健診のあとに手渡される、白黒のエコー写真。うれしくて何度も見返すのに、すみに並んでいるアルファベットと数字がまったくわからない——そんな方が多いのではないでしょうか。「BPD」「AC」「FL」「GA」「EFW」。先生は見ながらさらっと説明してくれたけれど、家に帰って写真を見たらもう思い出せない、というのもよくあることです。
この記事では、元看護師で2児の母である私「ちなみ」が、エコー写真に出てくる記号の意味・時期ごとの見方・推定体重の受け止め方を、学会や公的機関の情報をもとに整理しました。あわせて「エコーでダウン症はわかるの?」「胎児ドックって何が違うの?」「写真が消えると聞いたけれど」といった、検索でよく調べられている疑問にも答えていきます。
読み終わるころには、次の健診でもらう写真が、ただのうれしい記念から「赤ちゃんの記録」として読めるものに変わっているはずです。
目次
- エコー写真に並んでいる文字は何を表しているの?
- まず覚えたい略語一覧——これだけで大半が読めます
- 週数別|エコーで見えるものと写真の変化
- 妊娠初期のエコー写真の見方
- 妊娠中期・後期のエコー写真の見方
- 写真のどこを見ているのかわからないとき
- 2D・3D・4Dエコーの違い
- エコー写真でダウン症はわかりますか?
- 性別はエコー写真でいつわかる?
- 「胎児ドック」「精密胎児超音波検査」は健診のエコーと何が違う?
- エコー写真は消える——早めにやっておきたいこと
- 写真がもらえない・少ないと感じるとき
- ちなみから|数値は、その子を測るものさしではありません
- まとめ|記号がわかると、健診がもっと安心になります
- よくある質問(エコー写真の見方|FAQ)
- 続けて読みたい関連記事
エコー写真に並んでいる文字は何を表しているの?
数字と記号は「その日に測った記録」です
エコー写真のすみに並んでいるのは、その日の検査で測った赤ちゃんの大きさと、そこから計算した推定体重、そして妊娠週数や予定日です。ロマンチックなものではなく、ごく実務的なカルテの一部だと思ってください。
つまり、アルファベット=何を測ったかの見出し、数字=その測定値という構造です。この対応さえわかれば、ほとんどの写真は読めるようになります。
施設や機種によって表記は違います
先に言っておくと、どの施設でも同じ項目が同じ順番で並んでいるわけではありません。おなかまわりを「AC」と書く施設もあれば、「APTD」「TTD」という2つの数値で示す施設もあります。日付の書き方や、そもそも数値を印字しない設定にしている施設もあります。
だから「ネットで見た写真と項目が違う」と不安になる必要はありません。施設ごとの設定の違いであることがほとんどです。
見方がわかると、健診の時間が変わります
数値の意味がわかると、健診で先生の説明が入ってきやすくなります。「前回より増えていますね」と言われたときに何が増えたのかがわかりますし、聞きたいことも具体的になります。
ちなみ(元看護師)
妊婦健診の頻度は?回数・スケジュール・毎回の検査内容と費用を元看護師が解説
まず覚えたい略語一覧——これだけで大半が読めます
よく出てくるものを一覧にしました。全部を覚える必要はありません。自分の写真に載っているものだけ拾えば十分です。
| 表記 | 読み方・正式名 | 意味 |
|---|---|---|
| GA | 妊娠週数(gestational age) | 「32w1d」なら妊娠32週1日 |
| EDC / EDD | 分娩予定日 | 出産予定日のこと |
| GS | 胎嚢(たいのう) | 赤ちゃんが入っている袋。妊娠初期に見えるもの |
| CRL | 頭殿長(とうでんちょう) | 頭からおしりまでの長さ。妊娠初期に測る |
| BPD | 児頭大横径(じとうだいおうけい) | 頭を輪切りにしたときの、いちばん長い横幅 |
| HC | 頭囲 | 頭のまわりの長さ |
| AC | 腹囲 | おなかまわりの長さ |
| APTD / TTD | 腹部前後径/腹部横径 | おなかの厚みと幅。ACの代わりに使う施設もある |
| FL | 大腿骨長(だいたいこつちょう) | 太ももの骨の長さ |
| EFW | 推定体重 | BPD・AC・FLなどから計算した、おおよその体重 |
| AFI / MVP | 羊水量の指標 | 羊水が多すぎ・少なすぎないかを見るもの |
| FHR / HR | 心拍数 | 赤ちゃんの心臓の拍動の速さ |
| NT | 後頸部(こうけいぶ)の厚み | 妊娠初期に首のうしろに見える部分の厚み |
週数と予定日を表すもの|GA・EDC
GAは妊娠週数です。「GA 24w3d」なら妊娠24週3日という意味で、w=週、d=日です。EDC(またはEDD)は分娩予定日を指します。
この2つは検査のたびに印字されるので、「この写真がいつのものか」を後から確認する手がかりになります。あとで写真を整理するときにも役立ちます。
妊娠週数の数え方|受精より2週早いのはなぜ?週数↔月数の早見表・出産予定日まで元看護師が解説
赤ちゃんの大きさを表すもの|CRL・BPD・AC・FL
大きさの計測は、時期によって測る場所が変わります。
- 妊娠初期:CRL(頭からおしりまでの長さ)。まだ手足がはっきりしないので、全長で測ります
- 妊娠中期以降:BPD(頭の幅)・AC(おなかまわり)・FL(太ももの骨)。体が大きくなって全長では測れなくなるため、部分ごとに測ります
「初期はCRL、中期からはBPD・AC・FL」と覚えておけば、写真の項目が途中で入れ替わっても混乱しません。
そのほかによく出るもの
AFIやMVPは羊水の量を見る指標です。羊水は多すぎても少なすぎても確認が必要なので、後期にかけてチェックされます。FHRは心拍数で、赤ちゃんの心拍は大人よりずっと速いのが正常です。数字だけ見て「速すぎるのでは」と驚かなくて大丈夫です。
数値以外に書かれている文字
写真には計測値のほかにも、施設名・機種名・検査日・設定を表す英数字などが入ります。「よくわからない文字が多い」と感じるのは、その多くが機械側の情報だからです。
また、写真によっては日付が2つ入っていることがあります。ひとつは撮影日、もうひとつは分娩予定日であることが多いのですが、ここも施設によって表示が違います。迷ったら健診で聞いてしまうのがいちばん早いです。
週数別|エコーで見えるものと写真の変化
「いまの時期は何が写っているはずなのか」がわかると、写真がぐっと読みやすくなります。おおよその目安を並べます。
| 時期 | 主に見えるもの | 測る項目 |
|---|---|---|
| 妊娠5〜6週ごろ | 黒い円(胎嚢)。中身はまだほとんど見えない | GS |
| 妊娠7〜8週ごろ | 袋の中に小さな赤ちゃんの姿と拍動 | CRL |
| 妊娠9〜11週ごろ | 頭と体の区別がつきはじめ、手足が動く | CRL |
| 妊娠12〜15週ごろ | 人らしい形になり、背骨や手足がわかる | CRL / BPD |
| 妊娠16〜27週ごろ | 顔の断面、内臓、背骨などがはっきり見える | BPD / AC / FL |
| 妊娠28週以降 | 体が大きく、全身は1画面に入らなくなる | BPD / AC / FL / 羊水量 |
※見え方には個人差があり、赤ちゃんの向きや姿勢によっても大きく変わります。あくまで目安として見てください。
後期になるほど「全身が写らなくなる」のは普通です
妊娠後期になると「最近は顔ばかりで全身の写真がない」と感じる方がいます。これは赤ちゃんが大きくなって、超音波の画面に全身が収まらなくなるからです。発育に問題があるからではありません。
この時期は全体を一枚に写すことより、頭・おなか・足の骨をそれぞれ正確に測ることのほうが大事になります。写真が部分的になるのは、むしろ検査が順調に進んでいる証拠です。
妊娠初期のエコー写真の見方
初期の写真は、正直に言うと「赤ちゃんらしく見えない」のが普通です。何が写っているのかを順番に見ていきます。
妊娠5〜6週ごろ|まず見えるのは黒い袋
この時期に最初に見えるのがGS(胎嚢)です。日本産婦人科医会も、妊娠4週後半から5週前半にかけて黒い無エコー像として胎嚢が確認できるようになると説明しています。写真では、白っぽい縁取りに囲まれた黒い円として写ります。
「赤ちゃんはどこ?」と探しても、この時期はまだ袋しか見えないことがほとんどです。それが正常です。
やがて心拍が確認できるようになります
袋の中に小さな点のようなものが見えるようになり、そこに拍動が確認できるようになります。写真では動きが写らないので、その場で説明を受けたことがすべてになります。心拍の確認は妊娠経過の大事な節目なので、この日の写真は大切に取っておく方が多いです。
妊娠超初期症状はいつから?9つのサイン・PMSとの違い・経産婦の特徴まで|元看護師ちなみが中立解説
CRLで妊娠週数と分娩予定日が決まります
ここが初期のいちばん大事なポイントです。妊娠初期のCRL(頭からおしりまでの長さ)は個人差が小さいため、この時期の計測をもとに妊娠週数と分娩予定日が決められます。
つまり、最後の生理からの計算で出した予定日が、エコーの計測によって修正されることがあるということです。
「予定日が変わりました」と言われても心配いりません
予定日がずれると不安になる方がいますが、これは赤ちゃんに問題があったという意味ではありません。排卵の時期は人によって前後するので、生理日からの計算と実際にずれることは珍しくないのです。むしろ計測にもとづいて修正するほうが正確になります。
なお、修正されるのは基本的に妊娠初期の一度だけです。中期以降は赤ちゃんの大きさに個人差が出てくるため、「小さめだから予定日を後ろにずらす」といったことはしません。
「まだ見えませんね」と言われたとき
妊娠初期に、胎嚢や心拍が「まだ確認できません」と言われることがあります。その場では頭が真っ白になってしまうと思いますが、この時期は数日から1週間の差で見え方が大きく変わります。
排卵が思っていたより遅かっただけで、次の受診では確認できた——ということはよくあります。だからこそ医師は「1週間後にもう一度」という言い方をします。これは悪い知らせを先延ばしにしているのではなく、この時期は時間をおかないと判断できないからです。
もちろん、経過を見ても確認できない場合には別の可能性を考えることになります。ただ、一度見えなかったことだけで結論は出ません。次の受診まで、検索し続けるより体を休めることを優先してください。
双子かどうかも、この時期にわかります
胎嚢が2つ見える、あるいは1つの袋の中に2人いる——といったことも、初期のエコーで確認されます。双子の場合は膜の構造によって管理の方針が変わるため、早い時期にきちんと確認しておくことが大切になります。写真に「2つの丸」が写っていて驚いた、というのは実際によくある話です。
初期は経腟エコーが中心
妊娠初期は子宮がまだ小さく、おなかの上からでは十分に見えないため、腟から細い機械を入れて見る経腟エコーが使われます。心の準備がないと驚く方もいますが、初期にはごく一般的な方法です。おなかが大きくなってくると、おなかの上から見る経腹エコーに切り替わります。

妊娠中期・後期のエコー写真の見方
おなかが大きくなってくると、写真の項目が増えます。ここからが「BPD・AC・FL」の出番です。
3つの計測から推定体重が計算されます
中期以降は、BPD(頭の幅)・AC(おなかまわり)・FL(太ももの骨の長さ)を測り、これらをもとにEFW(推定体重)を計算します。日本では、胎児計測の方法と基準値が学会によって定められており、その基準にもとづいて評価されています。
なぜこの3か所なのかというと、頭・おなか・手足の骨という、育ち方の違う部分をそれぞれ見ることで、全体のバランスがわかるからです。頭だけ、おなかだけでは判断できません。
推定体重は「推定」です——ここが最重要
いちばん気にされるのが推定体重ですが、これは計算で出した見込みの値であって、実際に量った体重ではありません。おなかの外から測っているので、どうしても誤差が出ます。
実際、「推定2,800gと言われたのに、生まれたら3,200gだった」ということは普通に起こります。数百グラム単位のずれは想定の範囲内と考えてください。
- 1回の数値だけを見ない——大事なのは前回からどう増えているかという流れです
- 他の人と比べない——赤ちゃんの育ち方には個人差があります
- ネットの平均値と比べない——比べるべきは学会の発育曲線で、それは健診で見てもらえます
胎児発育曲線のどこにいるか
母子健康手帳には胎児発育曲線のページがあります。真ん中あたりに1本の線があり、その上下に帯のような範囲が描かれているグラフです。健診で測った推定体重をここに点で書き込んでいくと、赤ちゃんがその帯の中を通って育っているかが見えるようになっています。
大事なのは、真ん中の線にぴったり乗ることではありません。帯の下のほうを通っていても、その子なりのペースで増えていれば問題にならないことが多いのです。逆に、それまで順調だったのに急に伸びが鈍った、といった変化のほうが注目されます。
「小さめですね」「大きめですね」と言われたら
この一言で不安になる方がとても多いのですが、まず落ち着いて確認してほしいことがあります。
- それは経過を見ていくレベルの話か、何か対応が必要な話かを聞く
- 次の健診はいつか、間隔を短くする必要があるかを聞く
- 自分が気をつけることはあるかを聞く
この3つを聞いておけば、次の健診まで無用に検索し続けずにすみます。「小さめ」と言われた時点では、経過を見ましょうという意味であることがほとんどです。
ちなみ(元看護師)
「頭が大きめ」「おなかが小さめ」と部分だけ言われたら
3か所を別々に測っているので、ある項目だけが平均から外れることがあります。「頭は大きめだけど、おなかは標準」といったばらつきです。
ここで知っておいてほしいのは、体のパーツごとに育つ速さが違うということです。大人でも頭の大きさや足の長さに個人差があるように、赤ちゃんにも体型の個性があります。ご両親の体格が反映されていることもあります。
医師が見ているのは、ひとつの数値そのものより3か所のバランスと、その推移です。たとえば「おなかだけが伸びない状態が続く」といった場合には注意して見ていきますが、1回のばらつきだけで判断されることはありません。
羊水の量について
後期になると羊水の量も確認されます。AFIやMVPと書かれているのがそれです。羊水は赤ちゃんを守るクッションであると同時に、赤ちゃんが飲んで、おしっことして出すことで循環しています。
そのため羊水の量は、赤ちゃんの状態を映す指標のひとつになっています。多すぎても少なすぎても確認が必要になりますが、数値には幅があり、日によっても変動します。健診で何も言われなければ問題ないと考えて大丈夫です。
胎動はいつから?どんな感じ・激しいときや少ないときの受診目安まで元看護師が解説
写真のどこを見ているのかわからないとき
「説明を聞いたときはわかった気がしたのに、家で見たらもうわからない」——これもよくあることです。見方のこつがあります。
白いところと黒いところの意味
エコーは超音波の跳ね返りを画像にしているので、硬いもの(骨など)は白く、液体(羊水など)は黒く写ります。
- 黒い部分:羊水。赤ちゃんのまわりの空間
- 白くはっきりした線:骨。頭の輪郭や背骨、手足の骨
- 灰色のもやもや:内臓や筋肉など
この対応がわかると、まず白い輪郭を探して頭を見つけるという読み方ができるようになります。
扇形になっているのはなぜ?
写真の上のほうが狭く、下に向かって広がる扇形になっているのは、おなかに当てた機械の位置が扇の要(かなめ)だからです。つまり画面の上がお母さんの体の表面に近い側、下がおなかの奥ということになります。
この向きがわかると、「機械を当てた場所から見た断面」として写真を読めるようになります。
「顔に見えない」のは正常です
通常の健診で使う白黒のエコーは、体を薄く切った断面を見ています。断面なので、顔らしく見えるのはたまたま良い角度で切れたときだけです。「みんなの写真は顔に見えるのに、うちは見えない」というのは、そのときの赤ちゃんの向きや角度の問題で、心配なことではありません。
顔が立体的に見えるのは、後で説明する4D(立体)のエコーで撮ったときです。
探す順番を決めておくと読みやすい
闇雲に眺めるより、順番を決めて探すとわかりやすくなります。
- いちばん白くて大きな輪郭を探す——多くは頭の骨です。丸い輪の形に見えます
- そこから連なる白い点の列を探す——背骨です。粒が並んだように見えます
- 黒い部分の広がりを見る——羊水です。赤ちゃんがどの向きで浮かんでいるかの手がかりになります
- 細長い白い棒を探す——手足の骨です。FLを測っているのはここです
この順で見ていくと、「どこが頭で、どちらを向いているか」がつかめてきます。慣れると、説明を聞かなくても大まかな向きがわかるようになります。
2D・3D・4Dエコーの違い
「4Dエコー」という言葉をよく聞くと思います。何が違うのかを整理します。
見え方の違い
- 2D(通常の白黒)——体を薄く切った断面を見るもの。毎回の健診で使い、計測もこれで行います
- 3D——表面を立体的に描き出したもの。顔の形などが立体として見えます
- 4D——3Dが動いているもの。あくびや手の動きが見られることがあります
つまり3Dに「時間(動き)」が加わったものが4Dです。数字が増えるほど精密になるという意味ではありません。
医療上いちばん大事なのは、実は2Dです
意外に思われるかもしれませんが、赤ちゃんの発育や体の中を確認するのに使われているのは、白黒の2Dエコーです。計測も診断のための観察も2Dで行います。3D・4Dは表面を見るものなので、内臓や骨の状態を見るのには向いていません。
4Dが行われない施設だからといって、検査が不十分ということではありません。記念としての意味合いが強いものと考えるのが実態に近いです。
きれいに見えるかどうかは運の要素が大きい
4Dを楽しみにしていたのに、顔がよく見えなかったということは珍しくありません。理由はいくつかあります。
- 赤ちゃんが下や後ろを向いている——いちばん多い理由です
- 手や足で顔を隠している——赤ちゃんはよく顔の前に手を置きます
- 顔の前に十分な羊水がない——表面を描き出すには、顔の前に液体の空間が必要です
- 時期が合わない——早すぎると皮下脂肪が少なく、遅すぎると狭くて写りにくくなります
見えるかどうかはその日の赤ちゃんの向き次第で、こちらでコントロールできるものではありません。「今日はだめでした」と言われても、体調とは関係ないので心配いりません。
- 扱っているか——そもそも実施していない施設もあります
- いつごろが見やすいか——施設ごとにすすめる時期があります
- 費用と、別に予約が必要か——健診とは別枠のことがあります
- 見えなかった場合の扱い——撮り直しができるかどうか

エコー写真でダウン症はわかりますか?
検索でとても多く、健診の場では聞きづらい質問です。正確に、そして誠実に書きます。
通常の妊婦健診のエコーは、診断のための検査ではありません
妊婦健診で毎回行う超音波検査は、赤ちゃんの発育と元気さを確認することが主な目的です。病気を診断するために行っているものではありません。
日本産婦人科医会も、妊娠中期以降の超音波検査を目的別に分けて説明しており、健診ごとに行う一般超音波検査は「胎児発育とwell beingの評価」を目的とするものと位置づけています。形の異常を詳しく調べる精密超音波検査とは、別のものだということです。
NT(首のうしろの厚み)とは
「エコー ダウン症」で調べると必ず出てくるのがNTです。これは妊娠初期に赤ちゃんの首のうしろに見える部分の厚みのことで、この厚みが染色体の病気と関連することが知られています。
ただし、ここを誤解しないでください。NTが厚めであることは「所見」であって「診断」ではありません。厚めでも赤ちゃんに何もないことは多くありますし、逆に厚くなくても病気があることもあります。
見つかっても「ある」とは限らず、見つからなくても「ない」とは限らない
出生前検査認証制度等運営委員会は、胎児超音波検査について明確に説明しています。問題が見つかった場合も「そこに本当に病気があるかどうかは、『ある』とはっきり言える場合もあればそうは言えない場合もあり、病気や症状によって違う」とされ、また異常が見つからない場合も完全に病気がないことを意味しないとされています。
つまりエコー写真だけでダウン症を確定させることはできません。ネット上には「この写真の特徴があると危ない」といった情報がありますが、写真を素人が見比べて判断できるものではありませんし、専門家でもエコーだけでは確定させません。
確定させるには、別の検査が必要です
こども家庭庁の情報サイトでは、出生前検査を非確定的検査(NIPT・超音波マーカー検査・コンバインド検査・母体血清マーカー検査)と確定的検査(絨毛検査・羊水検査)に分けて説明しています。超音波でわかるのはあくまで可能性の段階で、確定させるには確定的検査が必要という関係です。
参考 出生前検査とは?こども家庭庁「妊娠中の検査に関する情報サイト」
この検査を受けるかどうかには決まった答えがなく、受けない選択も同じだけ尊重されます。詳しくは別の記事にまとめました。
出生前診断とは?種類・時期・費用と「陽性」の本当の意味を元看護師がわかりやすく解説
ちなみ(元看護師)
性別はエコー写真でいつわかる?
性別は、赤ちゃんの体が育って股のあいだが見える角度で写ったときにわかります。
気をつけたいのは3点です。
- 赤ちゃんの向き次第——足を閉じていたり背中を向けていたりすると、何度健診に行っても見えません
- 早い時期の判断は確実ではない——後から変わることがあります
- 施設によって方針が違う——聞かれたら伝える施設、はっきりするまで言わない施設があります
「女の子は葉っぱのように見える」といった言い方をされることがありますが、あくまで見え方の例えです。自分で写真を見て判断しようとせず、健診で確認するのが確実です。時期や見え方の詳しい話は、妊婦健診の記事にまとめています。
妊婦健診の頻度は?回数・スケジュール・毎回の検査内容と費用を元看護師が解説
「胎児ドック」「精密胎児超音波検査」は健診のエコーと何が違う?
目的も、かける時間も違います
通常の健診のエコーが発育と元気さの確認であるのに対して、胎児超音波検査(精密胎児超音波検査)は、赤ちゃんの体の形や構造を詳しく調べることを目的としています。運営委員会は、妊婦健診とは別に長い時間(30分以上)をかけておこなわれる検査だと説明しています。
内臓や骨、血管などの形や動きを詳しく見ていくもので、心臓の病気や脳の病気、口唇口蓋裂などが対象になります。
名前がばらばらなことに注意してください
ここは実務的にとても大事です。運営委員会は、この検査が「胎児ドック」「精密胎児超音波検査」「妊娠初期超音波検査」などいろいろな名称で呼ばれ、検査内容も施設による違いがあり、同じ名称でも内容が違うことがあると注意を促しています。
つまり「胎児ドックを受けました」と言っても、施設が違えば中身が違うということです。申し込む前に、何を見る検査なのか・何はわからないのかを必ず個別に確認してください。
- 何を調べる検査なのか(形の確認か、染色体の可能性を見るものか)
- 費用はいくらか(自費のことが多く、健診の補助券は使えません)
- 所見があった場合、その後の相談や紹介はどうなるか
- いつまでに受ける必要があるか
とくに最後の「所見があったあと」をどうするかまで確認しておくことをおすすめします。

エコー写真は消える——早めにやっておきたいこと
意外と知られていないのですが、エコー写真は時間がたつと薄くなって消えていきます。
なぜ消えるのか
多くのエコー写真は感熱紙に印刷されています。レシートと同じ仕組みの紙で、熱で色が出るようになっているため、時間・熱・光・こすれによって徐々に薄くなっていきます。数年で読めなくなることも珍しくありません。
「大事にしまっておいたのに、久しぶりに見たら真っ白だった」というのは、本当によくある話です。
いちばん確実なのは、早めに別の形にすること
- スマホで撮っておく——もっとも手軽で、いちばん効果があります。もらったその日に撮るのが理想です
- スキャンしてデータで残す——コンビニのコピー機でもできます
- データはバックアップする——スマホの中だけに置かず、クラウドや別の場所にも保存しておくと安心です
「あとでまとめてやろう」と思っているうちに何年もたってしまうので、もらった日にスマホで1枚撮るを習慣にしてしまうのがいちばんです。
現物を保管するときのこつ
- 直射日光と高温を避ける——窓ぎわや車の中は避けます
- こすれないようにする——他の紙と重ねて出し入れすると、それだけで薄くなります
- 粘着のあるアルバムに注意——のりや粘着面が感熱紙に影響することがあります。ポケット式のものが無難です
- ラミネートは慎重に——熱を加えるタイプは感熱紙を黒くしてしまうことがあります
アプリで管理するという方法
妊娠・育児向けのアプリの中には、エコー写真を週数ごとに整理して保存できるものがあります。撮った日付と週数が自動で紐づくので、あとから「これは何週のときの写真か」がわからなくなる問題を防げます。
ただし、アプリだけに頼るのは避けてください。サービスが終了したり、機種変更でうまく移行できなかったりすることがあります。アプリで整理しつつ、写真データそのものは別の場所にもバックアップしておく——この二段構えがいちばん安全です。
凝った整理をしようと思うと結局あとまわしになるので、まずは撮る、整理は後からの順番で考えるのがおすすめです。
写真がもらえない・少ないと感じるとき
枚数は施設の方針で決まっています
毎回何枚ももらえる施設もあれば、節目だけという施設もあります。枚数の差は、診療の丁寧さの差ではありません。医療上の必要性ではなく、記念としてお渡ししているものなので、施設ごとの運用の違いです。
周りの人と比べてしまうことがあるかもしれませんが、写真が少なくても、健診でちゃんと確認されています。
動画や4Dエコーについて
立体的に見える4Dエコーや動画の記録は、施設によって扱いが大きく違います。標準で行うところ、希望者のみのところ、別料金のところ、そもそも扱っていないところがあります。
希望する場合は、いつごろが見やすい時期かもあわせて聞いてみてください。時期が早すぎても遅すぎても見えにくいことがあります。
聞いてみていいこと
- 「今日の写真はもらえますか」——聞いて失礼になることはありません
- 「これは何を測ったところですか」——その場で聞くのがいちばん確実です
- 「推定体重は順調ですか」——数値そのものより、この聞き方のほうが答えが返ってきやすいです
- 「気になるところはありましたか」——不安があるときはこの一言で十分です
診察は短いので、聞きたいことは事前にメモしていくのがおすすめです。写真を見ながら思い出そうとすると、たいてい思い出せません。
ちなみから|数値は、その子を測るものさしではありません
エコー写真の見方を知ってほしいと思う一方で、書きながらずっと気になっていたことがあります。それは、数値がわかるようになると、今度はその数値に振り回されてしまう方がいるということです。
推定体重が平均より少ないと落ち込み、多いと出産が不安になり、前回より増えが少ないと眠れなくなる。看護師として、そういう方をたくさん見てきました。私自身も、上の子のときに「小さめですね」と言われて、家に帰ってから何時間も検索したことがあります。結果的にはまったく問題なく生まれてきました。
エコーの数値は、その日その瞬間の、外から測った推定値です。赤ちゃんの元気さも、これからの育ちも、そこには書かれていません。だから私は、記号の意味は知っておいてほしいけれど、数値で赤ちゃんを採点しないでほしいと思っています。
見方を知る目的は、比べるためではなく、健診で先生と話しやすくなるためです。そう思って使ってもらえたらうれしいです。
まとめ|記号がわかると、健診がもっと安心になります
- エコー写真の記号は「何を測ったかの見出し」+「測定値」。表記は施設や機種によって違うので、ネットの写真と項目が違っても問題ない
- 覚えるのはGA(週数)・EDC(予定日)・CRL(初期の全長)・BPD(頭の幅)・AC(おなかまわり)・FL(太ももの骨)・EFW(推定体重)でほぼ足りる
- 初期はCRL、中期以降はBPD・AC・FL。測る場所が時期で入れ替わる
- 妊娠初期のCRLで妊娠週数と分娩予定日が決まる。予定日が修正されても、赤ちゃんに問題があるという意味ではない
- EFWは「推定」。数百グラムのずれは想定内。1回の数値ではなく発育曲線の中での流れを見る
- 写真は白=骨・黒=羊水、扇形の上が体の表面側。断面なので顔に見えないのが普通
- 健診のエコーは診断のための検査ではない。NTが厚めでも「所見」であって診断ではなく、確定には確定的検査が必要
- 「胎児ドック」は同じ名称でも施設によって内容が違う。何を調べる検査かを申し込む前に確認する
- エコー写真は感熱紙なので消える。もらった日にスマホで撮るのがいちばん確実
- 数値で赤ちゃんを採点しない。見方を知る目的は、健診で聞きやすくなること
次の健診でエコー写真をもらったら、まずGAで日付を確かめて、それからBPD・AC・FLを探してみてください。少し読めるようになるだけで、あの白黒の一枚がぐっと身近になります。
よくある質問(エコー写真の見方|FAQ)
Qエコー写真のBPD・AC・FLとは何ですか?
A.いずれも赤ちゃんの大きさを測った項目です。BPDは児頭大横径といって、頭を輪切りにしたときのいちばん長い横幅のこと。ACは腹囲でおなかまわりの長さ、FLは大腿骨長で太ももの骨の長さです。頭・おなか・手足の骨という育ち方の違う部分をそれぞれ測ることで、全体のバランスがわかります。この3つをもとにEFW(推定体重)が計算されます。なお施設によっては、ACの代わりにAPTD(腹部前後径)とTTD(腹部横径)という2つの数値で示すこともあります。
QGAやEDCはどういう意味ですか?
A.GAは妊娠週数のことで、「GA 24w3d」なら妊娠24週3日という意味です。wが週、dが日を表します。EDC(またはEDD)は分娩予定日のことです。この2つは検査のたびに印字されるので、あとから「この写真がいつのものか」を確認する手がかりになります。
Q推定体重(EFW)は正確ですか?
A.あくまで推定です。おなかの外から測った数値をもとに計算した見込みの値で、実際に量った体重ではありません。数百グラム単位のずれは想定の範囲内で、「推定2,800gと言われたのに生まれたら3,200gだった」ということは普通に起こります。大事なのは1回の数値ではなく、前回からどう増えているかという流れです。母子健康手帳の胎児発育曲線に点を書き込んでいくと、その子なりのペースで育っているかが見えるようになっています。真ん中の線にぴったり乗る必要はありません。
Q予定日がエコーで変わりました。何か問題があるのでしょうか?
A.問題があるという意味ではありません。妊娠初期のCRL(頭からおしりまでの長さ)は個人差が小さいため、この時期の計測をもとに妊娠週数と分娩予定日が決められます。最後の生理からの計算は排卵の時期によってずれることがあるので、計測にもとづいて修正するほうが正確になります。なお修正は基本的に妊娠初期の一度だけで、中期以降に「小さめだから予定日をずらす」ということはしません。
Qエコー写真でダウン症はわかりますか?
A.エコー写真だけで確定させることはできません。妊婦健診で毎回行う超音波検査は、赤ちゃんの発育と元気さを確認することが主な目的で、病気を診断するための検査ではありません。妊娠初期の首のうしろの厚み(NT)が染色体の病気と関連することは知られていますが、これは所見であって診断ではなく、厚めでも何もないことは多くあります。出生前検査認証制度等運営委員会も、超音波検査は問題が見つかっても本当に病気があるとは言い切れない場合があり、見つからなくても完全に病気がないことを意味しないと説明しています。確定させるには絨毛検査や羊水検査といった確定的検査が必要です。
Q「胎児ドック」は妊婦健診のエコーと何が違いますか?
A.目的が違います。健診のエコーが発育と元気さの確認であるのに対し、胎児超音波検査は赤ちゃんの体の形や構造を詳しく調べるもので、妊婦健診とは別に30分以上かけて行われます。注意したいのは名称です。運営委員会は「胎児ドック」「精密胎児超音波検査」「妊娠初期超音波検査」などさまざまな名称で呼ばれ、同じ名称でも施設によって内容が違うことがあると注意を促しています。申し込む前に、何を調べる検査なのか、費用はいくらか、所見があった場合その後の相談や紹介はどうなるかを確認してください。
Qエコー写真が消えると聞きました。どう保存すればいいですか?
A.多くのエコー写真は感熱紙に印刷されており、レシートと同じように時間・熱・光・こすれで薄くなっていきます。数年で読めなくなることも珍しくありません。いちばん確実なのは、もらったその日にスマホで撮っておくことです。スキャンしてデータで残す方法もあります。現物を保管するときは、直射日光と高温を避け、他の紙と重ねてこすれないようにしてください。粘着面のあるアルバムは感熱紙に影響することがあるのでポケット式が無難で、熱を加えるタイプのラミネートは黒くなることがあるので慎重に。母子健康手帳に貼る場合も、先にスマホで撮ってからにしてください。
続けて読みたい関連記事
妊婦健診の頻度は?回数・スケジュール・毎回の検査内容と費用を元看護師が解説
