

入院バッグの中身リスト|産後の入院生活で本当に要るもの
続いて入院バッグです。こちらは「持っていくものを決める」前に、必ずやってほしいことがあります。
まず産院からもらった案内を読み直す
入院の荷物で無駄が出るいちばんの原因は、産院が用意してくれるものを自分でも買ってしまうことです。多くの産院は入院セットを用意していて、パジャマ・タオル・産褥ショーツ・産褥パッド・骨盤ベルト・洗面用具・赤ちゃんの肌着とおむつ・お尻ふきなどが含まれていることがあります。含まれる範囲は産院によってまったく違い、「すべて込み」のところもあれば「タオルのみ」のところもあります。
ですので、いちばん確実で、いちばん荷物が減る方法は母親学級や妊婦健診で渡された入院案内をもう一度読むことです。手元に見当たらなければ、健診のときに「入院時に病院で用意していただけるものを教えてください」と聞けば、たいてい一覧をくれます。この一手間で、荷物が半分になることも珍しくありません。
ちなみ(元看護師)
ママの身のまわりのもの
パジャマ(2〜3着)は、産院が用意していない場合に必要です。選ぶときのポイントは3つあります。前開きであること、丈が長すぎないこと、そして汚れてもいい色や柄であることです。産後は悪露があり、母乳がにじむこともあるので、真っ白のものより濃いめの色や柄物のほうが気楽に過ごせます。授乳の際は前を開けて胸を出すので、かぶりタイプよりも前開きが圧倒的にラクです。
産褥ショーツ(2〜3枚)は、股の部分が開閉できる下着です。分娩直後や産後しばらくは、横になったまま悪露の量を確認したり、傷の処置を受けたりする場面があります。そのときに、下着を脱がずに開けられるのがこのショーツです。すべての日数分をそろえる必要はなく、産後2〜3日を過ぎたら普通の産後用ショーツに切り替える方がほとんどです。
産褥パッド(お産用ナプキン)は、産後の悪露を受けるためのものです。産後すぐは量が多いためLサイズを、日が経つにつれてM・Sと小さくしていきます。産院で必要量が用意されていることも多いので、ここも確認どころです。悪露がいつまで続くか、色や量がどう変わっていくのかを知っておくと、退院後に慌てずにすみます。
授乳用のブラジャーやキャミソール(2〜3枚)。産後は胸が張って形が変わるので、妊娠前のブラジャーは合わなくなることが多いです。締めつけの少ない授乳用のものを用意しておくと、胸のトラブルを起こしにくくなると言われています。あわせて母乳パッドもあると安心ですが、母乳の出方には個人差が大きいので、最初は少量で様子を見て、必要なら家族に買い足してもらうくらいがちょうどいいです。
洗面用具・スキンケア・シャンプー類は、ふだん使っているものを小さい容器に移して。産後は肌が敏感になる方もいるので、新しいものを試すより、使い慣れたものが無難です。スリッパ(かかとのあるもの)も忘れがちですが大事です。産後はふらつくことがあるため、脱げやすいサンダル型より、かかとが覆われているもののほうが安全です。
産後の体のつらさに備えるもの
ここは、リストにあまり載っていないけれど実際にはとても助かる部分です。産後の体は、想像以上にいろいろな場所が痛みます。
円座クッション(ドーナツ型のクッション)は、会陰の傷や痔の痛みで座るのがつらいときに使うものです。産院で貸してもらえることも多いので、まず確認を。羽織るカーディガンやストールは、産後の授乳中に肩や背中が冷えるのを防いでくれます。ペットボトル飲料も多めに。授乳が始まると驚くほど喉が渇きます。
そして意外と見落とされるのがふだん飲んでいる薬やサプリです。持病がある方は、産院にあらかじめ伝えたうえで持参してください。授乳中に飲めるかどうかは自己判断せず、必ず医師や薬剤師に確認しましょう。
産後の入院中は、後陣痛(子宮が元に戻るときの痛み)で眠れないこともあります。これは経産婦さんのほうが強く感じやすいと言われている痛みで、知らずに迎えると「どこかおかしいのでは」と不安になりがちです。事前に読んでおくと心構えができます。
後陣痛とは?いつからいつまで続く・どんな痛み・和らげ方を元看護師が解説
赤ちゃんのもの
入院中の赤ちゃんの肌着・おむつ・お尻ふき・ミルクは、産院で用意されていることが多いです。ですので、あなたが本当に準備するのは退院の日に使うものだけ、というケースがほとんどです。
必要なのは、退院時の肌着とベビー服(短肌着+長肌着+セレモニー用のカバーオールなど)、おくるみやアフガン、そして季節に応じた帽子や靴下です。生まれてくる赤ちゃんの大きさは事前に確定できないので、新生児サイズと50〜60サイズを想定しておけば大きく外しません。
そして、車で退院するならチャイルドシートが必須です。これは「あると便利」ではなく法律上の決まりで、6歳未満の子どもを車に乗せるときにはチャイルドシートを使わなければならないとされています。生まれたその日の退院から対象になりますから、出産前に取り付けまで済ませておくことをおすすめします。買っただけで車に載せていない、取り付け方が分からない、という状態で退院日を迎えるとかなり慌てます。タクシーで帰る場合は義務の対象外とされていますが、事前に配車の相談をしておくと安心です。
書類・お金まわりで入院中に動くもの
入院中は、意外と書類のやりとりがあります。よく登場するのが出産育児一時金の直接支払制度に関する合意文書です。これは、出産にかかった費用を健康保険から産院へ直接支払ってもらう仕組みで、入院予約時や入院時に産院と書面を交わします。この制度を使うと、退院時の窓口での支払いは差額分だけで済みます。手続き自体は産院が案内してくれるので、こちらから何かを持っていく必要はありませんが、「そういう書類にサインする場面がある」と知っておくだけで落ち着いて対応できます。
もうひとつが出生届です。出生届の用紙は右半分が「出生証明書」になっていて、そこは産院の医師や助産師が記入します。届出は生まれた日を含めて14日以内と定められているので、退院前後に動くことになります。名前を決めておく、届出に行く人を決めておく、印鑑の準備をしておく——このあたりを入院前に家族と話しておくと、産後のバタバタが減ります。
あわせて、自治体によっては母子健康手帳と一緒に出生連絡票(新生児訪問の申込はがき)が入っていることがあります。産後の家庭訪問につながる大事な書類なので、母子健康手帳を開いて一度確認しておいてください。
- 前開きパジャマ 2〜3着(濃いめの色・柄物が安心)
- 産褥ショーツ 2〜3枚/産後用ショーツ 2〜3枚
- 産褥パッド(L・M)/母乳パッド
- 授乳ブラ・授乳キャミソール 2〜3枚
- 洗面用具・シャンプー類・スキンケア・歯ブラシ
- タオル(バスタオル1〜2枚・フェイスタオル数枚)
- かかとのあるスリッパ/羽織るもの/靴下
- 飲み物・軽食・ストローキャップ
- ふだん飲んでいる薬(産院に申告のうえ)
- 退院時のママの服/赤ちゃんの退院着・おくるみ
- チャイルドシート(車の場合は取り付けまで完了させておく)
バッグの大きさと形はどう選ぶ?リュック・トート・キャリーの使い分け
中身が決まったら、次は入れ物です。ここは「どれが正解」というより、誰が持つのかで決まります。
陣痛バッグは「自分が片手で持てる大きさ」が絶対条件
陣痛バッグの大きさの目安は、お出かけ用のトートバッグや、少し大きめのマザーズバッグくらい。容量でいうと10〜15リットル程度が扱いやすいサイズです。これ以上大きいと、陣痛のさなかに持ち歩けません。
形については、両手が空くリュックを選ぶ方が増えています。陣痛の波が来たときに壁や手すりにつかまれるので、ひとりで病院に向かう可能性がある方には特に向いています。一方でトートバッグは、口が広くて中が見渡せるのが利点です。付き添いの人が「どこに何があるか」をすぐ把握できます。
どちらでも構いませんが、共通して大事なのは口が大きく開くことと中で仕切られていることです。細長い口の巾着型は、寝たまま中を探るのに向きません。100円ショップのメッシュポーチなどで「書類」「飲食」「タオル類」と小分けにしておくと、探す時間がぐっと減ります。
入院バッグはキャリーケースが便利な場合とそうでない場合があります
入院バッグの目安は、1〜2泊の旅行かばんくらい。容量でいうと30〜40リットル前後、キャリーケースならSサイズ(機内持ち込みサイズ)が目安になります。
キャリーケースが向いているのは、荷物を運ぶ距離が長い場合です。里帰りで新幹線や車で移動する、病院の駐車場から病棟まで遠い、といったケースでは車輪があると本当にラクです。逆に向かないのは、病室が狭い産院や、床に広げて置くスペースがない場合。キャリーケースは開くのに床面積が要るうえ、ベッドサイドに置くと通路をふさいでしまいます。大きめのボストンバッグのほうが、収納棚にそのまま入れられて扱いやすいこともあります。
判断に迷ったら、健診のときに「病室にはどれくらいの荷物が置けますか」と聞いてしまうのがいちばん早いです。ロッカーのサイズを教えてくれる産院もあります。
100円ショップや無印でそろえるという考え方
入院のためだけに新しいバッグを買う必要は、実はあまりありません。家にある旅行かばんとトートバッグで十分回ります。買い足すとしても、活躍するのは中の整理用品のほうです。
100円ショップで手に入るもので便利なのは、クリアポーチ・メッシュポーチ・圧縮できる収納袋・ジッパー付き保存袋・S字フックあたりです。中でもジッパー付き保存袋は万能で、汚れた下着を入れる、母子健康手帳を雨から守る、小銭をまとめる、と何役もこなします。S字フックは、ベッド柵にバッグを掛けて手元に置くのに使えます。
無印良品のような、中身が見える収納ケースやトラベル用のポーチも人気があります。ポイントはブランドではなく「中身が見える」「立てて置ける」という機能です。ここを基準にすれば、どこで買っても同じように使えます。

いつから準備する?いつまでに完成させておけば安心?
準備の時期は、多くの方が気にされるところです。結論からお伝えすると、妊娠32〜34週ごろまでに一度完成させておくのがひとつの目安になります。
入院の荷物だけでなく、ベビー用品や家の準備を含めた全体のスケジュールは別の記事にまとめています。「いつ何を買うか」で迷っている方はあわせてご覧ください。
出産準備はいつから始める?妊娠月数別スケジュールと「買わなくてよかった」を防ぐ考え方を元看護師が解説
妊娠32〜34週を目安にする理由
正期産と呼ばれる「赤ちゃんが十分に育って生まれてくる時期」は妊娠37週0日からで、この時期に入ればいつ陣痛が来てもおかしくありません。つまり37週を迎える前に荷物ができあがっている必要があります。
ただ、妊娠36週を過ぎるころにはおなかが大きく張り出して、しゃがんで荷物を詰めるのがかなりつらくなります。買い物に出るのも体力を使います。ですから、体がまだ動きやすい32〜34週のうちに一度完成させて、その後は微調整だけにするという流れがいちばん現実的なのです。里帰り出産をされる方は、実家へ移動する時期がちょうどこのころなので、移動前に完成させておくと二度手間になりません。
妊娠週数の数え方や、いまが何週にあたるのかがあいまいな方は、こちらで確認しておくと計画が立てやすくなります。
妊娠週数の数え方|受精より2週早いのはなぜ?週数↔月数の早見表・出産予定日まで元看護師が解説
早めに用意しておいたほうがいい人
次のような方は、もう少し早め、妊娠中期のうちから少しずつ進めておくと安心です。
- 切迫早産と言われている、おなかの張りで安静の指示が出ている
- 双子など多胎妊娠で、早めの入院になる可能性がある
- 前置胎盤・低置胎盤など、急な出血で緊急入院の可能性がある
- 里帰り出産で、長距離の移動が必要
- 上の子がいて、自由に買い物に行ける時間が限られている
特に切迫早産で管理入院になった場合、そのまま出産まで病院で過ごすことになる可能性もあります。「入院中に使うもの」と「分娩の荷物」を最初から一緒にしておくと、家族が届けるものが少なくてすみます。
当日入れるもののメモを作っておく
スマホ、充電器、メガネやコンタクト、財布、飲みかけの飲み物。これらはふだん使っているので、事前にバッグへ入れておけないものです。当日になって「あれも入れなきゃ」と考える余裕はないので、当日入れるものを紙に書いてバッグの上に置いておくのがおすすめです。付き添いの人がそれを見て詰めることもできます。
そもそも「どのタイミングで病院に連絡すればいいのか」が不安な方は、陣痛の間隔や受診の目安を先に確認しておくと、荷物より先に気持ちが落ち着きます(記事の最後に関連記事を置いていますので、あわせてご覧ください)。
帝王切開の場合、入院バッグはどう変わる?
帝王切開で出産する場合、荷物の考え方は少し変わります。
予定帝王切開なら陣痛バッグはほぼ不要
あらかじめ手術日が決まっている予定帝王切開の場合、多くは手術の前日に入院します。自分の足で歩いて病室に入り、荷物を置いてから手術に臨むので、「陣痛のさなかに手元に置く小さいバッグ」という発想はあまり必要ありません。入院バッグ1つにまとめて構いません。
ただし、予定日より前に陣痛が来たり破水したりして、緊急で手術になる可能性はゼロではありません。母子健康手帳・診察券・マイナンバーカードまたは資格確認書・スマホと充電器だけをまとめたポーチを作って、ふだんのかばんに入れておくと安心です。
帝王切開ならではの「あると助かるもの」
帝王切開は開腹手術ですから、術後しばらくはおなかに力を入れる動作がとてもつらくなります。起き上がる、かがむ、といった何気ない動きが難しい時期があります。そこで役に立つのが次のようなものです。
- 長めのストロー・ストローキャップ:起き上がらずに水分がとれる
- おなかを締めつけないゆったりした下着とパジャマ:傷の位置にゴムが当たらないもの
- 羽織りやすい前開きの上着:腕を上げてかぶる動作がつらいため
- スマホスタンドやS字フック:寝たまま画面を見られるように
- すべりにくく、かかとのあるスリッパ:術後の歩行練習で使う
- ウェットティッシュや洗い流さないシャンプー:シャワーが許可されるまでの数日間に
また、入院期間が経腟分娩より数日長くなるため、着替えの枚数を少し多めに見ておくとよいでしょう。手術の流れや痛みの経過、費用については別記事で詳しくまとめています。
帝王切開とは?流れ・痛みはいつまで・入院期間や費用を元看護師が解説
里帰り出産の場合の荷物の考え方
里帰り出産をする方は、「実家に運ぶ荷物」と「産院に持っていく荷物」を分けて考えると混乱しません。
実家に運ぶのは、産後1か月ほどの生活に必要なもの一式。産院に持っていくのは、この記事で挙げてきた陣痛バッグと入院バッグです。移動のときに全部を一度に運ぼうとすると大荷物になりますから、宅配便で先に実家へ送っておいて、自分は身軽に移動するという方法をとる方が多いです。
注意したいのは、実家に着いてから入院バッグを組み直す必要があることです。送った段ボールの中身がそのまま入院バッグになるわけではないので、実家に着いた週のうちに一度中身を並べて、バッグに詰め直しておきましょう。おなかが大きくなる前にやっておきたい作業です。
里帰りの時期・手続き・実家での過ごし方については、こちらでまとめて解説しています。
里帰り出産とは?いつ帰る・いつ戻る・手続き・お礼まで元看護師が解説
持っていかないほうがいいもの・置いていって大丈夫なもの
最後に、荷物を減らす視点も置いておきます。ここを知っておくと、長いリストを見ても不安になりにくくなります。
高価なアクセサリー・指輪は置いていきましょう。むくみで指輪が抜けなくなることがありますし、分娩や手術の前には外すよう案内されます。病室は完全に施錠できるとは限らないので、貴重品はそもそも持ち込まないのが安全です。大きな金額の現金も同じ理由で避け、退院時の支払いは家族に持ってきてもらうか、カードや振込に対応しているかを事前に確認しておきましょう。
香りの強いもの(香水・香りの強い柔軟剤で洗った衣類・アロマ)は、産後のホルモンの変化で自分自身が受けつけなくなることがありますし、同室の方や赤ちゃんへの配慮という意味でも控えめが無難です。
大量の本・雑誌・パソコンも、多くの場合は開かないまま持ち帰ることになります。産後の入院中は、3時間おきの授乳と睡眠不足で、ゆっくり読書をする時間はほとんどありません。「暇になったら困る」と思って詰めた荷物が、退院のときにいちばん重くなっている。これは本当によくある話です。
そしておむつや粉ミルクの大量買い。赤ちゃんの体格や肌の状態、母乳の出方によって、退院後に必要なものは変わります。産後に家族が買い足せばいいので、入院前に買い込む必要はありません。
ちなみ(元看護師)
立ち会う夫の側にも、用意しておくと役に立つものがあります。当日の流れとあわせてこちらにまとめています。
立ち会い出産で夫は何をする?当日の流れと「見たくない」旦那の本音・臭いの実際を元看護師が解説
よくある質問
Q陣痛バッグには何を入れるべきですか?
A.最低限そろえたいのは、母子健康手帳・診察券・マイナンバーカード(または資格確認書)・印鑑・現金(小銭多め)・スマホと長めの充電ケーブルです。そのうえで、ストローキャップ付きの飲み物、ゼリー飲料、タオル、リップクリーム、髪ゴム、靴下、羽織るものを足すと陣痛中を過ごしやすくなります。破水に備えて厚手のナプキンか産褥ショーツを1枚入れておくと移動が安心です。
Q陣痛バッグと入院バッグは何が違うのですか?
A.使うタイミングと置き場所が違います。陣痛バッグは陣痛から出産までのあいだ、分娩室で自分の手元に置いて使うもの。入院バッグは出産後の入院生活で、病室に置いて使うものです。陣痛のさなかは自分でバッグの中を探せないため、手元用は小さく、中身が少ないほうが役に立ちます。
Q陣痛バッグはリュックとトート、どちらがいいですか?
A.どちらでも構いませんが、ひとりで病院へ向かう可能性があるなら両手が空くリュックが安心です。付き添いの人に中身を取ってもらうことが多そうなら、口が広くて中が見渡せるトートが便利です。共通して大事なのは、口が大きく開くことと、ポーチなどで中を仕切っておくことです。
Q陣痛バッグと入院バッグは必ず分けないといけませんか?
A.分けなくても大丈夫なケースはあります。予定帝王切開の方、分娩室と病室が同じ部屋の産院、家族がすぐ荷物を届けられる環境なら1つにまとめても回ります。判断の目安は「陣痛が来た夜中に、これをひとりで持って玄関を出られるか」。持てないなら手元用を分けたほうがラクです。1つのバッグの中に陣痛中に使うものだけのポーチを作る、という方法でも同じ効果があります。
Q入院バッグはいつまでに準備すればいいですか?
A.妊娠32〜34週ごろまでに一度完成させておくのが目安です。いつ陣痛が来てもおかしくない正期産(妊娠37週0日以降)に入る前に終えておきたいうえ、36週を過ぎるとおなかが大きくて荷物を詰める作業自体がつらくなるためです。切迫早産と言われている方や多胎妊娠の方、里帰りで長距離移動がある方は、妊娠中期のうちから少しずつ進めておくと安心です。
まとめ|荷物より先に「置き場所の共有」を
陣痛バッグと入院バッグの準備は、リストの長さに圧倒されてしまいがちですが、考え方はとてもシンプルです。陣痛中に自分の手元で使うものだけを小さくまとめ、それ以外は後から運べばいい。そして、持ち物の半分近くは産院がすでに用意してくれています。
だからこそ、いちばん最初にやるべきことは買い物ではなく、産院からもらった入院案内をもう一度読むことです。そこで「用意されているもの」が分かれば、あなたが買うべきものは驚くほど少なくなります。そして最後の仕上げは、バッグの置き場所を家族に伝えること。どんなに完璧な荷物でも、当日に誰も場所を知らなければ意味がありません。
- 陣痛バッグ=分娩室で自分の手元に置くもの、入院バッグ=産後の病室で使うもの
- 分ける理由は「陣痛中に自分で大荷物を運べない」「分娩室と病室が別」「付き添いに伝えやすい」の3つ
- 1つにまとめても構わない。判断基準は「夜中にひとりで持って玄関を出られるか」
- 保険証は現在、マイナンバーカード(マイナ保険証)または資格確認書に切り替わっている
- 買う前に、産院が用意してくれるものを必ず確認する(ここで荷物が半分になることも)
- 車で退院するならチャイルドシートは法律上の決まり。取り付けまで出産前に済ませる
- 準備の目安は妊娠32〜34週。切迫早産や里帰りの方はさらに早めに
- 完成したら、置き場所と当日入れるもののメモを家族と共有する
荷物が完璧でなくても、お産は進みます。忘れ物をしても、家族が届けてくれますし、産院が貸してくれます。どうか「用意しきれていない」と自分を責めないでくださいね。あなたと赤ちゃんが安心してその日を迎えられますように。
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