「バースプランって、何を書けばいいの?」「初産だから、お産のイメージなんてまったく思いつかない」「そもそも書いたとおりになるものなの?」——妊娠後期の健診でバースプランの用紙を渡されて、ペンが止まってしまった方は本当に多いと思います。
はじめまして、ちなみです。元看護師として病院勤務を経験し、現在は妊活・妊娠・子育てを中心に情報発信している男女2児のママです。この記事では、バースプランとは何か、いつ・何を書くのか、そのまま参考にできる例文、思いつかないときのヒント、そして「書いてよかった」と感じられる理由まで、順を追って解説します。
ちなみ(元看護師)
バースプランとは
「どんなお産にしたいか」を医療者と共有するための用紙
バースプランとは、これから出産する方が自分の希望や不安を書き出し、産院の医療スタッフと共有するための用紙です。東大病院産婦人科は、バースプランを「出産されるママ自身がご自分の出産についてイメージを持ち、どのような出産にしたいかを考え主体的に出産に臨むためのもの」と説明しており、ご家族とともに心の準備をすることができるとしています。
関西ろうさい病院産科でも、バースプランを「妊婦さんとご家族が妊娠中やお産についての希望や一緒に頑張ること、助産師に求めることなどを記入する用紙」と説明しています。つまり、あなたから医療者へ向けた「お産のときにこうしてもらえたら安心です」という手紙のようなものだと考えるとイメージしやすいでしょう。
「必ずそのとおりになる約束」ではない
ここはとても大事なところなので、先にお伝えしておきます。バースプランは希望を伝えるためのものであり、契約書や約束ではありません。お産はそのときのお母さんと赤ちゃんの状態によって進み方が変わるため、安全を優先して、書いた内容とは違う対応になることもあります。
だからといって、書く意味がないわけではまったくありません。東大病院産婦人科は「バースプランの内容はいつでも(分娩中でも!)変更可能です」と明記しています。変えていいものだからこそ、まずは今の気持ちを書いてしまってよい——そう考えると、ぐっと書きやすくなるはずです。
参考 バースプラン東大病院 産婦人科 総合周産期母子医療センター
バースプランはいつ書く?どこでもらえる?
バースプランを書く時期は、出産準備全体のスケジュールのなかでは妊娠7〜8か月ごろにあたります。ほかに何をいつやるかは、こちらで時期別にまとめました。
出産準備はいつから始める?妊娠月数別スケジュールと「買わなくてよかった」を防ぐ考え方を元看護師が解説
妊娠後期の助産師外来で渡されることが多い
バースプランを渡される時期は産院によって違いますが、妊娠後期に入ってからというところが多いようです。国立成育医療研究センターの助産師外来では、妊娠26週前後と妊娠32週前後の1〜2回にわたって保健指導が行われ、その中で「バースプランの内容確認」が項目として挙げられています。用紙については「バースプラン用紙(妊娠32週前後の回で用います)」と案内されています。
妊娠32週というと、出産までまだ2か月ほどある時期です。「もう書くの?」と感じるかもしれませんが、この時期に一度お産のことを考えておくと、入院準備や心の準備にもつながっていきます。妊娠週数の数え方や正期産の考え方があいまいな方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
妊娠週数の数え方|受精より2週早いのはなぜ?週数↔月数の早見表・出産予定日まで元看護師が解説
提出したあとでも、書き直したり付け足したりできる
一度提出したら終わりというものではありません。妊娠が進んで気持ちが変わることもあれば、健診で新しく分かったことをふまえて希望が変わることもあります。そのつど助産師に伝えれば大丈夫です。書いた内容は、健診のときに助産師と一緒に見ながら話し合うための「たたき台」だと考えてください。

バースプランに書く項目
産院ごとに用紙の形式は違いますが、聞かれる内容はおおむね共通しています。関西ろうさい病院産科が挙げているバースプランの記入項目を参考に整理すると、次のようになります。
- 産前の過ごし方について
- 夫(パートナー)のサポートについて
- 陣痛中にしたいこと
- 陣痛促進剤について
- 分娩スタイルについて
- 立ち会いについて
- 分娩時の処置について
- 赤ちゃんが生まれた後にしたいこと
- 入院中の生活について
- 母子同室について
- 授乳について
立ち会い出産を希望するかどうかも、バースプランに書いておく項目のひとつです。当日の流れや夫の役割、途中で退室していいかまで含めて、こちらの記事にまとめています。
立ち会い出産で夫は何をする?当日の流れと「見たくない」旦那の本音・臭いの実際を元看護師が解説
陣痛中にしたいこと・してほしいこと
陣痛が始まってから生まれるまでの時間は、想像以上に長くなることがあります。そのあいだをどう過ごしたいかは、いちばん書きやすい項目のひとつです。好きな音楽を流したい、部屋を暗めにしてほしい、腰をさすってほしい、飲み物をこまめに飲みたい、逆にそっとしておいてほしい——どれも希望として伝えて大丈夫です。陣痛そのものの流れを知っておきたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
陣痛とは?間隔・痛みの強さ・病院へ行くタイミングを元看護師が解説
分娩スタイルと立ち会いについて
いきむときの姿勢(分娩スタイル)に希望があれば書いておきます。ただし、対応できる姿勢は施設の設備や方針によって異なるため、「こういう姿勢が希望ですが可能でしょうか」と確認する形で書くのがおすすめです。立ち会いについては、誰が立ち会うか、どこまで(陣痛室までか、分娩室までか)を希望するかを書きます。立ち会いのルールも産院ごとに違うので、あわせて確認しておくと当日あわてずに済みます。
麻酔・陣痛促進剤・分娩時の処置について
痛みを和らげる方法についての希望も、遠慮せずに書いてよい項目です。硬膜外麻酔を使う無痛分娩を希望する場合は、対応している施設かどうか、計画的に行うのか陣痛が来てから始めるのかなど、事前に確認しておきたいことが多くあります。無痛分娩の仕組みやメリット・デメリットについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
無痛分娩とは?メリット・デメリットから費用まで元看護師が解説
陣痛促進剤や会陰切開といった処置についても、「できるだけ避けたい」「必要なら説明してから行ってほしい」といった形で希望を書くことができます。ただし、これらは赤ちゃんとお母さんの安全のために必要になる場面がある処置です。「絶対にしない」ではなく「判断するときに一声かけてほしい」という書き方にしておくと、当日の医療者とのやりとりがスムーズになります。
赤ちゃんが生まれた直後にしてほしいこと
生まれた直後に胸の上で抱っこしたい、へその緒を家族に切ってもらいたい、写真や動画を撮りたい、体重を測る前に少し抱かせてほしい——このあたりは希望が分かれやすく、書いておくと当日の流れが変わりやすい項目です。赤ちゃんの状態によっては先に処置が必要になることもありますが、希望を知っていれば、落ち着いたタイミングで叶えてもらえることもあります。
入院中の生活・母子同室・授乳について
入院中をどう過ごしたいかも大切な項目です。母子同室を希望するか、夜間は預けて休みたいか、母乳で育てたいか、ミルクも併用したいか。ここは「こうしなければいけない」と気負いがちなところですが、産後の体調は人それぞれです。「体調次第で変えたい」と書いておいてもまったく問題ありません。
里帰り出産を考えている方は、里帰り先の産院でバースプランをどう伝えるかも気になるところ。いつ実家へ帰っていつ戻るか、分娩予約や紹介状などの手続き、お礼の考え方まで整理したこちらの記事もあわせてご覧ください。
里帰り出産とは?いつ帰る・いつ戻る・手続き・お礼まで元看護師が解説
バースプランを考えたら、次は入院の荷物づくりです。陣痛バッグと入院バッグを分ける理由や、それぞれの中身、準備を始める時期の目安はこちらの記事で整理しています。
陣痛バッグと入院バッグの中身リスト|違い・分ける理由・いつから準備するかを元看護師が解説
参考 バースプラン独立行政法人 労働者健康安全機構 関西ろうさい病院 産科
バースプランの例文|初産の方もそのまま参考にできる書き方
ここからは、実際に使える言い回しを項目別に紹介します。そのまま写すのではなく、自分の気持ちに近いものを選んで、言葉を少し入れ替えて使ってみてください。
陣痛中の過ごし方についての例文
- 初めての出産で不安が大きいので、進み具合をそのつど教えていただけると安心します。
- 痛みが強くなってきたら、腰やお尻をさすっていただけるとうれしいです。
- 照明を少し落として、静かな環境で過ごしたいです。
- 自分で選んだ音楽を小さな音量で流したいです。
- 汗をかきやすいので、こまめに水分をとれるようにしておきたいです。
- 痛みが強いときは、声をかけられるよりそっとしていてほしいです。
分娩・出産のときの希望についての例文
- いきむタイミングがわからないと思うので、そのつど具体的に声をかけていただきたいです。
- できるだけ自分の力で産みたいですが、必要な処置があるときは理由を説明していただけると納得して受けられます。
- 痛みに耐えられるか不安なので、麻酔を使う方法について事前に相談させてください。
- 夫に分娩室まで立ち会ってもらいたいです(本人も希望しています)。
- 夫は陣痛室までの付き添いを希望しています。分娩のときは待合で待ってもらう予定です。
- 鏡で赤ちゃんが出てくる様子を見たいです。
生まれた直後・入院中の希望についての例文
- 赤ちゃんの状態が落ち着いていれば、生まれてすぐに胸の上で抱っこさせてください。
- へその緒は夫に切らせていただけたらうれしいです。可能かどうか教えてください。
- 生まれた直後の様子を、夫に写真で残してもらいたいです。
- できるだけ母子同室で過ごしたいですが、体力が持たないときは夜間だけ預かっていただきたいです。
- 母乳で育てたいと思っています。うまくいかないときは相談させてください。
- ミルクも併用しながら、無理のないペースで進めたいです。
夫(パートナー)についての例文
用紙に「夫のサポートについて」という欄がある産院もあります。ここはパートナーと一緒に考えるのがおすすめです。「がんばれ」より「上手だよ」と言ってほしい、黙って手を握っていてほしい、飲み物を渡してほしい——具体的に書いておくと、当日パートナーも動きやすくなります。
- 陣痛のあいだ、手を握って近くにいてもらいたいです。
- 「がんばれ」よりも「大丈夫、上手だよ」と声をかけてほしいと伝えています。
- 血を見るのが苦手なので、無理そうなときは遠慮なく退室してもらってかまいません。
- 夫が緊張しやすいタイプなので、スタッフの方からも声をかけていただけると助かります。

バースプランが思いつかないときのヒント
「希望を書いてください」と言われても、初めての出産では何が選べるのかすら分からないものです。思いつかないときは、次の3つの角度から考えてみてください。
「してほしいこと」より「不安なこと」から書く
希望を思いつかない方でも、不安なことなら必ずいくつかあるはずです。「陣痛の痛みがどれくらいなのかこわい」「途中で叫んでしまいそうで恥ずかしい」「夫が来られるか分からず心配」。こうした不安をそのまま書くだけで、助産師はそこから会話を広げてくれます。関西ろうさい病院産科も「些細なことや不安なことなど、どんなことでも大丈夫」と案内しています。
産院で見聞きした選択肢の中から選ぶ
母親学級、院内見学、産院からもらったパンフレット。この中には、その産院で実際に選べることが書かれています。ゼロから考えるより、「用意されている選択肢のうち、自分はどれがいいか」を選ぶほうがずっと考えやすいはずです。逆に、その産院で対応していないことをたくさん書いても実現は難しいため、まずは選べる範囲を知るところから始めるのが近道です。
空欄が残っても大丈夫
全部の欄を埋めなければいけない、という決まりはありません。書けるところだけ書いて、あとは「特に希望はありません。おまかせします」でも十分です。バースプランは提出物ではなく、話し合いのきっかけです。埋まっていない欄があっても、助産師が困ることはありません。
インターネットで見かける立派なバースプランと自分を比べて、落ち込んでしまう方もいます。でもバースプランは、誰かに見せて評価されるものではありません。あなたが安心して出産に臨むための道具なので、短くても、素朴でもまったく問題ありません。
バースプランを書いてよかったと感じられる理由
お産の流れを知るきっかけになる
バースプランを書こうとすると、自然と「陣痛ってどう始まるんだろう」「破水したらどうするんだろう」と調べることになります。この過程そのものが心の準備になります。関西ろうさい病院産科も、バースプランを書くことで「お産への心の準備もでき、落ち着いた状態でお産にのぞむことが出来る」としています。
「言えなかった」を減らせる
陣痛の真っただ中では、痛みで言葉が出なくなることも珍しくありません。あらかじめ紙に書いてあれば、その場で言えなくても希望が伝わります。「本当は腰をさすってほしかったのに言えなかった」という後悔を減らせるのは、書いておくことの大きな利点です。
パートナーと出産のイメージを共有できる
バースプランを一緒に書くと、パートナーも「自分は当日どう動けばいいのか」を具体的に考えるようになります。立ち会うかどうか、どんな声をかけるか、上のお子さんの預け先はどうするか。ここを事前に話し合っておけたことが、いちばん役に立ったという声もよく聞きます。
帝王切開が決まっている場合のバースプラン
逆子や前置胎盤などの理由で予定帝王切開が決まっている場合も、バースプランを書くことはできます。手術中にパートナーが付き添えるか、生まれた赤ちゃんをいつ抱っこできるか、術後の授乳をどう進めたいか、写真を撮ってもらえるか——経腟分娩とは項目が変わりますが、伝えておきたいことはたくさんあります。
対応できる範囲は施設によって大きく異なるため、希望を書いたうえで「どこまで可能でしょうか」と確認しておくのがおすすめです。帝王切開の流れや術後の経過について知っておきたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
帝王切開とは?流れ・痛みはいつまで・入院期間や費用を元看護師が解説
ちなみから|看護師時代に見てきたバースプラン
少しだけ、私自身の話をさせてください。上の子(男の子)と下の子(女の子)、2回の出産のときにどちらもバースプランの用紙をもらいましたが、1人目のときは正直、ほとんど書けませんでした。「希望」と言われても、そもそも何が起きるのか分からなかったんです。結局、「初めてなので、進み具合を教えてください」という一行だけを書いて出しました。
それでも当日、担当してくれた助産師さんが「あと何センチ開いてますよ」と何度も声をかけてくれて、その一行がちゃんと届いていたことが分かりました。たった一行でも意味があるんだと、身をもって知った出来事でした。
看護師として働いていたころにも、たくさんのバースプランを目にしました。びっしり書きこんである方も、数行だけの方もいましたが、どちらのほうが良いお産になるということはありませんでした。むしろ印象に残っているのは、「思ったとおりにいかなかったけれど、事前に話し合えていたから納得できた」とおっしゃる方が多かったことです。
ちなみ(元看護師)

まとめ|バースプランは完璧な計画書でなくていい
- バースプランは、どんなお産にしたいかを考えて医療者と共有するための用紙。主体的に出産に臨むための道具であり、約束や契約ではない。
- 渡される時期は産院によるが妊娠後期が多く、国立成育医療研究センターの助産師外来では妊娠32週前後の回で用紙を使うと案内されている。提出後も書き直せる。
- 書く項目は、陣痛中の過ごし方・分娩スタイル・立ち会い・分娩時の処置・生まれた直後の希望・入院中の生活や授乳などが中心。
- 思いつかないときは「してほしいこと」より「不安なこと」から書く。産院で選べる選択肢から選ぶのも近道。空欄が残っても問題ない。
- 書いておくと、お産の流れを知るきっかけになり、痛みで言えなかった希望も伝わり、パートナーとイメージを共有できる。予定帝王切開でも書ける。
- 内容は分娩中でも変更できる。安全を優先して希望どおりにならないこともあるが、話し合っておけたこと自体に意味がある。
用紙を前にペンが止まってしまったら、まずは「いま不安なこと」をひとつだけ書いてみてください。それが助産師との会話の入り口になり、当日のあなたを支えてくれます。どうか気負わずに、あなたらしいお産の準備を進めてくださいね。
よくある質問(バースプラン|FAQ)
Qバースプランに書いたことは、必ずそのとおりになりますか?
A.バースプランは希望を医療者に伝えるためのもので、約束や契約ではありません。お産はそのときのお母さんと赤ちゃんの状態によって進み方が変わるため、安全を優先して内容と違う対応になることもあります。東大病院産婦人科も「バースプランの内容はいつでも(分娩中でも!)変更可能です」と説明しています。
Qバースプランはいつ書くものですか?
A.産院によって異なりますが、妊娠後期に入ってから渡されることが多いです。国立成育医療研究センターの助産師外来では、バースプランの用紙を妊娠32週前後の回で用いると案内されています。渡されたあとに書き直したり、追加で伝えたりすることもできます。
Q初産で何も思いつきません。空欄でも大丈夫ですか?
A.大丈夫です。バースプランは上手に書く作文ではないので、埋まっていない欄があっても問題ありません。むしろ「陣痛の痛みがこわい」「初めてで何もわからないので声をかけてほしい」といった不安をひとつ書くだけでも十分に役目を果たします。助産師はその一行から会話を広げてくれます。
Q夫(パートナー)の希望も書いていいのでしょうか?
A.はい、産院のバースプラン用紙には「夫のサポートについて」「立ち会いについて」といった項目が用意されていることが多く、パートナーと一緒に考えて書く前提でつくられています。立ち会いをどこまで希望するか、どんな声をかけてほしいかなどを書いておくと、当日お互いに動きやすくなります。
Q帝王切開が決まっている場合もバースプランは書きますか?
A.書けます。予定帝王切開の場合でも、麻酔中の付き添い、生まれた赤ちゃんとの対面のタイミング、術後の授乳の希望など、伝えておきたいことはたくさんあります。施設ごとに対応できる範囲が違うため、希望を書いたうえで何が可能か確認しておくと安心です。
続けて読みたい関連記事
バースプランを書くときに、あわせて読んでおきたいテーマを3本選びました。
陣痛とは?間隔・痛みの強さ・病院へ行くタイミングを元看護師が解説

