妊娠がわかって間もない時期に、「出生前診断を受けますか」と聞かれたり、ネットで目にしたりして、そこから手が止まってしまった——そんな方が多いテーマです。名前は聞いたことがあるけれど、何種類あるのか、いつまでに決めなければいけないのか、いくらかかるのか、そもそも受けるべきなのか。調べれば調べるほど、いろいろな意見が出てきて余計に迷う、というのもよくあることだと思います。
この記事では、元看護師で2児の母である私「ちなみ」が、出生前診断について、検査の種類・受けられる時期・費用・何がわかって何がわからないのか・結果の読み方・どこで受けられるのかを、こども家庭庁と出生前検査認証制度等運営委員会(日本医学会)の情報をもとに整理しました。
先にひとつだけ書いておきます。この記事は、検査を受けることをすすめるものでも、受けないことをすすめるものでもありません。こども家庭庁の情報サイトも、「検査を受ける・受けないという選択や、検査結果が出たあとの意思決定には、決まった答えはありません」とはっきり書いています。判断の材料をそろえるためのページとして読んでください。
目次
- 出生前診断とは?——読み方と、いちばん最初の前提
- 出生前検査の種類——まず「2つのグループ」に分かれます
- それぞれの検査を、もう少し詳しく
- いつから、いつまで受けられる?——時期に期限があります
- 何がわかって、何がわからないのか
- 費用はいくらかかる?保険は使える?
- 「陽性」「陰性」の意味——ここがいちばん誤解されています
- どこで受ける?——「認証施設」という仕組みがあります
- 「みんな受けているの?」——割合が気になるとき
- 出生前検査のメリットとデメリット
- 受けるべきか迷ったとき——考えを整理する手順
- 「受けなかったら後悔する?」と検索した方へ
- 遺伝カウンセリングという相談の場
- ちなみから|「調べるかどうか」を決めるのは、あなたです
- まとめ|判断の材料を、そろえるところから
- よくある質問(出生前診断|FAQ)
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出生前診断とは?——読み方と、いちばん最初の前提
「しゅっしょうまえしんだん」と読みます
検索でよく調べられているのが読み方です。出生前診断は「しゅっしょうまえしんだん」と読みます。「しゅっせいまえ」と読まれることもありますが、医療の現場では「しゅっしょうまえ」が一般的です。
意味はそのまま、赤ちゃんが生まれてくる前に、おなかの中にいるあいだに行う検査のことです。
「出生前診断」と「出生前検査」はどう違う?
この2つはほぼ同じ意味で使われていますが、公的な情報サイトでは「出生前検査」という言い方が使われることが増えています。「診断」というと結果が確定するように聞こえますが、実際には確定しない種類の検査も含まれるためです。この記事でも、検査全体を指すときは「出生前検査」、一般的な呼び名として通っているときは「出生前診断」と書き分けます。
受けても、受けなくてもいい検査です
妊婦健診で必ず行う検査(血液検査・尿検査・血圧測定など)とは違い、出生前検査は希望する人が受けるものです。健診の一部として自動的に組み込まれているものではありません。
「受けないと言ったら、ちゃんとしていないと思われないか」と心配される方がいますが、そういうものではありません。受けない選択も、同じだけ尊重される選択です。
妊婦健診の頻度は?回数・スケジュール・毎回の検査内容と費用を元看護師が解説
出生前検査の種類——まず「2つのグループ」に分かれます
種類がたくさんあって混乱しやすいところですが、この分け方さえつかめば全体像が見えます。こども家庭庁の情報サイトは、出生前検査を次の2つに分けて説明しています。
いちばん大事な区別|非確定的検査と確定的検査
- 非確定的検査——病気の「可能性」を調べる検査。結果が出ても確定はしない。おなかに針を刺さないので、流産のリスクがない
- 確定的検査——「あるか、ないか」を確定させる検査。おなかに針を刺すため、わずかだが流産のリスクがある
それぞれに含まれる検査は次のとおりです。
- 非確定的検査:NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)/超音波マーカー検査/コンバインド検査/母体血清マーカー検査
- 確定的検査:絨毛検査/羊水検査
参考 出生前検査とは?こども家庭庁「妊娠中の検査に関する情報サイト」
一覧で見る
| 検査 | 分類 | 時期 | 方法 | 流産のリスク |
|---|---|---|---|---|
| NIPT | 非確定的 | 妊娠9〜10週以降 | 採血 | なし |
| 母体血清マーカー検査 | 非確定的 | 妊娠15〜20週 | 採血 | なし |
| コンバインド検査 | 非確定的 | 妊娠初期 | 採血+超音波 | なし |
| 超音波マーカー検査 | 非確定的 | 妊娠初期 | 超音波 | なし |
| 絨毛検査 | 確定的 | 妊娠11〜14週 | おなかに針を刺す | 約1% |
| 羊水検査 | 確定的 | 妊娠15〜16週以降 | おなかに針を刺す | 約0.3% |
※時期や数値は出生前検査認証制度等運営委員会の説明にもとづく目安です。施設によって扱っている検査や条件は異なります。
それぞれの検査を、もう少し詳しく
NIPT(新型出生前診断)
近年もっともよく知られている検査です。正式には非侵襲性出生前遺伝学的検査といい、「新型出生前診断」と呼ばれることもあります。
- 時期:妊娠9〜10週以降
- 方法:妊婦さんから10〜20mlの血液を採取する(採血のみ)
- 結果まで:1〜2週間
- 調べるもの:認証施設では、ダウン症(21トリソミー)・18トリソミー・13トリソミーの3つについて、病気がある可能性を調べる
- 費用:10万円弱〜20万円
- 流産のリスク:なし(採血のみのため)
認証施設が3つの疾患に限定しているのは、その精度や意義を考えてのこととされています。「もっとたくさんの病気が調べられます」とうたう検査もありますが、項目が増えるほど結果の読み方が難しくなる、という背景があります。
参考 NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)とは出生前検査認証制度等運営委員会
母体血清マーカー検査(クアトロテスト)
採血だけでできる検査で、「クアトロテスト」という名前で呼ばれることが多いものです。
- 時期:妊娠15〜20週
- 方法:採血。α−フェトプロテイン、hCG、エストリオール、インヒビンAといった物質のバランスを調べ、年齢・体重・妊娠週数も合わせて計算する
- 結果まで:10日〜2週間程度
- 調べるもの:ダウン症(21トリソミー)・18トリソミー・開放性神経管奇形の3つ
- 費用:2〜3万円ほど
- 結果の示され方:「1/256」のような分数(確率)で示される方法と、スクリーニング陽性・陰性で示される方法がある
この検査でとまどう方が多いのが、結果が分数で返ってくることです。数字だけを見て一喜一憂しやすいので、結果をどう受け取るかは事前に説明を受けておいたほうが安心できます。
コンバインド検査・超音波マーカー検査
妊娠初期に、超音波で赤ちゃんの特定の部分を計測したり、それと採血を組み合わせたりして、可能性を推定する検査です。どちらも非確定的検査にあたります。
注意しておきたいのが名前です。運営委員会も、この領域の検査は「精密胎児超音波検査」「胎児ドック」などさまざまな名称で行われ、名称が同じでも内容が異なることがあると説明しています。「胎児ドック」という言葉で案内されていても、施設によって中身が違うことがある、ということです。何を調べる検査なのかを、必ず個別に確認してください。
絨毛検査
確定的検査のひとつです。
- 時期:妊娠11〜14週
- 方法:超音波で胎盤や赤ちゃんの位置を確かめながら、おなかに針を刺して絨毛を採取する
- 結果まで:おおむね2〜3週間(迅速検査もある)
- 費用:10〜20万円程度
- 流産のリスク:約1%。ほかに感染や出血の可能性もある
確定診断ですが、胎盤性モザイクといって、結果と赤ちゃんの状態が一致しないケースが1%程度あるとされています。その場合はあらためて羊水検査で確認することになります。
羊水検査
もうひとつの確定的検査で、いちばん広く行われているものです。
- 時期:妊娠15〜16週以降
- 方法:超音波で位置を確かめながら、おなかに針を刺して約20mlの羊水を採取し、含まれる赤ちゃんの細胞を培養して染色体を調べる
- 結果まで:2〜3週間程度(追加料金の迅速検査なら1週間以内)
- 費用:10〜20万円
- 流産のリスク:約0.3%。ほかに感染や出血の可能性もある
- 調べるもの:21トリソミー・18トリソミー・13トリソミー・性染色体の変化など
ここで押さえておきたいのは、確定的検査であっても「病気があるか、ないか」がわかるだけで、症状や病気の重さはわからないという点です。同じ診断がついても、その子がどう育っていくかは一人ひとり違います。
ちなみ(元看護師)

いつから、いつまで受けられる?——時期に期限があります
検索でとても多いのが「いつまで」です。ここは出生前検査を考えるうえでいちばん実務的に大事なポイントなので、順番に整理します。
検査ごとの時期をならべると
- 妊娠9〜10週以降:NIPTが受けられるようになる
- 妊娠11〜14週:絨毛検査の時期
- 妊娠15〜20週:母体血清マーカー検査の時期
- 妊娠15〜16週以降:羊水検査が受けられるようになる
こうして並べると、妊娠9週ごろから20週前後までの、ごく限られた期間の話だとわかります。
なぜ期限があるのか
大きく2つの理由があります。ひとつは、検査そのものに技術的に適した時期があること。早すぎると必要な材料が十分にとれず、結果の信頼性が落ちてしまいます。
もうひとつは、次の段階までの時間が必要だからです。非確定的検査で陽性が出た場合、確定的検査を受けるとさらに2〜3週間かかります。この「あと何週かかるか」の積み重ねがあるため、最初の検査が遅れると全体が間に合わなくなります。
逆算して考えるとわかりやすい
迷っているうちに時期が過ぎてしまった、というのがいちばん避けたい形です。考えるときは、次のように逆算します。
- いま自分が妊娠何週かを正確に確認する
- 受けたい検査の実施できる時期を確認する
- その検査の結果が出るまでの日数を足す
- 陽性だった場合に確定的検査を受ける時期があるかを見る
- 予約が必要な施設が多いので、その分の日数も見込んでおく
「まだ決められないけれど、選択肢は残しておきたい」という場合は、決めるのは後でいいので、相談だけ先に予約しておくという進め方もできます。相談したからといって受けなければならないわけではありません。
妊娠週数の数え方|受精より2週早いのはなぜ?週数↔月数の早見表・出産予定日まで元看護師が解説
何がわかって、何がわからないのか
ここを誤解したまま検査を受けると、結果を受け取ったときにいちばん混乱します。正直に書きます。
わかるのは「染色体の病気の一部」です
出生前検査で調べているのは、主に染色体の数や構造の変化です。認証施設のNIPTなら21トリソミー・18トリソミー・13トリソミーの3つ、羊水検査ならそれに加えて性染色体の変化なども含まれます。
つまり、おなかの赤ちゃんの健康状態を全部チェックする検査ではありません。「異常なし」と言われても、それは調べた項目についての結果です。
症状の重さはわかりません
確定的検査であっても、わかるのは「あるか、ないか」までです。運営委員会も「症状や病気の重さはわかりません」とはっきり書いています。同じ21トリソミーでも、その子によって状態はさまざまです。
自閉症や知的障害は、この検査ではわかりません
よく検索されているので、はっきり書いておきます。自閉症スペクトラムや、原因がひとつに定まらない知的発達の特性は、出生前検査ではわかりません。これらは染色体の数の変化として現れるものではないためです。
「検査を受けておけば全部わかる」と考えて申し込むと、あとで「そんなつもりではなかった」となりかねません。何を調べる検査なのかは、申し込む前に必ず確認してください。
心臓や体の形の病気は?
心臓や体のつくりについては、染色体を調べる検査ではなく超音波(エコー)で見ていくことになります。妊婦健診の超音波でも、時期に応じて体のつくりは確認されています。より詳しく見る検査を希望する場合は、施設によって扱いが違うので個別の確認が必要です。
妊婦健診の頻度は?回数・スケジュール・毎回の検査内容と費用を元看護師が解説
性別について
性別を目的にした検査ではありません。認証施設のNIPTが調べているのは3つの疾患についてであり、性別を知るための検査として案内されているものは、認証の枠組みの外の場合があります。性別は、妊娠が進めば妊婦健診の超音波でわかることが多いものです。
費用はいくらかかる?保険は使える?
検査別の費用の目安
| 検査 | 費用の目安 |
|---|---|
| NIPT | 10万円弱〜20万円 |
| 母体血清マーカー検査(クアトロテスト) | 2〜3万円ほど |
| 絨毛検査 | 10〜20万円程度 |
| 羊水検査 | 10〜20万円 |
※施設によって幅があります。実際の金額は受ける施設で確認してください。
公的医療保険は使えません
出生前検査は、病気の治療ではなく本人が希望して受ける検査という位置づけのため、公的医療保険の対象外です。妊婦健診のような補助券も使えません。全額が自己負担になります。
妊婦健診そのものに公費の助成があることと混同されやすいところなので、区別して考えてください。
検査代以外にかかるもの
- 初診料・相談(遺伝カウンセリング)の費用——施設によって別途かかることがあります
- 確定的検査に進んだ場合の費用——非確定的検査で陽性が出た場合、さらに10〜20万円が必要になることがあります
- 交通費・仕事を休む分——認証施設が近くにない地域では、これも小さくありません
つまり「最初の検査代だけを見て決めない」ことが大事です。次の段階まで含めて、いくらまでなら出せるかを先に考えておくと、途中で身動きが取れなくなるのを防げます。
支払いのタイミングと方法
意外と見落とされるのがここです。多くは検査を受ける当日に窓口で支払う形ですが、施設によって扱いは違います。事前に確認しておきたいのは次の点です。
- 支払うのはいつか——当日か、後日の請求か
- クレジットカードが使えるか——現金のみの施設もあります
- 相談(遺伝カウンセリング)だけ受けた場合の費用——検査を受けないと決めた場合でも相談料がかかることがあります
- キャンセルしたときの扱い——予約後に受けないことにした場合の費用はどうなるか
とくに「相談だけして受けないことにした場合」の費用は、聞きづらくても先に確認しておくと、迷っている段階でも動きやすくなります。
費用が用意できないとき
「受けたいけれどお金がない」というのも、実際によくある悩みです。ここは正直に書きますが、出生前検査そのものを対象とした公的な助成の仕組みは、一般には用意されていません。
ただ、費用が理由で迷っているなら、それも含めて相談していい内容です。費用の総額・支払いのタイミング・確定的検査まで進んだ場合の見込みを先に確認しておけば、少なくとも「思っていたより高かった」という事態は避けられます。金額を理由に受けないという判断も、まったくおかしくありません。
「陽性」「陰性」の意味——ここがいちばん誤解されています
この記事でもっとも伝えたい部分です。非確定的検査の「陽性」は、病気があるという意味ではありません。
陽性的中率は、年齢と疾患で大きく変わります
検査で「陽性」と出たとき、実際に病気がある確率のことを陽性的中率といいます。これが、同じ検査でも条件によってまったく違う数字になります。運営委員会は具体例として、次のように示しています。
- 25歳の方でダウン症(21トリソミー)が陽性だった場合 → 実際に病気がある確率は79%
- 25歳の方で13トリソミーが陽性だった場合 → 実際に病気がある確率は17%未満
同じ「陽性」という言葉でも、片方は約8割、もう片方は2割に届きません。13トリソミーの陽性のうち8割以上は、確定的検査で「なかった」となるということです。これが偽陽性です。
だからこそ、陽性と出た場合には確認のための確定的検査が必要になります。陽性の紙を見た時点で結論が出たわけではない、という理解がとても大切です。
なぜ年齢で変わるのか
もともとの頻度が低いものほど、陽性と出たときに「間違いのほう」が占める割合が大きくなるからです。検査の性能が変わるのではなく、調べている対象の起こりやすさが違うため、同じ結果でも意味が変わるということです。
「私は何歳だからこの数字」と自分で当てはめようとせず、自分の場合はどうなるかを、検査を受ける施設で確認してください。認証施設ではこの説明が事前に行われます。
「陰性」はどう受け取ればいい?
NIPTで陰性だった場合、99.99%以上の確率でその疾患はないとされています。かなり高い数字です。
ただし気をつけたいのは、これは「調べた3つの疾患について」の話だということです。「陰性=すべて問題なし」ではありません。「新型出生前診断で陰性だったのにダウン症だった」という言葉で検索する方がいますが、100%ではない以上、まれにそういうことは起こりえます。それは検査を受けた判断が間違っていたということではありません。
「判定保留」ということもあります
NIPTでは0.3〜0.4%の確率で判定保留——つまり結果が出ない——ということがあります。血液中の赤ちゃん由来の成分が十分に取れなかった場合などです。
このときは、もう一度NIPTを受ける・NIPTでの検査をあきらめる・羊水検査を受ける、といった選択肢を、遺伝カウンセリングで相談しながら決めていくことになります。「結果が出なかった=悪い知らせ」ではありません。
- 結果をいつ・どこで聞くか(ひとりで聞くか、パートナーと聞くか)
- 陽性だった場合に、その場で次を決めなくていいと知っておくこと
- 結果の紙をもらったとき、その数字が何を意味するのかをその場で質問すると決めておくこと
結果が出てから考えるより、先に決めておいたほうがずっと落ち着いて受け取れます。
どこで受ける?——「認証施設」という仕組みがあります
ここは、あまり知られていないのにとても重要な部分です。
日本医学会が認証しています
NIPTを実施する施設については、日本医学会の中に作られた「出生前検査認証制度等運営委員会」が認証を行っています。この委員会は医師だけでなく、倫理・法律の有識者、障害福祉の関係者、患者会の関係者など、さまざまな職種・立場の人で構成されています。
参考 認証施設についてこども家庭庁「妊娠中の検査に関する情報サイト」
なぜ認証の仕組みが必要になったのか
運営委員会は、その理由をはっきり書いています。「陽性と判定された方がその後の相談に乗ってもらえない施設が一部に出ています」——だから認証を行っている、と。
つまり、採血をして結果を渡すところまではできても、いちばん支えが必要な場面で相談相手がいないということが実際に起きた、ということです。ここは検査を選ぶうえで、費用や手軽さより先に見ておきたいポイントだと思います。
ちなみ(元看護師)
基幹施設と連携施設
認証施設には2種類あります。
- 基幹施設——産婦人科専門医と小児科専門医が常勤し、少なくともどちらかは臨床遺伝専門医の資格を持っている
- 連携施設——臨床遺伝専門医、または出生前検査に関する研修を修了した産婦人科医師が対応する
どちらにも認定遺伝カウンセラーや遺伝看護専門看護師がいる場合があります。「相談できる人がいる体制になっているか」が、認証の中身だと考えるとわかりやすいと思います。
施設の探し方
こども家庭庁の「妊娠中の検査に関する情報サイト」に、認証施設について案内するページがあります。地域から探すこともできるので、まずはここを見てから、かかりつけの産婦人科に相談するのが確実です。
かかりつけで受けられない場合でも、紹介してもらえることがあります。「うちではやっていない」と言われても、そこで終わりにせず「どこに相談すればよいか」を聞いてみてください。
「みんな受けているの?」——割合が気になるとき
「出生前診断 受ける割合」という検索がとても多いです。周りがどうしているかを知りたい、という気持ちはとてもよくわかります。
正直に書くと、はっきりした全体像はわかりません
出生前検査は希望した人が自費で受けるもので、すべての施設の実施件数を集計した公的な統計は公開されていません。ネット上には数字がいろいろ出回っていますが、対象や年が違うものが混ざっており、そのまま「いま何割」と言い切れるものではありません。
ここで数字を書くこともできますが、根拠のあいまいな数字であなたの判断を左右したくないので、書かないことにします。
割合を知っても、判断の材料にはなりにくい
たとえば「◯割が受けている」とわかったとして、それであなたの決断は楽になるでしょうか。多かったら受ける、少なかったらやめる——というものではないはずです。
割合が気になるときは、多くの場合「自分の選択がおかしくないと確かめたい」という気持ちが後ろにあります。それなら、はっきり書きます。受ける選択も、受けない選択も、どちらもおかしくありません。
出生前検査のメリットとデメリット
「メリット・デメリット」で検索される方も多いので、いったん整理します。ただし、ここに並べたものがあなたにとってもメリットやデメリットになるとは限りません。同じ項目でも、受け取り方は人によって正反対になります。
メリットとして挙げられること
- 生まれる前に準備ができる——医療体制の整った施設で産む、必要な情報を集める、家族と話し合っておくなど、動ける時間が生まれます
- 心の準備ができる——生まれてから知るのと、あらかじめ知っておくのとでは、受け止め方が変わるという方がいます
- 不安が軽くなることがある——ずっと気にかけているより、確かめたほうが落ち着いて過ごせるという方もいます
- 採血だけで受けられる検査がある——NIPTや母体血清マーカー検査は、おなかに針を刺さないので流産のリスクがありません
デメリット・注意点として挙げられること
- 全額自己負担で、費用が高い——保険も補助券も使えません。確定的検査まで進むとさらに費用がかかります
- 一度で終わらないことがある——非確定的検査で陽性が出れば、確定的検査という次の段階が待っています。その間の数週間は、答えが出ないまま過ごすことになります
- 確定的検査には流産のリスクがある——絨毛検査で約1%、羊水検査で約0.3%とされています
- わかる範囲が限られている——調べていない病気についてはわかりませんし、症状の重さもわかりません
- 結果を知ったあとに、決めなければならないことが生まれる——ここがいちばん重く、いちばん人によって違う部分です
- 判定保留ということもある——NIPTでは0.3〜0.4%で結果が出ないことがあります
「同じ項目が、人によって逆になる」ということ
たとえば「あらかじめ知っておける」は、ある方にとっては最大のメリットですが、別の方にとっては「知りたくなかった情報を抱えて残りの妊娠期間を過ごすことになる」というデメリットになります。
だから、メリットとデメリットの数を数えて多いほうを選ぶ、という決め方はうまくいきません。この項目は自分にとってどちらなのかを1つずつ当てはめてみることが、次のセクションの整理につながります。

受けるべきか迷ったとき——考えを整理する手順
ここに答えを書くことはできません。ただ、迷いを整理する手順はあります。
「決まった答えはありません」が出発点
こども家庭庁の情報サイトは、「検査を受ける・受けないという選択や、検査結果が出たあとの意思決定には、決まった答えはありません」と明記しています。そのうえで、パートナーや家族と話し合うこと、専門家に相談すること(遺伝カウンセリング)を挙げています。
つまり公的な立場としても、正解を示すのではなく、考えるための場を用意するという向き合い方をしているということです。
「受けたい理由」を言葉にしてみる
迷いが晴れないときは、理由を紙に書き出すのがいちばん早いです。よく挙がるものを並べます。
- 知っておきたい——わかっていれば、生まれる前に準備ができる。医療体制のある病院を選べる
- 不安を減らしたい——ずっと心配しているより、確かめたい
- 年齢が気になる——年齢と関係のある検査だと聞いたから
- すすめられた——健診で説明を受けたから
大事なのは、どれも正当な理由だということです。「不安だから」で受けてかまいませんし、それを誰かに正当化する必要もありません。
「受けたくない理由」も、同じように書き出す
- 結果が出ても、自分の選択は変わらないと思う
- 結果を知ることで、残りの妊娠期間の気持ちが変わるのが怖い
- 費用をかけられない
- おなかに針を刺す検査は避けたい
- とくに理由はないが、受けたくない
最後の「とくに理由はないが、受けたくない」も、立派な理由です。理由を説明できないと選べない、ということはありません。
いちばん効くのは「結果が出たあと」を先に想像すること
経験上、迷いがほどけるのはここです。陽性だったら自分はどうしたいか、陰性だったら何が変わるかを、決めなくていいので想像してみてください。
「陽性でも自分の選択は変わらない。でも準備をしておきたいから受ける」——これもよくある結論です。逆に「結果を知っても何も変えられないなら、知らずに過ごしたい」というのも、同じくらいよくある結論です。どちらも、ちゃんと考えた末の答えです。
パートナーと話すときのこつ
- 「受ける/受けない」から話し始めない——結論から入ると対立になりやすいので、「何が心配か」から話す
- 期限があることを共有する——時期の話は、感情の話とは切り離して伝えられます
- 一度で決めない——その場で結論を出そうとせず、日をあけて話す
- 一緒に説明を聞く——遺伝カウンセリングにふたりで行くと、情報の差が埋まります
妊娠したらまず何をする?産婦人科・母子手帳・仕事報告まで元看護師が解説
「受けなかったら後悔する?」と検索した方へ
この言葉で検索する方が、とても多くいます。まだ何も起きていないのに、先に後悔のことを考えてしまう——それだけ真剣に考えている、ということだと思います。
後悔は「選ばなかった側」に見えるもの
受けた人にも、受けなかった人にも、迷いは残ります。受けた人が「知らないままでいたかった」と思うこともあれば、受けなかった人が「確かめておけばよかった」と思うこともあります。どちらを選んでも、選ばなかったほうが気になる——これは検査に限った話ではありません。
だからこそ、後悔しない選択を探すより、あとから振り返ったときに「あのときの自分はちゃんと考えた」と思える進め方のほうが現実的です。具体的には、情報を確認したこと、パートナーと話したこと、相談する機会を持ったこと。ここが残っていれば、結果がどうであれ、自分の判断を責めずにすみます。
いま強く不安なら、それ自体を相談していい
「検査を受けるかどうか」以前に、不安で眠れない、涙が出る、という状態になっている方もいます。それは相談していい内容です。妊娠中の気持ちの落ち込みは、産後にも続くことがあります。ひとりで抱え込まないでください。
マタニティブルーとは?妊娠中と産後の違い・いつまで続くか・乗り越え方を元看護師が解説

遺伝カウンセリングという相談の場
聞き慣れない言葉かもしれませんが、出生前検査を考えるときにいちばん頼りになるのがここです。
何をする場所?
検査の説明を受け、疑問に答えてもらい、自分の場合はどう考えられるかを一緒に整理する場です。受けるようにすすめられる場所ではありません。「受けないことにした」という結論になってもまったく問題ありません。
認証施設には、臨床遺伝専門医や、認定遺伝カウンセラー・遺伝看護専門看護師といった専門職がいることがあります。
こんなことを聞いていい場所です
- この検査で何がわかって、何がわからないのか
- 自分の年齢の場合、陽性と出たらどれくらいの確率で本当に病気があるのか
- 陽性だったら、次に何をすることになるのか
- 費用は全部でいくらかかるのか
- 受けないという選択をした場合、その後の健診はどうなるのか
- 家族の意見が分かれているが、どう考えたらよいか
相談窓口の一覧があります
こども家庭庁の情報サイトには、相談できる窓口をまとめたページが用意されています。かかりつけの産婦人科で聞きづらいと感じるときや、まだ検査を受けると決めていない段階でも使えます。
参考 相談窓口の一覧こども家庭庁「妊娠中の検査に関する情報サイト」
ちなみから|「調べるかどうか」を決めるのは、あなたです
この記事を書くにあたって、いちばん気をつけたのは、どちらかに寄せないことでした。出生前検査は、ネット上でいろいろな立場から語られるテーマです。「受けるのが当たり前」という声も、「受けるべきではない」という声も、どちらも強い調子で書かれていることがあります。
けれど、実際に決めるのはその人自身です。同じ検査でも、置かれている状況によって意味はまったく違います。年齢、体のこと、家族の考え、住んでいる地域、使えるお金、上の子のこと——並べていくと、他人の結論がそのまま当てはまることのほうが少ないとわかります。
看護師として現場にいたころ、検査を受けた方も、受けなかった方も見てきました。どちらの方も、真剣に考えたうえで決めていました。そして共通していたのは、納得して決めた方は、あとから自分の判断を責めていなかったということです。
だから私がお伝えできるのは、結論ではなく順番です。正しい情報を確認する。期限を把握する。パートナーと話す。相談できる場所を使う。そのうえで出した答えなら、どちらでも大丈夫です。
まとめ|判断の材料を、そろえるところから
- 出生前検査は希望する人が受けるもの。妊婦健診の必須項目ではなく、受けない選択も同じだけ尊重される
- いちばん大事な区別は非確定的検査(NIPT・母体血清マーカー・コンバインド・超音波マーカー)と確定的検査(絨毛検査・羊水検査)
- 非確定的検査は確定的検査に進むかを考えるための検査。1回で終わらない前提で考える
- 時期は妊娠9週ごろ〜20週前後の限られた期間。結果までの日数と次の検査の分を逆算して動く
- わかるのは染色体の病気の一部だけ。症状の重さ・自閉症・知的障害はわからない
- 公的医療保険は使えず全額自己負担。NIPT・絨毛・羊水は10〜20万円台、母体血清マーカーは2〜3万円が目安
- 「陽性」=病気があるという意味ではない。陽性的中率は年齢と疾患で大きく変わり、25歳のダウン症陽性で79%、13トリソミー陽性は17%未満
- NIPTの陰性は99.99%以上。ただし「調べた3疾患について」であり、すべて問題なしという意味ではない
- 施設は日本医学会の認証を確認する。認証制度ができた理由は「陽性と判定された方がその後の相談に乗ってもらえない施設が一部に出ている」から
- 迷ったら遺伝カウンセリングへ。受けると決めていなくても相談できる。こども家庭庁が相談窓口の一覧を公開している
出生前検査は、答えのある問いではありません。この記事が、あなたが自分で決めるための材料になっていればうれしいです。そして、迷っている時間もふくめて、赤ちゃんのことを一生懸命考えている時間だということを、忘れないでいてください。
よくある質問(出生前診断|FAQ)
Q出生前診断は何と読みますか?
A.「しゅっしょうまえしんだん」と読みます。「しゅっせいまえしんだん」と読まれることもありますが、医療の現場では「しゅっしょうまえ」が一般的です。公的な情報サイトでは「出生前検査」という言い方も使われています。結果が確定する検査とそうでない検査の両方が含まれるため、「診断」より「検査」のほうが実態に近いという考え方によるものです。
Q出生前診断はいつまでに受ければいいですか?
A.検査によって時期が決まっています。NIPTは妊娠9〜10週以降、絨毛検査は妊娠11〜14週、母体血清マーカー検査は妊娠15〜20週、羊水検査は妊娠15〜16週以降です。注意したいのは、NIPTなどの非確定的検査で陽性が出た場合、確定させるために確定的検査を受けることになり、そこからさらに2〜3週間かかるという点です。結果が出るまでの日数と、予約に必要な日数も含めて逆算して考えてください。まだ決めていなくても、相談だけ先に予約しておくことはできます。
Q「陽性」と出たら、赤ちゃんに病気があるということですか?
A.いいえ、そうとは限りません。NIPTなどの非確定的検査の陽性は「可能性がある」という意味で、確認のための確定的検査が必要です。実際に病気がある確率(陽性的中率)は年齢と疾患によって大きく変わり、出生前検査認証制度等運営委員会は、25歳の方でダウン症が陽性なら79%、13トリソミーが陽性なら17%未満という例を示しています。つまり13トリソミーの陽性の場合、8割以上は確定的検査で「なかった」となります。陽性という紙を見た時点で結論が出たわけではありません。
Q出生前診断で自閉症や知的障害はわかりますか?
A.わかりません。出生前検査で調べているのは主に染色体の数や構造の変化で、認証施設のNIPTならダウン症(21トリソミー)・18トリソミー・13トリソミーの3つが対象です。自閉症スペクトラムや、原因がひとつに定まらない知的発達の特性は、この検査ではわかりません。また確定的検査であっても、わかるのは「病気があるか、ないか」までで、症状や病気の重さはわかりません。
Q出生前診断に健康保険は使えますか?費用はいくらですか?
A.公的医療保険は使えません。病気の治療ではなく本人が希望して受ける検査という位置づけのため、全額自己負担になります。妊婦健診の補助券も使えません。費用の目安は、NIPTが10万円弱〜20万円、絨毛検査と羊水検査が10〜20万円程度、母体血清マーカー検査(クアトロテスト)が2〜3万円ほどです。このほかに初診料や相談の費用、非確定的検査で陽性が出て確定的検査に進んだ場合の費用もかかることがあるので、最初の検査代だけで判断しないほうが安心です。
Q認証施設とそうでない施設は何が違うのですか?
A.NIPTを実施する施設は、日本医学会の中に作られた出生前検査認証制度等運営委員会が認証しています。この制度がつくられた理由について、運営委員会は「陽性と判定された方がその後の相談に乗ってもらえない施設が一部に出ています」と説明しています。認証施設には臨床遺伝専門医や、認定遺伝カウンセラー・遺伝看護専門看護師がいることがあり、検査の前後に相談できる体制が整えられています。また認証施設は検査対象をダウン症・18トリソミー・13トリソミーの3つに限定しています。項目が多いことや結果が早いことが、そのままよい検査を意味するわけではありません。
Q受けるか迷っています。どう決めればいいですか?
A.こども家庭庁の情報サイトは「検査を受ける・受けないという選択や、検査結果が出たあとの意思決定には、決まった答えはありません」と明記しています。おすすめしたいのは、受けたい理由と受けたくない理由をそれぞれ書き出すこと、そして「陽性だったら自分はどうしたいか」「陰性だったら何が変わるか」を、決めなくていいので想像してみることです。「結果が変わらなくても準備のために受ける」も「知らずに過ごしたい」も、どちらもよくある結論です。まだ決めていない段階でも遺伝カウンセリングで相談でき、こども家庭庁が相談窓口の一覧を公開しています。
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