保育園から「クラスで手足口病が出ています」とお知らせが来た。数日後、子どもの手のひらと足の裏に小さな水ぶくれ。口の中が痛いのか、大好きなごはんもミルクも嫌がる——。手足口病は、小さな子どもがいる家庭なら、かなりの確率で一度は出会う病気です。
厚生労働省によると、手足口病は子どもを中心に主に夏に流行し、患者の半数を2歳以下が占める感染症です。ほとんどは3〜7日で治る軽い病気ですが、口の痛みで水分がとれなくなったり、まれに髄膜炎などの合併症を起こしたりすることがあります。
そして、手足口病でいちばん誤解されているのが「何日休めばうつらなくなるか」という点です。実は、治ったあとも便からは数週間〜数か月ウイルスが出つづけるため、こども家庭庁のガイドラインは、感染を防ぐために登園を控えることは「有効性が低く」「現実的ではない」とまで書いています。休む日数を決めるのは「うつるかどうか」ではなく、子ども本人の体調なのです。
この記事では、元看護師で2児の母である私「ちなみ」が、手足口病の症状と経過、受診の目安、口が痛くて食べられないときの工夫、保育園はいつから行けるか、大人(ママ・パパ)にうつる?を、厚生労働省・国立健康危機管理研究機構・こども家庭庁の公表資料をもとに整理します。
手足口病とは?手・足・口に水ぶくれができる夏のウイルス感染症
手足口病は、その名のとおり口の中、手のひら、足の裏や足の甲などに、水ぶくれをともなう発疹ができるウイルス感染症です。原因はおもにコクサッキーウイルスA16・A6・A10、エンテロウイルス71などの「エンテロウイルス」の仲間です。
国内では毎年夏を中心に発生し、7月下旬に流行のピークを迎えます。ただ、国立健康危機管理研究機構によると秋から冬にかけても多少の発生があり、夏以外にかからないわけではありません。
何度もかかることがある
原因ウイルスが何種類もあるため、手足口病には何度もかかる可能性があります。一度かかると、そのときのウイルスには免疫ができますが、別のウイルスによる手足口病は防げません。「去年もかかったのに、またなった」というのは珍しいことではないのです。
ワクチンも特効薬もない
手足口病には、国内で承認されたワクチンも、ウイルスに効く特別な治療薬もありません。治療はつらい症状を和らげる対症療法が中心で、多くは3〜7日の自然経過で治ります。国立健康危機管理研究機構は「抗生剤の投与は意味がなく」とも書いています。

手足口病の症状と経過|初期症状から治るまで
- 感染〜発症:潜伏期間は3〜5日程度(こども家庭庁のガイドラインでは3〜6日)
- 発症:口の中、手のひら、足の裏・足の甲に2〜3mmの水ぶくれ。ひじ、ひざ、おしりに出ることも
- 熱:出るのは約3分の1で、出ても38℃以下のことがほとんど
- 回復:3〜7日で消えていく。水ぶくれはかさぶたにならずに治る
初期症状は「口の痛み」と「機嫌の悪さ」で気づくことが多い
小さな子どもは「口が痛い」とうまく言えません。そのため、よだれが急に増える、食べ物や飲み物を口に入れると泣く、哺乳びんやおっぱいを嫌がるといった様子が最初のサインになることがよくあります。こども家庭庁のガイドラインにも、口の中に水ぶくれができて「唾液が増え」るとあります。
口の中の水ぶくれは、破れて小さな潰瘍(口内炎のような状態)になることもあり、これが痛みの原因です。手足の発疹は、国立健康危機管理研究機構によるとかゆみをともなうことはまれとされています。
「軽い手足口病」「発疹が少ない」こともある
手のひらにほんの数個、口の中にだけ、というごく軽い経過の子もいます。厚生労働省も「感染しても発病しないままウイルスを排泄している場合もある」としていて、軽すぎて気づかないまま治っていることもありえます。
コクサッキーA6型では「発疹が大きい」「あとで爪がはがれる」ことも
近年流行することがあるコクサッキーウイルスA6型の手足口病では、水ぼうそうと間違えられるほどの発疹が出たり、治って数週間後に手足の爪がはがれることがあると報告されています。爪がはがれると驚きますが、手足口病のあとに起こりうることとして知られています。気になるときは、かかりつけの小児科で相談してください。
参考 手足口病(詳細版)国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト
受診の目安|何科に行く?こんな様子なら急いで
手のひらや足の裏、口の中に水ぶくれが出たら、一度小児科を受診しておきましょう。手足口病かどうかは、多くの場合発疹の場所や様子から診断されます。保育園に通っている場合は、登園の判断のためにも受診しておくと安心です。
髄膜炎・脳炎のサインを知っておく
手足口病はほとんどが軽く済みますが、厚生労働省は「まれに髄膜炎や脳炎といった中枢神経系の合併症や心筋炎等が起こる場合があるため、経過観察をしっかりと行ってください」としています。国立健康危機管理研究機構は、次のようなときに髄膜炎・脳炎への進展に注意するとしています。
- 元気がない、ぐったりしている
- 頭を痛がる(小さい子は不機嫌に泣き続ける、頭を抱える)
- 何度も吐く
- 高い熱が出ている
- 熱が2日以上続いている
こども家庭庁のガイドラインも、髄膜炎を合併すると発熱・頭痛・嘔吐が見られ、まれに脳炎を合併して、けいれんや意識障害が起こることがあるとしています。けいれんを起こした、呼びかけへの反応がおかしいときは、迷わず救急車を呼んでください。
手足口病の熱は38℃以下のことが多いので、「手足口病なのに熱が高い」「熱が長引く」はいつもと違うサインと考えると覚えやすいです。発熱時の受診の目安は、こちらの記事でまとめています。
赤ちゃんの熱は何度から?38度の対処法と受診の目安、救急車を呼ぶサインを元看護師が解説
脱水のサインも見逃さない
手足口病で受診が必要になる理由として多いのが、口の痛みで水分がとれなくなることです。おしっこの回数が明らかに減った・色が濃い、唇や口の中が乾いている、泣いても涙が少ない、ぐったりしているときは、脱水が進んでいるかもしれません。早めに受診してください。点滴が必要になることもあります。
ちなみ(元看護師)
おうちでのケア|口が痛くて食べられないときの工夫
国立健康危機管理研究機構は、口の中の痛みに対して「刺激にならないよう柔らかめで薄味の食べ物を勧めるが、何よりも水分不足にならないようにすることが最も重要である」としています。食べられなくても、水分さえとれていれば大丈夫、と考えてください。
水分は「少量を何度も」
一度にたくさん飲めなくても、スプーン1杯ずつ、数分おきにでもかまいません。国立健康危機管理研究機構も「水分を少量頻回に与えるよう努める」としています。月齢の低い赤ちゃんは、母乳やミルクを欲しがるだけ。哺乳びんの乳首が痛そうなら、スプーンやコップで少しずつあげてみるのもひとつの方法です。
しみにくい食べ物・しみやすい食べ物
- 食べやすいもの:冷ましたおかゆ、やわらかく煮たうどん、豆腐、茶わん蒸し、プリン、ゼリー、冷たいポタージュ、離乳食ならペースト状のもの
- しみやすいもの:酸っぱいもの(オレンジジュース・柑橘類・トマト)、しょっぱいもの、熱いもの、せんべいなど固くて口の中をこするもの
人肌〜冷たいくらいの温度のほうが、しみにくい子が多いです。数日食べられなくても、水分がとれていれば体重はあとで戻ります。食事は「食べられるものを、食べられるだけ」で十分です。
発疹は基本的にそのままでいい
手足の発疹はかさぶたにならずに自然に消えていくもので、特別な塗り薬は通常必要ありません。国立健康危機管理研究機構は、手足口病の発疹には通常ステロイドの塗り薬は使わないとしています。ほかの病気で処方された塗り薬を自己判断で使うのは避けましょう。おしりに水ぶくれができておむつかぶれと重なっているときは、こすらずにやさしく洗ってください。
おむつかぶれの治し方|原因・カンジダとの見分け方・ワセリンと薬の使い方を元看護師が解説
薬はある?熱さましは使っていい?
日本小児科学会も「有効な治療薬はなく、対症療法が行われる」としているとおり、手足口病そのものを治す薬はありません。熱についても、国立健康危機管理研究機構は「通常解熱剤なしで経過観察が可能」としています。手足口病の熱は高くならないことが多く、日本小児科学会によれば通常1〜3日で下がります。
ただ、口の痛みが強くて水分がとれないときは、痛みをやわらげることが水分補給の助けになります。受診したときに「痛くて飲めない」と具体的に伝えると、お医者さんが状態に合わせて薬を考えてくれます。市販薬や、以前に処方された薬を自己判断で使う前に、医師や薬剤師に相談してください。
お風呂・プールは?
熱がなく元気があれば、お風呂やシャワーで体を清潔にしてかまいません。発疹はこすらず、泡でやさしく洗いましょう。家族への感染が心配なら、手足口病の子は最後に入る、タオルは別にするといった工夫をしておくと安心です。保育園や幼稚園のプールに入れるかどうかは、園の判断に従ってください。

保育園は何日休む?登園のめやすは「普段の食事がとれること」
「手足口病 保育園 何日休む」と検索する方はとても多いのですが、手足口病には「◯日休めばOK」という決まった日数はありません。こども家庭庁の「保育所における感染症対策ガイドライン」は、登園のめやすを次のように示しています。
罹患した場合の登園のめやすは、「発熱や口腔内の水疱・潰瘍の影響がなく、普段の食事がとれること」である。感染拡大を防止するために登園を控えることは有効性が低く、またウイルス排出期間が長いことからも現実的ではない。
こども家庭庁「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)」
つまり、熱が下がって、口の痛みがおさまって、いつもどおり食べられるようになったら登園できる、という考え方です。手足に発疹が残っていても、それだけで休ませる必要はないということになります。国立健康危機管理研究機構も「発疹だけの患児に長期の欠席を強いる必要はなく、また現実的ではない」としています。
なぜ「休ませても意味が薄い」のか
理由は、ウイルスが出つづける期間の長さです。ガイドラインによると、回復後も、せきや鼻水からは1〜2週間、便からは数週〜数か月間ウイルスが排出されます。さらに、感染しても症状が出ないままウイルスを出している子もいます。症状がある数日間だけ休んでも、流行を止める効果はあまり期待できないのです。日本小児科学会も同じく、「流行の阻止を目的とした登校(園)停止は有効性が低く」としています。
「うちの子がうつしてしまうかも」と申し訳なく感じる必要はありません。症状の出ない子からもウイルスは広がるので、流行期の保育園でかかるのは誰のせいでもないのです。
そのかわりにガイドラインが重視しているのが、登園を再開したあとも、排便後やおむつ交換後の手洗いを徹底することです。保育園側も、おむつの便処理の際に手袋をするなどの対応をとることになっています。
- 熱が下がっているか
- 口の痛みがおさまり、普段の食事がとれているか
- 下痢をしていないか……下痢があるうちは控える
- 園の書式……手足口病は「医師の診断を受け、保護者が登園届を記入することが考えられる感染症」。登園届の要否や条件は自治体・園によって異なる
ガイドラインでは、発熱やのどの痛み、下痢がみられる場合や、食べ物が食べられない場合には登園を控え、本人の全身状態が安定してから再開するとしています。目安として、発症から数日〜1週間程度で登園できる子が多いですが、「何日」ではなく「食べられるか」で判断してください。
参考 保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)こども家庭庁
手足口病は大人にうつる?ママ・パパ・きょうだいの感染対策
子どもの看病をしていると、「自分にもうつるのでは」と心配になりますよね。
大人の発症は「あまり多くない」。でもゼロではない
国立健康危機管理研究機構は、「学童以上の年齢層の大半は既にこれらのウイルスの感染(不顕性感染も含む)を受けている場合が多いので、成人での発症はあまり多くなく」と説明しています。大人の多くは、子どものころに(気づかないうちに)感染を済ませているということです。
ただし、原因ウイルスは何種類もあるので、まだかかったことのない型のウイルスなら、大人でもかかります。「大人にうつる確率は◯%」と数字で答えられる公的なデータはありませんが、看病で子どもの便や唾液に触れる機会が多いママ・パパは、手洗いで防ぐのがいちばん確実です。
家庭でできる感染対策
手足口病のおもな感染経路は、飛沫感染(せき・くしゃみ)、接触感染、糞口感染(便に出たウイルスが手を介して口に入る)です。厚生労働省が挙げている予防策は、とてもシンプルです。
- おむつ替えのあとは、流水と石けんでしっかり手を洗う……いちばん大事。治ったあとも数週間は続ける
- 使用済みおむつはビニール袋に入れて口をしばって捨てる
- タオルを共有しない……家族それぞれのタオルか、ペーパータオルに
- 食器やスプーンを共有しない、口移しをしない
- きょうだいがいる場合は、おもちゃを口に入れる時期の子に特に注意
もし大人がかかってのどの痛み、手足の痛みをともなう発疹、熱などが出たら、内科や皮膚科を受診してください。妊娠中の方は、かかりつけの産婦人科にも相談しておくと安心です。
ちなみ(元看護師)

ヘルパンギーナ・突発性発疹・水ぼうそうとの違い
発疹や口の中の水ぶくれが出る病気は、ほかにもあります。見分けのポイントを整理しておきます。
- ヘルパンギーナ……同じ夏かぜの仲間。突然の高い熱(39℃以上)とのどの奥の水ぶくれが特徴で、手足には発疹が出ないのがふつう
- 突発性発疹……38℃以上の高熱が3〜4日続き、熱が下がってから全身に赤い発疹。水ぶくれにはならない
- 水ぼうそう(水痘)……全身に水ぶくれが広がり、かさぶたになる。手足口病の水ぶくれはかさぶたにならない。ワクチンで予防できる
こども家庭庁のガイドラインでも、「微熱程度の熱が出た後に、手の平、足の裏、口の中に水疱が出た」ものを手足口病の典型として、ほかの発疹と区別しています。見分けに迷うときは、自己判断せず受診してください。突発性発疹については、こちらで詳しくまとめています。
突発性発疹の症状と経過|受診するべき?うつる?保育園はいつから?不機嫌の乗り切り方を元看護師が解説
まとめ|何日休むかより「水分」と「食べられるか」
要点を整理します。
- 手足口病は口の中・手のひら・足の裏などに水ぶくれができる夏中心のウイルス感染症。患者の半数は2歳以下
- 熱は約3分の1で、出ても38℃以下が多い。3〜7日で自然に治る
- 原因ウイルスが複数あるので何度もかかることがある。ワクチン・特効薬はない
- 元気がない・頭痛・くり返す嘔吐・高熱・2日以上続く熱は、髄膜炎・脳炎に注意して受診
- いちばん大事なのは水分補給。少量を何度も。食事は食べられるものだけでいい
- 登園のめやすは「発熱や口の水ぶくれの影響がなく、普段の食事がとれること」。決まった日数はない
- 回復後も便から数週〜数か月ウイルスが出る。おむつ替えのあとの手洗いを続ける
- 大人の発症はあまり多くないが、かかったことのない型ならうつる
手足口病は、見た目の水ぶくれに驚きますが、ほとんどの子は1週間ほどで元気になる病気です。看病のあいだに気をつけるのは、発疹の数ではなく、水分がとれているか、おしっこが出ているか、いつもと違う様子がないか。そこさえ見ていれば大丈夫です。
今日できるいちばん小さな一歩は、おむつ替えの場所にハンドソープを1本置くこと。子どもの回復を待つあいだ、ママやパパ自身を守るいちばん確実な方法です。
参考 小児救急電話相談 #8000|こどもの救急(ONLINE-QQ)日本小児科学会
Q手足口病で保育園は何日休めばいいですか?
A.決まった日数はありません。こども家庭庁の「保育所における感染症対策ガイドライン」では、登園のめやすは「発熱や口腔内の水疱・潰瘍の影響がなく、普段の食事がとれること」とされています。回復後も便から数週〜数か月ウイルスが出るため、感染拡大を防ぐ目的で登園を控えることは有効性が低いとされています。熱がある、のどが痛い、下痢がある、食べられないうちは休ませ、全身状態が安定してから登園しましょう。園によって登園届などの決まりがあるので確認してください。
Q手足口病は大人にうつりますか?
A.うつることがあります。ただし国立健康危機管理研究機構によると、学童以上の大半はすでに原因ウイルスに感染したことがあるため、成人での発症はあまり多くないとされています。原因ウイルスは複数あり、かかったことのない型なら大人も発症します。子どもの便や唾液から感染するので、おむつ替えのあとの石けんでの手洗い、タオルや食器を共有しないことが予防の基本です。
Q手足口病の初期症状は?
A.口の中の水ぶくれによる痛みで、よだれが増える、食べ物や飲み物を嫌がる、機嫌が悪いといった様子から気づくことが多いです。続いて手のひら、足の裏や足の甲に2〜3mmの水ぶくれが出ます。熱が出るのは約3分の1で、多くは38℃以下です。
Q口が痛くて何も食べません。どうすればいいですか?
A.食べられなくても、水分がとれていれば心配しすぎなくて大丈夫です。国立健康危機管理研究機構は、何よりも水分不足にならないようにすることが最も重要だとしています。少量を何度もあげ、食べ物は冷ましたおかゆやゼリー、プリンなどしみにくいものを。酸っぱいもの、しょっぱいもの、熱いものはしみやすいので避けましょう。おしっこが半日近く出ていない、ぐったりしているときは受診してください。
Q手足口病に何度もかかることはありますか?
A.あります。手足口病の原因ウイルスはコクサッキーウイルスA16・A6・A10、エンテロウイルス71など複数あり、一度かかったウイルスには免疫ができても、別のウイルスによる手足口病は防げません。
Q手足口病のあと、爪がはがれてきました。
A.コクサッキーウイルスA6型による手足口病では、発症の数週間後に爪がはがれる例が報告されています。手足口病のあとに起こりうることとして知られていますが、気になるときはかかりつけの小児科で相談してください。
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