常位胎盤早期剥離とは?症状(どこが痛い)・原因・気づかないケースから対応まで元看護師が解説

妊娠後期の女性が自宅でお腹に手を当てながら落ち着いて電話をかけようとしているシーン|常位胎盤早期剥離の症状に気づいたイメージ

妊娠後期に入って、急にお腹が硬くなったまま痛みが続く、出血があるといった症状に気づいて、検索窓に「常位胎盤早期剥離」と打ち込みながら不安な気持ちでこのページにたどり着いた方もいらっしゃると思います。

はじめまして、ちなみです。元看護師として病院勤務を経験し、現在は妊活・妊娠・子育てを中心に情報発信している男女2児のママです。この記事では、常位胎盤早期剥離とはどういう状態なのか、原因、症状(三大徴候)、なりやすい人の特徴、診断されたときの対応まで、順を追って解説します。

ちなみ(元看護師)

常位胎盤早期剥離は、頻度としては決して多いものではありません。ただ、突然の症状で慌ててしまう方が多いので、「どんな症状が危険信号なのか」を今のうちに知っておくことがとても大切です。一緒に整理していきましょう。

常位胎盤早期剥離とは?正常な位置の胎盤が出産前に剥がれてしまう状態

胎盤が本来の位置についたまま、子宮壁からはがれてしまう

胎盤は本来、赤ちゃんが生まれたあとに子宮からはがれるものです。これに対して常位胎盤早期剥離は、正常な位置(子宮の体部)に付着している胎盤が、赤ちゃんが生まれる前の妊娠中や分娩の途中に、子宮壁から剥がれてしまう状態を指します。日本産婦人科医会は、常位胎盤早期剥離を「正常位置(すなわち子宮体部)に付着している胎盤が、妊娠中または分娩経過中の胎児娩出以前に、子宮壁より剝離するもの」と定義しています。国立成育医療研究センターの情報でも、「出産前に何の前触れもなく突然はがれ落ちる」状態とされ、妊娠32週以降に起こることが多いとされています。

頻度は100〜200分娩に1例程度・決して多くはない

常位胎盤早期剥離が起こる頻度について、国立成育医療研究センターは「100〜200分娩に1例程度」、日本産婦人科医会は「約0.5〜1%」としており、いずれの数値で見ても、頻繁に起こるものではありません。また、赤ちゃんが亡くなってしまうような重症例については、国立成育医療研究センターの情報で「500〜750分娩に1例ほど」とされており、この中でもさらに稀なケースにあたります。「自分や赤ちゃんに何か起きるのでは」と不安になるのは当然ですが、まずは頻度としてはまれな状態であることを知っておいてください。

参考 胎盤がはがれる、常位胎盤早期剥離について国立成育医療研究センター 産科

原因は?現時点ではっきりとは分かっていません

高血圧・妊娠高血圧症候群・前期破水・喫煙などが関連するといわれている

国立成育医療研究センターによると、常位胎盤早期剥離は「母体の高血圧、妊娠高血圧症候群、前期破水、喫煙などが関連するという説がありますが、原因ははっきりと分かっていません」とされています。つまり、いくつかの関連する要因は分かっているものの、「これが原因です」と一つに特定できるものではないということです。日本産婦人科医会の情報でも、母体年齢が高いことがリスクを増加させる要因の一つとして挙げられています。

常位胎盤早期剥離に関連すると言われている主な要因
  • 妊娠高血圧症候群・高血圧
  • 前期破水(妊娠37週未満での破水)
  • 喫煙
  • 母体の年齢が高い(高齢妊娠)
  • お腹への強い衝撃(転倒・交通事故など)
  • 過去の妊娠で常位胎盤早期剥離を経験したことがある
  • 多胎妊娠・羊水過多

これらはあくまで「関連すると言われている」要因であり、当てはまる人が必ず常位胎盤早期剥離になるわけではありませんし、当てはまらない人に起こらないわけでもありません。「自分の生活のどこかがいけなかったのでは」と自分を責める必要はありません。

お腹への強い衝撃は、明らかな原因の一つとされている

数ある要因の中で、国立成育医療研究センターが「明らかな原因」として挙げているのが、お腹への強い衝撃です。転倒してお腹を強くぶつけた、交通事故に遭った、といった直接的な衝撃は、常位胎盤早期剥離のきっかけになり得るとされています。妊娠後期はお腹が大きくバランスを崩しやすいため、階段や滑りやすい床での転倒に注意し、万が一お腹を強くぶつけた場合は、症状の有無にかかわらず一度産院に相談しておくと安心です。

症状|三大徴候と「どこが痛い」の目安

三大徴候は「突然の腹痛」「性器出血」「子宮の圧痛」

日本産婦人科医会は、常位胎盤早期剥離の診断における主な所見として「突然の腹痛(子宮収縮もしくは下腹部痛)、性器出血と子宮の圧痛」の3つ、いわゆる三大徴候を挙げています。国立成育医療研究センターの情報でも、下腹部の痛みや出血、お腹の張り、腹筋の緊張、繰り返す子宮収縮が主な症状として挙げられており、内容としては共通しています。

「どこが痛い」?陣痛のように和らぐことのない持続的な痛みが特徴

「どこが痛いのか」「どんな痛み方なのか」は、多くの方が気になるポイントだと思います。日本産婦人科医会の情報では、常位胎盤早期剥離の痛みは持続的な痛みであり、お腹全体が板のように硬くなる「板状硬」と呼ばれる状態が特徴とされています。陣痛や前駆陣痛は、収縮が強まったり和らいだりを繰り返しながら間隔をあけてやってきますが、常位胎盤早期剥離の痛みや張りは、休みなくずっと続く・お腹全体が硬いままという点が大きな違いです。前駆陣痛と本陣痛の違いについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

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出血がなくても起こりうる「潜伏出血」で気づきにくいケースも

常位胎盤早期剥離では、はがれた部分から出た血液が腟の方へ流れ出ずに、胎盤の裏側にたまってしまうことがあります。これを潜伏出血(内包型)と呼び、日本産婦人科医会の情報でも、この場合は性器出血を認めないことがあるとされています。「出血がないから大丈夫」とは言い切れず、持続する腹痛やお腹の張りといった他の徴候にも注意が必要な理由がここにあります。

多胎妊娠とともに、羊水過多(羊水の量が基準より多い状態)も常位胎盤早期剥離に関連すると言われている要因の一つです。羊水過多の原因や症状について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

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参考 常位胎盤早期剝離公益社団法人 日本産婦人科医会

すぐに産院へ連絡すべきサイン
妊娠後期に、①和らぐことなく続くお腹の痛みや張り/②性器出血/③お腹全体がずっと硬いままの感覚、のいずれかに気づいたら、量や程度にかかわらずすぐに産院へ連絡してください。「様子を見て大丈夫か」を自己判断せず、早めに相談することが何より大切です。
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常位胎盤早期剥離になりやすい人の特徴

先ほど紹介した要因の中でも、特に「妊娠高血圧症候群」との関連は多くの資料で共通して挙げられています。日本産科婦人科学会も、妊娠高血圧症候群が重症化した場合に赤ちゃんに起こりうる合併症として、胎盤が子宮からはがれる状態(常位胎盤早期剥離)を挙げています。妊娠高血圧症候群と診断されている方、血圧が高めと指摘されている方は、健診での血圧管理や指示された生活上の注意点を守ることが、間接的なリスク低減につながると考えられます。妊娠高血圧症候群について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

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また、前期破水(妊娠37週未満での破水)も関連する要因として挙げられています。破水が疑われる場合は、常位胎盤早期剥離の観点からも早めの受診が大切です。破水について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

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診断されたらどうなる?治療は速やかな娩出

一度はがれた胎盤は元に戻らないため、多くは緊急帝王切開に

国立成育医療研究センターは、「一度はがれかけてしまった胎盤は元に戻ることはないので、治療としては帝王切開で赤ちゃんを取り出し」ますと説明しています。日本産婦人科医会の情報でも、赤ちゃんがまだ子宮内にいる段階で常位胎盤早期剥離が疑われた場合は、確定診断や合併症の有無の確認と並行して、直ちに娩出を考慮した体制を整えることが重要とされており、産科・新生児科・麻酔科・救急科が連携して対応にあたります。

正直にお伝えしたいリスクと、だからこそ早期対応が大切な理由

不安にさせたい訳ではなく、正確な情報としてお伝えしますが、国立成育医療研究センターの情報では、常位胎盤早期剥離が起こった場合、赤ちゃんの25〜30%が亡くなってしまうとされ、全周産期死亡の約20%を占めるとされています。また母体側にも、大量出血や血が止まりにくくなる状態(止血異常)など高いリスクがあり、妊産婦死亡の主要な原因の一つとされています。

これだけを聞くととても怖く感じるかもしれませんが、大切なのは、そもそも起こる頻度自体が100〜200分娩に1例、重症例はさらに500〜750分娩に1例とまれであること、そして症状に気づいてからどれだけ早く産院にたどり着けるかで経過が大きく変わるということです。日本産婦人科医会の重症度分類(Page分類)でも、臨床で遭遇するのはGrade1(軽症)からGrade3(重症)までさまざまで、すべてのケースが最も重い状態になるわけではありません。だからこそ、「和らがない痛み」「お腹全体の硬さ」「出血」に気づいた時点で、様子を見ずにすぐ連絡することが、母体にとっても赤ちゃんにとっても最も大切な行動になります。

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前置胎盤との違い|「痛みのない出血」か「痛みを伴う剥離」か

「前置胎盤」と「常位胎盤早期剥離」は、どちらも胎盤に関するトラブルという点で混同されやすいですが、原因も症状も異なります。前置胎盤は、胎盤が通常より低い位置につき子宮口を覆ってしまう「位置」の異常で、痛みを伴わない出血(警告出血)が特徴です。一方、常位胎盤早期剥離は、胎盤の位置は正常であるものの、それが「剥がれてしまう」トラブルで、持続する腹痛や板状硬を伴う点が大きな違いです。前置胎盤について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

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いつもの「お腹の張り」との違いは?

妊娠後期は、お腹の張りを感じること自体は珍しくありません。多くの場合、少し休むと治まる生理的な張りですが、常位胎盤早期剥離を疑うべきなのは、休んでも治まらず、お腹全体がずっと硬いままの状態が続く場合です。「今日の張りはいつもと違う」と感じたときの見分け方について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

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予防はできる?できることとできないこと

常位胎盤早期剥離は原因がはっきりと分かっていないため、100%予防できる方法はありません。ただし、関連すると言われている要因を踏まえると、次のようなことは間接的なリスク低減につながると考えられます。

日常生活でできること
  • 妊婦健診を予定通り受け、血圧の変化を早めに把握する
  • 妊娠高血圧症候群と指摘された場合は、指示された生活上の注意を守る
  • 禁煙する
  • 階段や浴室など滑りやすい場所での転倒に気をつける
  • お腹を強くぶつけた場合は、症状がなくても一度産院に相談する
  • 破水や出血を感じたら様子を見ずにすぐ連絡する

「予防できなかった自分が悪い」と考える必要はありません。原因がはっきりしない以上、誰にでも起こりうることとして、症状に早く気づき、早く相談する体制を自分の中に作っておくことが、今できる一番の備えです。

ちなみから|看護師時代に感じた「早さ」の大切さ

少しだけ、看護師時代の経験をお話しさせてください。産科病棟で働いていたころ、常位胎盤早期剥離で緊急搬送されてくる妊婦さんに立ち会ったことが何度かあります。皆さん一様に「さっきまで普通だったのに」と驚いた様子でしたが、共通していたのは「いつもと違う」と感じてすぐに連絡をくれたことでした。

「大げさかもしれない」とためらう方も多いのですが、産科の現場では、迷ったら連絡してもらう方がずっと助かります。休んでも治まらない痛みや張り、いつもと違う出血に気づいたときは、遠慮せずすぐに産院へ連絡してくださいね。

ちなみ(元看護師)

常位胎盤早期剥離は、頻度としてはまれな状態です。過度に怖がる必要はありませんが、「和らがない痛み」「お腹全体の硬さ」「出血」に気づいたら、様子を見ずにすぐ産院に連絡してくださいね。
ちなみが自宅のソファで読者に語りかけているイメージ|元看護師の体験談セクション

まとめ|「和らがない痛み」に気づいたら、すぐに産院へ

この記事のポイント
  • 常位胎盤早期剥離とは、正常な位置についた胎盤が、赤ちゃんが生まれる前に子宮壁からはがれてしまう状態。頻度は100〜200分娩に1例程度で、決して多くはない。
  • 原因ははっきり分かっていないが、妊娠高血圧症候群・前期破水・喫煙・お腹への強い衝撃などが関連すると言われている。
  • 三大徴候は「突然の持続する腹痛」「性器出血」「子宮の圧痛(板状硬)」。陣痛と違い、和らぐことなく痛みや張りが続くのが特徴。
  • 出血が外に出ない「潜伏出血」の場合もあり、出血がないからといって安心はできない。
  • 一度はがれた胎盤は元に戻らないため、治療は速やかな娩出(多くは緊急帝王切開)が中心となる。
  • 頻度としてはまれで、症状への早い気づきと早い受診が、母体・赤ちゃん双方にとって最も大切な備えになる。
  • 前置胎盤は「痛みのない出血」、常位胎盤早期剥離は「痛みを伴う剥離」という違いがある。

常位胎盤早期剥離という言葉を知ってしまうと、不安な気持ちが大きくなるかもしれません。ですが、頻度としてはまれな状態であり、正しい知識を持っておけば、いざというときに落ち着いて行動できます。「いつもと違う」と感じたときは、遠慮せずすぐに産院へ連絡してくださいね。

よくある質問(常位胎盤早期剥離|FAQ)

Q常位胎盤早期剥離はどこが痛いですか?どんな痛み方ですか?

A.お腹全体の持続する痛みや、板のように硬くなる「板状硬」が特徴とされています。陣痛のように痛みが強まったり和らいだりを繰り返すのではなく、休みなくずっと続く・お腹全体が硬いままという点が大きな違いです。

Q出血がなくても常位胎盤早期剥離の可能性はありますか?

A.あります。はがれた部分の血液が胎盤の裏側にたまる「潜伏出血」の場合は、性器出血を認めないことがあるとされています。出血がなくても、持続する腹痛やお腹の張りに気づいたら受診の目安にしてください。

Q常位胎盤早期剥離になりやすい人の特徴はありますか?

A.妊娠高血圧症候群・前期破水・喫煙・母体の年齢が高いこと・お腹への強い衝撃などが関連すると言われています。ただし、これらに当てはまらない方にも起こり得るとされ、原因ははっきり分かっていません。

Q常位胎盤早期剥離と診断されたらどうなりますか?

A.一度はがれた胎盤は元に戻らないため、赤ちゃんが子宮内にいる段階であれば、多くの場合、速やかな娩出(緊急帝王切開)が検討されます。産科・新生児科・麻酔科などが連携して対応にあたります。

Q前置胎盤とは何が違いますか?

A.前置胎盤は胎盤の「位置」の異常で、痛みを伴わない出血(警告出血)が特徴です。常位胎盤早期剥離は胎盤の位置は正常なまま「剥がれてしまう」トラブルで、持続する腹痛や板状硬を伴う点が異なります。

Q常位胎盤早期剥離は予防できますか?

A.原因がはっきり分かっていないため、100%予防できる方法はありません。ただし、血圧管理・禁煙・転倒への注意・破水や出血時の早めの相談など、間接的にリスクを下げられると考えられる行動はあります。

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