立ち上がった瞬間に目の前が暗くなる、頭がふわふわして足元がおぼつかない、電車のなかで気分が悪くなってしゃがみ込んでしまう——。妊娠してから、こんなめまいや立ちくらみに悩まされていませんか。「このまま倒れたらどうしよう」「赤ちゃんは大丈夫かな」と、不安な気持ちで毎日を過ごしている方もいるかもしれません。
私自身、妊娠初期に何度も立ちくらみやふわふわしためまいに悩まされました。電車で気分が悪くなってしゃがみ込んでしまったこともあって、「このまま意識を失ったらどうしよう」と不安だったのをよく覚えています。家事の途中で急に立ち上がってクラッとし、しばらく動けなかったこともありました。
妊娠中のめまいは、本当に多くの妊婦さんが経験する不調のひとつです。その多くは、妊娠による体の自然な変化によるものですが、なかには早めに受診したほうがよいサインもあります。この記事では、めまいが起きる理由から、タイプ別の特徴、時期別の起こりやすさ、起きたときの対処法、予防の工夫、仕事中のめまいへの向き合い方、そして見逃したくない受診の目安まで、元看護師のちなみが、あなたの不安にできるだけ寄り添いながらわかりやすく解説します。
ちなみ(元看護師)
妊娠中にめまいが起きやすい理由
「妊娠したら急にめまいが増えた」と感じる方は少なくありません。妊娠中のめまいには複数の背景があり、ひとつの原因だけでなく、いくつかの要因が重なって起こることもあると言われています。まずは「なぜ起きるのか」を知っておくと、必要以上に怖がらずに対処の見通しを立てやすくなります。
血液量の増加と血圧の低下
妊娠すると、赤ちゃんに酸素や栄養を届けるために、お母さんの血液量が大きく増えていきます。一方で、増えた血液は赤ちゃんや子宮へ優先的にまわされるため、脳へ向かう血流が一時的に不足し、めまいや立ちくらみにつながることがあると言われています。
とくに妊娠中は血圧が下がりやすい傾向があり、急に立ち上がったときや、長く立っているときに、ふらっとすることが増えます。「いつもどおりに動いただけなのに」と感じても、それは体が大きく変化している証拠です。自分が悪いわけでも、なまけているわけでもありませんから、まずは「妊娠中はめまいが起きやすい時期なんだ」と知っておくだけでも、少し気持ちが軽くなるのではないでしょうか。
プロゲステロンによる血管の拡張と自律神経の変化
妊娠中は、プロゲステロン(黄体ホルモン)という女性ホルモンが大量に分泌されます。このホルモンには血管をゆるめて広げる働きがあり、血管が広がると血圧が下がりやすくなって、めまいやふらつきの一因になると考えられています。
また、ホルモンの大きな変動は、血圧や体温を調整している自律神経のバランスにも影響します。自律神経の切り替えがうまくいかないと、立ち上がったときに血圧をすばやく保てず、ふわふわしためまいや立ちくらみが起こりやすくなります。気温の高い場所や人混み、長時間の入浴などで症状が出やすいのも、こうした血管と自律神経の変化が関係しています。
鉄欠乏性貧血が背景にあることも
妊娠中は血液量が増える一方で、赤ちゃんに鉄分が優先的に使われるため、鉄欠乏性貧血になりやすい時期です。貧血があると、全身に酸素を運ぶ力が低下し、めまいや立ちくらみ、だるさ、動悸、息切れなどが出やすくなることがあります。「めまいだけでなく、疲れやすさや動悸も気になる」という場合は、背景に貧血が隠れていることもあります。
貧血は妊婦健診の血液検査で調べられます。気になる症状があるときは、健診のときに相談してみましょう。鉄分のとり方や食事の工夫、妊娠中の貧血についてのくわしい内容は、こちらの記事でまとめています。この記事ではめまい全般を中心にお伝えするので、貧血そのものの対策は下の記事をあわせて参考にしてくださいね。
妊娠中の貧血はなぜ起こる?症状・治療・食事対策を元看護師ちなみが解説
低血糖・脱水(つわりで食事や水分がとれないとき)
つわりで食事や水分が思うようにとれないと、体が脱水気味になったり、血糖値が下がりすぎたり(低血糖)して、めまいやふらつきが出ることがあります。「食べられないときほどフラフラする」という方は、このパターンが背景にあるかもしれません。空腹の時間が長く続いたあとに、急にめまいや冷や汗、動悸を感じるときも、低血糖が関係していることがあります。
こまめな水分補給と、少量でも口にできるものを分けて食べる工夫で、めまいがやわらぐことがあります。つわりとめまいが重なってつらいときは、無理をせず、食べられるものを食べられるタイミングで、を基本にしてくださいね。つわりそのものへの対処は、こちらの記事もあわせて参考にしてみてください。
つわりはいつから?ピーク・いつまで続くかと症状・対処法を元看護師ちなみが解説
妊娠後期の仰臥位低血圧症候群
妊娠後期に特有のめまいとして、仰臥位低血圧症候群(ぎょうがいていけつあつしょうこうぐん)があります。大きくなった子宮が、あお向け(仰臥位)に寝たときに背骨の右側を通る太い血管(下大静脈)を圧迫し、心臓に戻る血液が減って血圧が下がることで、気分が悪くなったりめまいがしたりする状態です。
看護師時代も、妊娠後期の妊婦さんが「あお向けに寝ると気分が悪くなる」とおっしゃることがあり、体の左側を下にして横になっていただくと楽になることがよくありました。これは、左を下にすると子宮が下大静脈から離れ、血流が戻りやすくなるためです。後期にあお向けでめまいや吐き気を感じたら、まず左側を下にして横になってみてください。具体的な対処は、後ほど「対処法」でもくわしくお伝えします。
なお、めまいと一緒に頭痛が出る方もいます。妊娠中の頭痛とめまいは、低血圧や貧血といった共通の背景で同時に起こることがあります。頭痛もつらいという方は、こちらの記事もあわせて読んでみてくださいね。
妊娠中の頭痛はなぜ起きる?時期別の原因・薬の考え方・受診目安を元看護師が解説
めまいのタイプ別の特徴
ひとくちに「めまい」といっても、感じ方によっていくつかのタイプに分けられます。自分のめまいがどのタイプに近いかを知っておくと、原因の見当がつきやすく、対処も選びやすくなります。ただし、複数のタイプが混ざることもありますし、無理に自己判断で決めつける必要はありません。気になるときは医療機関で相談するのがいちばんです。
ふわふわする浮動性のめまい
「足元がふわふわする」「地に足がつかない感じ」「体がゆらゆら揺れているよう」と感じるのが、浮動性(ふどうせい)のめまいです。妊娠中に多いのはこのタイプで、低血圧や貧血、自律神経のバランスの変化と関連しやすいと言われています。検索で多い「妊娠初期 めまい ふわふわ」「妊娠後期 めまい ふわふわ」も、多くはこの浮動性のめまいを指しています。
ふわふわするめまいは、立っているときや動いたときだけでなく、座っていても感じることがあります。疲れているとき、睡眠が足りないとき、空腹のときなどに強く出やすい傾向があります。妊娠による自然な変化であることが多いタイプですが、毎日続いてつらいときや、だんだん強くなるときは、健診で相談してみましょう。
ぐるぐる回る回転性のめまい
自分や周囲がぐるぐると回って見える、天井や景色がぐるっと動くように感じる——これが回転性のめまいです。回転性のめまいは、耳の奥にある三半規管(さんはんきかん。体のバランスをとる器官)など、耳の不調が関わることが多く、妊娠そのものと直接結びつくことは比較的少ないと言われています。
強い回転性のめまいに、耳鳴りや聞こえにくさ(難聴)、吐き気などをともなう場合は、耳の病気が背景にある可能性もあります。「妊娠中だから」と決めつけず、つらいときは耳鼻科の受診も検討してみてください。妊娠中でも受けられる検査や対応について、医療機関で相談できます。また、激しい回転性のめまいに手足のしびれやろれつの回りにくさが加わるときは、別の注意が必要です。後ほどの「受診の目安」をご確認ください。
立ちくらみ・目の前が暗くなる
急に立ち上がったときに、目の前がスーッと暗くなる、クラッとして倒れそうになる——これは立ちくらみ(眼前暗黒感)で、起立性低血圧や脳貧血(脳への血流が一時的に減る状態)と関連するタイプです。妊娠中は血圧が下がりやすく、立ち上がる動作で血圧をすばやく保てないために起こりやすくなります。
私が妊娠初期に経験しためまいも、まさにこのタイプでした。家事の途中で急に立ち上がったときや、しゃがんだ姿勢から立ったときに、目の前が暗くなってしばらく動けなかったことがあります。立ちくらみは、動作をゆっくりにするだけでもかなり防げることがあります。対処のコツは後ほどくわしくお伝えしますね。
時期別にみる妊娠中のめまい
「妊娠のめまいっていつから始まるの?」と気になる方も多いと思います。めまいは妊娠超初期から感じる方もいれば、中期・後期に新しく出てくる方もいます。時期によって起こりやすい背景が少しずつ違うので、ここでは初期・中期・後期に分けて見ていきましょう。妊娠週数の数え方があいまいな方は、こちらもあわせて確認してみてください。
妊娠週数の数え方|受精より2週早いのはなぜ?週数↔月数の早見表・出産予定日まで元看護師が解説
- 初期・超初期:ホルモンの急変動による血管拡張・血圧低下、つわりによる脱水/低血糖が中心
- 中期:体調が落ち着く一方、鉄欠乏性貧血が出やすくなる時期。体重・血圧の変化も背景に
- 後期:立ちくらみが増え、あお向けで起こる仰臥位低血圧症候群に注意。頭痛・むくみをともなうときは受診目安を確認
妊娠初期・超初期のめまい(いつから・つわりとの関係)
妊娠初期や、生理予定日前後の超初期は、ホルモンの変動が最も大きい時期です。プロゲステロンによる血管の拡張で血圧が下がりやすく、つわりによる脱水・低血糖も重なって、めまいや立ちくらみを感じやすくなります。早い方では生理予定日前後からふらつきを感じることがあり、人によっては「妊娠に気づくきっかけのひとつ」になることもあります。
「妊娠初期 めまい いつから」と検索される方も多いのですが、感じ方には大きな個人差があります。まったく感じない方もいれば、初期のあいだずっとふわふわした感覚が続く方もいます。多くの場合、つわりが落ち着いてくる時期にかけて、めまいもやわらいでいく方が多いと言われていますが、これも人それぞれです。「自分だけがつらいのでは」と思いがちですが、同じ時期に同じように悩んでいる妊婦さんはたくさんいますから、あまり気負わずに過ごしてくださいね。
めまいは、あくまで妊娠初期に起こりうる症状のひとつです。「ほかにどんな初期症状があるの?」という方は、初期症状の全体像をまとめたこちらの記事も参考になります。
妊娠超初期症状はいつから?9つのサイン・PMSとの違い・経産婦の特徴まで|元看護師ちなみが中立解説
妊娠初期症状はいつから?週数別の症状一覧と「ない」不安まで元看護師ちなみが解説
妊娠中期のめまい(安定期でも起こる背景)
「安定期に入ったのにめまいがする」という声も多く聞かれます。中期はつわりが落ち着いて体調が安定しやすい時期ですが、めまいがなくなるとは限りません。この時期に気をつけたいのが鉄欠乏性貧血です。赤ちゃんの成長にともない鉄分の必要量が増えるため、中期から後期にかけて貧血が出やすくなり、それがめまいやだるさにつながることがあります。
また、体重が増えてきたり、血圧や血流の状態が変化したりすることも、中期のめまいの背景になります。体調が落ち着いて活動的になりやすい時期だからこそ、「無理をして頑張りすぎた日にフラッとする」というパターンも見られます。こまめに休憩をとり、立ちっぱなしや急な動作を避ける工夫が役立ちます。貧血が気になるときは、健診の血液検査の結果を医師に確認してもらいましょう。
妊娠後期のめまい(仰臥位低血圧症候群・立ちくらみ)
妊娠後期は、大きくなったおなかの影響でめまいが起こりやすくなります。代表的なのが、先にお伝えした仰臥位低血圧症候群です。あお向けに寝たときに気分が悪くなる、ふわふわするという場合は、体の左側を下にして横向きになると楽になることが多いです。ソファで横になるときや夜眠るときも、横向きの姿勢を意識してみてください。
後期は体が重くなり、立ち上がる動作で立ちくらみを起こしやすくもなります。動作はゆっくりを心がけましょう。そして後期でひとつ気をつけたいのが、妊娠高血圧症候群との関連です。めまいに加えて、強い頭痛・目のチカチカ・急なむくみ・血圧の上昇をともなうときは注意が必要です。「いつものめまいとは違う」と感じたら、後ほどの「受診の目安」を必ず確認してくださいね。

めまいが起きたときの対処法
実際にめまいが起きたとき、何より大切なのは「転ばないこと・倒れてもケガをしないこと」です。妊娠中は転倒すると、おなかを打ったり手をつけずに倒れたりする危険があります。ここでは、めまいを感じたときにすぐできる対処をお伝えします。覚えておくと、いざというときに落ち着いて行動できますよ。
その場でしゃがむ・座る・横になる
めまいを感じたら、がまんして動き続けず、まずその場でしゃがむか座りましょう。立ったまま耐えようとすると、意識が遠のいて転倒する危険があります。近くに壁や手すり、椅子があればつかまって、ゆっくり姿勢を低くしてください。横になれる場所があれば横になり、足を少し高くすると、脳への血流が戻りやすくなります。
「人前でしゃがむのは恥ずかしい」と無理をしてしまう方もいますが、倒れてケガをするより、その場で姿勢を低くするほうがずっと安全です。電車やバスのなかでめまいを感じたら、遠慮せず近くの席をゆずってもらう、次の駅でいったん降りて休む、といった行動をとってくださいね。マタニティマークを見える場所につけておくと、周囲の協力を得やすくなります。
後期はあお向けを避け、左側を下にして休む
妊娠後期に、あお向けで気分が悪くなったときは、体の左側を下にして横になりましょう。これは仰臥位低血圧症候群への対処で、左を下にすると子宮が下大静脈の圧迫から離れ、心臓に戻る血液が増えて血圧が回復しやすくなります。多くの場合、左側臥位で休むと数分でスッと楽になっていきます。
夜眠るときや横になって休むときも、後期は横向き、とくに左側を下にする姿勢がおすすめです。抱き枕やクッションをおなかと脚の間にはさむと、横向きの姿勢が安定して楽になります。あお向けが楽だった方も、後期に気分が悪くなりやすくなったら、姿勢を見直してみてくださいね。
水分と糖分を補給する
脱水や低血糖が背景にあるめまいのときは、水分と糖分の補給が役立ちます。少し落ち着いたら、水やお茶でこまめに水分をとり、空腹を感じているなら、あめやビスケットなど口にしやすいもので軽く糖分を補いましょう。冷や汗をかいて気分が悪いときは、低血糖が関係していることもあります。
暑い季節や入浴後は汗で水分が失われやすく、めまいが出やすくなります。外出時には飲み物を持ち歩き、のどが渇く前にこまめに飲む習慣をつけておくと安心です。一度にたくさんではなく、少しずつ回数を分けて飲むのがコツですよ。
動作はゆっくり・急に立ち上がらない
立ちくらみを防ぐには、動作をゆっくりにすることがいちばんの基本です。寝た姿勢や座った姿勢から立ち上がるときは、いったん体を起こして一呼吸おいてから、ゆっくり立ち上がるようにしましょう。とくに朝起きたときや、お風呂上がり、しゃがんだ姿勢からの立ち上がりは血圧が変動しやすいので、意識してゆっくり動いてください。
ちなみ(元看護師)

めまいを予防する毎日の工夫
めまいは、毎日のちょっとした工夫で起こりにくくすることもできます。すべてを完璧にやろうとせず、できそうなものから取り入れてみてくださいね。無理なく続けられることが、いちばんの予防になります。
鉄分・栄養をバランスよくとる
めまいの背景に貧血があることも多いため、鉄分を意識した食事は予防に役立ちます。赤身の肉や魚、レバー、ほうれん草や小松菜などの青菜、大豆製品などを、バランスよく取り入れてみましょう。ビタミンCを一緒にとると鉄分の吸収が助けられると言われています。
ただし、鉄剤やサプリの種類・量は自己判断で決めず、必要なときは医師に相談してください。貧血と診断された場合は、医師の指示に沿って鉄剤を使うこともあります。鉄分のとり方や貧血対策のくわしい内容は、こちらの記事にまとめていますので、あわせて参考にしてくださいね。
妊娠中の貧血はなぜ起こる?症状・治療・食事対策を元看護師ちなみが解説
こまめに食事をとり低血糖を避ける
空腹の時間が長くなると血糖値が下がり、めまいや冷や汗の原因になります。一度にたくさん食べられないときは、少量を回数を分けてとる「分食」がおすすめです。つわりで食事がとりにくい時期も、食べられるものを少しずつ口にして、空腹の時間が長く続かないようにしてみてください。
外出時や仕事中も、あめやビスケット、小さなおにぎりなど、すぐ口にできるものをかばんに入れておくと安心です。「お腹がすいたな」と感じる前に軽く何かをつまんでおくと、低血糖によるめまいを防ぎやすくなります。
急な動作・長時間の立ちっぱなしを避ける
急に立ち上がる、急に振り向くといった動作は、血圧の急な変動を招いてめまいの引き金になります。ふだんから「ゆっくり動く」を意識しておくと、立ちくらみを予防できます。また、長時間立ちっぱなしでいると、血液が下半身にたまって脳への血流が減り、ふらつきやすくなります。
立ち仕事や、長く立って待つ場面では、ときどき足踏みをする、つま先立ちをして足の血流を促す、こまめに座って休む、といった工夫が役立ちます。暑い場所や人混み、長湯も血管が広がってめまいが出やすくなるので、無理をしないようにしましょう。
睡眠・休息を十分にとる
睡眠不足や疲れがたまると、自律神経のバランスが乱れ、めまいが出やすくなります。妊娠中は夜中にトイレで目が覚めたり、おなかが大きくて寝づらかったりして、ぐっすり眠れないこともあります。横向きで楽な姿勢をクッションで支える、寝る前にスマホを見すぎない、といった工夫で睡眠の質を整えてみてください。
日中も、疲れを感じたら無理をせず、横になって休む時間をつくりましょう。「休むことも赤ちゃんのための大切な仕事」と考えて、自分をいたわってあげてくださいね。妊娠初期からの過ごし方や生活習慣については、こちらの記事もあわせて参考になります。
妊娠初期の過ごし方ガイド|安静度・眠れない・仕事対応を元看護師が中立解説
仕事中にめまいが起きるとき・休む判断
働きながら妊娠生活を送る方にとって、「仕事中にめまいがしたらどうしよう」「つらいけど休んでいいのかな」というのは切実な悩みだと思います。ここでは、仕事中のめまいへの向き合い方と、休むかどうかを考えるときのヒントをお伝えします。大前提として、無理をしないことがいちばん大切です。
無理をしないことが第一
めまいを感じながら仕事を続けると、転倒や事故につながる危険があります。とくに、車の運転中、立ち仕事、階段や高い場所での作業、機械を扱う作業などの最中にめまいが起きると大変危険です。少しでもふらつきを感じたら、いったん作業を止めて、安全な場所で座って休んでください。
「このくらいで休んだら迷惑かな」とがまんしてしまう方も多いのですが、体調が悪いまま働き続けて倒れてしまうほうが、結果的に周囲にも心配をかけてしまいます。つらいときは休む、という選択を、自分に許してあげてくださいね。なお、休むかどうかの最終的な判断は、体調や妊娠の経過によって変わるため、主治医や産業医に相談しながら決めるのが安心です。
職場への伝え方・周囲の協力を得る
めまいが起こりやすいことを、あらかじめ上司や近くの同僚に伝えておくと、いざというときに助けてもらいやすくなります。「立ちくらみが起こることがあるので、フラッとしていたら声をかけてください」と一言伝えておくだけでも、ずいぶん安心です。休憩をこまめにとらせてもらう、立ち仕事を一時的に座ってできる業務に変えてもらう、といった配慮をお願いするのもよいでしょう。
妊娠中の体調は人それぞれで、見た目ではつらさが伝わりにくいこともあります。ひとりで抱え込まず、「今はこういう状態で、こういう配慮があると助かる」と具体的に伝えることが、働きやすさにつながります。働く妊婦さんの体調管理や職場との話し合いについては、厚生労働省の情報も参考になります。
母性健康管理指導事項連絡カードを活用する
妊娠中の体調がつらく、勤務時間の短縮や休業などの配慮が必要なときに役立つのが、母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)です。これは、主治医が「どのような配慮が必要か」を記入し、それをもとに職場が勤務の軽減などの措置をとるための仕組みです。男女雇用機会均等法にもとづくもので、事業主はこのカードの内容に応じた対応をとることが求められています。
めまいがつらくて仕事の調整が必要だと感じたら、健診のときに主治医へ相談し、必要に応じてこのカードを書いてもらいましょう。「休む・働き方を変える」という判断は、自分だけで抱え込まず、医師と職場と一緒に考えていくものです。制度のくわしい内容は、厚生労働省のサイトで確認できます。
参考 女性労働者の母性健康管理について厚生労働省 女性労働協会

こんなめまいは要注意——受診の目安
妊娠中のめまいの多くは、妊娠による一時的な変化によるものです。とはいえ、なかには早めの受診や、すぐの対応が必要なサインもあります。看護師時代、妊婦さんの強いめまいの背景に貧血や血圧の異常が見つかったことも経験しました。ここで紹介するサインは、ぜひ頭の片隅に置いておいてください。「当てはまらないな」と確認できれば、それ自体が安心材料になります。
失神した・転倒した・意識が遠のく
一度きりの軽い立ちくらみであれば、休めば回復することがほとんどです。しかし、意識を失う、繰り返し意識が遠のく、転倒してしまったというときは、背景に注意が必要な状態が隠れていることもあります。ためらわず医療機関に連絡してくださいね。
めまい+頭痛・むくみ・血圧上昇は妊娠高血圧症候群のサイン
- 急な激しい頭痛が続く
- 目がチカチカする・視界がぼやける
- 急に手足や顔がむくむ・体重が急増する
- みぞおちや右上腹部の痛み
妊娠高血圧症候群は、妊娠20週以降に発症することがあると言われています。めまいや頭痛だけでなく、むくみや血圧の上昇をともなうのが特徴です。診断や治療は医療機関で行うものなので、ここでは「気になるサインがあれば、ためらわず受診する」ことを大切にしてくださいね。毎回の妊婦健診で血圧と尿を確認しているのは、こうした変化を早く見つけるためです。むくみについてはこちらの記事も、くわしい解説は日本産科婦人科学会の情報もあわせて参考になります。
妊娠中のめまいは貧血・息切れと重なって現れることがあります。息苦しさ・息切れの原因と対処法をまとめた記事もあわせてご覧ください。
妊娠中に息苦しい——原因・いつから?楽になる対処法を元看護師が解説
妊婦のむくみはなぜ起きる?原因・時期別特徴・解消法・妊娠高血圧症候群との見分け方を元看護師が解説
ろれつが回らない・手足のしびれ・激しい回転性めまい
これらは頻度の高いものではありませんが、知っておくといざというときに落ち着いて行動できます。こうしたサインを並べると不安になってしまうかもしれませんが、繰り返しお伝えしたいのは、妊娠中のめまいのほとんどは妊娠による一時的な変化によるものだということです。ここで紹介した受診の目安は、めったにないけれど見逃したくないサインを、いざというときのために知っておくためのものですよ。
妊婦健診で相談を
緊急のサインがなくても、「めまいが続いてつらい」「立ちくらみが頻繁にある」というときは、次の妊婦健診で遠慮なく相談してください。健診では血圧や貧血の有無なども確認できるので、めまいの背景を整理する手がかりになります。受診の判断に迷うときの考え方は、こちらの記事も参考になります。
妊娠したらまず何をする?産婦人科・母子手帳・仕事報告まで元看護師が解説
妊娠超初期のめまいは妊娠のサイン?不安への答え
「生理前のようなめまいがあるけれど、もしかして妊娠?」と気になって検索される方も多いと思います。その気持ち、とてもよくわかります。ここでは、できるだけ中立的に、知っておいていただきたいことをお伝えします。
めまい単独で妊娠は判断できない
結論からお伝えすると、めまいがあるかどうかだけで、妊娠しているかどうかを判断することはできません。めまいは、妊娠以外にもさまざまな原因で起こります。疲れや睡眠不足、低血圧、貧血、ストレスなど、日常的な理由で起こることもよくあるからです。「めまいがある=妊娠している」と直接結びつくものではないので、症状だけで一喜一憂しすぎないでくださいね。
妊娠の可能性が気になるときは、生理予定日を1週間ほど過ぎてから妊娠検査薬で確認し、陽性が出たら産婦人科を受診するのが、いちばん確実な方法です。症状をあれこれ調べて不安になるよりも、検査で確かめるほうが気持ちも落ち着きますよ。
生理前のめまいとの違いは症状だけでは区別できない
「生理前のめまいと、妊娠超初期のめまいはどう違うの?」という疑問もよく聞かれます。けれど、これも症状だけで見分けることはできません。生理前も妊娠超初期も、どちらもホルモンの変化が関わるため、めまいやだるさといった似たような不調が起こりやすいからです。
そのため、「このめまいは生理前なのか、妊娠なのか」を症状から見分けようとするより、生理が予定どおり来るかどうか、検査薬の結果はどうか、で確認していくのが現実的です。妊娠の可能性があり、めまいがつらいときは、市販薬を自己判断で使わず、まず妊娠の有無を確かめてから医療機関に相談してくださいね。
よくある質問
Q妊娠中のめまいはいつまで続きますか?
A.感じ方には個人差があります。ホルモン変動による初期のめまいは、つわりが落ち着く時期にかけてやわらいでいく方が多いと言われています。一方で、中期は貧血、後期は仰臥位低血圧症候群など、時期ごとの背景で新たに出てくることもあります。長く続いてつらいときや、ふだんと違うめまいのときは、健診で相談してみてくださいね。
Qめまいがつらいとき、仕事を休んでもいいですか?
A.無理をしないことが第一です。とくに運転や立ち仕事、高い場所での作業中のめまいは危険なので、すぐに中断してください。休むかどうかの判断は体調や妊娠の経過によって変わるため、主治医や産業医に相談しながら決めるのが安心です。勤務の軽減などが必要なときは、主治医に母性健康管理指導事項連絡カードを書いてもらう方法もあります。
Qふわふわするめまいとぐるぐる回るめまいは何が違いますか?
A.ふわふわする浮動性のめまいは、低血圧や貧血、自律神経の変化と関連しやすく、妊娠中に多いタイプです。一方、ぐるぐる回る回転性のめまいは、耳の三半規管など耳の不調が関わることが多く、妊娠と直接結びつくことは比較的少ないと言われています。強い回転性に耳鳴りや難聴をともなうときは、耳鼻科の受診も検討してみてください。
Q生理前のようなめまいがあります。妊娠の可能性はありますか?
A.めまいだけで妊娠しているかどうかを判断することはできません。生理前も妊娠超初期もホルモンの変化でめまいが起こりやすく、症状だけで見分けるのは難しいためです。妊娠の可能性が気になるときは、生理予定日を過ぎてから妊娠検査薬で確認し、必要に応じて産婦人科を受診するのが確実です。
まとめ:妊娠中のめまいは多くが一時的。無理せず備えを
妊娠中のめまいは、血液量の増加と血圧の低下、プロゲステロンによる血管の拡張、鉄欠乏性貧血、低血糖や脱水、自律神経の変化、後期の仰臥位低血圧症候群など、さまざまな背景で起こります。その多くは妊娠による一時的な変化によるもので、対処や予防の工夫で和らぐことも少なくありません。
- 妊娠中のめまいは血圧低下・血管拡張・貧血・低血糖/脱水・自律神経の変化・後期の仰臥位低血圧症候群などが背景になりやすい
- タイプは「ふわふわ=浮動性(妊娠中に多い)」「ぐるぐる=回転性(耳の不調が多く妊娠と直結しにくい)」「立ちくらみ=起立性低血圧」に分けられる
- めまいが起きたらまずしゃがむ・座る。後期のあお向け時は左側を下にして休む
- 水分・糖分の補給、鉄分の食事、こまめな食事、ゆっくり動く、十分な休息が予防に役立つ
- 仕事中は無理をしない。必要なら主治医・産業医に相談し、母健連絡カードを活用する
- 失神・転倒、めまい+頭痛/むくみ/血圧上昇、ろれつ・手足のしびれ・激しい回転性は早めに受診を
つらいめまいを「これくらいで相談していいのかな」とがまんし続ける必要はありません。気になることは産婦人科の先生や助産師さんに伝えてくださいね。ひとりで抱え込まず、頼れるところはどんどん頼って、少しでも穏やかなマタニティライフを過ごせますように。
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