「夕方になると足首がパンパンになる」「靴下の跡がくっきり残る」「お気に入りの指輪が抜けなくなってしまった」「顔がなんだかむくんでいる気がする」——妊娠中のむくみは、多くの妊婦さんが経験する悩みのひとつです。でも、「これって大丈夫なの?」「妊娠高血圧症候群とどう違うの?」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
はじめまして、ちなみです。元看護師として病院勤務を経験し、現在は妊娠・出産・育児を中心に情報発信している男女2児のママです。私自身、2人目の妊娠後期になると、夕方には足首がパンパンになってしまいました。靴下を脱いでもくっきり跡が残るくらいひどくて、「これ、大丈夫かな…」と不安になったのを今でも覚えています。でも産婦人科の先生に確認したら、「妊娠中は誰でもむくみやすいよ」と教えてもらって、ずいぶん安心しました。この記事では、なぜむくみが起きるのか・時期別・部位別の特徴・食事や生活習慣での改善策・妊娠高血圧症候群との見分け方・受診目安まで、元看護師の視点で中立にまとめます。
ちなみ(元看護師)
妊娠中にむくみやすい理由
妊娠中は、なぜこれほどむくみやすくなるのでしょうか?主に3つのホルモン・身体変化の仕組みと、生活習慣による要因が重なってむくみが起きやすくなります。「なぜ自分がむくんでいるのか」を知るだけで、対策の見通しも立てやすくなります。
プロゲステロン増加で血管が拡張しやすくなる
妊娠中は「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の分泌量が大幅に増加します。プロゲステロンには血管を拡張させる作用があり、毛細血管の透過性(血管壁の「すき間」から水分が漏れ出す度合い)が高まると考えられています。血管壁からにじみ出た水分は「間質液」として組織の中に蓄積し、これがいわゆる「むくみ(浮腫)」の状態です。
プロゲステロンの増加は妊娠初期から始まり、全妊娠期間にわたって続きます。「妊娠初期なのになぜむくむの?」と感じている方の多くは、このホルモンの影響が関係しているとされています。妊娠によるむくみは医学的には「妊娠浮腫(ふしゅ)」とも呼ばれ、赤ちゃんを守るための体の適応反応のひとつです。
子宮の増大で下大静脈が圧迫される
妊娠が進むにつれて子宮が大きくなると、腹部の奥にある「下大静脈(かだいじょうみゃく)」が圧迫されやすくなります。下大静脈は下半身から心臓へ血液を送り返す太い静脈で、ここが圧迫されると足・ふくらはぎ・骨盤周辺からの静脈還流(血液が心臓へ戻る流れ)が滞ります。静脈血が滞ると、血管内の圧力が高まって血管壁から水分が間質へ漏れ出しやすくなり、むくみが生じます。
この影響は妊娠中期から後期にかけて特に強まります。特に仰向けに寝ると子宮が下大静脈をより強く圧迫するため、左側を下にした横向きの姿勢(左側臥位)が推奨されています。また、長時間立ちっぱなしや座りっぱなしでいると重力で下半身に水分が溜まりやすくなるため、こまめな体位変換が効果的です。貧血も血液循環に影響するため、貧血が気になる方は妊娠中の貧血に関する記事もあわせてご覧ください。
妊娠中の貧血はなぜ起こる?症状・治療・食事対策を元看護師ちなみが解説
血液量が大幅に増加する(妊娠中は約1.5倍に)
妊娠中は胎盤・赤ちゃんへの血液供給を確保するため、母体の循環血液量が著しく増加します。非妊娠時と比べて妊娠末期には約1.4〜1.5倍程度に増えると言われています。血液量が増えると、血液に含まれる水分量(血漿量)も増加します。血漿量の増加に対して血管の収縮力や血管壁の保持力が追いつかない場合、余剰の水分が血管外に漏れ出してむくみを起こしやすくなると考えられています。
また、血液量の増加に比べて赤血球の増加割合が少ないため、いわゆる「血液が薄まった状態(希釈性貧血)」になりやすいこともあります。この貧血とむくみが重なると、体全体の重だるさが増すことがあります。妊娠中の貧血については、むくみへの影響も含めて産婦人科で確認してもらうとよいでしょう。
塩分の摂り過ぎ・水分不足・運動不足も影響する
ホルモンや体の構造変化以外にも、生活習慣がむくみを悪化させる要因になることがあります。塩分(ナトリウム)を多く摂取すると体内の水分保持量が増えるため、むくみが起きやすくなります。また、「むくみが怖くて水を飲まないようにしている」という方もいますが、水分を控えすぎると体は水分を保持しようとして逆にむくみやすくなることがあります。こまめな水分補給は、むくみ対策としてもむしろ重要です。
さらに、運動不足によってふくらはぎの筋肉(いわゆる「第二の心臓」と呼ばれる筋肉ポンプ)が活動しないと、下半身の静脈血を心臓へ押し上げる力が弱まり、むくみが蓄積しやすくなります。長時間同じ姿勢でいることが多い方は、短時間の歩行やかかとの上げ下ろし運動を取り入れるだけでも改善につながることがあります。
時期別むくみの特徴
むくみは妊娠の時期によって出やすさや感じ方が異なります。自分が今どの時期にいるかを確認しながら読んでみてください。妊娠週数の数え方に不安がある方は、妊娠週数の数え方を解説した記事もあわせてご覧ください。
妊娠初期(5〜15週)のむくみ
妊娠初期は、プロゲステロンの急増が始まる時期です。子宮はまだ骨盤内に収まっていますが、ホルモンの影響によって毛細血管の透過性が高まり、顔や手指のむくみを感じる方がいます。「妊娠初期なのになんとなくむくんでいる気がする」「朝起きると顔がむくんでいる」という感覚を持つ方も珍しくありません。
また、妊娠初期はつわりが重なる時期でもあります。つわりで水分や食事が十分に摂れない状態が続くと、体が水分を保持しようとして逆にむくみやすくなることがあります。初期の下腹部の痛みとむくみが同時に気になる方は、産婦人科に確認してみてください。つわりの症状や対処法については以下の記事もあわせてどうぞ。
つわりはいつから?ピーク・いつまで続くかと症状・対処法を元看護師ちなみが解説
妊娠中期(16〜27週)のむくみ
妊娠中期になるとお腹が目立ち始め、子宮による下大静脈への圧迫が少しずつ強まってきます。また、血液量の増加も本格的になる時期で、「夕方になると足がむくんでくる」「ふくらはぎがだるい」と感じる方が増えてきます。中期は体が比較的動かしやすく、マタニティヨガや軽いウォーキングを取り入れやすい時期でもあります。
中期のむくみは、適切なセルフケア(後述の食事・生活習慣対策)を取り入れることでコントロールしやすいことが多いです。「夕方だけひどくなる」「朝は改善している」という場合は、重力によって水分が下半身に集まっている典型的なパターンです。夜間に横になることで翌朝には改善していることが多く、一般的な妊娠によるむくみの可能性が高いと言われています。
妊娠後期・臨月(28週〜)のむくみ
妊娠後期・臨月は、むくみが最も強くなりやすい時期です。子宮の増大が最大となり、下大静脈への圧迫も最も強くなります。「足首が象の足のようになった」「靴が入らなくなった」「手の指の関節がこわばる」という方も珍しくありません。後期には便秘も悪化しやすく、体全体の不快感が重なることもあります。後期の便秘については妊娠中の便秘の記事もご参照ください。
臨月(36週頃〜)になると胎児が下降してくるため、骨盤内の圧迫がさらに強まり、足のむくみが増すことがあります。また、後期に悪化するむくみは妊娠高血圧症候群の前兆として現れることもあるため、血圧の変化・急激な全身のむくみ・たんぱく尿の有無を産婦人科の定期健診で確認してもらうことが大切です。妊娠後期の体調変化については妊娠後期のつわりに関する記事も参考にしてください。後期の腰痛とむくみが同時に気になる方は妊娠中の腰痛の記事もあわせてどうぞ。
部位別の特徴と対処法
妊娠中のむくみは、起きやすい部位によって感じ方や対処のポイントが少し異なります。自分がどの部位にむくみを感じているかを確認しながら読んでみてください。
足首・ふくらはぎのむくみ(最も多い)
妊娠中のむくみで最も多いのが足首・ふくらはぎです。重力の影響で水分が下半身に溜まりやすく、特に夕方から夜にかけて悪化するのが特徴です。「靴下を脱いだあとに跡がくっきり残る」「夕方になると足首が太くなる」「ふくらはぎがだるくてパンパンに感じる」という方が多いです。翌朝起きると改善していることが多いのも、足首・ふくらはぎのむくみの特徴です。
私自身も2人目の妊娠後期に、夕方になると足首がパンパンになって、お気に入りのスニーカーが入らなくなってしまいました。靴下の跡がくっきり残るくらいひどい時期もあって心配しましたが、産婦人科の先生に確認したところ「妊娠によるむくみ」と言われて安心しました。夕方だけひどくなって朝は改善しているなら、まず生活習慣のケアを試してみてください。着圧ソックスや足上げ休憩が役立つことがあります(詳細は後述)。
手・指のむくみ(指輪が抜けない)
手や指のむくみは、特に妊娠中期以降に気づく方が多いです。「指輪がきつくなってきた」「朝起きると手がこわばる」「指の関節が曲げにくい」というのが典型的なサインです。手のむくみも基本的には妊娠による循環変化が原因で、プロゲステロンの影響や血液量の増加が手先にも影響することがあります。
指輪がきつくなってきた場合は、むくみが改善する前に早めに外しておくことをおすすめします。むくみがひどくなると指輪が抜けなくなることがあり、最悪の場合は切断が必要になることもあります。指輪が既に抜けにくい状態になっている場合は、保冷剤で手を冷やしながらゆっくり回転させつつ抜くか、石鹸や食器用洗剤を使うと外れやすくなることがあります。それでも外れない場合は、産婦人科や宝石店に相談してみてください。
顔・まぶたのむくみ(朝ひどい)
顔・まぶたのむくみは、特に朝に強く感じることが多いです。寝ている間は体が水平になるため、足首に集まっていた水分が全身に再分配され、顔にも溜まりやすくなります。「朝起きると顔がパンパン」「まぶたが重たい感じがする」という方は、これが原因であることが多いです。昼過ぎには自然に改善していくことがほとんどです。
ただし、顔全体のむくみが急激に出現したり、朝起きても改善しない場合、血圧の上昇や体重の急増(1週間で500g以上など)を伴う場合は、妊娠高血圧症候群の可能性を考えて産婦人科に相談してください。「いつもより顔が丸く見える」程度の軽い顔のむくみなら、まず水分・塩分バランスと生活習慣を見直してみましょう。
むくみ解消法①食事から改善する
むくみの解消には、食事からのアプローチが大切です。特に塩分・カリウム・水分のバランスを整えることで、体内の水分バランスを改善しやすくなります。一気に変えようとせず、できることから少しずつ取り入れてみてください。
塩分を控える(1日6g未満が目安)
塩分(ナトリウム)を多く摂ると、体は浸透圧を保つために水分を保持しようとします。この水分保持がむくみを悪化させる一因となります。妊娠中の塩分摂取量の目安は1日6g未満とされており、一般的な日本人の平均的な塩分摂取量より少ない水準です。急激に減らすのは難しいので、「醤油を少し控える」「外食時はつゆを飲みきらない」「ラーメンのスープを残す」など、できることから始めてみましょう。
塩分を控えるコツとして、だし(昆布・かつお節など)を効かせた料理にすると、少ない塩分でも旨みが出て満足感が得られます。また、漬け物・梅干し・ちくわ・ハム・ソーセージなどの加工食品は塩分が高いため、食べる量や頻度を意識してみてください。薄味に慣れると、素材本来の味を楽しめるようになります。
カリウムを積極的に摂る(バナナ・アボカド・ほうれん草)
カリウムはナトリウムを体外へ排出する働きがあり、むくみの改善に役立つ可能性があるミネラルです。バナナ・アボカド・ほうれん草・きゅうり・枝豆・さつまいも・乾燥ひじきなどがカリウムを多く含む食材として知られています。意識して毎日の食事に取り入れてみてください。妊娠中の食事全般については、妊娠中に積極的に摂りたい食材の記事もあわせてご覧ください。
ただし、腎臓の機能が低下している方や、主治医からカリウム制限の指示が出ている場合は、カリウムの過剰摂取に注意が必要です。妊娠高血圧症候群など合併症がある方は、食事の変更前に産婦人科に相談してください。一般的な妊婦さんであれば、バナナを1本プラスする・サラダにほうれん草を加える・アボカドを付け合わせに使うといった程度の追加は問題ない場合がほとんどです。
妊娠中に食べていいもの・積極的に食べたい食材は?栄養素別に元看護師ちなみが解説
水分をしっかり補給する(我慢は逆効果)
「むくむから水を飲まないようにしている」というのは逆効果です。水分が不足すると、体は脱水を防ごうとして水分をより多く保持しようとするため、むくみが悪化することがあります。妊娠中は1日1.5〜2L程度の水分補給(食事から摂る水分を含む)が目安とされています。一気に飲むより、こまめに少量ずつ補給する方が体への負担が少なくなります。
むくみが気になる場合は、利尿作用のある飲み物(麦茶・ルイボスティーなど)を取り入れるのも一つの方法です。カフェインを含む飲み物(コーヒー・緑茶・紅茶など)は妊娠中はほどほどにすることが推奨されています。甘い清涼飲料水や糖分の多いジュース類は糖分・塩分の過剰摂取につながることもあるため、なるべくノンカフェインの飲み物をメインにしましょう。

むくみ解消法②生活習慣で改善する
食事と並んで、生活習慣の見直しもむくみ改善に大きく影響します。いくつかのケアを組み合わせることで、特に「夕方のひどいむくみ」を楽にできることがあります。妊娠中でも安全にできる方法を選んで取り入れてみてください。
足を心臓より高く上げて休む
足のむくみに最もシンプルで効果的なセルフケアのひとつが「足を高く上げて休む」ことです。足を心臓より高くすることで、重力の影響で下半身に溜まっていた余分な水分が上半身に戻りやすくなり、むくみが改善しやすくなります。クッションや枕を重ねて足首〜ふくらはぎを持ち上げる形で横になる(足を15〜20cm程度上げる)だけでも効果が感じられることがあります。
夜寝るときにも、足元にクッションを置いて少し足を高くすると、翌朝のむくみが改善しやすくなることがあります。ただし、妊娠後期に長時間仰向けに寝ることは下大静脈を圧迫しやすいため、左側を下にした横向き(左側臥位)で足元にクッションを置く姿勢が推奨されています。自分にとって楽な姿勢で無理なく取り入れてみてください。
適度に体を動かす(ウォーキング・マタニティヨガ)
ふくらはぎの筋肉は「第二の心臓」とも呼ばれ、収縮することで下半身の静脈血を心臓へ押し上げるポンプの役割を果たしています。長時間同じ姿勢でいるとこのポンプ機能が働かず、むくみが蓄積しやすくなります。体調の良い日に1日15〜30分程度の軽いウォーキングを取り入れるだけでも、ふくらはぎの筋肉ポンプが働いてむくみの改善につながることがあります。
座り仕事が多い方は、1時間に1回程度「かかとの上げ下ろし(かかとを床につけたまま爪先を上げ下げする)」を20〜30回行うだけでも、ふくらはぎの筋肉ポンプが刺激されます。マタニティヨガも血行促進・リラクゼーションの観点から有効とされていますが、体調や妊娠週数によって適した動きが異なるため、専門の指導者のもとで行うか、産婦人科に相談してから始めてください。妊娠初期の生活習慣全般については、妊娠初期の過ごし方の記事も参考にしてください。
妊娠初期の過ごし方ガイド|安静度・眠れない・仕事対応を元看護師が中立解説
着圧ソックス・弾性ストッキングを活用する
着圧ソックスや弾性ストッキングは、足首から徐々に上に向かって圧迫する設計になっており、下半身の静脈還流(血液が心臓へ戻る流れ)を助けます。妊娠中の足のむくみ対策として多くの産婦人科で勧められており、朝起きたときに(まだむくみが少ない状態で)着用し、夕方に外すと効果的なことが多いです。
着圧ソックスはドラッグストアや通販で入手できますが、圧迫圧が強すぎるものは血流を妨げる可能性があります。一般的に市販品(20〜25mmHg程度)は問題ない場合がほとんどですが、静脈瘤がある方・浮腫がひどい方・皮膚に問題がある方は、産婦人科や助産師に相談してから使用してください。長時間着用しての就寝は推奨されていません。
足のマッサージとふくらはぎ運動
足のマッサージは、筋肉をほぐして血液やリンパの流れを促す効果が期待できます。入浴後やお休み前に、足首→ふくらはぎ→膝裏の順で(心臓に向かって)やさしくさする程度のマッサージが基本です。強く押しすぎると逆に血管を傷つけることがあるため、「気持ちいい」と感じる程度の優しい力で行いましょう。
入浴中にシャワーを足首・ふくらはぎに当てながらほぐすのも簡単にできる方法です。また、椅子に座ったまま爪先を上下に動かす・かかとの上げ下げを繰り返す・足首をゆっくり回すといった動きも、筋肉ポンプを刺激するのに有効とされています。お腹が大きくて手が届かない妊娠後期は、夫やパートナーにマッサージしてもらうのも一つの方法です。
ちなみ(元看護師)

むくみはいつから始まる?いつまで続く?
むくみが始まりやすい時期
妊娠中のむくみは、プロゲステロンの影響が始まる妊娠初期(5〜10週頃)から感じ始める方もいますが、多くの方は子宮の増大が本格化する妊娠中期(16〜27週)から気になり始めます。特に「夕方になると足首がむくむ」という症状が出始めるのは、妊娠20週前後が多いとされています。後期(28週以降)になるにつれて徐々に強くなり、臨月には最も強くなることが多いです。
個人差もあり、「妊娠初期からずっとむくんでいる」という方も「後期になって突然ひどくなった」という方もいます。体重増加の速度・生活習慣・もともとの体質なども影響します。「自分だけむくみがひどい」と落ち込まず、セルフケアを試しながら産婦人科の定期健診でこまめに確認してもらいましょう。
産後のむくみはいつまで続く?
出産後もしばらくはむくみが続く方が多いです。妊娠中に増加した血液量・血漿量は分娩後に急激に変化し、余分な水分が体外へ排出される過程でむくみが一時的に強くなる方もいます。多くの場合、産後1〜2週間程度で改善していきますが、個人差があります。
産後のむくみは原因・対処法が妊娠中とは一部異なるため、詳しくは別の記事でまとめる予定です。「産後に足がパンパンになった」「出産後の方がむくみがひどい」という場合は、産後ケアの専門家(助産師・産婦人科)に相談してみてください。
こんなときは受診を——妊娠高血圧症候群との見分け方
妊娠中のむくみのほとんどは、妊娠に伴う体の自然な変化によるものです。しかし、むくみの中には妊娠高血圧症候群(かつては「妊娠中毒症」と呼ばれていた)のサインとして現れるものもあり、注意が必要です。「むくみがある=妊娠高血圧症候群」ではありませんが、特定のサインと重なる場合は早めに産婦人科を受診してください。
通常のむくみと妊娠高血圧症候群を見分けるサイン
妊娠高血圧症候群は、妊娠20週以降に高血圧(収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上)が見られる状態で、たんぱく尿を伴うこともあります。むくみ単独では妊娠高血圧症候群の診断はなされませんが、むくみに以下のサインが重なる場合は要注意です。
通常の妊娠によるむくみは「夕方に悪化して朝には改善する」「足首・ふくらはぎが中心」「朝晩の体重差が緩やか」という特徴があることが多いです。一方で注意が必要なのは、「急激な全身のむくみ」「顔全体・手のひらのむくみが朝も改善しない」「血圧の上昇」「目のかすみ・頭痛・上腹部痛」といった症状が加わる場合です。
むくみとともに以下の症状がある場合は、自己判断せず産婦人科に速やかに連絡・受診してください。
・急激な全身のむくみ(1週間で500g以上の体重増加が続く)
・顔全体・手のひらのむくみが朝になっても改善しない
・血圧の上昇(頭痛・目のかすみ・上腹部痛を伴う場合は特に注意)
・尿の泡立ちが目立つ(たんぱく尿の可能性)
・視野のかすみや激しい頭痛
「これくらいで受診してもいいの?」と迷ったときは、迷わず連絡してください。産婦人科は妊娠中のあらゆる体調変化に相談できる場所です。
受診が必要なむくみの特徴
以下に当てはまる場合は、次の健診まで待たず、産婦人科に連絡することをおすすめします。
- むくみが急に(1〜2日以内に)全身にひどく出てきた
- 足だけでなく顔・手・おなか全体がむくんでいる
- 朝起きてもむくみが改善していない日が続いている
- 尿の泡立ちが気になる(たんぱく尿のサインの可能性)
- 頭痛・目のかすみ・上腹部の痛みがある
- 自宅で血圧を測ったら普段より高い数値が続いている(140/90mmHg以上)
- 1週間で500g以上体重が急増している
逆に、「夕方だけ足首がむくんで朝は改善している」「体重増加が緩やか」「血圧が正常範囲内」という場合は、一般的な妊娠によるむくみの可能性が高く、セルフケアを試しながら定期健診で確認してもらいましょう。過度に不安にならず、でも気になるサインには敏感でいることが大切です。
妊婦健診でむくみのチェックをしてもらう
妊婦健診では、体重・血圧・尿検査(たんぱく尿チェック)が定期的に行われています。これらは妊娠高血圧症候群の早期発見に欠かせない検査です。「むくみが気になっている」ということを健診のたびに担当の医師や助産師に伝えておくと、より注意深く確認してもらえます。「たいしたことないかな」と思って言い出せずにいる方も多いですが、どんな些細なことでも相談していただいて大丈夫です。
産婦人科への相談タイミングに迷ったときは、妊娠したらやること・産婦人科への相談タイミングの記事もご参照ください。妊婦健診の受け方・活用方法についても詳しく解説しています。
むくみによる足のだるさ・熱感・むずむず感は、夜の眠れなさに直結します。妊娠中の眠れない悩みの原因6つと今夜から試せる対処法をまとめた記事もあわせてご覧ください。
妊婦さんが寝れない原因6つと今夜から試せる対処法——元看護師ちなみが時期別に解説
急激な体重増加は、むくみ(浮腫)が関係していることもあります。体重管理について詳しくはこちらの記事で解説しています。
妊娠中に体重を増やさない方法はあるの?適正な増加量の目安と今日からできる工夫を元看護師が解説
急激な体重増加やむくみは、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群のサインと見分けがつきにくいことがあります。妊娠糖尿病について詳しくまとめた記事もあわせてご覧ください。
妊娠糖尿病とは?原因・診断基準の数値・食事の工夫まで元看護師が解説
急激なむくみは妊娠高血圧症候群のサインの一つとして挙げられることがあります。妊娠高血圧症候群の診断基準の数値・原因・治療の流れについて詳しくまとめた記事もあわせてご覧ください。
妊娠高血圧症候群とは?原因・症状・数値の基準から治療法まで元看護師が解説
妊娠中のむくみが産後も続く、あるいは産後のほうがひどくなったという方は少なくありません。産後のむくみが起きるしくみといつまで続くのかは、こちらの記事で詳しく解説しています。
産後のむくみはいつまで続く?「象の足」の原因と受診が必要なサインを元看護師が解説
参考 妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)厚生労働省 働く女性の健康応援サイト

まとめ|妊娠中のむくみと上手に付き合っていくために
妊娠中のむくみは、プロゲステロン増加による血管拡張・子宮増大による下大静脈圧迫・血液量の増加という3つの体の変化が主な原因で起きます。「むくみがある=危険」ではありませんが、急激な全身むくみ・血圧上昇・たんぱく尿を伴う場合は妊娠高血圧症候群の可能性があるため、産婦人科に早めに相談してください。
- 妊娠中のむくみはプロゲステロン増加・子宮増大による下大静脈圧迫・血液量増加の3つが主な原因
- 時期別では初期はホルモン主因、中期は子宮増大が加わり、後期・臨月が最も強くなりやすい
- 部位別では足首・ふくらはぎが最多。手・指(指輪が抜けない)・顔(朝ひどい)も妊娠中に多い
- 食事ケア:塩分を控える(1日6g未満)・カリウムを摂る・水分はしっかり補給(我慢は逆効果)
- 生活習慣ケア:足を高く上げる・適度に動く・着圧ソックス・マッサージとふくらはぎ運動
- 産後もむくみが続く場合が多いが、多くは1〜2週間程度で改善する(個人差あり)
- 急激な全身むくみ・血圧上昇・頭痛・尿の泡立ちがある場合は速やかに産婦人科へ
あなたが安心してマタニティライフを過ごせるよう、気になることがあれば一人で抱え込まず、産婦人科・助産師に相談してくださいね。あなたと赤ちゃんが健やかに過ごせますように。
よくある質問
Q妊娠中のむくみは放っておいても大丈夫ですか?
A.夕方になると足首がむくんで翌朝には改善しているというパターンであれば、妊娠による一般的なむくみの可能性が高く、食事や生活習慣のセルフケアを試しながら定期健診で確認してもらう形で対応できることが多いです。ただし、急激な全身のむくみ・顔全体のむくみ・頭痛・目のかすみ・血圧上昇・尿の泡立ちなどの症状が伴う場合は妊娠高血圧症候群の可能性があるため、すぐに産婦人科へご連絡ください。「なんか様子が違う」と感じたら早めに相談することをおすすめします。
Q妊婦が指輪が抜けない場合はどうすればいいですか?
A.まず保冷剤で手を冷やしてむくみを少し引かせた後、石鹸や食器用洗剤を指と指輪の間に塗り込み、回転させながらゆっくり抜いてみてください。それでも難しい場合は、消防署・宝石店・アクセサリーショップに持参すると専用工具で切断してもらえます。切断しても後でリングを修理・サイズ調整してもらうことができます。むくみがひどくなる前に早めに外しておくことが最善策です。妊娠中期に入ったら、指輪をひとまず外しておくことをおすすめします。
Qむくみを悪化させる食べ物・飲み物はありますか?
A.塩分の多い食べ物(漬け物・加工肉・インスタント食品・ラーメン・塩辛い外食)はむくみを悪化させやすいため控えめにするとよいでしょう。カフェインを多く含む飲み物(コーヒー・エナジードリンク)も適度にとどめてください。糖分の多い清涼飲料水も体内の水分バランスに影響することがあります。逆に「水を飲まない」ことはむくみを悪化させることがあるため、ノンカフェインの飲み物でこまめな水分補給を心がけてください。
Qマッサージはむくみに効果がありますか?
A.足首からふくらはぎ・膝裏に向かって(心臓方向へ)やさしくさするマッサージは、血液・リンパの流れを促してむくみの改善に役立つ可能性があります。強く押しすぎず、「気持ちいい」と感じる程度の優しい力で行ってください。入浴後や就寝前に行うと効果的なことが多いです。ただし、静脈瘤がある部位・皮膚に炎症がある部位へのマッサージは避けてください。お腹が大きくなる妊娠後期は自分でマッサージしにくい場合もあるため、パートナーに手伝ってもらうのもよいでしょう。
続けて読みたい関連記事
妊娠中のむくみとあわせて知っておきたいテーマを3本選びました。
妊娠中の腰痛はなぜ起きる?時期別の特徴・セルフケア・受診目安を元看護師が解説

