妊婦健診のエコー検査で「胎盤の位置が低いですね」「前置胎盤の疑いがあります」と言われて、頭が真っ白になっていませんか。「出血したらどうしよう」「普通に産めないの?」と、検索窓に「前置胎盤」と打ち込みながら不安な気持ちでこのページにたどり着いた方も多いと思います。
はじめまして、ちなみです。元看護師として病院勤務を経験し、現在は妊活・妊娠・子育てを中心に情報発信している男女2児のママです。この記事では、前置胎盤とはどういう状態なのか、原因、症状(警告出血)、診断のタイミング、入院や安静の目安、そして帝王切開になる時期まで、順を追って解説します。
ちなみ(元看護師)
前置胎盤とは?胎盤が赤ちゃんの出口をふさいでしまう状態
通常より低い位置に胎盤がつき、子宮口を覆ってしまう
胎盤は通常、子宮の上のほうに付着し、赤ちゃんの出口(内子宮口)をふさぐことはありません。これに対して前置胎盤は、胎盤が通常より低い位置に付着し、子宮口を胎盤が覆ってしまっている状態を指します。日本産科婦人科学会によると、前置胎盤の状態では「経腟分娩することができず、途中で胎盤が剥がれて大出血を起こす」おそれがあるため、注意深く経過を見ていく必要がある状態とされています。
頻度は全分娩の1%弱・決して多くはない
前置胎盤が起こる頻度は、日本産科婦人科学会の情報では「すべての分娩の1%弱」、国立成育医療研究センターの情報では「約200分の1」とされています。数値に幅はあるものの、いずれにしても頻繁に起こるものではなく、多くの妊婦さんには関係のない状態です。ただし、実際に指摘されると不安になるのは当然のことなので、まずは正しい知識を確認していきましょう。
前置胎盤の原因は?「何かしたから」ではありません
受精卵が正常より低い位置に着床することが原因
国立成育医療研究センターによると、前置胎盤は「受精卵が正常な位置よりも下の方に着床すること」が原因とされています。これは受精のごく初期の段階で決まってしまうことであり、妊娠が分かってからの生活習慣や行動で防げるものではありません。
関連すると言われている要因
すべてのケースに当てはまるわけではありませんが、次のような要因があると前置胎盤になりやすいと言われています。
- 年齢が高い(高齢妊娠)
- 喫煙
- 妊娠・出産の回数が多い(多産)
- 双子・三つ子などの多胎妊娠
- 過去に帝王切開など子宮の手術を受けたことがある
- 体外受精・顕微授精による妊娠
- 子宮内膜症・子宮腺筋症がある
「妊娠中に無理をしたから」「重いものを持ったから」前置胎盤になったわけではありません。着床の時点でほぼ決まってしまうことなので、必要以上に自分を責めず、健診での経過観察を大切にしていきましょう。
前置胎盤の症状|「警告出血」とは
妊娠中期まではほとんど自覚症状がない
前置胎盤は、それ自体でお腹が痛くなったり、日常生活で違和感を覚えたりすることはほとんどなく、多くが妊娠中期以降の健診の超音波(エコー)検査で偶然発見されます。「言われるまで何も気づかなかった」という方がほとんどです。
妊娠28週以降に起こりやすい「警告出血」
日本産科婦人科学会によると、前置胎盤では妊娠28週以降に「痛みもないのに急に出血する、いわゆる警告出血」が現れることがあり、約半数の方がこの警告出血を経験するとされています。特徴としては、1〜2週間おきに性器出血を繰り返しながら、徐々に出血量が増えていく傾向があるとされています。
出血に気づいたら、量にかかわらずすぐに連絡を
前置胎盤と診断されている場合、少量の出血であっても自己判断で様子を見続けず、速やかに産院へ連絡してください。警告出血は徐々に増えていくとされているため、早めに受診して安静や入院の必要性を確認してもらうことが大切です。
いつわかる?診断のタイミングと「自然に治る」可能性
妊娠中期に指摘されても、多くは経過とともに解消する
日本産科婦人科学会によると、妊娠中期の早い段階で前置胎盤が疑われても、その後の妊娠経過の中で「ほとんどが『前置胎盤でない』と診断」されるとされています。これは、子宮が大きくなるにつれて胎盤が相対的に上のほうへ移動するように見えるためです。妊娠中期に指摘されたからといって、そのまま前置胎盤が確定するとは限りません。
妊娠32週前後で確定診断される
日本産科婦人科学会は、「妊娠32週までに前置胎盤の状態が解消していなければ、それ以降に胎盤が子宮口から離れることは難しい」としており、この時期を目安に確定診断が行われます。国立成育医療研究センターの情報でも、「妊娠30週以降に、超音波検査によって診断」するとされており、妊娠後期に入ってから確定するという点は共通しています。妊娠週数の数え方や各時期の目安について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
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低置胎盤との違い
「前置胎盤」と似た言葉に「低置胎盤」があります。国立成育医療研究センターの情報では、胎盤が子宮口を覆う程度によって次のように分類されています。
- 全前置胎盤:胎盤が子宮口を完全に覆っている状態。大出血のリスクが高い。
- 部分前置胎盤:胎盤が子宮口の一部を覆っている状態。
- 辺縁前置胎盤:胎盤の端が子宮口の端に達している状態。
- 低置胎盤:胎盤が子宮口を覆ってはいないものの、近い位置にある状態。胎盤の端から子宮口までの距離が2cm以内の場合は帝王切開がすすめられることが多い。
低置胎盤は前置胎盤ほど子宮口を覆っていないため、経腟分娩と帝王切開のどちらを選ぶか、赤ちゃんと胎盤の位置関係を見ながら慎重に判断されます。「前置胎盤」と言われたか「低置胎盤」と言われたかで対応が変わってくるため、健診で担当医から説明された内容をしっかり確認しておきましょう。
胎盤に関するトラブルには、位置の異常である前置胎盤のほかに、正常な位置の胎盤が剥がれてしまう「常位胎盤早期剥離」もあります。症状や対応の違いについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
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前置胎盤も、帝王切開が原則となる代表的なケースのひとつです。帝王切開そのものの流れや痛み、費用について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
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前置胎盤と診断されたら|入院・安静などの過ごし方
出血がなければ自宅安静で経過を見ることが多い
出血がない段階では、自宅で無理のない範囲の安静を保ちながら、定期的な健診で経過を見ていくのが一般的です。重い荷物を持つ、長時間立ち続けるといった負担の大きい動作は控え、体を休める時間を意識してとるようにしましょう。
出血を繰り返す場合は入院管理になることも
警告出血を繰り返す場合や、出血量が増えてきた場合には、入院のうえ安静を保ちながら経過を観察することになります。国立成育医療研究センターの情報では、出血時は「入院安静の上、経過観察」になるとされており、入院期間は帝王切開の標準的な入院期間と同程度になることもあります。
出産に備えた準備(自己血貯血など)
前置胎盤では出産時に出血量が多くなりやすいため、日本産科婦人科学会の情報では、妊娠33〜34週ごろから自分の血液をあらかじめ採って保存しておく「自己血貯血」を行うこともあるとされています。また、約5〜10%で胎盤が子宮に強く癒着する「癒着胎盤」を合併する可能性もあるとされており、妊娠32週までに診断を確定させたうえで、早産の時期であっても帝王切開や新生児の管理ができる体制の整った施設で出産することが望ましいとされています。

分娩方法は帝王切開が原則|時期の目安
子宮口がふさがっているため経腟分娩ができない
前置胎盤は、赤ちゃんの出口である子宮口を胎盤がふさいでしまっている状態のため、そのまま経腟分娩をすると胎盤が剥がれて大出血を起こす危険があります。そのため、日本産科婦人科学会も「前置胎盤の分娩は帝王切開が原則」としています。
警告出血がなければ妊娠37〜38週ごろに予定帝王切開
警告出血などのトラブルがなく経過している場合は、日本産科婦人科学会の情報にもあるように、妊娠37週から38週ごろに予定を立てて計画的に帝王切開が行われることが一般的です。突然その日に手術が決まるということは少なく、あらかじめ日程を相談しながら準備を進めていくことができます。
出血を繰り返す場合は早産の時期でも手術になることがある
警告出血を繰り返す、出血量が急に増えるといった場合には、予定日を待たずに早産の時期であっても緊急で帝王切開が行われることがあります。だからこそ、前置胎盤と診断された場合は、早産や新生児の管理に対応できる体制の整った施設で出産することが望ましいとされているのです。
「前置胎盤とダウン症」は関係あるの?よくある検索の誤解について
インターネット上で「前置胎盤 ダウン症」といった組み合わせで検索されることがありますが、この点についても中立にお伝えしておきます。
胎盤の位置と染色体異常に医学的な関連は確認されていない
前置胎盤は、受精卵が着床する位置によって起こるものであり、赤ちゃんの染色体(ダウン症候群を含む)とは別の仕組みで起こります。前置胎盤であること自体が、赤ちゃんにダウン症候群があることを意味するものではありません。
NIPTやクアトロテストと時期が重なることでの混同
妊娠中期は、胎盤の位置を確認するエコー検査の時期と、NIPT(新型出生前診断)やクアトロテストといった染色体に関する出生前検査を検討する時期が近いため、この2つが混同されて検索されている可能性があります。前置胎盤の心配と、染色体に関する心配は、それぞれ別のこととして担当医に確認するようにしましょう。
逆子との関係|同じ健診で指摘されることも
前置胎盤は、赤ちゃんの向きが頭位に戻りにくくなる要因の一つでもあり、逆子(骨盤位)と同じタイミングの健診で一緒に指摘されることがあります。逆子そのものについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
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ちなみから|看護師時代に見てきた前置胎盤の妊婦さんたち
少しだけ、看護師時代の経験をお話しさせてください。私自身は2回の妊娠のどちらも前置胎盤にはなりませんでしたが、産科病棟で働いていたころ、健診で「前置胎盤の疑いがあります」と言われて不安な表情で来院される妊婦さんを何人もお見かけしました。
皆さん最初は「普通に産めないなんて」とショックを受けていましたが、妊娠週数が進むうちに「前置胎盤ではなくなりましたよ」とほっとした表情で健診から出てくる方もたくさんいらっしゃいました。一方で、最後まで前置胎盤が続き、予定帝王切開で出産された方もいましたが、「事前に日程が分かっているから、心の準備も、上の子のお世話の調整もできた」と、前向きに準備を進めていらっしゃった姿がとても印象に残っています。
ちなみ(元看護師)

まとめ|前置胎盤と言われても、慌てず健診で経過を見守って
- 前置胎盤とは、胎盤が通常より低い位置につき、子宮口を覆ってしまう状態。頻度は全分娩の1%弱、決して多くはない。
- 原因は受精卵が着床する位置によるもので、妊娠中の生活習慣が直接の原因ではない。
- 妊娠中期まではほとんど自覚症状がないが、妊娠28週以降に痛みのない「警告出血」が起こることがある。出血に気づいたら量にかかわらずすぐ産院へ連絡を。
- 妊娠中期に指摘されても多くは経過とともに解消し、妊娠32週前後で確定診断される。
- 「低置胎盤」は前置胎盤ほど子宮口を覆っていない状態で、分娩方法は慎重に判断される。
- 出血がなければ自宅安静、出血を繰り返す場合は入院管理となることがある。
- 分娩方法は帝王切開が原則。警告出血がなければ妊娠37〜38週ごろに予定帝王切開が計画される。
- 前置胎盤と赤ちゃんの染色体(ダウン症候群など)に医学的な関連はない。
前置胎盤と言われると不安な気持ちになるのは当然のことです。ですが、正しい知識を持って向き合えば、決して怖いものではありません。担当医と二人三脚で、今の週数でできることを一つずつ確認していきましょう。
よくある質問(前置胎盤|FAQ)
Q前置胎盤は自然に治りますか?
A.妊娠中期に指摘されても、子宮が大きくなるにつれて胎盤が相対的に上のほうへ移動するように見え、多くは経過とともに前置胎盤でなくなるとされています。ただし、妊娠32週までに解消していない場合は、それ以降に位置が変わることは難しいとされています。
Q前置胎盤の出血(警告出血)はどんな感じですか?
A.痛みを伴わずに、突然出血するのが特徴とされています。1〜2週間おきに出血を繰り返しながら、徐々に量が増えていく傾向があるとされ、約半数の方がこの警告出血を経験するといわれています。量にかかわらず、出血に気づいたらすぐに産院へ連絡してください。
Q前置胎盤はいつわかりますか?
A.妊娠中期の健診で疑われることもありますが、確定診断は妊娠30週から32週ごろの超音波検査で行われることが一般的です。それより早い時期の指摘は、その後の経過で変わる可能性があります。
Q前置胎盤は必ず入院になりますか?
A.出血がなければ自宅での安静を保ちながら通院で経過を見ていくことが多いです。ただし、警告出血を繰り返す場合や出血量が増えてきた場合は、入院のうえ安静を保ちながら経過を観察することになります。
Q前置胎盤とダウン症は関係ありますか?
A.胎盤の位置と赤ちゃんの染色体に医学的な関連は確認されていません。前置胎盤を確認するエコー検査の時期と、NIPTやクアトロテストなど染色体に関する検査を検討する時期が近いことから混同されやすいですが、それぞれ別のこととして担当医に確認しましょう。
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