妊娠中にイライラが止まらないのはなぜ?原因とホルモンの影響、乗り越え方を元看護師が解説

妊娠中の女性がリビングで深呼吸をして気持ちを落ち着けているシーン|妊娠中のイライラ・情緒不安定のイメージ

「さっきまで普通だったのに、急に涙が出てきた」「夫のちょっとした一言に、いつもの何倍もイライラしてしまう」——妊娠中、自分でもコントロールできない感情の波に戸惑っていませんか。優しくいたいのに、些細なことでカッとなったり、わけもなく落ち込んだりする自分に「性格が変わってしまったのかな」と不安になる方も少なくありません。

はじめまして、ちなみです。元看護師として病院勤務を経験し、現在は妊活・妊娠・子育てを中心に情報発信している男女2児のママです。私自身も2回の妊娠でそれぞれ「涙もろくなる時期」「些細なことでイライラする時期」を経験しました。この記事では、妊娠中にイライラ・情緒不安定になりやすい理由、時期による違い、うつ病との見分け方、そしてイライラとの付き合い方まで、順を追って解説します。

ちなみ(元看護師)

妊娠中にイライラしたり涙もろくなったりするのは、あなたの性格が変わったわけでも、心が弱いわけでもありません。多くの妊婦さんが経験することです。まずは原因を知ることから始めましょう。

妊娠中にイライラしやすくなる理由

妊娠中の情緒不安定には、いくつかの要因が重なっていると考えられています。「気の持ちよう」で片付けられるものではなく、体の変化に裏付けられた自然な反応であることを知っておくと、少し気持ちが楽になるかもしれません。

エストロゲン・プロゲステロンの急激な変化

妊娠すると、エストロゲンとプロゲステロン(どちらも女性ホルモンの一種)の分泌量が、非妊娠時とは比べものにならないほど急激に増えます。これらのホルモンは気分や自律神経の働きにも関わっているとされており、この急激な変化が感情の波を大きくする一因になっていると考えられています。生理前のイライラ(PMS)を経験したことがある方は、それに近い感覚がより強く、より長く続くイメージを持つとわかりやすいかもしれません。

自律神経の乱れによる心身の不調

ホルモンバランスの変化は自律神経にも影響し、のぼせ・動悸・めまいといった体の不調を引き起こすことがあります。体がつらいと、普段なら気にならないことにも余裕を持って対応できなくなり、結果としてイライラや涙もろさにつながりやすくなります。

つわり・眠れなさなど体調不良の積み重ね

吐き気やだるさが続くつわり、お腹が大きくなるにつれて眠りにくくなる夜など、体がつらい状態が続くと、それだけで気持ちに余裕がなくなります。睡眠不足は特に感情のコントロールを難しくする要因のひとつとされているため、「眠れていないからイライラしやすい」という側面も見逃せません。

これからの生活への漠然とした不安

「無事に産まれてくるだろうか」「出産や育児をちゃんとこなせるだろうか」「仕事や家計はどうなるのだろう」——妊娠は嬉しい出来事であると同時に、生活が大きく変わる不安と隣り合わせでもあります。この漠然とした不安が、ちょっとしたことへの過敏さにつながることも少なくありません。

妊娠中の女性がソファで少し疲れた表情をしているシーン|理由もなくイライラする気持ちのイメージ

【時期別】イライラ・情緒不安定の傾向

イライラや涙もろさの出方は妊娠時期によって傾向が変わるとされています。「今はこういう時期なんだ」と見通しを持てるだけでも、気持ちの負担は変わってきます。

妊娠初期(〜15週頃)

妊娠がわかったばかりのこの時期は、ホルモンの変化が最も急激な時期のひとつです。つわりが重なることも多く、体調不良とホルモンの変化が同時に押し寄せるため、涙もろさやイライラを強く感じやすい時期といえます。妊娠初期に出やすいそのほかの症状については、こちらで詳しくまとめています。

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妊娠中期(16週〜27週頃)

「安定期」と呼ばれ、つわりが落ち着いて体調が上向く方が多い時期ですが、情緒不安定が完全になくなるわけではありません。お腹が目立ち始めることでの体形の変化への戸惑い、周囲からの気遣われ方の変化などが、新たな形でストレスになることもあります。

妊娠後期(28週以降)

出産が近づくにつれて、体の負担が再び大きくなる時期です。お腹の張りや腰痛、頻尿などで眠りが浅くなりやすく、出産への緊張感も高まるため、後期にもう一度イライラや情緒不安定を感じやすくなる方が多く見られます。眠れないことが気持ちの波に影響している場合は、こちらの記事も参考にしてみてください。

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涙が止まらない・情緒不安定は「うつ」なのか不安なとき

「涙が止まらない自分は、何か病気なのではないか」と不安になる方もいらっしゃると思います。まず知っておいていただきたいのは、妊娠に伴うホルモンの変化による一時的な情緒不安定と、うつ病は分けて考えられているということです。

一般的な情緒不安定は、波があり、気分転換や休息で持ち直すことが多いとされています。一方で、次のような状態が2週間以上続く場合は、うつ病などの可能性も含めて、産婦人科や心療内科に相談することが勧められています。

相談を検討したい状態のめやす
  • ほとんど一日中、気分の落ち込みが続く
  • これまで楽しめていたことに全く興味が持てない
  • 眠れない、または眠りすぎる状態が続く
  • 食欲が極端に落ちる、または増える
  • 「消えてしまいたい」「自分を傷つけたい」という気持ちが浮かぶ

妊娠中のうつは「マタニティブルーズ」と呼ばれる出産直後の一時的な情緒不安定とは区別され、妊娠中から出産後まで幅広い時期に起こりうるとされています。「甘えている」「気の持ちようだ」と自分を責める必要はありません。少しでも気になる状態が続くときは、次の健診で担当医に相談してみてください。

ちなみ(元看護師)

看護師時代、「涙が止まらなくて怖い」と話される妊婦さんに何人もお会いしましたが、多くの場合は一時的な情緒不安定でした。それでも「相談していいのかな」と迷ったら、迷わず相談してほしいというのが正直な気持ちです。

イライラを和らげるためにできること

イライラの原因を完全になくすことは難しくても、波を小さくする工夫はできます。すべてを一度に頑張る必要はないので、できそうなものから試してみてください。

意識的に一人の時間をつくる

常に誰かと一緒にいる、常に何かをしていると、気持ちを立て直す時間が持てず、小さな刺激にも過敏になりやすくなります。1日10分でも、一人でお茶を飲む、好きな音楽を聴くといった時間を意識的に確保することが、感情のクールダウンにつながります。

「今そういう時期だから」と自分に言い聞かせる

イライラした自分を責めてしまうと、それがまた新たなストレスになります。「ホルモンの影響で今は感情の波が大きい時期」と客観的に捉えるだけでも、感情に飲み込まれにくくなります。

深呼吸や軽いストレッチを取り入れる

イライラを感じた瞬間に、ゆっくりと深呼吸を数回繰り返すだけでも、高ぶった気持ちが落ち着きやすくなります。体調が良ければ、マタニティヨガや軽い散歩など体を動かす時間を取り入れるのもおすすめです。

妊娠中の女性が窓辺で温かい飲み物を手に深呼吸をしているシーン|気持ちを落ち着ける対処法のイメージ

家事や仕事は「できる範囲」に線引きする

普段通りに家事や仕事をこなそうとして、体力と気力が削られてしまうと、イライラはますます強まります。「今日はここまででいい」と線引きをして、家族に頼れる部分は素直に頼ることも大切な対処法のひとつです。

パートナーに知っておいてほしいこと

イライラをパートナーにぶつけてしまい、後から自己嫌悪に陥る方も少なくありません。「イライラしているのは、あなたのせいではなく、ホルモンの影響が大きい」ということを、あらかじめ言葉で伝えておくと、お互いに気持ちが楽になることがあります。

パートナー側に何かを完璧にこなしてもらうことよりも、「今日は体がしんどい」「話を聞いてほしいだけで、解決策はいらない」など、そのときの気持ちを具体的に伝える方が、すれ違いを減らしやすくなります。

こんなときは早めに相談を

次のような場合は早めに産婦人科・心療内科に相談を
  • 気分の落ち込みや涙もろさが2週間以上続いている
  • これまで楽しめていたことに全く興味が持てない状態が続く
  • 「消えてしまいたい」「自分を傷つけたい」という気持ちが浮かぶ
  • イライラのあまり、自分や家族を強く傷つけそうで怖いと感じる
  • 眠れない・食べられない状態が長く続いている

「これくらいで相談していいのかな」とためらう必要はありません。妊婦健診の際に助産師や医師に一言伝えるだけでも、気持ちが軽くなることがあります。

参考 妊娠・出産に関するよくある質問日本産婦人科医会

ちなみから|イライラした気持ちとどう付き合ったか

少しだけ、私自身の経験をお話しさせてください。

1人目(長男)の妊娠中、特に理由もないのに涙が出てきて、自分でも戸惑ったことがありました。夫に「なんで泣いてるの」と聞かれても、うまく理由を説明できず、それがまたもどかしくてイライラする、という悪循環にはまっていた時期があります。

2人目(長女)の妊娠のときは、その経験があったぶん「あ、今そういう時期だな」と早めに気づけるようになっていました。「理由を探さなくていい」「今日は一人の時間を少しもらおう」と割り切れるようになってから、以前より気持ちが楽になったのを覚えています。看護師時代も、涙もろさやイライラに戸惑う妊婦さんに何人もお会いしましたが、「自分だけがおかしいわけではない」と知るだけで、表情が和らぐ方が多かった印象があります。

ちなみ(元看護師)

イライラする自分を責めなくて大丈夫です。「今は感情の波が大きい時期」と受け止めて、頑張りすぎず過ごしてくださいね。
ちなみが妊娠中のイライラに悩む妊婦さんに語りかけているイメージ|元看護師の体験談セクション

まとめ|イライラは自分を責めず、頼れるところに頼りながら乗り越えよう

この記事のポイント
  • 妊娠中のイライラ・情緒不安定は、ホルモンバランスの急激な変化や体調不良、生活への不安が重なって起こる自然な反応。
  • 妊娠初期・後期は特にイライラや涙もろさを感じやすい時期とされている。
  • 涙もろさや落ち込みが2週間以上続く、興味を持てない状態が続く場合はうつ病の可能性もあり、産婦人科・心療内科への相談が勧められる。
  • 一人の時間の確保・深呼吸・「今そういう時期」と割り切ることが気持ちの波を小さくする助けになる。
  • イライラは自分のせいではないことをパートナーに言葉で伝えておくと、すれ違いを減らせる。

イライラや涙もろさは、あなたの性格が変わったわけでも、心が弱いわけでもありません。体の変化に伴う自然な反応だと知って、自分を責めすぎずに過ごしてくださいね。つらいときは一人で抱え込まず、パートナーや医療者を頼ってください。

よくある質問(妊娠中のイライラ|FAQ)

Q妊娠中にイライラするのは普通のことですか?

A.はい、多くの妊婦さんが経験することです。エストロゲン・プロゲステロンといった女性ホルモンの急激な変化が、感情の波に影響していると考えられています。体調不良や生活への不安が重なると、さらに強く感じやすくなります。

Q涙が止まらないのですが、うつ病でしょうか?

A.一時的な情緒不安定であることがほとんどですが、気分の落ち込みや涙もろさが2週間以上続く、これまで楽しめていたことに興味が持てないといった状態が続く場合は、産婦人科や心療内科への相談が勧められています。

Qパートナーにイライラをぶつけてしまいます。どう伝えればいいですか?

A.「イライラの原因はホルモンの影響が大きく、あなたのせいではない」と先に言葉で伝えておくことがおすすめです。「話を聞いてほしいだけで解決策はいらない」など、そのときの気持ちを具体的に伝えるとすれ違いを減らせます。

Qイライラすることが赤ちゃんに影響しないか心配です。

A.一時的にイライラを感じること自体が赤ちゃんに直接悪い影響を与えると心配しすぎる必要はありません。それよりも、イライラを溜め込みすぎず、休息や相談で気持ちを軽くすることの方が大切です。

Qイライラはいつ頃から落ち着きますか?

A.個人差が大きいですが、つわりが落ち着く妊娠中期(安定期)に一度落ち着く方が多いとされています。ただし出産が近づく妊娠後期に、体の負担や緊張感から再びイライラを感じやすくなることもあります。

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