妊娠中の貧血はなぜ起こる?症状・治療・食事対策を元看護師ちなみが解説

「妊婦健診で『貧血気味ですね』と言われました。赤ちゃんに影響があるの?」「鉄剤を処方されたけど、副作用がつらくて飲み続けられない…」——妊娠中の貧血は、健診結果を見て初めて気づく方が多く、戸惑いや不安を感じることも少なくないと思います。

はじめまして、ちなみです。元看護師として病院勤務を経験し、現在は妊活・妊娠・子育てを中心に情報発信している男女2児のママです。私自身、2人の子を妊娠したとき、どちらの妊娠でも健診で貧血の指摘を受けました。「いつの間に…」という驚きと、「赤ちゃんは大丈夫?」という不安、正直に言えばどちらも経験しています。

この記事では、妊娠中に貧血になりやすい理由・症状の見つけ方・処方鉄剤と副作用のつき合い方・食事対策・つわりで食べられないときの対応まで、妊娠初期から後期を通じた「妊娠性貧血の全体像」をお伝えします。まず最初に、いちばん大切な前提をお伝えします。妊娠性貧血は適切に治療・管理されれば、ほとんどの場合に問題なく出産を迎えられます。ひとりで抱え込まず、主治医と相談しながら向き合っていきましょう。

ちなみ(元看護師)

貧血の指摘を受けたとき、「なんで私だけ?」と思いました。でも実は妊娠中の貧血はとてもよくあること。正しく対処すれば怖くないと、今はそう思っています。

妊娠性貧血とは何か——定義・2つのタイプ・なりやすい理由

妊娠性貧血の定義

妊娠性貧血とは、妊娠中に血液中のヘモグロビン(Hb)濃度が低下した状態のことです。日本産科婦人科学会などの基準では、妊娠中のヘモグロビン値が11g/dL未満の場合を貧血と定義しています(ヘマトクリット値では33%未満が目安)。非妊娠時の基準(Hb 12g/dL未満)よりやや低い基準が用いられているのは、妊娠中は血液量が増加するため血液が薄まりやすいためです。

妊娠中の貧血は非常によく起こる状態で、多くの妊婦が何らかの程度で経験するとされています。「貧血になってしまった」という事実だけで過度に不安になる必要はありませんが、重症化を防ぐためにも早期発見と対応が大切です。

鉄欠乏性貧血と葉酸欠乏性貧血の2タイプ

妊娠中の貧血には主に2つのタイプがあります。

①鉄欠乏性貧血(最多):妊娠中の貧血の大部分を占めるのがこのタイプです。赤血球の材料であるヘモグロビンの合成に必要な鉄分が不足することで起こります。血液が薄く、小さな赤血球が多い「小球性低色素性貧血」とも呼ばれます。食事からの鉄不足・つわりによる摂取量の減少・赤ちゃんへの鉄供給の増大が重なることで進行します。

②葉酸欠乏性貧血(巨赤芽球性貧血):葉酸が不足することで赤血球が正常に作られなくなるタイプです。鉄欠乏性貧血に比べると頻度は低いですが、妊娠前から葉酸不足が続いていた場合や偏食がある場合に起こりやすいとされています。葉酸欠乏は赤ちゃんの神経管閉鎖障害リスクとも関連があるとされており、妊娠前から葉酸サプリを取ることが推奨される理由のひとつでもあります。

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妊娠中に貧血になりやすい理由

妊娠中に貧血になりやすいのには、3つの主な理由があります。

①循環血液量が約1.5倍に増加する(血液希釈):妊娠中は赤ちゃんに十分な栄養と酸素を届けるため、体内を循環する血液量が非妊娠時の約1.5倍まで増えます。血液の総量は増えますが、ヘモグロビンや鉄分の増加がその量に追いつかないと、血液が「薄まった」状態になります。これを生理的血液希釈と呼び、妊娠に伴う正常な変化でもあります。しかし鉄補給が不十分だとそのまま貧血に至ります。

②赤ちゃんへ鉄が積極的に供給される:赤ちゃんは胎盤を通じてママから鉄を受け取り、肝臓や筋肉に蓄積します。この赤ちゃん側の需要がとても大きいため、妊娠前に鉄の蓄えが少なかったり、食事からの補給が不十分だったりすると、ママの体が鉄不足になりやすくなります。

③つわりで食事量が減る:特に妊娠初期はつわりで思うように食べられない時期が続きます。鉄分を含む食材(赤身肉・あさりなど)は匂いや食感が気になりやすく、意識して食べにくいことも少なくありません。つわり期の栄養不足が初期の貧血を招く大きな要因のひとつです。

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妊娠中の貧血はどうやってわかる?診断基準と健診チェック

妊娠性貧血の診断基準(Hb値・Ht値)

妊娠中の貧血は、妊婦健診での血液検査でわかります。主にチェックされる数値は以下のとおりです。

妊娠性貧血の診断基準
ヘモグロビン(Hb)値:11.0g/dL未満で貧血と判定。重症度の目安として、10〜11g/dLは軽症、9〜10g/dLは中等症、9g/dL未満は重症とされることが多いです。あわせてヘマトクリット(Ht)値:33%未満も貧血の指標として用いられます。健診結果票に「Hb 10.5」などと記載されていたら、11.0を下回っているため「貧血の範囲」として担当医に確認しましょう。

なお、ヘモグロビン値だけでなくフェリチン(体内の鉄貯蔵量)も貧血管理の重要な指標です。ヘモグロビン値が正常範囲内であっても、フェリチンが低い「潜在性鉄欠乏」の状態では、倦怠感・疲れやすさなどの症状が出ることがあります。「貧血とは言われないけど常に疲れている」と感じる場合は、フェリチン値も確認するよう担当医に相談してみてください。

妊婦健診の血液検査のタイミング

妊婦健診では複数回の血液検査が行われますが、貧血チェックが特に重視されるタイミングがあります。

妊娠初期(10週前後):初回の血液検査で基準値を確認します。この時点で貧血傾向があれば、早期から鉄剤が処方されることが多いです。妊娠中期(24〜28週ごろ):鉄需要のピークに差し掛かる前後として重要な時期です。初期は問題なかった方でも、中期以降に貧血が発覚することは珍しくありません。妊娠後期(34〜36週ごろ):分娩出血への備えとして鉄貯蔵量を確認します。ここで貧血があれば出産前の治療が急がれます。貧血傾向がある場合は、これ以外のタイミングでも追加の血液検査が行われることがあります。

自覚症状がないまま貧血が進む「かくれ貧血」に注意

妊娠中の貧血の特徴のひとつが、自覚症状がないまま数値が下がっていくケースが多いことです。貧血は徐々に進行するため、体が少しずつ慣れてしまい「なんとなく疲れやすいかな」程度でしか気づかないことがあります。「全然症状がないのに健診で貧血と言われた」という方も少なくありません。

症状がないからといって安心するのではなく、定期的な血液検査の数値を医師と確認しておくことが大切です。自覚症状がない段階でも鉄補給を続けることで、重症化を防ぎ分娩に向けて体を整えることができます。

妊娠初期の貧血——つわりとの二重苦をどう乗り越える?

鉄分豊富な食材(あさり・小松菜・ほうれん草・赤身肉・卵)が清潔感のある食卓に並ぶシーン|妊娠中の貧血対策食材のイメージ

妊娠初期に貧血が進みやすい理由

妊娠初期(4〜15週ごろ)は、赤ちゃんへの鉄供給が少しずつ増え始め、同時につわりで食事が摂りにくい時期が重なります。鉄分が豊富な赤身肉・あさり・レバーは匂いが気になりやすく、つわり中に意識して食べることが難しい食材のひとつです。

また、妊娠前からの鉄の貯蔵量(フェリチン値)が少なかった場合、妊娠初期からすでに鉄欠乏気味になっていることもあります。「妊娠前から少し貧血気味だった」「生理量が多かった」という方は特に初期から注意が必要です。妊娠前から鉄の貯蔵を意識した食事・サプリを取り入れておくことが、妊娠初期の貧血予防につながります。

妊娠初期の貧血症状チェックリスト(めまい・動悸・疲れやすさ)

妊娠初期の貧血が疑われるサインには以下のようなものがあります。ひとつでも当てはまる場合は、次の健診で担当医に相談してみてください。

立ちくらみ・めまい:座った状態から立ち上がるときにふらつく、頭がふわっとする
動悸・息切れ:少し動いただけで心拍が速くなる、階段で息が切れる
疲れやすさ・倦怠感:十分眠っても疲れが取れない、日中の眠気が強い
顔色が悪い・皮膚が蒼白:顔・爪の内側・まぶたの裏の色が薄い
頭痛・耳鳴り:原因が思い当たらない頭痛が続く、キーンという耳鳴りがする
爪が割れやすい・スプーン状に変形する:鉄欠乏が進んだ場合にみられることがある

ただし、これらの症状はつわりや妊娠初期のホルモン変化による症状とも重なることが多く、症状だけで「貧血かどうか」を自己判断することはできません。気になる症状があれば血液検査の数値と合わせて医師に確認することが大切です。

つわり×鉄分不足が重なるときの向き合い方

つわりと貧血が重なると、体の負担が二重になります。「気持ち悪いのに動悸もある」「何も食べられないのにだるさが抜けない」という状態は、つわりによる消耗と鉄不足が絡み合っているサインかもしれません。

この時期に意識してほしいのは、「食べられない自分を責めない」ということです。鉄剤を処方されている場合は、飲めるタイミングに飲む・飲み方を医師に相談するなど、無理のない範囲で対応できます。「つわりがひどくて鉄剤も飲めない」という場合は、遠慮なく産婦人科に伝えてください。つわりがつらい時期の食事や対策については、こちらの記事でくわしく解説しています。

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妊娠中期・後期の貧血——貧血が最も進みやすいのはいつ?

貧血が最も進みやすい時期(中期以降のピーク)

妊娠中の鉄需要のピークは妊娠中期(16〜27週)から後期(28週以降)にかけてと言われています。この時期は赤ちゃんの成長が著しく、体重増加のペースも上がり、鉄の需要がどんどん高まります。妊娠初期には「まだ貧血ではない」と診断された方も、中期以降の健診で貧血を指摘されることは珍しくありません。

特に多胎妊娠(双子・三つ子)の場合や、月経量が多かった既往のある方は、より早い段階で貧血が進行することもあります。初期の健診で問題なかったとしても、中期以降は油断せず定期的なチェックを続けることが大切です。

妊娠後期の貧血と分娩出血への備え

妊娠後期(28週以降)になると、貧血対策にもうひとつの意味が加わります。それが分娩出血に備えることです。お産のときには一定量の出血が伴いますが、出産前から貧血がある場合、分娩後の出血量が正常範囲であっても貧血が急激に悪化することがあります。

産婦人科が後期の血液検査を重視するのはこのためです。分娩前に貧血を改善しておくことが、産後の回復をスムーズにする上でも重要です。後期の健診で「少し貧血ですね」と言われた場合は、鉄剤の服用・食事対策を引き続き丁寧に続けていきましょう。

後期に貧血が悪化しやすい構造的な理由

妊娠後期に貧血が悪化しやすいのには、構造的な理由があります。まず赤ちゃんへの鉄移行量が後期に最大になるためです。赤ちゃんは生後しばらくは主に母乳やミルクで育ちますが、出生前に大量の鉄を体内に蓄積しておく必要があります。この貯蔵の大半が妊娠後期に行われます。

また、子宮が大きくなるにつれて胃や腸が圧迫され、食事量が減りやすくなることも一因です。食欲はあっても一度に食べられる量が少なくなる方が多く、鉄分の摂取量が落ちやすい時期でもあります。少量ずつ回数を分けて食べる工夫が効果的です。

胎児への影響——正確に知って不安と向き合う

妊娠中の女性が産婦人科で健診結果を穏やかな表情で確認しているシーン|妊娠性貧血と向き合うイメージ

妊娠中の貧血が胎児に与えるとされる影響(低体重・早産との関連)

妊娠中の鉄欠乏性貧血が長期間続いた場合、胎児の発育に影響を与える可能性があると報告されています。文献で挙げられることが多い関連としては、低出生体重(2,500g未満での出生)や早産との関連があります。ただし、これらは主に「重度の貧血が適切に治療されなかった場合」のリスクとして語られるものです。妊婦健診で発見・治療されている軽〜中等症の貧血で同様のリスクが確定しているわけではありません。

大切なことは、現代の産婦人科では定期的な血液検査で早期発見が可能であり、鉄剤の処方・食事指導などの対応が確立しているということです。健診を定期的に受け、医師の指示に従って対処することが何より重要です。

「妊娠中の貧血が発達障害・ASDのリスクに?」への中立な回答

「妊娠中の貧血が発達障害や自閉スペクトラム症(ASD)のリスクになる」という情報を見て不安になった方もいるかもしれません。

発達障害・ASDリスクへの正確な理解

妊娠中の鉄欠乏と神経発達障害の関連を示す観察研究はいくつか報告されていますが、「妊娠中の貧血が直接、発達障害・ASDを引き起こす」という確立したエビデンスはありません。観察研究は相関を示すことはありますが、因果関係を証明するものではなく、他の要因が交絡している可能性もあります。妊婦健診で貧血が発見され、適切に管理・治療されれば大きなリスク上昇はないとされています。「貧血だったから子どもに影響が出た」と自責する必要はありません。不安なことがあれば、かかりつけの産婦人科医に相談しましょう。

「治療・管理すれば多くの場合は問題ない」という希望軸

繰り返しになりますが、妊娠性貧血は妊娠中に最もよく見られる合併症のひとつであり、適切な治療・管理が行われれば多くの場合に安全に出産を迎えられます。「貧血になってしまった」という事実に必要以上に落ち込まず、「では何をするか」に切り替えて主治医と話し合うことが大切です。

胎児への影響を心配する気持ちはとても自然ですが、その不安を「定期健診に通い、鉄剤をきちんと飲む・食事を整える」というアクションに変えることが、赤ちゃんのためにできる最善のことです。

妊娠中の貧血の治療——処方鉄剤の副作用とのつき合い方

処方鉄剤の種類と服用の基本

妊娠中の鉄欠乏性貧血に対しては、産婦人科から経口鉄剤(処方薬)が処方されることが一般的です。代表的な剤形として、通常の錠剤・徐放錠(鉄分が緩やかに吸収されるよう工夫された錠剤)・液剤(シロップ状)などがあります。これらは医薬品であり、市販の鉄サプリより鉄含量が多く、医師の指示のもとで用量が調整されます。

基本的な服用の考え方としては、食後に服用することで胃への刺激を和らげられることが多いとされています。また、ビタミンCと一緒に摂ることで鉄の吸収率が上がると言われています。ただし、服用タイミングや量は処方によって異なるため、担当医・薬剤師の指示を優先してください。

貧血が重症の場合や、経口鉄剤での改善が難しい場合には、点滴による鉄補給(静注鉄剤)が検討されることもあります。これは産婦人科の判断で行われるもので、自己判断で選択するものではありません。

鉄剤の副作用(便秘・吐き気)への対処法

鉄剤で困る副作用の代表格が、便秘・吐き気・胃部不快感・黒色便(鉄が酸化したもので害はない)です。「薬を飲むたびに気持ち悪い」「便秘がひどくなった」という声はとても多く、副作用でつらいのはあなただけではありません。

副作用への対処として、まず知っておいてほしいのは「主治医に相談すれば対応策がある」ということです。鉄剤にはいくつかの種類・剤形があり、徐放製剤や液剤に切り替えることで、副作用が改善されるケースはよくあります。また、食後服用への変更・1日の服用回数の調整・整腸剤の併用などの方法もあります。

鉄剤が辛いときは自己判断で中断しないで
副作用がつらいからといって、自己判断で鉄剤を中断したり量を減らしたりしないでください。貧血が改善されないまま出産を迎えると、産後の回復に影響することがあります。「副作用がつらい」と感じたら、受診時や電話で産婦人科に相談し、処方変更・服用方法の調整を依頼しましょう。遠慮する必要はありません。

副作用は、服用を続けるうちに体が慣れて軽くなる方も少なくありません。まずは2〜4週間を目安に試してみて、それでも改善しなければ担当医に相談するのが現実的なアプローチです。

市販の鉄サプリで処方鉄剤の代わりにならない理由

「鉄剤の副作用が辛いから市販の鉄サプリに変えたい」という声をよく聞きます。しかし、市販の鉄サプリは処方鉄剤の代わりには基本的になりません。

市販の鉄サプリは処方鉄剤の代替にならない
市販の鉄サプリに含まれる鉄の量は、処方鉄剤に比べてはるかに少ないことがほとんどです。また、鉄の形態・吸収率も製品によって大きく異なります。処方された鉄剤があるのに自己判断で市販サプリだけに切り替えることは避けてください。「副作用が辛い」という場合は、市販サプリに変えるのではなく、処方薬の種類・飲み方を変えてもらえるよう担当医に相談しましょう。

なお、貧血の指摘がなく、食事での鉄補給の補助として市販の鉄サプリを取り入れることは、担当医の指導のもとであれば一つの選択肢です。ただし「貧血の治療」を目的とした自己判断での使用は、治療が遅れるリスクがあるため適切ではありません。

妊娠中の貧血対策食事——鉄分の取り方と吸収をUPさせるコツ

ヘム鉄と非ヘム鉄の違いと代表食材

食品中の鉄には大きく2種類あります。

ヘム鉄と非ヘム鉄の比較
ヘム鉄(吸収率15〜30%・動物性):赤身の牛肉・豚肉、あさり・しじみ・牡蠣などの貝類、かつお・まぐろなどの赤身魚。吸収率が高く効率的に鉄補給できる。

非ヘム鉄(吸収率2〜5%・主に植物性):小松菜・ほうれん草・水菜などの緑の野菜、納豆・豆腐・厚揚げなどの大豆製品、ひじき・わかめなどの海藻類、プルーン・レーズンなどのドライフルーツ。吸収率は低めだが日常的に食べやすい。

ヘム鉄は吸収率が高いため、効率よく鉄補給できます。一方、非ヘム鉄は吸収率は低いですが、食べやすく日常的に取り入れやすいのが特徴です。両方をバランスよく食べることが大切です。

なお、レバーは鉄分が非常に豊富ですが、妊娠初期にとりすぎを避けたいビタミンA(レチノール)も多く含まれています。週1回・少量程度なら過度に心配しなくてよいとされていますが、毎日大量に食べることは避けましょう。鉄分はあさり・赤身肉・小松菜など他の食材からも十分に補えます。

鉄分吸収を高める食べ合わせ(ビタミンC・発酵食品)

非ヘム鉄(植物性の鉄)は、ビタミンCと同時に摂ることで吸収率が大きく上がると言われています。これは、ビタミンCが非ヘム鉄を吸収されやすい形(Fe2+)に変換する働きを持つためです。

日常的に取り入れやすい食べ合わせの例をご紹介します。「ほうれん草の炒め物に少量のレモン汁をかける」「小松菜の味噌汁にいちごやみかんを添えて食べる」「納豆にトマトを加える」「豆腐とブロッコリーを一緒に使う」——どれも特別な食材を使わず、普段の食事に少し工夫を加えるだけでできる対策です。

また、発酵食品(酢・ヨーグルト・味噌など)と一緒に摂ることで消化管内の環境が整い、鉄の吸収を助けるとされています。妊娠中の食事全体のバランスについては、こちらの記事でくわしくまとめています。

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吸収を妨げる飲み物・食品(タンニン・カフェイン・フィチン酸)

逆に、鉄の吸収を妨げる成分にも注意が必要です。

タンニン(緑茶・コーヒー・紅茶・赤ワインに含まれる):タンニンは鉄と結合して吸収を阻害します。鉄分が多い食事の直前・直後にコーヒーや緑茶・紅茶を大量に飲むのは避けることが望ましいとされています。食事から1〜2時間程度あけて飲む、または麦茶・ほうじ茶(タンニンが少ない)に切り替えるのも一つの方法です。

カフェイン:タンニンと同様に、カフェインも鉄の吸収に影響するとされています。妊娠中のカフェイン制限(1日200mg程度を目安)と合わせて、鉄分補給の観点からも過剰摂取は避けましょう。

フィチン酸(穀類・豆類・種子類に含まれる):フィチン酸は非ヘム鉄と結合して吸収を妨げることがあります。ただし、フィチン酸を含む食品(玄米・全粒粉・大豆など)は栄養豊富な食材であり、「食べてはいけない」ものではありません。極端な偏食でない限り過度に気にする必要はありません。妊娠中の食べ物全般の注意点については、こちらでもまとめています。

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「どうすればいい?」——まず産婦人科の指示が最優先

食事の工夫はとても大切ですが、貧血が診断された場合の治療の主役は処方鉄剤です。食事改善はあくまで補助的な役割であり、鉄剤を処方されている場合は食事の工夫と並行して服薬を続けることが基本です。

貧血の治療は自己判断でなく主治医と一緒に
「市販のサプリを自己判断で飲む」「処方鉄剤をやめて食事だけで改善しようとする」という対応は避けてください。貧血の程度や原因によって最適な治療方針は異なります。「どうすればいい?」という疑問に対する最善の答えは、かかりつけの産婦人科医に相談することです。

つわりで食べられないときの鉄分補給——できることを無理なく

温かい飲み物を手に穏やかにほほえむ女性|つわり中の鉄分補給に寄り添うイメージ

つわり中の貧血対策の優先順位

つわりがひどくて何も食べられない時期の鉄分補給は、正直なところ「無理をせず、できることだけやる」が基本スタンスです。

この時期の優先順位を整理すると、①水分補給(脱水を防ぐことが最優先)→②処方鉄剤が飲める場合は継続(タイミング・剤形を相談)→③食べられるものを少量でも口にするの順になります。「鉄分の多い食事」は、つわりが落ち着いてから少しずつ意識すれば十分です。

鉄剤を処方されている場合も、「吐いて飲めない日が続く」という場合は無理せず担当医に相談してください。つわりの程度・期間に応じて、服薬タイミングや剤形の調整が可能です。

食べられないときの鉄補給の選択肢(医師相談前提)

つわりがひどい時期でも比較的口に入れやすい鉄分源として、以下のような選択肢があります。いずれも担当医の指示・了解の上で取り入れることが前提です。

しじみ・あさりの汁物(液体):固形物より飲みやすいことが多く、ヘム鉄が含まれます。市販のインスタントのあさり汁でも手軽に取り入れられます。
プルーンジュース・ドライプルーン(非ヘム鉄):甘い飲み物や食べ物の方が口に入れやすい方に。ただし糖分が多いため量には注意。
鉄補給を目的としたゼリー飲料・液体サプリ:担当医に相談した上で、液体状・ゼリー状の補助食品を一時的に活用する選択肢もあります(処方鉄剤の代替ではなく、補助として)。

つわりで食べられないときの食事の工夫については、こちらの記事でくわしくまとめています。

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ちなみからのひとこと——貧血と鉄剤のリアルな話

2人の妊娠中に貧血の指摘を受けた経験

私自身の話を少しだけ。2人の子を妊娠したとき、どちらの妊娠でも健診で貧血の指摘を受けました。1人目のときは「え、なんで?症状なんてなかったのに」という驚きと、「赤ちゃんに影響があるの?」という不安が正直ありました。担当医から「よくあることで、鉄剤を飲みながら管理しましょう」と説明していただいて、少し安心した記憶があります。

鉄剤で便秘がひどくなった時期もありました。それが結構しんどくて、「飲み続けられるかな」と思ったこともあります。担当医に相談して飲み方を調整してもらったら、だいぶ楽になりました。「副作用がつらい」と感じたら、我慢しないで相談していいんです。貧血の程度も、経過の感じ方も、個人差が大きいものだということも付け加えておきます。

看護師時代に鉄剤の副作用に悩む患者さんに接した経験

看護師時代、鉄剤の副作用——特に便秘と吐き気——がつらくて「もう飲みたくない」と話してくださった妊婦さんに、何度か接したことがありました。「副作用が嫌で、もう薬をやめようかと思っている」という方もいらっしゃいました。

そういった方が主治医に相談して薬の種類や飲み方を変えてもらったら、「思っていたより飲み続けられた」という声を聞けたことも多かったです。「鉄剤が合わない」のではなく、「今の処方が自分の体と合っていないのかもしれない」という発想の転換が大切だと感じています。遠慮なく相談できる関係を主治医と作ってほしいと思います。

ちなみ(元看護師)

「副作用が辛い」は、我慢する理由になりません。鉄剤の種類・剤形・飲み方には選択肢があります。遠慮なく産婦人科に相談してほしいです。

まとめ——妊娠性貧血は管理できる。一人で抱え込まないで

妊娠中の貧血:この記事のポイント
  • 妊娠性貧血とはヘモグロビン(Hb)値が11g/dL未満の状態。鉄欠乏性貧血が最多で、葉酸欠乏性貧血も起こりうる
  • 妊娠中に貧血になりやすい3大理由:循環血液量の増加(血液希釈)・赤ちゃんへの鉄供給・つわりによる食事量の減少
  • 貧血は自覚症状がないまま進むことが多い。定期的な健診での血液検査(Hb値・フェリチン値)が早期発見の鍵
  • 鉄需要のピークは妊娠中期〜後期。初期に問題なかった場合でも中期以降の健診に注意
  • 「発達障害・ASDリスク」への不安は理解できるが、健診で発見・管理されていれば大きなリスク上昇はないとされている
  • 処方鉄剤の副作用が辛いときは自己判断で中断せず、担当医に相談して処方変更を依頼できる
  • 食事ではヘム鉄(あさり・赤身肉)+非ヘム鉄(小松菜・ほうれん草)+ビタミンCの食べ合わせが基本。タンニン・カフェインは鉄分の多い食事の前後に大量摂取を避ける
  • 市販の鉄サプリは処方鉄剤の代替にはならない。「どうすればいい?」は産婦人科医への相談が最優先

妊娠中の貧血は「なってしまったら終わり」ではなく、「見つかったら対処できる」ものです。定期的な健診で早期発見し、担当医の指導のもとで鉄剤・食事・生活習慣を整えれば、多くの方が安全に出産を迎えられます。副作用が辛ければ遠慮なく相談し、自分の体に合った方法を見つけていきましょう。ひとりで抱え込まず、「一緒に管理していく」姿勢で主治医と向き合ってほしいと思います。

参考 日本人の食事摂取基準(2025年版)厚生労働省

参考 「妊産婦のための食生活指針」の改定について厚生労働省

参考 母子保健・不妊症・不育症などこども家庭庁

妊娠中の貧血対策として鉄分とともに意識したいのが葉酸です。葉酸欠乏性貧血(巨赤芽球性貧血)と鉄欠乏性貧血の違い・妊娠初期からの葉酸摂取の重要性について、元看護師ちなみが詳しくまとめた記事もあわせてご参考ください。

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参考 Q&A(妊娠・出産に関する解説)日本産婦人科医会

よくある質問(妊娠中の貧血|FAQ)

Q妊娠中の貧血はどうすれば改善できますか?

A.まず産婦人科で処方された鉄剤の服用を続けることが基本です。あわせて食事面では、吸収率の高いヘム鉄を含む赤身肉・あさり・しじみを意識して食べること、非ヘム鉄(小松菜・ほうれん草・納豆)はビタミンCと組み合わせると吸収率が上がります。コーヒーや緑茶(タンニン含有)は鉄分の多い食事の直前・直後は大量摂取を避けると吸収を妨げにくくなります。自己判断での市販サプリへの切り替えは避け、必ず主治医の指示に従って管理してください。

Q鉄剤の副作用(便秘・吐き気)が辛いです。どうすれば楽になりますか?

A.まず担当の産婦人科医に「副作用が辛い」と伝えることが最優先です。鉄剤には複数の種類と剤形があり、徐放製剤(鉄が緩やかに吸収される)や液剤(シロップ状)に切り替えることで改善されるケースは多くあります。また、食後服用への変更や整腸剤の併用で楽になることもあります。自己判断で中断せず、医師に相談しながら自分に合った飲み方を見つけていきましょう。

Q市販の鉄サプリで処方鉄剤の代わりになりますか?

A.基本的にはなりません。市販の鉄サプリに含まれる鉄の量は処方鉄剤よりはるかに少なく、貧血の治療目的には用量が不足する場合がほとんどです。処方鉄剤が出ているのに自己判断で市販サプリのみに切り替えることは避けてください。「副作用が辛くて処方薬を変えたい」という場合は、市販サプリに切り替えるのではなく、処方薬の種類や飲み方を変えてもらえるよう担当医に相談してください。

Q妊娠後期になるほど貧血がひどくなるのはなぜですか?

A.妊娠後期は赤ちゃんの成長が急速で、肝臓に鉄を蓄積する量が最大になる時期のため鉄の需要がピークに達します。また子宮が大きくなり胃が圧迫されて食事量が減りがちになることも要因のひとつです。さらに分娩出血への備えとして体内の鉄貯蔵量を高めておく必要があるため、後期の鉄補給は特に重要とされています。「後期に悪化した」と感じたら、早めに担当医に相談してください。

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