妊婦健診で「切迫流産気味ですね」と言われた、少量の出血や下腹部の痛みがあって不安な気持ちのまま検索窓に「切迫流産」と打ち込んでいる方も多いと思います。「流産」という言葉を目にするだけで、頭が真っ白になってしまいますよね。
はじめまして、ちなみです。元看護師として病院勤務を経験し、現在は妊活・妊娠・子育てを中心に情報発信している男女2児のママです。この記事では、切迫流産とはどういう状態なのか、症状・原因・流産の種類との違い、安静についての考え方、診断や治療の流れまで、順を追って解説します。
ちなみ(元看護師)
切迫流産とは?流産の危険が迫っている状態のこと
まずは「切迫流産」がどういう状態を指すのか、基本から確認していきましょう。
子宮内で赤ちゃんが生存しながら、出血や腹痛などがみられる状態
切迫流産とは、子宮内で赤ちゃんが生存しているにもかかわらず、出血や腹痛など流産が進みそうな徴候がみられる状態のことです。公益社団法人日本産科婦人科学会も、切迫流産をこのように定義しています。まだ実際に流産には至っておらず、そのまま妊娠が続いていく可能性がある段階、と理解しておくと少し気持ちが落ち着くかもしれません。
妊娠22週未満に起こる状態|切迫早産との違い
「流産」は妊娠22週より前に妊娠が終わってしまうことを指し、それ以降(妊娠22週0日〜36週6日)に赤ちゃんが生まれてしまうことは「早産」と呼ばれます。切迫流産とよく似た言葉に「切迫早産」がありますが、この2つは症状こそ似ていても、起こる週数がまったく異なるという違いがあります。妊娠22週以降に同じような症状がみられる場合は「切迫早産」と呼ばれ、区別されています。切迫早産について詳しく知りたい方はこちらもあわせてご覧ください。
切迫早産とは?症状・原因・なりやすい人の特徴から入院期間まで元看護師が解説
症状|見逃したくないサイン
切迫流産の症状は一つとは限らず、いくつかのサインが組み合わさって現れることもあります。次のような変化に気づいたら、我慢せず早めに産院へ連絡してください。
出血(少量から始まることも)
切迫流産の症状として最も多いのが出血です。少量の茶色いおりもの程度から始まることもあれば、生理2日目くらいの量の出血がみられることもあります。出血の量や色だけで状態の重さを自己判断することはできず、内診や超音波検査で確認する必要があります。妊娠初期の出血について詳しく知りたい方はこちらもあわせてご覧ください。
妊娠初期の出血は流産のサイン?色・量・生理のような出血の見分け方を元看護師ちなみが解説
下腹部痛・生理痛のような痛み
下腹部の鈍い痛みや、生理痛のような痛みが続くのも代表的な症状の一つです。妊娠初期にはお腹の張りや腹痛自体は珍しいことではありませんが、痛みが強くなる・出血を伴う・治まらずに続くといった場合は注意が必要です。妊娠初期の腹痛について詳しく知りたい方はこちらもあわせてご覧ください。
妊娠初期の腹痛は大丈夫?チクチク・生理痛のような痛み・下腹部痛の見分け方を元看護師ちなみが解説
自覚症状がないまま健診で指摘されることも
切迫流産の中には、出血や腹痛といった自覚症状がまったくないまま、健診の超音波検査で偶然指摘されるケースもあります。「何も感じていなかったのに切迫流産と言われて逆に不安になった」という声も少なくありませんが、症状の有無だけで重症度が決まるわけではないため、医師の説明に沿って経過をみていくことが大切です。

流産の種類と切迫流産の違い
「流産」と一口に言っても、症状や経過によっていくつかの種類に分けられます。切迫流産がその中でどんな位置づけなのか、整理しておきましょう。
- 切迫流産:子宮内で赤ちゃんが生存しながら、出血や腹痛など流産が進みそうな徴候がみられる状態
- 稽留流産:出血や腹痛がないまま、子宮内で赤ちゃんの心拍が確認できなくなっている状態
- 進行流産:子宮の出口(子宮頸管)が開き、出血も増えるなど、流産が進み始めている状態
- 完全流産:流産した組織が、すべて自然に排出された状態
- 不全流産:流産した組織が排出しかけているものの、その一部が子宮内に残っており、出血や腹痛が続いている状態
この中で切迫流産だけが「赤ちゃんがまだ育っている」段階にあるという点が、他の分類との大きな違いです。稽留流産のように自覚症状がなく健診で判明するケースもあれば、切迫流産のように出血や痛みという自覚症状を伴うケースもあり、症状の有無だけで種類を見分けることはできません。気になる症状があれば、自己判断せず産院で確認してもらいましょう。
原因|なぜ切迫流産になるの?
「自分が動きすぎたから」「仕事を頑張りすぎたから」と自分を責めてしまう方がとても多いのですが、原因の多くはお母さんの行動とは関係のないところにあります。
多くは赤ちゃん側の染色体異常が原因|「動きすぎたから」ではない
妊娠12週未満に起こる流産の主な原因は、赤ちゃん側の染色体異常であることがわかっています。流産した組織を調べた研究では、約8割に染色体の異常が認められたと報告されています。この異常は受精卵の時点ですでにほぼ偶然決まっていたもので、お母さんが「何か悪いことをしたから」起こるものではありません。まずはこのことを知っておいていただきたいと思います。
絨毛膜下血腫(じゅうもうまくかけっしゅ)
出血の原因としては、子宮内で胎盤の着床部分にあたる絨毛や、胎盤の一部が剥がれて出血が溜まる「絨毛膜下血腫」がみられることもあります。血腫の大きさによって出血の量や続く期間は異なりますが、多くは経過観察のなかで自然に吸収されていきます。
原因がはっきりしないことも多い
これらに当てはまらなくても切迫流産になる方は少なくなく、はっきりとした原因が特定できないケースも多くあります。「何が悪かったのか」を突き止めようとするより、今の状態にどう向き合っていくかに気持ちを向けていただければと思います。
なりやすいと言われる人の特徴
誰にでも起こりうるものですが、次のような特徴がある方は、健診でより注意深く経過をみられることがあります。
- 高年齢での妊娠(年齢が上がるほど流産率も上がる傾向があります)
- 過去の妊娠で流産を経験したことがある
- 子宮筋腫や子宮の形の特徴がある
- 双子・三つ子などの多胎妊娠
- 喫煙の習慣がある
- 強いストレスがかかっている状態が続いている
- 甲状腺機能の異常や糖尿病など、基礎疾患がある
実際、日本産科婦人科学会によると、妊娠全体の約15%が自然流産で終わるとされ、40歳代では流産率が40%以上になるというデータもあります。妊娠を経験した女性のうち約38%が流産を経験しているという報告もあり、決して珍しいことではありません。当てはまる項目があったとしても、必ず切迫流産になるというわけではなく、あくまで「健診で注意深く経過をみていく目安」として捉えていただければと思います。
診断・エコーでわかること
経腟超音波検査で赤ちゃんの心拍を確認
健診では経腟超音波検査で子宮内の赤ちゃんの様子や心拍の有無を確認します。心拍が確認できていて、赤ちゃんが順調に育っている様子が見えれば、「切迫流産」として経過をみていくことになります。心拍の確認は妊娠週数によって見え方が変わるため、時期によっては一度の検査だけで判断がつかず、数日〜1週間ほど間をあけて再検査になることもあります。
出血の量・血腫の有無の確認
あわせて、超音波検査で絨毛膜下血腫の有無や大きさ、内診で出血の量や子宮頸管の状態も確認されます。血腫がある場合も、赤ちゃんの心拍が確認できていれば、多くはそのまま経過観察となります。

治療の流れ・安静についての考え方
安静や薬に「流産を予防する効果」ははっきりしないとされている
意外に思われるかもしれませんが、日本産科婦人科学会は、安静にしたり薬を投与したりしても、流産を予防する効果ははっきりしないと説明しています。切迫流産の多くは赤ちゃん側の染色体異常が原因であるため、安静にしていたかどうかで結果が大きく変わるわけではない、というのが医学的な考え方です。
それでも指示された安静を守る意味
予防効果がはっきりしないとしても、重労働や体に負担のかかる動作は避けるべきとされています。医師から自宅安静や仕事内容の調整を指示された場合は、その指示に沿って過ごすことが基本です。症状の程度によっては、自宅安静ではなく入院管理となることもあります。
黄体ホルモン剤が処方されることも
医師の判断で、子宮内の環境を整える目的で黄体ホルモン剤(内服・注射・腟剤など)が処方されることがあります。これも医師が個々の状態を見て判断するものなので、自己判断で服用をやめたり増やしたりせず、指示された用法・用量を守ってください。
入院期間・費用・傷病手当金・母健連絡カード
入院になるかどうかは症状の程度による
出血や痛みが軽度であれば自宅安静で経過をみることが多いですが、出血が多い場合や血腫が大きい場合、痛みが強い場合などは入院のうえで安静や点滴治療が行われることもあります。入院期間は数日程度で退院できる方から、経過によってはより長くかかる方までさまざまです。
仕事を続けている方は母健連絡カードを
仕事を続けている方で医師から安静や業務内容の調整を指示された場合は、「母健連絡カード」を勤務先に提出することで、指示内容に応じた配慮(休業・時差出勤・負担の軽い業務への変更など)を受けられます。一人で無理をせず、担当医に相談してカードを発行してもらいましょう。
参考 切迫流産(妊娠22週未満)|母性健康管理に関する用語辞典厚生労働省 働く女性の心とからだの応援サイト
入院した場合は高額療養費制度・傷病手当金の対象になることも
切迫流産の入院は治療を目的とするため公的医療保険が適用され、自己負担は原則3割です。医療費が高額になりそうな場合は「高額療養費制度」で自己負担額に上限を設けられます。また、会社員として健康保険に加入している方が入院で連続して仕事を休み、給与が支払われない場合は「傷病手当金」の対象になることもあります。加入している健康保険組合や協会けんぽに条件を確認してみてください。
参考 傷病手当金|給付と手続き全国健康保険協会(協会けんぽ)
安静解除の目安・仕事復帰
安静解除の目安は、出血や痛みが治まっているか、超音波検査で赤ちゃんが順調に育っているか、血腫が小さくなっているかなど、経過を総合的にみて医師が判断します。「妊娠12週を過ぎたら自動的に解除」といった一律の基準があるわけではなく、あくまで個々の状態次第です。仕事復帰についても同様で、自己判断で安静度を緩めず、次の健診で医師の説明を受けてから決めるようにしてください。
ちなみから|看護師時代に見てきた切迫流産の患者さんたち
少しだけ、看護師時代の経験をお話しさせてください。私自身も1人目の妊娠初期に少量の出血があり、切迫流産と言われて数日間だけ仕事を休んだ経験があります。そのときは「私のせいで赤ちゃんに何かあったらどうしよう」と、ひたすら自分を責めていました。
看護師として勤務していたころも、切迫流産で不安な表情の妊婦さんを何人も見てきました。出血が続いて涙を流される方、自覚症状が何もないのに「切迫流産」と告げられて戸惑う方——状況はそれぞれでしたが、多くの方が「自分の何が悪かったんだろう」と自分を責めてしまう点は共通していました。だからこそ、原因の多くは赤ちゃん側の染色体異常であり、お母さんのせいではないということを、繰り返しお伝えしたいと思っています。
ちなみ(元看護師)

まとめ|正しく知って、必要以上に不安にならないために
- 切迫流産は、妊娠22週未満の時期に子宮内で赤ちゃんが生存しながら、出血や腹痛など流産が進みそうな徴候がみられる状態のこと。まだ流産には至っていない段階を指す。
- 主な症状は出血・下腹部痛。自覚症状がないまま健診で指摘されることもある。
- 流産には切迫流産のほか稽留流産・進行流産・完全流産・不全流産があり、切迫流産だけが「赤ちゃんがまだ育っている」段階にある。
- 原因の多くは赤ちゃん側の染色体異常で、母親の行動が原因ではないとされている。絨毛膜下血腫が出血の原因になることもある。
- 安静や薬に流産予防効果ははっきりしないとされているが、重労働は避け、指示された安静には従うことが基本。
- 診断は経腟超音波検査での心拍確認が中心。血腫の有無・出血量もあわせて確認される。
- 入院になった場合は高額療養費制度や傷病手当金の対象になることもあり、仕事を続ける場合は母健連絡カードが役立つ。
切迫流産と言われると不安な気持ちになるのは当然のことです。ですが、正しい知識を持って向き合えば、必要以上に自分を追い詰めずに済みます。担当医や助産師と二人三脚で、できることから少しずつ整えていきましょう。
よくある質問(切迫流産|FAQ)
Q切迫流産は助かる確率が高いですか?
A.切迫流産と診断されても、そのまま流産に至るとは限らず、赤ちゃんが順調に育って出産まで至るケースも少なくありません。ただし血腫の大きさや出血の程度、妊娠週数など個々の状況によって経過は大きく異なるため、一律の確率をお伝えすることはできません。担当医から自分の状態について説明を受け、指示された安静度を守りながら経過をみていくことが大切です。
Q切迫流産と切迫早産の違いは何ですか?
A.どちらも「出血や腹痛などがみられ、妊娠を継続できない危険が迫っている状態」という点は共通していますが、起こる時期が異なります。妊娠22週未満に起こるものを切迫流産、妊娠22週0日〜36週6日の間に起こるものを切迫早産と呼び、区別されています。
Q切迫流産とダウン症は関係がありますか?
A.切迫流産そのものと赤ちゃんの染色体(ダウン症・21トリソミーなど)の間に、直接の因果関係があるとは言われていません。検索でこの2つが結びつけられやすいのは、出生前診断(NIPTやクアトロテストなど)を受ける時期と、切迫流産の症状が出やすい妊娠初期の時期が重なりやすいことによる混同ではないかと考えられます。染色体の状態について気になる場合は、出生前診断について担当医に相談することをおすすめします。
Q障害児が生まれる確率は上がりますか?
A.切迫流産と診断されたこと自体が、生まれてくる赤ちゃんに障害があることを意味するわけではありません。流産の主な原因である染色体異常の多くは、そのまま妊娠が継続しないケースであり、経過観察のうえで赤ちゃんが順調に育っていることが確認できていれば、切迫流産の診断だけを理由に過度に心配する必要はないとされています。気になる場合は出生前診断も含めて担当医に相談してみてください。
Q出血が止まったら安心してよいですか?
A.出血が止まると気持ちが少し軽くなると思いますが、出血の有無だけで状態を判断することはできません。血腫が残っていたり、その後また出血が起こったりすることもあるため、次の健診でエコー検査を受けて赤ちゃんの状態を確認することが大切です。自己判断で安静度を緩めず、指示された受診タイミングを守ってください。
Q妊娠6週で切迫流産と言われました。心配しすぎなくて大丈夫ですか?
A.妊娠6週前後はまだ心拍がはっきり確認できないこともある時期で、一度の検査だけで判断がつかず、1週間ほど間をあけて再検査になることもよくあります。この時期に出血や痛みがあるのは珍しいことではありません。不安な気持ちはあると思いますが、次の健診まで指示された安静を守りながら、担当医の説明を待ちましょう。
Q安静にできなかった場合、流産してしまいますか?
A.切迫流産の主な原因は赤ちゃん側の染色体異常であることが多く、安静にしていたかどうかだけで結果が決まるわけではないとされています。買い物や家事で少し動いてしまった程度のことを過度に悔やむ必要はありません。ただし重労働や体に負担のかかる動作は避けるべきとされているため、できる範囲で指示に沿って過ごしてください。
Q安静解除の目安や仕事復帰のタイミングはいつ頃ですか?
A.出血や痛みが治まっているか、超音波検査で赤ちゃんが順調に育っているかなど、経過を総合的にみて医師が判断するため、週数による一律の目安はありません。仕事を続けている方は、母健連絡カードを使って勤務先に業務内容の調整を相談しながら、医師の説明に沿って復帰のタイミングを決めていきましょう。
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