産後しばらく経って、ふと「そういえば、生理っていつ戻ってくるんだろう」と思う瞬間があります。まわりのママ友が「もう再開したよ」と言っているのを聞いて焦ったり、逆に自分だけ早く来てしまって「母乳に影響しないのかな」と心配になったり。産後の生理は、なかなか人に聞きづらいテーマですよね。
しかも、産後の体は悪露(おろ)や不正出血など「出血」の種類が多く、これが生理なのかどうかも判断しづらい時期です。そこに「生理が来ていないから妊娠はしないはず」という思い込みが重なると、思いがけないことが起こることもあります。
こんにちは、ちなみです。元看護師で、男の子と女の子の2児の母をしています。私自身、上の子のときは産後半年を過ぎても再開せず、下の子のときは思っていたよりずっと早く来て、そのたびに「これで合っているのかな」と検索していました。
この記事では、産後の生理がいつ再開するのかという目安から、授乳との関係、再開が早い人・遅い人の違い、そして生理が来る前に妊娠する可能性、初めての生理の量や周期の乱れ、受診を考えたい目安までを、公的機関や学会の情報をもとに整理していきます。
産後の生理はいつ再開する?まず知っておきたい目安
いちばん知りたいところからお伝えします。産後の生理が再開する時期は、母乳を与えているかどうかで大きく変わります。そして、そのどちらであっても幅がとても広い、というのが正直なところです。
母乳を与えていない場合は「4〜6週間で排卵」が目安
MSDマニュアル家庭版は、産褥期(さんじょくき)のケアの説明のなかで、母乳を与えていない場合について「通常、出産から4〜6週間くらいが経過した後に排卵が起こります。排卵が起きたら、約2週間後に月経があります」と説明しています。
この2つを足すと、母乳を与えていない場合の生理再開はおおよそ産後6〜8週間ごろという計算になります。1か月健診が終わってしばらくした頃、というイメージですね。
ここで注目してほしいのは、月経より先に「排卵」が書かれていることです。この順番が、あとでお伝えする「生理が来る前の妊娠」の話につながっていきます。
母乳だけで育てている場合は「産後6か月近く」まで遅れることがある
一方、母乳のみで授乳を行っている場合について、同じMSDマニュアル家庭版は「排卵と月経の再開がいくらか遅れる傾向があり、再開は産後6カ月近くになります」としています。
完全母乳で育てていて、産後4か月・5か月と経っても生理が来ないとき、「私の体、どこかおかしいんじゃないか」と不安になる方はとても多いです。でも、この記述に照らせばそれは想定の範囲内ということになります。
ちなみ(元看護師)
それでも「完全母乳なのに早く来た」は珍しくない
ここがとても大事なところです。MSDマニュアル家庭版は、先ほどの記述にすぐ続けて「ただし母乳を与えている場合でも、母乳を与えていない場合と同じくらい早い時期に排卵や月経が起こることがあります」と書いています。
つまり、完全母乳だから必ず遅れる、というわけではないということです。「完母なのに産後2か月で生理が来た」という方は、決して例外的なケースではありません。あくまで「遅れる傾向がある」という統計的な話であって、一人ひとりに当てはまる約束ではないんですね。
- 母乳を与えていない場合:産後4〜6週間ごろに排卵 → その約2週間後に月経
- 母乳のみで授乳している場合:再開は産後6か月近くまで遅れる傾向がある
- ただし母乳を与えていても、与えていない場合と同じくらい早く排卵・月経が起こることがある
- 産褥期(母体が妊娠前の状態に戻るまでの期間)は分娩から6週間
「産後◯か月なのに来ない」「産後◯か月で来てしまった」という時期そのものよりも、そのとき体に何が起きているかを見るほうが役に立ちます。この記事では、そのための目印をひとつずつお伝えしていきます。
この裏返しとして、授乳をやめると生理が戻ってきやすくなります。断乳・卒乳で授乳回数がゼロに近づくとプロラクチンが下がり、排卵と月経が再開へ向かうためです。断乳の進め方と、やめたあとに体へ起きる変化(生理再開を含む)は、こちらの記事にまとめました。
断乳のやり方|進め方と胸のケア・絞る絞らないの判断を元看護師が解説
なぜ授乳中は生理が止まっているのか
「授乳中は生理が来ない」とよく言われますが、そのしくみを知っておくと、来ないときも来たときも落ち着いて受け止められます。
母乳をつくるホルモンが、排卵を休ませている
月経は、脳の視床下部(ししょうかぶ)と下垂体(かすいたい)、そして卵巣が連携するホルモンの働きで起こります。MSDマニュアル家庭版は、この流れのなかで下垂体から分泌されるプロラクチンも月経周期に影響すると説明しています。
プロラクチンは、母乳の分泌をうながすホルモンです。赤ちゃんがおっぱいを吸う刺激によって分泌され、そのプロラクチンの血中濃度が高い状態では、排卵を起こすためのホルモンの働きが抑えられるという関係になります。
つまり授乳中に生理が来ないのは、体が疲れ果てているからでも、卵巣が弱っているからでもありません。母乳をつくることを優先している間、排卵のしくみがいったん休んでいる状態と考えるとイメージしやすいと思います。
「授乳による無月経」は、いちばん多い原因として挙げられている
MSDマニュアル家庭版は、いったん始まった月経が止まる状態(続発性無月経)について、母乳哺育を最も一般的な原因として挙げています。
「無月経」という言葉が出てくると不安になりますが、ここでの意味は「授乳中に月経が来ないことは、医学的に想定されている一般的な状態だ」ということです。病名がついているから異常、という読み方をしなくて大丈夫です。
ちなみ(元看護師)
授乳の「量」より「回数と間隔」が関わる
プロラクチンは、赤ちゃんが吸う刺激によって分泌が保たれます。そのため、生理の再開には1日に何回授乳しているか、授乳と授乳の間隔がどれくらい空いているかが関わってきます。
実際、生理が再開するタイミングとしてよく聞かれるのは次のような時期です。いずれも、授乳の刺激が減る場面という共通点があります。
- 夜間の授乳が減った(赤ちゃんがまとまって眠るようになった)
- 離乳食が始まって、1回あたりの授乳量・回数が減った
- ミルクを足す回数が増えた(混合になった)
- 卒乳・断乳をした
ただし、これはあくまで「そういう流れになりやすい」という説明であって、授乳を続けていれば生理が来ない、という保証ではありません。ここは次のセクションでもう一度お伝えします。
再開が早い人・遅い人に「特徴」はあるの?
「産後の生理再開が早い人の特徴」は、とてもよく検索されている言葉です。同じ月に産んだママ友のあいだでも再開の時期はバラバラなので、「何が違うんだろう」と気になりますよね。
体質や性格で決まる、という説明は公的な資料にはない
結論からお伝えすると、「こういう人は早い」と特徴を挙げて説明している公的機関・学会の資料は見当たりません。ネット上では体型・年齢・体力・性格などが理由として語られることもありますが、根拠が示されているものはほとんどありません。
公的な資料で示されているのは、これまで見てきたとおり授乳をしているかどうかで傾向が変わるということ、そして授乳していても早く来ることがあるということまでです。それ以上の線引きは、いまのところ示されていません。
「早い=妊娠しやすい」「遅い=妊娠しにくい」ではない
「再開が早い人は妊娠しやすいって本当ですか」という疑問もよく見かけます。これも、早いか遅いかで次の妊娠のしやすさが決まる、という説明は公的な資料には見当たりません。
たしかに排卵が再開していれば妊娠する可能性は生まれますが、それは「妊娠しやすい体質だから早く来た」という話ではなく、単に授乳の状況などによって排卵の再開時期が違っていたということです。順番を取り違えないでほしいところです。

早くても遅くても、あなたの育て方のせいではない
この話でいちばんお伝えしたいのは、再開の早い・遅いは、母乳のがんばりや体調管理の結果ではないということです。
早く来た方が「母乳が足りていないのかな」と落ち込む必要はありませんし、なかなか来ない方が「体が回復していないのかな」と責める必要もありません。どちらも、その人の体と授乳の状況のなかで起きている自然な経過です。
ちなみ(元看護師)
いちばん大事な話:生理が来る前に妊娠することがある
この記事のなかで、いちばん知っておいてほしいのがここです。「生理が来ていないから、まだ妊娠しない」という考え方は、残念ながら成り立ちません。
排卵は、月経より先に起こる
もう一度、MSDマニュアル家庭版の記述を思い出してください。母乳を与えていない場合、「出産から4〜6週間くらいが経過した後に排卵が起こります。排卵が起きたら、約2週間後に月経があります」と書かれていました。
つまり最初の排卵は、最初の生理の約2週間前に起きているということです。生理が来て初めて「排卵が戻ったんだな」とわかるわけですが、そのときにはもう1回目の排卵は終わったあとなんですね。
この順番があるために、「生理が来ていない=まだ妊娠しない」という判断ができません。生理の再開は、妊娠可能性が戻ってきた合図としてはいつも遅れて届くのです。
早ければ分娩後2週間で妊娠することもある
MSDマニュアル家庭版は、産褥期のケアの説明のなかではっきりと「早ければ分娩後2週間で妊娠することもあります」と記しています。
産後2週間といえば、まだ悪露が続いていて、体がまったく元通りではない時期です。それでも可能性としてはありうる、というのが医学的な整理です。
次の妊娠までにあけたい期間の目安
では、次の妊娠まではどれくらいあけたほうがいいのでしょうか。MSDマニュアル家庭版は、産褥期のケアの説明のなかで「少なくとも6カ月間、できれば18カ月間は妊娠を避けた方がよいと多くの医師が勧めています」と紹介しています。
これは「6か月経ったら次を考えないといけない」という意味ではなく、体が妊娠前の状態に戻り、次の妊娠に備えるための時間として、それくらいはほしいという目安です。年子を望む方もいますし、年齢の事情で早く次を考えたい方もいます。そういうときこそ、自己判断ではなく産婦人科で相談する価値があります。
避妊の方法は、産後の体に合わせて選ぶ必要がある
産後の避妊は、妊娠前と同じ感覚では選べません。授乳をしているかどうか、出産からどれくらい経っているか、帝王切開だったかどうかなどで、選べる方法や開始できる時期が変わってくるからです。
ホルモンを使う避妊法には複数の種類があり、含まれる成分によって産後に開始できる時期の考え方が異なります。市販薬のように自分で選ぶものではないので、1か月健診や産婦健診のときに「次の妊娠はしばらく考えていない」と伝えて、医師に相談してください。健診の場で聞きにくければ、産後ケアの相談窓口で切り出してみるのもひとつです。
ちなみ(元看護師)
性行為をいつから再開できるのか、痛みが出るのはなぜかについては、別の記事でくわしくまとめています。授乳中に痛みや乾燥が出る医学的な理由も、あわせて書きました。
産後の性行為はいつから?痛い・入らない原因といつまで続くか・避妊の目安を元看護師が解説
産後初めての生理はどうなる?量・痛み・周期
やっと再開したと思ったら、量が驚くほど多かったり、痛みが以前と違ったり、次がいつ来るのか読めなかったり。産後の生理は「妊娠前と違う」と感じる方がとても多いです。順番に見ていきましょう。
まず「正常な月経」の基準を知っておく
産後の生理を見るときは、比べる相手がいります。日本産婦人科医会は、正常な生理の目安として周期25〜38日(変動が6日以内)・持続日数3〜7日以内・月経血量20〜140gという数値を示しています。
そして、この範囲を外れた場合には、周期であれば希発月経・頻発月経、日数であれば過短月経・過長月経、量であれば過少月経・過多月経といった名前がつけられています。「なんとなく多い気がする」を、この物差しに置き換えて考えてみるのが第一歩です。
- 周期:25〜38日(変動が6日以内)
- 持続日数:3〜7日以内
- 月経血量:20〜140g
また、いったん始まった月経が止まっている状態については、MSDマニュアル家庭版が受診の目安として「月経が3回なかった」「1年の月経回数が9回未満である」「月経のパターンが急に変わった」という3つを挙げています。ただし授乳中はこの目安をそのまま当てはめません。この点はあとで詳しくお伝えします。
参考 正常な生理(月経)の目安を教えてください!公益社団法人 日本産婦人科医会
ただし、産後最初の1〜2回はこの基準からはみ出すことがよくあります。基準は「これから戻っていく先」であって、再開直後にいきなり合っていなければおかしい、という意味ではありません。
量が多い・塊が出るとき
「産後初めての生理の量が多くて驚いた」という声はとても多いです。久しぶりの月経であること、産後の子宮がまだ変化の途中であることを考えれば、これまでと違って感じるのは自然なことです。
MSDマニュアル家庭版は、月経について「出血や症状が重すぎるか軽すぎる場合、月経の期間が長い場合、回数が多い場合、周期が不規則である場合に異常とされます」と整理しています。量が多いこと自体は、まず「様子を見る対象」として扱われる一方で、程度によっては相談する意味がある、ということですね。
実際の判断は「何mLか」では測れないので、次のような生活のなかで感じ取れるサインを目安にしてください。
- ナプキンを1時間ごとに替えなければ間に合わない出血が続く
- 夜用ナプキンを昼間も使わないと不安なほどの日が何日も続く
- 立ちくらみ・動悸・息切れ・強いだるさをいっしょに感じる
- 出血が7日を超えてだらだら続く
- いったん終わったのにまた鮮やかな赤い出血が出てくる
とくに立ちくらみや動悸をともなうときは、貧血が関わっていることがあります。妊娠・出産を経た体は鉄が不足しやすい状態にあり、そこに経血量の多い月経が重なると負担になります。気になる方は、産後の食事とあわせてこちらも読んでみてください。
妊娠中の貧血はなぜ起こる?症状・治療・食事対策を元看護師ちなみが解説
それは生理? それとも悪露?
産後まもない時期の出血は、生理なのか悪露なのか判断に迷います。悪露は分娩後に続く子宮からの分泌物で、時間とともに色や量が変化していきます。産後1〜2か月ごろの出血は、この悪露の経過のなかで説明がつくこともあります。
見分け方と、悪露そのものの経過・受診の目安については、別の記事で詳しく整理しています。「これは生理なのか出血なのか」で迷っている段階の方は、先にこちらを読んでいただくほうが早いです。
悪露(おろ)とは?いつまで続く・色や量の変化・受診の目安を元看護師が解説

生理痛が前より重い・軽い
「産後は生理痛が軽くなる」と言われることがありますが、実際には重くなったと感じる方も、軽くなったと感じる方もいます。どちらが正解ということはありません。
ただし、痛みで横になっていないと過ごせない、育児ができない、鎮痛薬を飲んでも効かないという状態が毎回続くのであれば、それは我慢して乗り切るものではありません。
日本産婦人科医会は、月経に伴って起こる病的な症状を月経困難症とし、月経時あるいは月経直前から始まる強い下腹部痛や腰痛を主な症状として解説しています。集中力の低下や社会生活への影響といった、痛みそのもの以外の支障にも目を向けている点が大切なところです。育児に支障が出ているなら、それは十分に相談する理由になります。
周期がバラバラなのはいつまで?
再開して数回は、次の生理が28日後に来ることのほうが少ないかもしれません。授乳をしている間は、授乳の回数や間隔が変わるたびにホルモンの状態も動くため、周期が安定しないのは自然な経過です。
「いつまでに安定する」という確立された日数は、公的な資料には示されていません。ひとつの見方として、授乳の状況が落ち着いてから(卒乳・断乳のあとなど)、数周期かけて整っていくという流れをイメージしておくと気が楽です。
そのうえで、目安として押さえておきたいのが先ほどの「25日〜38日」です。授乳が終わってしばらく経ってもこの範囲に入らない状態が続くようなら、一度産婦人科で相談する価値があります。
ちなみ(元看護師)
生理が来ないとき、どこから気にすればいい?
「3か月以上こない状態は続発性無月経」という基準を知ると、授乳中の方は不安になると思います。ここは切り分けが必要なところです。
授乳中は、その基準をそのまま当てはめない
すでにお伝えしたとおり、MSDマニュアル家庭版は母乳哺育を続発性無月経の最も一般的な原因として挙げています。つまり授乳中に3か月・半年と来ないことは、この枠組みのなかで説明がつく状態です。
目安として持っておきたいのは、次の2つの線です。
- 授乳をしていないのに、産後3か月を過ぎても再開しない
- 卒乳・断乳から3か月以上経っても再開しない
どちらも「異常が確定した」ということではなく、一度診てもらう価値が出てくるラインという意味です。
まず確かめたいのは、次の妊娠の可能性
「来ない」と思っているとき、いちばん先に確かめたいのが次の妊娠です。ここまで見てきたように、産後は生理が来ないまま排卵が起こることがあります。「生理が再開していないから妊娠していないはず」という前提は成り立ちません。
性生活が再開している場合は、市販の妊娠検査薬で確かめることが、原因を絞り込むうえでも最初の一歩になります。産後は吐き気・強い眠気・だるさといった症状が育児疲れとまぎらわしいため、症状だけで判断するのは難しいところです。
産後の甲状腺の変化が隠れていることもある
もうひとつ、頭の片隅に置いておきたいのが甲状腺です。MSDマニュアル家庭版は無月経の説明のなかで、「甲状腺の活動が不十分になったり(甲状腺機能低下症)、過剰になったり(甲状腺機能亢進症)すると、無月経になることがあります」としています。
そして日本産婦人科医会は、分娩後1年以内に一過性の甲状腺機能異常が起こる産褥性甲状腺炎について解説しています。亢進型・古典型は産褥2〜6か月に発症して分娩後1年までに自然に緩解し、低下型は分娩後3〜12か月に発症するとされています。
- 亢進期:易疲労感・動悸・暑がり・神経質
- 低下期:易疲労感・脱毛・うつ気分・集中力の低下・皮膚乾燥
ここに並ぶ症状は、産後なら誰にでも起こりそうな内容ばかりです。だからこそ見過ごされやすく、「育児疲れだろう」で片づけられてしまいます。生理が戻らないことに加えて、抜け毛・強いだるさ・気分の落ち込み・動悸などが重なっているときは、そのことも含めて相談してみてください。
産後の抜け毛はいつから?ピークといつまで続くか・原因と対策を元看護師が解説
逆に、授乳をやめると生理のほうが動きます。授乳の回数が減るほどプロラクチンの分泌が下がり、排卵と月経が戻ってきやすくなるためです。つまり「いつ授乳をやめるか」は、生理がいつ再開するかとひとつづきの話になります。卒乳・断乳の時期の考え方と、やめたあとに体へ起きる変化はこちらの記事で扱いました。
母乳はいつまで?授乳をやめる時期と卒乳のサイン・体の変化を元看護師が解説
生理が来ると母乳はどうなる?
再開したあとに多い心配が、母乳への影響です。「生理が来ると母乳が出なくなる」「味が変わって赤ちゃんが嫌がる」という話を聞いたことがある方も多いと思います。
「出なくなる」「味が変わる」に公的な裏づけはあるか
調べたかぎり、月経の再開によって母乳が出なくなる・味が変わるという因果関係を示した公的機関や学会の資料は見当たりませんでした。よく語られてはいますが、根拠として示せるものがないのが現状です。
一方で、生理の前後は体調そのものが揺れやすい時期です。だるさや眠気で授乳の間隔が空いたり、水分が足りていなかったりすれば、出方が変わったように感じることはあります。「生理そのものの影響」と「そのときの体調や授乳リズムの影響」は、切り分けて考えてほしいところです。
生理が来たから卒乳しなければいけない、ということはない
「生理が再開したら授乳をやめる時期」と考える必要はありません。生理が来ても授乳は続けられますし、続けたいだけ続けて構いません。
反対に、「生理を早く戻したいから卒乳する」という決め方も、急ぐ必要はないと思います。卒乳・断乳は、赤ちゃんの成長や生活、お母さんの体調や仕事の事情など、いくつもの要素で決めるものです。生理の再開を、その決断の理由にしなくて大丈夫です。
ちなみ(元看護師)

産後まもない時期の下腹部の痛みは、生理痛ではなく後陣痛であることがほとんどです。重い生理痛によく似た痛み方をするので混同されやすいのですが、こちらは子宮が元の大きさに戻ろうとして収縮しているもの。いつまで続くのか、我慢しなくていい理由については、こちらの記事で整理しています。
後陣痛とは?いつからいつまで続く・どんな痛み・和らげ方を元看護師が解説
なお、母乳そのものが「出ない」「減ってきた」という悩みは、生理の再開とは別に多くの方が抱えているものです。国の調査では、授乳について困ったことがある人は77.8%、いちばん多い悩みは「母乳が足りているかどうかわからない」で40.7%でした。足りているかをおむつと体重で見分ける方法は、こちらの記事で整理しています。
母乳が出ないのはなぜ?いつから出るか・足りているかの見分け方を元看護師が解説
生理の再開と、気持ちの揺れ
産後初めての生理を「しんどい」と感じる方は少なくありません。体の痛みやだるさだけでなく、気持ちが落ち込んだり、いらいらしやすくなったりする方もいます。
産後は、ただでさえホルモンの状態が大きく動いている時期です。そこに睡眠不足と休みない育児が重なっているのですから、気持ちが揺れるのは弱さではありません。
ただし、落ち込みが生理の前後だけでなく2週間以上ずっと続いている、何をしても楽しめない、赤ちゃんをかわいいと思えない、といった状態があるときは、生理とは別に考えたほうがいいサインです。産後の気分の変化については、こちらで詳しく整理しています。
マタニティブルーとは?妊娠中と産後の違い・いつまで続くか・乗り越え方を元看護師が解説
どこに相談すればいい?
「病院に行くほどではないかもしれないけれど気になる」というとき、産後には相談できる場がいくつか用意されています。
1か月健診・産婦健康診査
産後の健診は、赤ちゃんのことだけを診る場ではありません。お母さんの体の回復を確認する場でもあります。生理の再開の見通し、避妊、次の妊娠のことは、この場で聞ける内容です。
診察の時間は短いので、聞きたいことをスマートフォンのメモに1〜2行書いておくと確実です。「生理と避妊のことを聞きたい」と最初に伝えてしまうのがいちばん早いです。
産後ケア事業・地域の相談窓口
健診の日まで待てないときや、病院に行くほどか迷うときは、お住まいの自治体の産後ケア事業や母子保健の相談窓口があります。助産師・保健師に相談できる仕組みで、体のことも気持ちのことも、まとめて話せる場です。
内容や利用方法は自治体によって違うので、「(お住まいの市区町村名)+産後ケア」で調べるか、母子健康手帳に挟まれている案内を見てみてください。
婦人科・産婦人科を受診する目安
ここまでの内容をまとめると、受診を考えたいのは次のようなときです。
- 授乳をしていないのに、産後3か月を過ぎても再開しない
- 卒乳・断乳から3か月以上経っても再開しない
- ナプキンを1時間ごとに替えても間に合わない出血が続く
- 出血が7日を超えて続く/いったん終わったのに鮮やかな赤い出血が出る
- 立ちくらみ・動悸・息切れ・強いだるさをともなう
- 痛みが強く、育児や日常生活に支障が出ている
- 授乳が終わってしばらく経っても、周期が25日〜38日の範囲に入らない状態が続く
- 次の妊娠の可能性があり、確かめたい
産後の体の変化として、体重の戻り方が気になる方も多いと思います。いつから体を動かしていいのか、授乳しているのに痩せないのはなぜかは、こちらの記事で解説しています。
産後ダイエットはいつから?体重が戻るペースと痩せない理由を元看護師が解説
まとめ
- 母乳を与えていない場合は産後4〜6週間ごろに排卵し、その約2週間後に月経がある(MSDマニュアル家庭版)
- 母乳のみの場合は産後6か月近くまで遅れる傾向があるが、早く来ることもある
- 授乳中に来ないのは、母乳哺育が続発性無月経のいちばん多い原因とされているとおりの経過
- 「早い人の特徴」を示した公的資料はなく、早い・遅いは育て方のせいではない
- 排卵は月経より先に起こる。生理が来る前に妊娠することがあり、早ければ分娩後2週間で妊娠しうる
- 授乳中であることは避妊の方法にならない。次の妊娠を望まないなら健診で相談を
- 正常の目安は周期25〜38日・持続3〜7日・経血量20〜140g(日本産婦人科医会)。ただし再開直後は乱れやすい
- 生理の再開で母乳が出なくなる・味が変わるという因果を示した公的資料は見当たらない。卒乳を決める理由にしなくていい
- 抜け毛・強いだるさ・気分の落ち込み・動悸をともなうときは、産後の甲状腺の変化も含めて相談を
産後の生理は、戻ってきたら戻ってきたで戸惑い、戻ってこなければこないで不安になる、少し厄介なテーマです。しかも人には聞きづらい。
でも、覚えておいてほしいのはシンプルなことです。再開の時期は幅がとても広く、そこにあなたの努力や体力の優劣は関係ない。ただし「来ていないから妊娠しない」だけは成り立たない。この2つを押さえておけば、たいていのことは落ち着いて受け止められます。
そして、気になるサインがあるときは遠慮なく相談してください。産後のあなたの体は、赤ちゃんと同じくらい大切にされていいものです。
よくある質問(産後の生理再開|FAQ)
Q産後の生理はいつから再開しますか?
A.MSDマニュアル家庭版は、母乳を与えていない場合について「通常、出産から4〜6週間くらいが経過した後に排卵が起こります。排卵が起きたら、約2週間後に月経があります」としています。母乳のみで授乳している場合は「再開は産後6カ月近くになります」と、遅れる傾向が示されています。ただし母乳を与えていても、与えていない場合と同じくらい早い時期に排卵や月経が起こることがあります。
Q完全母乳なのに産後2か月で生理が来ました。おかしいですか?
A.おかしくありません。MSDマニュアル家庭版は「母乳を与えている場合でも、母乳を与えていない場合と同じくらい早い時期に排卵や月経が起こることがあります」としています。完全母乳だから必ず遅れる、というわけではないんですね。母乳が足りていないサインでもありません。
Q生理が来ていなければ妊娠しませんか?
A.いいえ、そうとは言えません。排卵は月経より先に起こるため、最初の排卵は最初の生理の約2週間前に起きています。MSDマニュアル家庭版は「早ければ分娩後2週間で妊娠することもあります」とも記しています。授乳中であることや、生理が来ていないことを避妊の手段として当てにしないでください。次の妊娠を望まない時期であれば、健診の場で避妊について相談しておくのが確実です。
Q産後初めての生理の量が多いのですが大丈夫ですか?
A.久しぶりの月経であること、産後の子宮が変化の途中であることを考えれば、これまでと違って感じるのは自然なことです。日本産婦人科医会が示す正常な生理の目安は周期25〜38日・持続3〜7日以内・月経血量20〜140gです。ナプキンを1時間ごとに替えても間に合わない出血が続く、7日を超えて続く、立ちくらみや動悸をともなうときは相談してください。産後は鉄が不足しやすく、量の多い月経が重なると負担になります。
Q生理が来ると母乳は出なくなりますか?
A.月経の再開によって母乳が出なくなる・味が変わるという因果関係を示した公的機関や学会の資料は見当たりません。生理の前後は体調が揺れやすく、だるさで授乳の間隔が空くことはあるので、「生理そのものの影響」と「そのときの体調や授乳リズムの影響」は切り分けて考えてください。生理が来たことを卒乳の理由にする必要はありません。
Q産後、生理が来ないのはいつから相談していいですか?
A.目安は2つです。授乳をしていないのに産後3か月を過ぎても再開しないときと、卒乳・断乳から3か月以上経っても再開しないとき。どちらも異常が確定したという意味ではなく、一度診てもらう価値が出てくるラインです。あわせて、性生活が再開しているなら次の妊娠の可能性を先に確かめてください。
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