妊娠中のかゆみ(妊娠性痒疹)——原因・時期別症状・かゆみを和らげる対処法を元看護師が解説

妊娠中の女性が腕のかゆみを感じているシーン

「急に体がかゆい」「特にお腹や太ももがかゆくて眠れない」「これって赤ちゃんに影響があるの?」——妊娠中のかゆみに悩んでいませんか?

妊娠中は皮膚が敏感になり、今まで感じたことのないかゆみが突然現れることがあります。「妊娠性痒疹(にんしんようしん)」や「PUPPP(パップ)」といった妊娠特有の皮膚変化もあり、なんともいえない不快さが続くのはつらいですよね。「薬を使ってもいいの?」「病院に行くべき?」と不安になる方も多いと思います。

私自身も2回の妊娠でどちらも皮膚の乾燥やかゆみを経験しました。特に後期は保湿ケアが欠かせない時期になり、「入浴後すぐに保湿しないと夜中に痒くなる」という生活を送っていました。看護師として妊婦さんから「かゆくて眠れない」という相談を受けてきた経験もあります。

この記事では、妊娠中にかゆみが起こる原因・時期別の特徴・自宅でできる対処法・受診のタイミングまで、元看護師の視点からわかりやすくまとめました。

ちなみ(元看護師)

この記事を読めば、妊娠中のかゆみがなぜ起こるのか・どうすれば楽になるのか・どんなかゆみは受診が必要かがわかります。

妊娠中にかゆみが起こる原因

妊娠中のかゆみには「ホルモン変化による皮膚の乾燥・過敏化」「子宮拡大による皮膚の伸展」「妊娠性痒疹(PUPPP)」「肝機能の変化(まれなケース)」という主な原因があります。これらが単独または複合して起こります。

原因① ホルモン変化による皮膚の乾燥・過敏化

妊娠中はエストロゲン・プロゲステロンをはじめとするホルモンが大きく変動します。これらのホルモン変化は皮膚のバリア機能(皮脂分泌・水分保持能力)に影響を与え、皮膚が乾燥しやすく・かゆみを感じやすい状態になります。

特に体質によっては「もともと乾燥肌ではなかったのに、妊娠してから急に皮膚が乾燥してかゆくなった」というケースが多く見られます。妊娠前に使っていた化粧品・石けん・洗剤でも刺激を感じやすくなることがあり、「急に合わなくなった」という変化が出やすい時期でもあります。

原因② 子宮の拡大による皮膚の伸展(特にお腹・太もも)

妊娠中期〜後期にかけて子宮が大きくなるにつれ、お腹の皮膚は急激に伸ばされます。この皮膚の伸展によって真皮(皮膚の深い層)が引っ張られ、かゆみが生じやすくなります。いわゆる「妊娠線(ストレッチマーク)」が現れる前後のタイミングにかゆみが強くなる方が多いのはこのためです。

皮膚が伸ばされる部位——お腹だけでなく、乳房・太もも・お尻なども——でかゆみを感じやすくなります。「お腹がかゆくて夜中に掻いてしまう」「特に後期になってから急にかゆい」という方はこの伸展が主な原因のことが多いです。

原因③ 妊娠性痒疹・PUPPP——妊娠特有の皮膚疾患

「妊娠性痒疹(にんしんようしん)」は、妊娠中に起こるかゆみを伴う皮膚疾患の総称として使われます。赤いブツブツ(丘疹)・湿疹様の発疹が皮膚に現れ、強いかゆみを伴うのが特徴です。

特によく知られているのが「PUPPP(Pruritic Urticarial Papules and Plaques of Pregnancy)」で、日本語では「妊娠性多形皮疹」とも呼ばれます。PUPPPは主に初産婦・多胎妊娠・急激な体重増加のある方に多く、お腹の妊娠線周辺に赤い蕁麻疹様の発疹・かゆみが現れます。妊娠後期(28週〜)に発症することが多く、出産後に自然に消えることがほとんどです。

PUPPPは母体の不快感(かゆみ)は強いですが、赤ちゃんへの直接的な悪影響は少ないとされています。ただし症状が強い場合は皮膚科または産婦人科に相談することをおすすめします。

原因④ 肝機能の変化(妊娠性胆汁うっ滞)——まれだが見逃せないケース

妊娠中のかゆみの原因としてまれですが重要なのが「妊娠性胆汁うっ滞(ICP:Intrahepatic Cholestasis of Pregnancy)」です。妊娠中に肝臓での胆汁の流れが悪くなり、胆汁酸が血中に蓄積することで全身のかゆみが起こります。

ICPの特徴的なかゆみは「手のひら・足の裏を中心とした強いかゆみ」「夜間に特に強くなる」「発疹がないのにかゆい」という点です。このタイプのかゆみは胎児へのリスク(早産・胎児機能不全など)が指摘されていることから、症状に気づいたら早めに産婦人科で検査を受けることが必要です。

手のひら・足の裏のかゆみは注意
「手のひら・足の裏がかゆい」「発疹はないけれど夜間に全身がかゆくて眠れない」という場合は妊娠性胆汁うっ滞の可能性があります。産婦人科に早めに相談してください。

時期別のかゆみの特徴

妊娠初期(〜15週)——ホルモン変化・乾燥によるかゆみが中心

妊娠初期はまだ子宮が大きくなっていないため、皮膚の伸展によるかゆみは少ない時期です。この時期のかゆみの主な原因は「ホルモン変化による皮膚の乾燥・過敏化」です。

つわりの影響で水分摂取が減ったり、栄養バランスが崩れたりすることで皮膚の状態が悪化することもあります。「妊娠してから急に肌がかさかさする」「今まで使っていたスキンケアが肌に合わなくなった」という変化が起きやすい時期でもあります。

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妊娠中期(16〜27週)——お腹の皮膚伸展によるかゆみが始まる

妊娠中期に入ると子宮が急速に大きくなり、お腹の皮膚の伸展が本格的に始まります。この時期からお腹・乳房・太ももあたりのかゆみを感じ始める方が増えます。

妊娠線が現れ始める20〜24週ごろからかゆみが強くなる方も多く、「お腹がかゆくて困る」という声が増えるのもこの時期です。この時期から保湿ケアを徹底することで、かゆみと妊娠線の悪化を防ぎやすくなります。

妊娠後期(28週〜)——全身に広がりやすく、かゆみがピークになる時期

かゆみが最も強くなるのは妊娠後期(7か月〜)です。子宮が最大限に大きくなり皮膚への伸展が最大となること、PUPPP・妊娠性痒疹の発症が後期に多いことから、かゆみが全身に広がりやすい時期です。

後期は睡眠中にかゆみで目が覚めるほどつらい方もいます。不眠を招くこともあるため、対処法を複数組み合わせて少しでも快適に過ごすことが大切です。

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かゆみを和らげる対処法

妊娠中のかゆみは、正しいケアを続けることでかなり楽になることがほとんどです。以下の対処法を組み合わせて取り組んでみてください。

① 保湿を徹底する——入浴後すぐに塗るのがポイント

妊娠中のかゆみ対策の基本は「保湿」です。皮膚の乾燥を防ぐことでかゆみの多くは軽減できます。入浴後5〜10分以内、まだ皮膚が少し湿っている状態でボディローションや保湿クリームを塗ることが最も効果的です。

特にお腹・乳房・太ももは妊娠線が現れやすい部位でもあるため、重点的に保湿しましょう。市販のボディクリーム・ボディオイル・ワセリン(ヴァセリン)などが使われますが、成分が気になる場合は産婦人科に相談するのが安心です。保湿は「入浴後すぐ」が最重要ですが、日中に乾燥・かゆみを感じたらその都度こまめに塗ることも大切です。

② 入浴温度を下げる・長湯を避ける

熱いお湯での入浴は皮膚の皮脂・水分を奪い、かゆみを悪化させます。妊娠中は38〜40℃程度のぬるめのお湯で、10〜15分程度の入浴を心がけましょう。

また、刺激の強い石けん・ボディソープは皮膚のバリア機能を壊しやすいです。保湿成分が含まれたマイルドな洗浄料(低刺激・無香料タイプ)に切り替えると、かゆみが和らぐ方も多いです。こすりすぎず、泡で優しく洗うことも大切です。

③ 刺激の少ない素材の衣類を選ぶ

化学繊維(ポリエステル・ナイロンなど)の衣類は摩擦・静電気でかゆみを悪化させることがあります。妊娠中のかゆみが気になる時期は、綿100%や竹繊維など通気性が良く肌への摩擦が少ない素材の下着・マタニティウェアを選ぶとよいです。

また、体が熱くなるとかゆみが強くなる傾向があります。寝るときも締め付けが少なく通気性のよいパジャマを選び、部屋を涼しく保つことで夜間のかゆみを軽減しやすくなります。

④ 室内の乾燥対策(加湿器・エアコン管理)

エアコンを使う季節は室内が乾燥しやすく、皮膚のかゆみを悪化させます。加湿器を使って室内湿度を50〜60%に保つことを心がけましょう。エアコンの風が直接当たる場所は特に乾燥しやすいため、吹き出し口の向きを調整したり、扇風機などで空気を循環させるとよいです。

⑤ 掻かない——「かゆみ→掻く→悪化」の悪循環を断つ

かゆみを感じると掻きたくなりますが、掻くことで皮膚のバリアがさらに壊れ、かゆみを引き起こす物質(ヒスタミンなど)が放出されてかゆみが増す悪循環に陥ります。「掻けば掻くほどかゆくなる」というのはこの仕組みのためです。

「どうしても掻いてしまう」という場合の代替手段として、保冷剤や冷たいタオルを当てて冷やす・その部位に保湿剤を塗るという方法が効果的です。冷やすことでかゆみの神経伝達が一時的に抑えられ、掻きたい衝動をやり過ごせることがあります。爪は短く切っておくことも大切です。

ちなみ(元看護師)

私は妊娠後期に寝ている間に無意識に掻いてしまうことがありました。就寝前に保湿をたっぷり塗って、薄手の長袖を着て寝るようにしてから掻き跡が減りましたよ。冷やしタオルをすぐ使えるよう枕元に置いておくのもおすすめです。
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市販薬・塗り薬は妊娠中に使えるか?

妊娠中の薬の使用については「必ず産婦人科医または薬剤師に確認してから使う」が大原則です。自己判断での使用は避けましょう。

保湿剤(ワセリン・ヒルドイドなど)は比較的使いやすい

ワセリン(ヴァセリン)は非常に低刺激な保湿剤で、妊娠中でも一般的に使いやすいとされています。また「ヒルドイド(ヘパリン類似物質)」は保湿効果が高く、産婦人科で処方されることもあります。

市販の保湿クリームは成分が様々なため、「妊娠中に使えるか」が気になる場合は産婦人科または薬剤師に確認してから使うと安心です。「天然成分だから安全」とは限らないため、成分を確認する習慣をつけましょう。

ステロイド外用薬は自己判断を避け医師に相談を

ステロイドの外用薬(塗り薬)は、皮膚科・産婦人科で処方されることがあります。弱〜中程度の強さのステロイド外用薬は適切に使用すれば妊娠中でも一定の安全性が確認されていますが、使用部位・量・期間などについては必ず医師の指示に従ってください。市販のステロイド外用薬を自己判断で大量に・長期間使うことは避けましょう。

抗ヒスタミン薬の内服は自己判断を避ける

かゆみを抑える抗ヒスタミン薬の内服は、成分・妊娠時期によって安全性の評価が異なります。市販の抗ヒスタミン薬(アレグラ・クラリチンなど)を自己判断で服用することは避け、症状が強い場合は必ず産婦人科または皮膚科に相談してください。

妊娠中の薬について
妊娠中のかゆみへの薬の使用は「産婦人科に相談する」が最も安全な選択です。「皮膚科を受診したい」という場合も、現在妊娠中であること・妊娠週数を必ず医師に伝えてください。妊娠週数によって使える薬が変わることがあります。

こんなかゆみは要注意——産院受診のサイン

妊娠中のかゆみのほとんどは皮膚の乾燥・伸展によるもので、赤ちゃんへの直接的な影響は少ないです。しかし以下のような場合は早めに産院に連絡・受診してください。

手のひら・足の裏のかゆみ(妊娠性胆汁うっ滞の可能性)

手のひらや足の裏を中心とした強いかゆみ・発疹がないのに全身がかゆい・夜間に特に悪化するかゆみは「妊娠性胆汁うっ滞(ICP)」が疑われます。ICPは胎児へのリスク(早産・胎児機能不全)が報告されており、血液検査(肝機能・胆汁酸)で確認が必要な状態です。自己判断せず、産婦人科に早めに相談してください。

赤い発疹・ブツブツを伴う強いかゆみが急速に広がる場合

お腹の妊娠線周辺・体幹・四肢に赤いブツブツや蕁麻疹様の発疹が広がり、強いかゆみを伴う場合はPUPPPや妊娠性痒疹の可能性があります。これらは赤ちゃんへのリスクは低いとされていますが、ステロイド外用薬や抗ヒスタミン薬による治療が必要なこともあります。皮膚科または産婦人科に相談してください。

かゆみとともに黄疸・濃い尿・倦怠感がある場合

かゆみとともに皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)・尿が濃い茶色になる・強い倦怠感・食欲不振がある場合は、肝臓・胆道系の疾患が疑われます。このような症状が出たらすぐに産婦人科に連絡してください。

以下の症状があれば産院に連絡を
  • 手のひら・足の裏のかゆみ(発疹なし)
  • 夜間に特に強いかゆみで眠れない状態が続く
  • 赤い発疹・ブツブツが急速に体に広がる
  • かゆみに加えて黄疸・濃い尿・強い倦怠感がある
  • かゆみと強い腹痛・発熱が同時にある

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まとめ

妊娠中のかゆみ(妊娠性痒疹)は、ホルモン変化・皮膚の乾燥・子宮拡大による皮膚の伸展・妊娠特有の皮膚疾患(PUPPP)など複数の原因が重なって起こります。多くは生理的な変化によるものですが、まれに妊娠性胆汁うっ滞(ICP)のような胎児リスクを伴う疾患が隠れていることもあるため、かゆみの種類と受診サインを知っておくことが大切です。

この記事のポイントまとめ
  • 主な原因:ホルモン変化による皮膚乾燥・子宮拡大による皮膚伸展・妊娠性痒疹(PUPPP)・まれに妊娠性胆汁うっ滞(ICP)
  • 時期別特徴:初期は乾燥・ホルモン変化が中心、中期から皮膚伸展が加わり、後期に最もかゆみが強くなりやすい
  • 対処法の基本:保湿を徹底(入浴後すぐ)・ぬるめのお湯での入浴・低刺激素材の衣類・室内保湿・掻かずに冷やす
  • 要注意サイン:手のひら・足の裏のかゆみ(ICP)・急速に広がる発疹・黄疸を伴う場合は産院に連絡
  • 薬について:市販薬・塗り薬は自己判断を避け、必ず産婦人科医・薬剤師に相談を

「かゆくて眠れない」「掻きすぎて皮膚が傷ついた」という状態が続いているなら、一人で悩まず産婦人科や皮膚科に相談してください。妊娠中のかゆみは正しいケアの積み重ねで楽にできることが多いです。赤ちゃんに会えるその日まで、できる工夫をしながら乗り越えていきましょう。

よくある質問

Q妊娠中のかゆみはいつから始まりますか?

A.ホルモン変化による皮膚の乾燥・過敏は妊娠初期(4〜8週ごろ)から感じる方もいますが、お腹の皮膚伸展によるかゆみは中期(16〜24週ごろ)から始まり、後期(28週〜)に最も強くなることが多いです。妊娠性痒疹(PUPPP)も後期に多く発症します。

Q妊娠中のかゆみは赤ちゃんに影響しますか?

A.皮膚の乾燥・伸展によるかゆみやPUPPPは、赤ちゃんへの直接的な影響は少ないとされています。ただし手のひら・足の裏のかゆみ(発疹なし)や夜間に特に強い全身のかゆみは、妊娠性胆汁うっ滞(ICP)の可能性があり胎児リスクが報告されているため、早めに産婦人科に相談してください。

Q市販のかゆみ止め(抗ヒスタミン薬)を飲んでもいいですか?

A.妊娠中の抗ヒスタミン薬の内服は自己判断を避け、必ず産婦人科医または薬剤師に確認してから使用してください。成分や妊娠週数によって安全性の評価が異なります。症状が強い場合は産婦人科に相談して適切な薬を処方してもらうのが最も安全です。

Q妊娠中のかゆみはいつまで続きますか?

A.多くの場合、出産後に子宮が縮小し皮膚への伸展がなくなるにつれて自然に改善します。PUPPPも出産後に消えることがほとんどです。ただし産後もホルモン変化が続くため、授乳中は皮膚の乾燥が続くことがあります。

Q妊娠線の予防と保湿は同じケアでいいですか?

A.はい、基本的に同じ保湿ケアが両方に有効です。お腹・乳房・太ももへの丁寧な保湿(特に入浴後すぐ)は、皮膚伸展によるかゆみを和らげると同時に、妊娠線の悪化予防にもつながります。専用クリームがなくても、保湿効果の高いボディクリームやワセリンで十分です。

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