夜中に「イタタタ!」という痛みで目が覚めて、ふくらはぎがギュッとかたまって動かせない——。妊娠中の「足がつる(こむら返り)」は、多くの妊婦さんが悩む症状のひとつです。
「なぜ急に足がつるようになったの?」「毎晩つるのって大丈夫なの?」「どうしたら楽になれる?」——そんな疑問や不安を抱えながら、夜中にスマホで検索してこのページにたどり着いた方も多いのではないでしょうか。
私自身、妊娠後期に毎晩のように足がつってしまい、あまりの痛さに夫を起こしてしまうことが何度もありました。元看護師として「こむら返りとは何か」を知識として知っていたつもりでも、実際に繰り返し経験するとやはりつらく、「なんとかしたい」という気持ちでいっぱいになりました。
この記事では、妊娠中に足がつる原因・始まりやすい時期・今すぐできる即効対処法・再発を防ぐための日常の予防策・産婦人科を受診すべきサインを、看護師としての医療知識と2人の子どもを産んだ体験をもとにくわしく解説します。「また今夜もつるかもしれない」という不安が少しでも減るよう、できる限り丁寧にまとめましたので、ぜひ最後まで読んでみてください。
妊娠中のその他の体の変化について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてどうぞ。
妊娠中に足がつる(こむら返り)とはどんな症状?
こむら返りのメカニズム——突然の筋肉痙攣
「足がつる」と「こむら返り」は同じ症状を指す言葉です。医学的には筋肉の不随意な痙攣(けいれん)と呼ばれ、主にふくらはぎ(腓腹筋・ヒラメ筋)が突然ギュッと収縮して、数秒から数分間にわたって硬直する状態です。「こむら」はふくらはぎの古い呼び名なので、「こむら返り」は「ふくらはぎが裏返るほど強くつる」という意味になります。
通常、筋肉は神経からの信号を受けて収縮と弛緩(ゆるむこと)を繰り返しています。ところが電解質(カルシウム・マグネシウムなどのミネラル)のバランスが崩れたり、血流が滞ったりすると、一度収縮した筋肉への「ゆるめ」信号がうまく伝わらなくなります。この結果、筋肉が収縮したままロックされてしまうのが「つる」状態のメカニズムです。
症状の特徴は、前触れなく突然起こること、ふくらはぎが石のように硬くなること、足首を動かそうとするとさらに痛みが増すこと、そして収縮が治まった後も筋肉の張りや鈍痛が残ることが挙げられます。特に夜間に横になっているときや、朝方目が覚めてからだを伸ばした瞬間に起きやすい傾向があります。
妊婦に多い理由——全身的な体の変化が引き金
こむら返り自体は、激しい運動後の疲労や睡眠不足でも起こることがあります。しかし妊娠中は特に頻発しやすく、妊婦さんを対象とした調査では約半数が妊娠中に足がつる経験をするという報告もあります。
なぜ妊娠中に多いのかというと、妊娠によって体に起こるさまざまな変化が、こむら返りを引き起こす条件を複数重ね合わせてしまうためです。具体的には「栄養素(電解質)の需要増加と不足」「循環機能の変化による血流悪化」「子宮の増大による神経・血管への物理的な圧迫」という3つの要因が絡み合っています。次のセクションで、それぞれの原因をくわしく解説します。
ちなみ(元看護師)
妊娠中に足がつる主な原因

カルシウム・マグネシウム不足
妊娠中に足がつる最も代表的な要因のひとつが、カルシウムとマグネシウムの不足です。これらのミネラルは、筋肉の収縮と弛緩を調整するうえで不可欠な役割を担っています。
カルシウムは筋肉を「収縮させる」ための信号伝達に関わり、マグネシウムは「弛緩させる(ゆるませる)」働きをバランスよく保っています。どちらかが不足すると、筋肉が正常に弛緩できなくなり、こむら返りが起きやすくなります。
妊娠中はお腹の赤ちゃんの骨格形成のためにカルシウムの需要が急増します。母体の食事から十分に補えない場合、体は母体の骨や血液中のカルシウムを優先的に赤ちゃんへ回すため、母体側で相対的な不足状態になりやすいのです。マグネシウムについても同様で、胎盤を通じた胎児へのミネラル供給が優先されることで、母体の体内バランスが崩れやすくなります。
参考 カルシウム厚生労働省eJIM 参考 マグネシウム厚生労働省eJIM食事でのカルシウム・マグネシウム摂取については、「予防法」のセクションでくわしくご紹介します。つわりで食事が十分に摂れない時期は特に不足しやすいため、意識して補うことが大切です。
循環血液量増加と下肢の静脈うっ血
妊娠中は循環血液量が妊娠前の約1.4〜1.5倍に増加します。これは赤ちゃんへの栄養と酸素を送り届けるために必要な変化ですが、同時に足の静脈に血液が溜まりやすくなる「静脈うっ血」を引き起こします。
静脈血が下肢に滞留すると、筋肉への栄養・酸素の供給が低下し、代謝によって生じる老廃物が排出されにくくなります。この状態が続くと筋肉が疲弊しやすくなり、こむら返りの下地をつくってしまいます。特に長時間立ちっぱなしや座りっぱなしの姿勢が続く場合、うっ血はより起きやすくなります。
むくみ(浮腫)と足がつることは直接的には別の症状ですが、根っこにある「静脈の血流悪化」は共通しています。むくみが強い時期はこむら返りも頻発しやすいと感じる方が多いのはこのためです。妊娠中のむくみについては、こちらの記事もご参考ください。
子宮増大による神経・血管の圧迫
妊娠が進むにつれて大きくなる子宮は、骨盤内の血管や神経を物理的に圧迫するようになります。特に下大静脈(下半身から心臓に血液を戻す大きな静脈)が圧迫されると、脚への血液の戻りがさらに悪化します。
また、骨盤内の神経(坐骨神経など)が圧迫されることで、足の感覚異常やけいれんが起きやすくなることがあります。これが「足がつる」という症状に関わっている可能性もあります。仰向けで寝ていると子宮の重さが直接下大静脈にかかるため、妊娠後期には左側臥位(左を向いて寝る姿勢)が推奨される理由のひとつでもあります。
水分不足・脱水
妊娠中は通常よりも多くの水分が必要です。羊水の維持・血液量の増加・胎盤形成など、体内での水分需要が高まっているにもかかわらず、つわりで水分が摂りにくかったり、外出を控えているために飲む機会が減ったりして、知らず知らずのうちに脱水気味になっていることがあります。
水分が不足すると、血液が濃縮されて血流が悪化し、電解質のバランスも崩れます。これがこむら返りの誘因となります。「のどが渇いた」と感じる前の段階でこまめに水分を摂ることが大切で、特に夜間は長時間水分が補給されないため、就寝前のコップ1杯が習慣になると良いでしょう。
貧血(鉄分不足)との関係
妊娠中は赤ちゃんへの鉄分供給と母体の血液量増加が重なるため、鉄欠乏性貧血が起きやすくなります。貧血になると赤血球のヘモグロビン量が減り、全身の筋肉への酸素供給が低下します。酸素が不足した筋肉は疲弊しやすく、こむら返りが起きやすくなると考えられています。
「足がつる頻度が増えた」と同時期に「立ちくらみ・動悸・息切れ・疲れやすさ」などの症状がある場合は、貧血の可能性も視野に入れてみましょう。定期健診での血液検査結果を確認し、鉄分値が低い場合は産婦人科に相談することをおすすめします。妊娠中の貧血についてはこちらの記事でくわしく解説しています。
妊娠時期別——いつから足がつる?
妊娠初期(〜15週)はまれ
妊娠初期(14週末まで)に足がつることは、まれではあるものの起こることがあります。この時期は特につわりの影響で水分や食事が十分に摂れないことが多く、電解質の不足や脱水状態が引き金になる場合があります。
ただし初期のうちはまだ子宮が比較的小さく、血管・神経への物理的な圧迫も少ないため、こむら返りが頻発することは多くありません。もし妊娠初期から繰り返し足がつる場合は、水分補給と食事の見直しをしながら、産婦人科の定期健診でも伝えてみてください。妊娠初期に起こる体の変化全般が気になる方はこちらもどうぞ。
妊娠中期(16〜27週)から増加しやすい
妊娠中期に入ると、子宮が急速に大きくなり始めます。この時期からこむら返りを経験する妊婦さんが増えてくる傾向があります。
主な理由は3つあります。第一に、赤ちゃんの骨格形成が本格化するため、カルシウム・マグネシウムの需要が一気に高まります。第二に、循環血液量が増えるとともに子宮の重みが徐々に骨盤内の血管を圧迫し始め、下肢の血流が悪化しやすくなります。第三に、体重の増加によって足への物理的な負荷が増えてきます。
この時期はまだ比較的体を動かしやすいため、「なんとなく夜中に足がつることが増えた」「たまにつる」という程度の方が多いですが、早めに食事や水分補給・ストレッチといった予防策を取り入れておくことで、後期に向けた頻度の増加を抑えられる可能性があります。
妊娠後期(28週〜)が最も多い——夜間睡眠の妨げに
妊娠後期は、こむら返りが最も頻発しやすい時期です。子宮の大きさが最大に近くなり、下大静脈への圧迫が最も強まります。赤ちゃんの体重も増えて足への負荷が著しくなり、筋肉の慢性的な疲労も蓄積します。
私が妊娠後期に経験したこむら返りも、主に夜中の2〜4時頃に集中していました。横になっていると下肢の血流が変化することや、就寝中は意識的に水分補給ができないこと、大きなお腹で寝返りが打ちにくくなって足が同じ姿勢のまま長時間固定されること——これらが重なって、夜間に頻発しやすい状態が生まれます。
毎晩のようにこむら返りで目が覚めると睡眠の質が著しく低下し、日中の疲労感や気分の落ち込みにもつながります。妊娠後期の腰や体全体の不調もあわせて悩んでいる方はこちらの記事もご参照ください。
足がつったときの即効対処法

ゆっくり足首を反らす(最重要)
足がつってしまったとき、最も効果的な即効対処法は足首をゆっくりと背屈させる(つま先を膝の方向へ引き寄せながら、かかとを前に押し出す)ことです。この動きがふくらはぎの筋肉を伸ばし、痙攣を解除する助けになります。
やり方のポイントは「ゆっくり」という点です。急に強く曲げると、すでに強く収縮している筋肉をさらに傷める可能性があります。痛みが強くても焦らず、息をゆっくり吐きながら少しずつ足首を手前に引くイメージで行いましょう。手でつま先を持てる場合は、つま先を手でそっと引き寄せるようにするとさらに伸ばしやすくなります。
立ち上がれる状態であれば、床に足の裏全体をつけて立ち、膝を軽く前に押し出しながらかかと全体を床につけるようにすると、ふくらはぎが自然に伸びて楽になることがあります。ただしお腹が大きい状態で急に立ち上がると転倒のリスクがあるため、必ずベッドの端・壁・パートナーのサポートを利用してください。
足がつったときに反射的に「つま先を伸ばす(足首を底屈させる)」方向に力を入れるのは逆効果です。ふくらはぎの筋肉がさらに収縮し、症状が悪化・長引くことがあります。「痛い→伸ばしたい→足首を伸ばす」という反射的な動きに注意してください。正しくは「かかとを前へ押し出してつま先を上向きに引く」方向です。
ふくらはぎをほぐす・温める
足首を反らしてけいれんが治まったら、次のステップとしてふくらはぎをほぐしていきます。両手でふくらはぎを包むように持ち、心臓の方向(膝から太もも方向)に向かって軽くさするように揉みほぐします。強く揉みすぎず、血流を温めるようなイメージでやさしく行うのがコツです。
蒸しタオルや温湿布をふくらはぎに当てて血流を促す方法も効果的です。ただし熱すぎるものは避け、人肌よりやや温かい程度のものを使いましょう。夜中に急につった場合は、翌朝の入浴時にふくらはぎをじっくり温めてほぐすのもよいでしょう。浴槽でお湯につかることで全身の血流が促進され、筋肉の硬直が和らぎます。
痛みが続く場合の対応
通常、こむら返りは数秒〜数分で治まります。けいれんが治まった後の筋肉の張りや鈍い痛みも、数時間〜翌日には自然に引いていくのが一般的です。しかし次のような場合は注意が必要です。
- けいれんが30分以上続く、または繰り返し短時間で起きる
- 翌日以降も強い痛みが引かず、むしろ悪化している
- ふくらはぎや太ももが赤くなり、熱感と腫れがある
- 足の痛みに加えて、胸の痛みや息切れを感じる
- 片側の足だけが極端にむくんでいる
これらの症状は、単なるこむら返りではなく深部静脈血栓症(DVT)の可能性があります。DVTは脚の静脈に血栓(血の塊)ができる病気で、妊娠中は血液が凝固しやすくなるためリスクが高まります。放置すると血栓が肺に飛んで肺塞栓症を起こす危険があります。少しでも当てはまる症状がある場合は、迷わず産婦人科か救急外来を受診してください。受診サインについては後述のセクションでもくわしく説明します。
日常の予防法——再発を防ぐために

食事でカルシウム・マグネシウムを補う
こむら返りの予防の基本は、日々の食事でカルシウムとマグネシウムをしっかり補うことです。どちらも単一の食品に偏らず、さまざまな食材からバランスよく摂ることが理想です。
カルシウムを多く含む食材:牛乳・ヨーグルト・チーズなどの乳製品、豆腐・厚揚げ・納豆などの大豆食品、小松菜・チンゲン菜・ほうれん草などの緑黄色野菜、ちりめんじゃこ・桜えびなどの小魚類、切り干し大根・ひじきなどの乾物。
マグネシウムを多く含む食材:アーモンド・くるみ・カシューナッツなどのナッツ類、ごま・えごまなどの種実類、わかめ・ひじき・のりなどの海藻類、玄米・全粒粉パン・大麦などの全粒穀物、大豆・枝豆・豆腐などの大豆食品。
カルシウムはビタミンDと一緒に摂ると腸での吸収率が上がります。ビタミンDは日光に当たることで体内で生成されるほか、鮭・サーモン・サバなどの魚類、卵黄、きのこ類からも補えます。また、カルシウムの吸収を妨げるものとして、過剰なリン(インスタント食品・清涼飲料水に多い)や塩分の摂り過ぎが知られています。
つわりで食べられるものが限られている時期は、産婦人科に相談してマタニティサプリメントで補う方法もひとつの選択肢です。ただしカルシウムの過剰摂取は便秘や腎結石のリスクを高めることがあるため、サプリメントの摂取量は必ず産婦人科医の指導のもとで決めてください。
こまめな水分補給
水分不足はこむら返りを誘発する要因のひとつです。妊娠中は「のどが渇いたと感じる前に飲む」習慣をつけることが大切です。特に夏場や暖房が効いた室内では、気づかないうちに汗で水分が失われているため注意が必要です。
飲み物の種類は、基本的に水や麦茶(カフェインフリー)が妊娠中も安心して摂れます。カフェインを含むコーヒー・緑茶・紅茶は利尿作用があるため、就寝前には避けるのが無難です。スポーツドリンクは糖分が多いため飲みすぎに注意しつつ、運動後や暑い日の適度な補給に活用できます。
特に夜間は長時間水分補給ができないため、就寝前にコップ1杯(150〜200ml程度)の水や麦茶を飲む習慣が予防に役立ちます。寝室にペットボトルや水筒を置いておくと、夜中に目が覚めたときにすぐ補給できて安心です。
就寝前のふくらはぎストレッチ
夜間のこむら返りを予防するために、就寝前にふくらはぎをストレッチする習慣が非常に効果的です。筋肉の緊張をほぐしてから眠ることで、就寝中の痙攣が起きにくくなります。
壁を使ったカーフストレッチ:壁に両手を当てて立ち、片足を後ろに引いてかかとを床につけながら前傾姿勢を取ります。後ろ足のふくらはぎが伸びているのを感じながら、息を吐いてリラックスし、左右それぞれ30秒ほどキープします。お腹が大きくなってきたら壁との距離を縮め、無理のない範囲で行ってください。
座ったまま足首回し:ベッドに腰かけた状態で、足首をゆっくり時計回り・反時計回りにそれぞれ10回ずつ回します。ふくらはぎから足首にかけての血流が促進され、夜間のつりを予防する効果が期待できます。
横になってできる足首の背屈運動:仰向けまたは左側臥位の姿勢で、足首をゆっくり手前に引いて(背屈)少しキープし、次にゆっくりと戻す動きを10〜15回繰り返します。就寝直前にベッドの上でできるため、継続しやすい方法です。
こむら返りで夜間の睡眠が妨げられている方は、睡眠対策もあわせてご覧ください。
弾性ストッキング・着圧ソックス
弾性ストッキング(着圧ソックス)は、足首から膝にかけて段階的な圧力をかけることで静脈血の心臓への戻りを助け、下肢のうっ血やむくみを予防します。こむら返りの予防にも効果的と言われており、特に長時間立ち仕事が多い方や、むくみが気になる方に向いています。
産婦人科で処方される医療用弾性ストッキングと、市販の着圧ソックスでは圧迫圧が異なります。市販品は比較的圧力が低く日常使いに向いていますが、静脈瘤がある場合や圧力の強いものを使いたい場合は、必ず産婦人科・血管外科に相談してから選んでください。圧力が強すぎると血流を妨げる可能性があるため、自己判断での高圧力品の使用は避けるのが安全です。
着用のタイミングは、起床後すぐにむくみが出る前に装着し、夜間就寝時は外すのが基本です。足首から順に丁寧に引き上げ、しわのない状態で着用することで効果が発揮されます。
足を高くして寝る
就寝時に足を心臓より少し高くした状態(足上げ睡眠)にすることで、下肢に溜まった血液や水分が重力によって心臓側に戻りやすくなります。専用の妊婦用ポジショニングピローを使ったり、薄いクッションやバスタオルを2〜3枚重ねて足元に置いたりして、かかとが10〜15cmほど高くなるようにすると効果的です。
あわせて、妊娠中期以降は左側臥位(左を向いて寝る姿勢)が推奨されています。下大静脈は脊椎の右側に位置しているため、左向きに寝ることで子宮による圧迫が軽減され、脚への血液の戻りが改善されやすくなります。お腹の大きさが増した妊娠後期には、抱き枕やクッションを活用して横向き姿勢を安定させると睡眠の質も上がります。
適度な運動(マタニティウォーキング)
妊娠中の適度な運動は、ふくらはぎの筋ポンプ作用を高め、血流を促進する効果があります。ふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれるほど、静脈血を心臓に戻す大切な役割を持つ部位です。日中にふくらはぎをしっかり動かしておくことで、夜間のこむら返りを予防できる可能性があります。
マタニティウォーキングは、妊娠中に最も取り組みやすい有酸素運動のひとつです。1回20〜30分、週3〜4回を目安に、「少し汗ばむ程度」の軽い強度で続けることが理想です。歩くときはふくらはぎを使うかかと着地→つま先離地の動きを意識すると、ふくらはぎへの刺激が高まります。
長時間立ちっぱなしや座りっぱなしを避け、1時間に1回は立ち上がって数分歩くか、かかとの上げ下げ(カーフレイズ)をする習慣も取り入れてみてください。デスクワーク中でも椅子に座ったまま足先を上下に動かすだけで、ふくらはぎのポンプ機能を刺激できます。
ただし、お腹の張りや出血がある場合、切迫早産・切迫流産の診断を受けている場合は、安静が必要なケースがあります。運動の可否と強度については、必ず産婦人科医に確認してから行ってください。
こんなときは産婦人科へ(受診サイン)
夜間の激しい痛みが続く
以下のような症状がある場合は、単なるこむら返りではなく別の疾患の可能性があります。速やかに産婦人科か救急外来を受診してください。
- 足がつった後も30分以上にわたって強い痛みが続く
- 痛みが翌日以降も引かず、むしろ悪化している
- ふくらはぎや太ももが赤くなり、熱感・腫れがある
- 足だけでなく胸の痛みや突然の息切れ・呼吸困難がある
- 片側の足だけが急に極端にむくんだ
- 歩くと痛みがあり、足を触ると固い感触がある
特に意識してほしいのが深部静脈血栓症(DVT)との鑑別です。DVTは脚の深部にある静脈に血栓(血の塊)ができる病気で、妊娠中は凝固因子の増加や下肢うっ血によってリスクが高まります。こむら返りと似た症状に見えることがありますが、DVTでは「片足だけが腫れている」「赤みや熱感がある」「痛みが長時間続く」という点が異なります。DVTを放置すると、血栓が肺の血管に飛んで肺塞栓症を引き起こし、命にかかわる状態になる可能性があります。少しでも疑いがあれば迷わず受診してください。
むくみ・静脈瘤が気になる場合
足のむくみが強い、または脚の血管が浮き出てコブのようになる「静脈瘤」が気になる場合も、こむら返りの頻度が上がりやすいサインです。
むくみには、妊娠経過に伴う生理的なものと、妊娠高血圧症候群の一症状として医療的な管理が必要なものがあります。特に顔や手のむくみが強い、急に体重が増えた(1週間で500g以上など)、頭痛・視野の異常がある、などの症状を伴う場合は早めに産婦人科を受診してください。
妊娠中に出現した静脈瘤は、分娩後に自然に縮小・消失することが多いですが、こむら返りと関連することがあります。弾性ストッキングの処方が適切な場合もあるため、気になる場合は産婦人科や血管外科で相談してみましょう。
「大げさかな」と我慢せず、定期健診のたびに気になる症状は医師や助産師に伝えることをおすすめします。産婦人科は妊婦さんのあらゆる相談に慣れた場所ですので、遠慮は不要です。
よくある質問
Q妊娠中に足がつるのはいつ頃から始まりますか?
A.妊娠中期(16〜27週)から経験する方が増え始め、後期(28週以降)が最も頻発しやすい時期です。妊娠初期につる方もいますが比較的まれで、つわりによる水分・栄養不足が引き金になることが多いです。個人差があるため、時期が前後しても心配しすぎないでください。
Q毎晩のように足がつります。何か体に問題があるのでしょうか?
A.毎晩つること自体は妊娠後期には珍しくありませんが、カルシウム・マグネシウム不足・水分不足・睡眠時の姿勢が積み重なっているサインかもしれません。就寝前のストレッチ・水分補給・食事の見直しを試みながら、次の定期健診で産婦人科に相談してみてください。足が赤く腫れる・痛みが30分以上続くなどがある場合は早めに受診を。
Q足がつったとき、どうすれば早く楽になりますか?
A.かかとを前に押し出す方向に足首をゆっくり反らして(背屈させて)ふくらはぎを伸ばすのが最も効果的です。急に強く動かさず、息を吐きながらゆっくりと行うのがポイントです。収縮が治まったら、温めながら優しくほぐしてください。つま先を伸ばす方向(底屈)に力を入れると悪化するため注意が必要です。
Q足がつるのを防ぐために、カルシウムのサプリメントを飲んでもよいですか?
A.産婦人科に相談のうえで、医師が必要と判断した場合に服用するのが安全です。カルシウムの過剰摂取は便秘や腎結石のリスクを高めることがあるため、自己判断での大量摂取は避けてください。まずは食事からの補給を優先し、不足がある場合は主治医の指示に従って補充する方法が基本です。
Q足がつったとき、立ち上がったほうがいいですか?
A.立ち上がれる状態であれば、床にかかと全体をつけてふくらはぎを伸ばす方法が有効な場合があります。ただしお腹が大きい状態で急に立ち上がると転倒のリスクがあります。まずは横になったまま足首を反らす対処を試み、立ち上がる場合は必ずベッドの端や壁・パートナーを支えにしてゆっくり行ってください。
まとめ
妊娠中に足がつる(こむら返り)は、カルシウム・マグネシウムなどの電解質不足・循環血液量増加による静脈うっ血・子宮の増大による神経・血管への圧迫・水分不足・貧血など、複数の要因が重なって起こります。特に妊娠後期に頻発しやすく、夜間の睡眠を妨げることも少なくありません。
「つってしまったとき」の即効対処は、かかとを押し出す方向に足首をゆっくり反らしてふくらはぎを伸ばすことです。「繰り返させないために」は、カルシウム・マグネシウムを含む食事・こまめな水分補給・就寝前のストレッチ・着圧ソックス・左側臥位での就寝・適度な運動を組み合わせることが大切です。
また、「足が赤く腫れて熱がある」「痛みが30分以上続く」「片足だけが極端にむくむ」などの症状は深部静脈血栓症(DVT)のサインである可能性があるため、迷わず産婦人科を受診してください。妊娠中のこむら返りは「よくあること」ですが、気になる症状を一人で抱え込まず、産婦人科のサポートを上手に活用してくださいね。
- 妊娠中の足がつる(こむら返り)は、カルシウム・マグネシウム不足・静脈うっ血・子宮による圧迫・水分不足・貧血が複合して起こる
- 妊娠後期(28週〜)が最も多く、夜間に起きやすい
- 即効対処はかかとを前に押し出す方向に足首をゆっくり反らすこと(つま先を伸ばす方向はNG)
- 予防のカギは、カルシウム・マグネシウム豊富な食事・こまめな水分補給・就寝前のストレッチ・着圧ソックス・左側臥位・適度な運動
- 足が赤く腫れる・痛みが30分以上続く場合は深部静脈血栓症(DVT)の可能性があるため速やかに受診を
- 毎晩つるなど気になる症状は産婦人科の定期健診でも遠慮なく相談を

