「妊娠中って、どのくらい動いていいの?」——これは健診で聞きそびれやすく、それでいて毎日気になる質問だと思います。
体重が増えすぎないようにと言われた。腰やおしりが痛い。便秘やむくみがつらい。安産のために体を動かしたほうがいいと聞いた。——動いたほうがよさそうな理由はいくつもあるのに、「おなかの赤ちゃんに何かあったら」と思うと踏み出せない。そういう方がとても多いです。
この記事では、元看護師で2児の母である私「ちなみ」が、妊娠中の運動をどう考えればいいか、始める前に確認すべきこと、やめるサイン、家でできることを整理しました。
先に、いちばん大事な結論を書きます。妊娠中に運動していいかどうかは、記事では決められません。妊娠の経過によって答えが変わるからです。この記事は、健診で「運動してもいいですか」と聞くための準備として読んでください。
まず大前提——運動していいかは、人によって違います
「妊婦は運動していい/いけない」という一律の答えはありません
ネットで調べると「妊娠中は適度な運動を」と書かれていることが多く、それを見て「自分もやらなきゃ」と感じる方がいます。けれど実際には、運動を控えたほうがよい状態もあります。
たとえば、切迫早産と言われている、血圧が高め、前置胎盤と診断されている、赤ちゃんの発育がゆっくり、多胎妊娠——こうした場合、運動の扱いは変わります。同じ「妊婦」でも前提がまったく違うということです。
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学会も「安全管理」の枠組みを示しています
妊娠中の運動については、日本臨床スポーツ医学会の産婦人科部会が「妊婦スポーツの安全管理基準」を公表しています。母体と赤ちゃんの条件、環境、運動の種類などについて、安全に行うための考え方が整理されている文書です。
参考 産婦人科部会「妊婦スポーツの安全管理基準」日本臨床スポーツ医学会
つまり「安全に配慮すれば運動できる」という前提の枠組みは、専門の学会レベルで用意されているということです。ただしその中身は、あなたの経過に当てはめて判断するものです。だからこの記事では、具体的な強度や時間の数字を書きません。その数字を決めるのは主治医の役割だからです。
ちなみ(元看護師)
健診でこう聞くと、答えが返ってきます
「運動してもいいですか」だけだと、「無理しない範囲でね」で終わってしまうことがあります。具体的に聞くと、具体的に返ってきます。
- 「ウォーキングを1日◯分くらい考えているのですが、大丈夫ですか」——やりたいことを先に言う
- 「いまの経過で、避けたほうがいい動きはありますか」——禁止事項が明確になります
- 「どうなったらやめたらいいですか」——中止の基準がもらえます
- 「妊娠前から続けている◯◯は、続けても大丈夫ですか」——継続と新規開始では判断が違うことがあります
メモに書いて持っていくのがいちばん確実です。診察は短いので、その場で思い出そうとすると忘れます。
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いつから始められる?
妊娠初期は、まず経過の確認が先
妊娠初期はまだ経過を確かめている段階です。この時期に新しく運動を始めるより、まず健診で経過を確認してもらうほうが先になります。つわりで体調が不安定な時期でもあるので、無理に動く必要はありません。
「初期に動きすぎると流産する」と心配される方がいますが、日常生活の動作でそうなるわけではありません。ただし、だからといって新しい運動を自己判断で始めていいという話でもありません。ここは健診での確認が要ります。
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中期は、比較的取り組みやすい時期
つわりが落ち着き、おなかもまだそれほど大きくない中期は、体を動かしやすい時期です。多くの方が「動くならこの時期」と感じます。
ただし「安定期だから大丈夫」ではありません。この時期にもおなかの張りは起こりますし、経過によっては安静を指示されることもあります。開始の可否は、その時点の経過で判断されます。
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後期・臨月は、種類と量を見直す時期
おなかが大きくなると、バランスが取りづらくなり、転倒のリスクが上がります。また、動悸や息切れを感じやすくなり、同じ運動でもきつく感じるようになります。
この時期は「続けられるかどうか」より、「安全にできる形に変えられるかどうか」で考えてください。歩く距離を短くする、屋外から屋内に変える、といった調整が現実的です。
妊娠前から続けている運動はどうする?
よくある質問です。新しく始める場合と、以前から続けている場合とでは、判断が違うことがあります。体が慣れているかどうかが変わるためです。
ただし「前からやっているから同じ強度で続けていい」ということにはなりません。妊娠中は体の状態が変わっています。続けたい種目を具体的に挙げて、主治医に確認してください。

妊娠中に向いている運動・避けたい運動
向いているものの共通点
種目そのものより、性質で考えるとわかりやすくなります。向いているものには共通点があります。
- 強度を自分で調整できる——きつくなったらすぐゆるめられる
- いつでもやめられる——途中で抜けても誰にも迷惑がかからない
- 転ぶ危険が少ない——足元が安定している
- おなかを圧迫しない——うつぶせや、腹筋を強く使う動きを含まない
- 人とぶつからない——接触のない形でできる
この5つを満たすものとして、ウォーキング、マタニティ向けのヨガやストレッチ、マタニティスイミングなどがよく挙げられます。
避けたほうがよいものの共通点
- 転倒の危険があるもの——自転車、スキー、乗馬など
- 人と接触するもの——球技や格闘技など
- おなかを圧迫する姿勢——うつぶせ、強い腹筋運動
- 息を止めて力むもの——重い負荷を上げる筋トレ
- 体温が上がりすぎる環境——高温多湿の場所、真夏の炎天下
- 急に方向転換したり跳んだりするもの
とくに転倒は妊娠中にいちばん避けたい事故です。「できるかどうか」ではなく「転ぶ可能性がゼロに近いか」で判断してください。
マタニティ向けの教室に通うとき
マタニティヨガやマタニティスイミングの教室は、妊婦向けに設計されているのが利点です。ただし参加の前に確認したいことがあります。
- 主治医の許可が必要か——多くの教室で確認されます
- 参加できる週数の条件——教室ごとに決まっていることがあります
- 体調が悪いときに休みやすいか——予約や料金の仕組みも見ておく
- 指導者が妊婦の指導に慣れているか
教室に通う場合も、「今日はやめておく」判断は自分でしていいということは覚えておいてください。
マタニティヨガ・マタニティスイミングを考えている方へ
マタニティヨガは「ヨガ」と別物と考える
人気があるので誤解されやすいのですが、マタニティヨガは、通常のヨガから妊娠中に向かないポーズを外し、呼吸や骨盤まわりに重点を置いた形になっています。
だから「ヨガ経験があるから普通のクラスでいい」とは考えないでください。うつぶせ、深いひねり、逆さになる姿勢、強く腹部を使う動きなど、妊娠中は避けたいポーズが通常のクラスには含まれます。
いつから始められる?
教室によって参加できる週数の条件が決められていることがほとんどです。妊娠初期は受け付けず、中期以降からとしているところが多く見られます。
そしてほぼ必ず主治医の許可を確認されます。「教室に行きたいので許可をもらえますか」と健診で伝えれば、その場で判断してもらえます。書面の提出を求める教室もあるので、必要な形式を先に確認しておくとスムーズです。
動画で自宅でやる場合の注意
教室に通わず、動画を見ながら自宅で行う方も増えています。手軽ですが、指導者があなたの状態を見ていないという点は理解しておいてください。
- 「マタニティ向け」と明記されたものを選ぶ——通常のヨガ動画を自己判断で流用しない
- 痛み・張り・息苦しさが出たら即やめる——動画は止まってくれません
- バランスを崩しやすい姿勢は壁ぎわで——転倒防止
- 床が滑らないようにする
自宅で行う場合も、始めてよいかは主治医に確認してください。「動画で軽くやるだけだから」で省略しないほうが安全です。
マタニティスイミングの利点と注意
水中では浮力が働くため、関節や腰への負担が減り、体重の重さを感じにくいという利点があります。後期でも比較的動きやすいのはこのためです。
一方で注意点もあります。
- 更衣室やプールサイドで滑りやすい——移動時こそ気をつけてください
- 体が冷えることがある——水温と、上がったあとの保温
- マタニティ専用のクラスを選ぶ——一般の遊泳と一緒にしない
- 体調が悪い日は行かない——水の中では異変に気づきにくいことがあります
こちらも参加条件と主治医の許可が前提になります。
家でできること——外に出られない日のために
天候、体調、上の子の都合、真夏や真冬——外に出られない日は必ずあります。そのときのために、屋内でできる形を持っておくと続けやすくなります。
まずは「座ったまま」「立ったまま」から
運動というより、固まった体をほぐすくらいの感覚で十分です。
- 足首をゆっくり回す——むくみが気になるときに
- ふくらはぎを軽く動かす——座ったままかかとを上げ下げする
- 肩を回す——姿勢の変化で肩がこりやすくなります
- 骨盤をゆっくり前後に傾ける——座ったままできます
- 深く呼吸する——後期は息が浅くなりがちです
どれも痛みが出ない範囲で。反動をつけたり、強く伸ばしたりしないでください。
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骨盤底筋を意識して動かす
妊娠中から産後にかけて負担がかかるのが骨盤底筋です。おなかの中を下から支えている筋肉で、妊娠中の重みと出産で大きな負担を受けます。
動かし方はシンプルで、尿をがまんするときのように締めて、数秒たったらゆるめる——これだけです。座ったままでも横になったままでもでき、外から見えないので場所も選びません。
ただし力みすぎないのがコツです。息を止めて強く力むと、おなかに圧がかかってしまいます。呼吸を止めないことだけ守ってください。おなかが張るようならその日はやめて、次の健診で相談を。
家事は運動の代わりになる?
「家事で十分動いているのでは」と考える方がいます。体を動かしているのは事実ですが、家事は前かがみや中腰が多く、腰に負担が集中しやすいという別の問題があります。
つまり「動いている量」は足りていても、「体に優しい動き」にはなっていないことが多いのです。家事で疲れているのに体が固い、という状態はよく起こります。
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続けるコツは「短く・毎日」より「無理しない日を作る」
妊娠中の体調は日によって大きく変わります。毎日必ずやると決めると、できなかった日に落ち込みます。
おすすめは「調子のいい日にやる」と決めてしまうことです。妊娠中の運動は、記録を積み上げる種類のものではありません。
こうなったら中止——やめるサインを先に決めておく
運動を始める前に、やめる基準を持っておいてください。始める基準より、こちらのほうが大事です。
- おなかが張ってきた・張りが続く
- 出血がある
- 強い腹痛がある
- 破水したかもしれない
- 息が苦しい・動悸が強い
- めまい・立ちくらみ・気分が悪い
- 頭痛が強い、目がちらつく
- 胎動がいつもより明らかに少ない
こども家庭庁の情報サイトでも、破水が疑われる場合はすぐに医療機関へ連絡すること、妊娠後期の性器出血は常位胎盤早期剥離の可能性があるのですぐ受診すること、おなかの張りはしばらく安静にして様子をみることが案内されています。
参考 妊娠中に気をつけたいサインこども家庭庁「妊娠中の検査に関する情報サイト」
「がんばれば続けられる」は基準にしない
運動の場面では、つい「あと少しだけ」と考えてしまいます。けれど妊娠中は、その「あと少し」が体からのサインを見逃す時間になります。
目安として、会話ができる程度を超えないようにしてください。息が上がって話せない状態は、その時点で強すぎます。
翌日に響いたときも、見直しのサイン
その場では平気でも、翌日に強い疲れやだるさが残る、張りが増える、眠れないほど腰が痛む——こうしたときは、その運動がいまの体に対して強すぎたと考えてください。
妊娠中は疲れの出方が遅れることがあります。「当日つらくなかったから大丈夫」ではなく、翌日までを含めて判断すると、無理を重ねずにすみます。
暑い時期はとくに慎重に
体温が上がりすぎる状況は、妊娠中に避けたいものとして繰り返し挙げられます。真夏の炎天下、高温多湿の室内、長時間の入浴後の運動などは避けてください。
夏に体を動かすなら、朝や夕方の涼しい時間に、屋内で、こまめに水分をとりながら。のどが渇いてから飲むのでは遅いので、始める前に一口飲んでおくくらいがちょうどいいです。
やめたあとの判断
中止したあと、休んで治まったから大丈夫とは限りません。とくに張りが繰り返す・出血がある場合は、治まっても連絡してください。「今日は運動中にこうなりました」と伝えると、次の指示が具体的になります。

ウォーキングをするときの実際
もっとも取り組みやすいのがウォーキングです。ただし妊娠中は、いくつか押さえておきたい点があります。
靴と道を先に決める
- クッション性のある、履き慣れた靴——妊娠中はバランスが変わっています
- 平坦で、段差の少ない道——階段や坂道は負担が大きくなります
- 途中で座れる場所があるコース——ベンチのある公園などが理想的です
- トイレのある場所を通る——妊娠中は近くなります
- 人の目がある道——万一のとき助けを求められます
とくに「途中で引き返せるコース」にしてください。行きは元気でも、帰りがつらくなることがあります。
どのくらいのペースで歩く?
速さの数字を決めるより、体の感覚で決めるほうが安全です。目安は前に書いたとおり会話ができる程度。歌えるほど楽だと物足りず、話せないほどだと強すぎる——その間くらいです。
妊娠が進むと、同じ速さでも息が上がりやすくなります。先週と同じペースで歩けないのは、体が変わっているだけで、体力が落ちたわけではありません。そのつど調整してください。
歩いていておなかが張ってきたら
よくあるのが、歩いている途中でおなかが張ってくることです。そのときはその場で立ち止まり、座れる場所で休んでください。がんばって家まで歩き切ろうとしないこと。
休んで治まれば、その日はそこで切り上げます。治まらない、繰り返す、痛みを伴う——このときは産院に連絡してください。「途中で引き返せるコース」をすすめたのは、このためです。
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時間帯と季節
- 真夏の日中は避ける——体温が上がりすぎるのは避けたいところです。朝か夕方に
- 真冬は路面凍結に注意——転倒がいちばん危険です。無理な日は屋内で
- 雨の日は休む——滑る場所を歩く必要はありません
持ち物
- 飲み物——のどが渇く前に飲むのが基本です
- 母子健康手帳と保険証——何かあったときのために
- スマホ——連絡手段として
- マタニティマーク——見えるところに
「近所を少し歩くだけ」でも、母子健康手帳は持って出るのが安心です。
臨月のウォーキングと「陣痛が来る」という話
検索でよくあるのが「臨月に歩くと陣痛が来る」という話です。ここは中立に書きます。
動くことで体が整う面はありますが、歩けば陣痛が来ると決まっているわけではありません。予定日が近いからと無理に長時間歩くのは、疲労がたまるだけで逆効果になることもあります。
臨月は体が重く、バランスも取りづらい時期です。「陣痛を起こすため」ではなく「体を動かして気分を切り替えるため」くらいの位置づけにしておくのがちょうどいいと思います。もちろん、この時期に歩いていいかも主治医の確認が要ります。
運動しないと、どうなるの?
「運動不足だと難産になる」という話を聞いて不安になる方がいます。ここも正直に書きます。
動けない時期があっても、あなたのせいではありません
つわりが重い、切迫早産で安静を指示されている、上の子の世話で手一杯、仕事が忙しい——動けない理由は、どれも正当なものです。
とくに安静を指示されている場合、動かないことが治療です。「運動不足でお産が大変になるのでは」と心配する必要はありません。指示に従うことが最優先です。
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体を動かすことで期待されること
一般に、妊娠中に体を動かすことは体重の増え方の管理、腰や背中の負担の軽減、便秘やむくみ、気分の切り替えといった面で役立つとされています。
ただしこれらは「運動しないと必ずこうなる」という話ではありません。体重の増え方も、便秘やむくみも、食事や生活の工夫で対処できる部分があります。運動はその手段のひとつにすぎません。
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「安産のため」という言葉との付き合い方
お産の進み方は、体力だけで決まるものではありません。赤ちゃんの向き、骨盤の形、陣痛の強さなど、自分でコントロールできない要素が大きく関わります。
だから「安産のために運動しなきゃ」と自分を追い込む必要はありません。運動をがんばった人が必ず楽に産めるわけでも、動けなかった人が大変になるわけでもありません。
ちなみ(元看護師)

こういうときは、必ず先に相談を
次に当てはまる方は、運動を始める前の相談が特に重要です。自己判断で始めないでください。
| 状態 | なぜ確認が必要か |
|---|---|
| 切迫流産・切迫早産と言われている | 安静が治療になることがあります |
| 血圧が高め・妊娠高血圧症候群 | 血圧の変動に注意が必要です |
| 前置胎盤と診断されている | 出血のリスクに関わります |
| 赤ちゃんの発育がゆっくりと言われている | 経過の見方が変わります |
| 多胎妊娠(双子など) | 管理の方針が異なります |
| 妊娠糖尿病と言われている | 運動が管理の一部になることもあり、内容の確認が必要です |
| 貧血を指摘されている | 動悸やふらつきが出やすくなります |
| 持病がある・薬を飲んでいる | 種目や強度の判断に関わります |
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この表に当てはまらなくても、相談してから始めるのが基本です。日本産科婦人科学会も、妊娠中に起こりうる病気について情報を公開しています。気になる診断名があれば、あわせて確認してみてください。
「どこまで体を動かしていいか」と同じくらい多いのが、「旅行に行ってもいいか」という迷いです。判断の考え方は運動とよく似ていて、まず健診で具体的に相談すること、そして「こうなったらやめる」を先に決めておくことが軸になります。行ける時期の目安、行き先の選び方、移動手段ごとの注意点、海外旅行の判断材料、旅先で受診すべきサインまでを整理した「妊娠中の旅行(マタ旅)はいつまで大丈夫?」もあわせてどうぞ。
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無理なく続けるための考え方
目標を「回数」にしない
「週3回」「毎日30分」と決めると、できなかった日に自分を責めることになります。妊娠中は、体調が理由でできない日が必ずある前提で組んでください。
おすすめは「調子がよければやる」「つらければやらない」という基準です。ゆるく見えますが、妊娠中はこれがいちばん続きます。
日常の動きに混ぜてしまう
まとまった時間を作るのが難しければ、いつもの行動に足す形が現実的です。
- 買い物を少し遠い店にする
- 一駅分歩いてみる——体調のいい日だけ
- テレビを見ながら足首を動かす
- お風呂上がりに軽く伸ばす
「運動の時間」を作ろうとすると続きませんが、ついでなら続きます。
ひとりでやらない
可能ならパートナーと一緒に歩くのもおすすめです。何かあったときに助けてもらえますし、この時期に話す時間を作れるのは、あとから振り返るとよかったと思えることが多いです。
上の子がいる場合は、公園に行くこと自体が運動になります。わざわざ別の時間を作らなくてかまいません。
妊娠中の運動にまつわる、よくある思い込み
「たくさん歩けば歩くほどいい」
歩数を競うように増やしてしまう方がいます。けれど妊娠中は、疲れがそのまま張りにつながることがあります。歩数の多さより、翌日に響かない量かどうかで見てください。
昨日より多く歩けた日を「よい日」とする考え方は、妊娠中には向きません。同じ量を、無理なく繰り返せるかどうかのほうが大事です。
「体重が増えたぶんは運動で戻す」
妊娠中の体重増加は、減らすものではなく、増え方を見ていくものです。運動で戻そうとするより、増え方が急なときに何が起きているかを健診で確認するほうが確実です。
体重の指摘を受けると焦ってしまいますが、急に運動量を増やすのは避けてください。増え方の管理は、食事と生活の見直しが中心になります。
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「動かないと赤ちゃんが大きくなりすぎる」
赤ちゃんの大きさは、母体の運動量だけで決まるものではありません。推定体重は健診で見てもらうもので、気になることがあれば主治医が必要な指示を出します。
自己判断で運動を増やして体重を抑えようとするのは、目的も手段もずれています。まず健診で「いまの増え方はどうですか」と聞いてください。
「みんなやっているから、やらないとまずい」
SNSでマタニティヨガや毎日のウォーキングを目にすると、焦る気持ちが出てきます。でも投稿されるのは「できた日」だけです。できなかった日は投稿されません。
比べる相手は他人ではなく、自分の経過を見ている主治医の指示です。そこだけ見ていれば十分です。
ちなみから|「動かなきゃ」で自分を追い込まないでください
妊娠中の運動の話は、なぜか「やらないと損」「やらないとダメ」という空気になりがちです。体重のことを言われ、安産のためと言われ、周りは歩いていると聞き——動けない自分を責めてしまう方を、たくさん見てきました。
でも、この記事で書いてきたとおり、運動していいかどうかは経過によって変わります。動かないほうがいい人がいて、それは指示に従っているだけです。動きたくても体がついてこない時期もあります。
私は上の子のときは毎日歩いていましたが、下の子のときは上の子の世話でそれどころではなく、ほとんど何もしませんでした。どちらの子も、無事に生まれてきました。
だから、この記事を読んで「やらなきゃ」と思うより、「次の健診で聞いてみよう」と思ってもらえたらうれしいです。答えを持っているのは、あなたの経過を見ている人です。
まとめ|答えは健診にあります
- 妊娠中に運動していいかは、経過によって変わる。「妊婦は運動していい/いけない」という一律の答えはない
- 日本臨床スポーツ医学会が「妊婦スポーツの安全管理基準」を公表している。ただし自分に当てはめて判断するのは主治医の役割なので、この記事では強度や時間の数字を書いていない
- 健診では「◯◯を◯分くらい考えているのですが」と具体的に聞くと、具体的な答えが返ってくる
- 向いている運動の共通点は強度を調整できる・いつでもやめられる・転ばない・おなかを圧迫しない・人とぶつからない
- 避けたいのは転倒の危険・接触・うつぶせや強い腹筋・息を止めて力む・高温環境。とくに転倒はいちばん避けたい
- 後期・臨月は「続けられるか」より「安全にできる形に変えられるか」で考える
- やめる基準を先に決めておく——張り・出血・強い腹痛・破水感・息苦しさ・めまい・強い頭痛・胎動の減少はその場で中止して連絡
- 強さの目安は会話ができる程度。息が上がって話せないなら強すぎる
- 安静を指示されているなら、動かないことが治療。運動不足を心配する必要はない
- お産の進み方は体力だけで決まらない。「安産のために」で自分を追い込まない
- 続けるコツは回数を目標にせず、調子のいい日にやる。日常の動きに混ぜてしまうのが現実的
妊娠中の運動は、やってもやらなくても、あなたの妊娠の価値は変わりません。やれる日にやれることを、安全な形で。それで十分です。
よくある質問(妊娠中の運動|FAQ)
Q妊娠中はどのくらい運動していいですか?
A.記事や一般論で決められるものではなく、妊娠の経過によって変わります。切迫早産、血圧が高め、前置胎盤、赤ちゃんの発育がゆっくり、多胎妊娠などの場合は扱いが変わりますし、安静が指示されていることもあります。日本臨床スポーツ医学会の産婦人科部会が「妊婦スポーツの安全管理基準」を公表していますが、その内容を自分に当てはめて判断するのは主治医の役割です。健診で「ウォーキングを1日◯分くらい考えているのですが大丈夫ですか」と具体的に聞くと、具体的な答えが返ってきます。目安としては、会話ができる程度を超えない強さにとどめてください。
Q妊婦でもしていい運動は何ですか?
A.種目名で覚えるより、性質で考えるとわかりやすくなります。向いているのは、強度を自分で調整できる、いつでもやめられる、転ぶ危険が少ない、おなかを圧迫しない、人とぶつからない——この5つを満たすものです。よく挙げられるのはウォーキング、マタニティ向けのヨガやストレッチ、マタニティスイミングなどです。ただしどれも、始める前に主治医への確認が必要です。マタニティ向けの教室は妊婦向けに設計されている利点がありますが、参加に主治医の許可を求められることが多く、参加できる週数の条件がある場合もあります。
Q妊娠中にやってはいけない運動はありますか?
A.避けたいものにも共通点があります。転倒の危険があるもの(自転車・スキー・乗馬など)、人と接触するもの(球技・格闘技など)、おなかを圧迫する姿勢(うつぶせ・強い腹筋運動)、息を止めて力むもの(重い負荷の筋トレ)、体温が上がりすぎる環境(高温多湿の場所、真夏の炎天下)、急な方向転換や跳躍を含むものです。とくに転倒は妊娠中にいちばん避けたい事故なので、「できるかどうか」ではなく「転ぶ可能性がゼロに近いか」で判断してください。
Q運動中に「やめたほうがいい」サインはありますか?
A.あります。おなかが張ってきた・張りが続く、出血がある、強い腹痛、破水したかもしれない、息が苦しい・動悸が強い、めまいや立ちくらみ、強い頭痛や目のちらつき、胎動がいつもより明らかに少ない——これらはその場で中止して産院に連絡してください。こども家庭庁の情報サイトでも、破水が疑われる場合はすぐ医療機関へ連絡すること、妊娠後期の性器出血は常位胎盤早期剥離の可能性があるのですぐ受診すること、おなかの張りはしばらく安静にして様子をみることが案内されています。なお、休んで治まっても、張りが繰り返す場合や出血があった場合は連絡してください。
Q運動しないと難産になりますか?運動不足が心配です。
A.お産の進み方は体力だけで決まるものではありません。赤ちゃんの向き、骨盤の形、陣痛の強さなど、自分でコントロールできない要素が大きく関わります。運動をがんばった人が必ず楽に産めるわけでも、動けなかった人が大変になるわけでもありません。とくに切迫早産などで安静を指示されている場合は、動かないことが治療です。運動不足を心配する必要はなく、指示に従うことが最優先です。つわりが重い、上の子の世話で手一杯といった理由で動けないのも、まったく正当なことです。
Q臨月に歩くと陣痛が来ますか?
A.歩けば陣痛が来ると決まっているわけではありません。動くことで体が整う面はありますが、予定日が近いからと無理に長時間歩くのは、疲労がたまるだけで逆効果になることもあります。臨月は体が重くバランスも取りづらい時期で、転倒のリスクも上がっています。「陣痛を起こすため」ではなく「体を動かして気分を切り替えるため」くらいの位置づけにしておくのがちょうどよく、この時期に歩いてよいかどうかも主治医の確認が必要です。
Q外に出られない日は、家で何をすればいいですか?
A.運動というより、固まった体をほぐすくらいの感覚で十分です。座ったまま足首をゆっくり回す、かかとを上げ下げしてふくらはぎを動かす、肩を回す、骨盤をゆっくり前後に傾ける、深く呼吸する——どれも痛みが出ない範囲で、反動をつけずに行ってください。なお「家事で十分動いている」と考える方がいますが、家事は前かがみや中腰が多く腰に負担が集中しやすいので、動いている量は足りていても体に優しい動きにはなっていないことが多いです。
Q妊娠前から続けている運動は、そのまま続けていいですか?
A.新しく始める場合と、以前から続けている場合とでは判断が違うことがあります。体が慣れているかどうかが変わるためです。ただし「前からやっているから同じ強度で続けていい」ということにはなりません。妊娠中は体の状態が変わっており、おなかが大きくなればバランスも変わります。続けたい種目を具体的に挙げて、主治医に確認してください。継続できる場合でも、強度や量の見直しが必要になることがあります。
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