「里帰りはしないつもり。でも、退院してすぐの1か月をひとりで乗り切れる気がしない」——妊娠中期から後期にかけて、多くの方がここで立ち止まります。そして自然と、こう考えはじめるはずです。「夫に、産後すこし休んでもらえないだろうか」と。
そのための制度が産後パパ育休(正式名称:出生時育児休業)です。子どもが生まれてから8週間のあいだに、4週間(28日)まで取れる休みで、これまでの育児休業とはまったく別の枠として用意されています。2022年10月に始まった、比較的新しい制度です。
この記事では、元看護師で2児の母である私「ちなみ」が、産後パパ育休とは何か、1歳までの育児休業と何が違うのか、話題になっている「手取り10割」は本当なのか、そして28日をいつ・どう使うのがいちばん助かるのかを、厚生労働省の公表内容と育児・介護休業法の条文にもとづいて順番に整理しました。
先に結論だけ書いておきます。産後パパ育休は、会社に制度が書かれていなくても法律にもとづいて取得できます。申し出は休業の2週間前まででよく、2回に分けることもできます。そして夫婦それぞれが14日以上休むと、給付の率が80%になり、社会保険料の免除と非課税が重なって手取りではほぼ10割相当になります。
産後パパ育休とは?出生後8週間のなかで28日まで取れる休み
2022年10月に始まった「産後のための育休」
厚生労働省は産後パパ育休を、「産後8週間以内に4週間(28日)を限度として2回に分けて取得できる休業で、1歳までの育児休業とは別に取得できる制度」と説明しています。2022年(令和4年)10月1日から適用されました。
ポイントは「別に」という部分です。産後パパ育休を28日使い切ったとしても、そのあとで1歳までの育児休業を取る権利はまるごと残ります。産後パパ育休で減るものは、何もありません。
法律上の名前は出生時育児休業といいます。給付金の書類やハローワークの案内では、ほぼこの正式名称のほうで出てきます。「産後パパ育休」は、制度を広めるための通称だと思ってください。
対象になるのは「産後休業をしていない労働者」
厚生労働省は対象者を「産後休業をしていない労働者(日々雇用を除く)」としています。「パパ育休」という通称から男性だけの制度に見えますが、条文には性別の限定がありません。
ここは少し説明が必要です。出産した女性は、産後8週間のあいだは産後休業に入っています。産後休業をしている期間は産後パパ育休を取りようがないので、実際に使うのはほとんどが父親側、という形になっているわけです。ただし養子を迎えた場合や、特別養子縁組の場合など、産後休業をしていない女性が使うケースもあります。
対象になる子どもは出生後8週間以内の子です。実子でも養子でもかまいません。事実婚の妻の子について男性が取得する場合は、申し出の時点で認知していることが必要とされています。
パート・契約社員でも取れます
「うちの夫は契約社員だから無理かも」と心配される方が多いのですが、期間を定めて雇用されている方も対象です。条件は次のひとつだけです。
- 子の出生日または出産予定日のいずれか遅い方から8週間を経過する日の翌日から、6か月を経過する日までに、労働契約(更新される場合は更新後の契約)の期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと
読みにくい条文ですが、言いかえると「産後8週間のあと、さらに半年くらい先まで契約が続きそうなら対象」ということです。「更新されないことが明らかでない」という二重否定なので、はっきり雇い止めが決まっている人以外は対象になると考えてください。
ただし、会社が労使協定を結んでいる場合にかぎって、次の方は対象外にできるとされています。
- 継続雇用1年未満の労働者
- 申出の日から8週間以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者
- 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
「労使協定を結んでいる場合にかぎって」がとても大事なところです。協定がなければ、入社1年未満でも取得できます。転職したばかりで不安な方は、まず就業規則と労使協定を確認してみてください。
会社の就業規則に書かれていなくても取れます
厚生労働省は育児休業について、「仮に、お勤め先の就業規則に育児休業に関する規定がなくても、法律に基づき育児休業を取得することができ、会社側は休業の申出を拒めません」とはっきり書いています。産後パパ育休も同じ育児・介護休業法の制度です。
ここは、夫が「うちの会社にそんな制度ないと思う」と言ったときの、いちばんの後ろ盾になります。制度は会社が用意するものではなく、法律が労働者に与えているものです。
ちなみ(元看護師)

産後パパ育休と育児休業の違いを表で整理する
いちばん混乱しやすいのがここです。「産後パパ育休」と「育児休業」は名前が似ていますが、別の制度で、ルールがそれぞれ違います。まず全体像を表にします。
| 産後パパ育休(出生時育児休業) | 育児休業 | |
|---|---|---|
| 取れる期間 | 子の出生後8週間以内 | 原則、子が1歳になるまで |
| 取れる日数 | 通算4週間(28日)まで | 期間内なら上限なし |
| 分割できる回数 | 2回(1回目にまとめて申し出る) | 原則2回 |
| 申出の期限 | 原則2週間前まで | 原則1か月前まで |
| 休業中に働けるか | 労使協定があれば働ける | 原則として働かない |
| 給付の率 | 67%(上乗せで80%) | 67%→181日目から50%(上乗せで80%) |
申出の期限が「2週間前」と短い
育児休業は原則1か月前までの申し出が必要ですが、産後パパ育休は休業開始予定日の2週間前まででかまいません。
これは、出産という日付が読めない出来事に合わせた設計です。予定日どおりに生まれるとはかぎらないので、期限を短くして直前でも動けるようにしてあります。
ただし例外があります。厚生労働省は「労使協定を締結している場合は最大1か月前まで」と注意書きを添えています。つまり、会社が労使協定で期限を延ばしている可能性があるということです。ここは必ず就業規則で確認してください。
逆に、会社が労働者に有利な条件(たとえば期限を1週間前にする)を設定することは差し支えないともされています。法律の2週間は「これより厳しくしてはいけない」という下限だと考えてください。
2回に分けられるが、1回目にまとめて申し出る
産後パパ育休は子ども1人につき2回まで分割できます。ここに、見落とされやすい大事な決まりがあります。
これは制度のなかでもとくに実害が出やすいところです。「まず2週間取ってみて、様子を見て追加しよう」という自然な考え方が、そのままだと通りません。使うかどうか決めきれなくても、2回分の枠で申し出ておくのが安全です。
なお、会社が就業規則で「2回分割して休業する場合にまとめて申し出なくてもよい」と定めることは、労働者に有利な取り扱いとして認められています。会社によってはここが緩和されているかもしれません。
休業中に働ける(ただし労使協定がある場合だけ)
産後パパ育休のいちばん特徴的なところが、これです。厚生労働省は「労使協定で、産後パパ育休期間中に就業させることができると定められた労働者は、申し出ることにより一定の条件のもと就業することができます」と説明しています。
「どうしても外せない打ち合わせが1日だけある」「引き継ぎのために週1回だけ出たい」という事情に対応するための仕組みです。育児休業のほうにはこの仕組みがありません。
働ける量には、はっきりした上限があります。育児・介護休業法の施行規則は、次の3つをすべて満たすことを求めています。
- 就業する日数の合計が、休業期間中の所定労働日数の2分の1以下であること(端数は切り捨て)
- 就業する日の労働時間の合計が、休業期間中の所定労働時間の合計の2分の1以下であること
- 休業の開始予定日または終了予定日を就業日にする場合、その日の労働時間はその日の所定労働時間より短いこと
そして手続きの順番も決まっています。労働者が「働ける日と時間帯」を書面で申し出る → 会社がそのなかから働いてほしい日を提示する → 休業開始予定日の前日までに労働者が同意する、という流れです。
つまり会社が一方的に「この日出てきて」と命じることはできません。労働者が最初に出した範囲の外からは選べませんし、最後に同意するかどうかも労働者が決めます。ここは知っておくと心強い部分だと思います。
1歳までの育休とは別枠。合わせて最大4回に分けられます
2022年10月の改正で、育児休業そのものも男女とも2回に分割できるようになりました。ここに産後パパ育休の2回が乗るので、父親の場合は産後パパ育休2回+育児休業2回=最大4回に分けて休めます。
これがなぜ大事かというと、母親の職場復帰のタイミングに合わせてバトンを渡せるからです。「退院直後に2週間」「里帰りから戻るときに2週間」「妻の復職直前に1か月」といった組み立てができます。
育児休業給付金はいくらもらえる?67%と50%の計算方法・いつ振り込まれるかを元看護師が解説
「手取り10割」は本当?2つの給付金のしくみ
ここ2年ほどで急に「育休で手取り10割」という言葉を見かけるようになりました。結論から言うと本当です。ただし条件があります。数字を分解していきます。
まず67%の「出生時育児休業給付金」
産後パパ育休を取った雇用保険の被保険者で、一定の要件を満たす方には、休業開始時賃金日額の67%相当額の出生時育児休業給付金が支給されます。
「休業開始時賃金日額」は、厚生労働省の説明では「原則として、育児休業開始前6か月間の総支給額(保険料等が控除される前の額。賞与は除きます)を180で除した額」です。額面の日給のようなものだと考えてください。
受け取るための条件は、育児休業給付金と同じ考え方です。休業を開始した日の前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月(ない場合は就業した時間数が80時間以上の月)が12か月以上あることが必要になります。
13%の上乗せで合計80%になる
2025年(令和7年)4月から出生後休業支援給付金が始まりました。厚生労働省の説明はこうです。
「子の出生直後の一定期間内に被保険者とその配偶者の両方が14日以上の育児休業を取得した場合は、最大28日間、休業開始時賃金日額の13%相当額の出生後休業支援給付金が支給され、出生時育児休業給付金と合わせて給付率が80%(手取りで10割相当)となります」
67%+13%=80%。ここまでが給付の話です。
なぜ80%で「手取り10割相当」になるのか
80%なのに10割、というのは一見おかしく感じます。からくりは、引かれるものが消えることにあります。厚生労働省は次の3つを挙げています。
- 休業中は申し出により健康保険・厚生年金保険の保険料が免除される
- 勤務先から給与が支給されない場合は雇用保険料の負担がない
- 育児休業等給付は非課税(所得税がかからない)
ふだんの給料は、額面から社会保険料と所得税が引かれて手取りになります。ざっくり言えば額面の8割前後が手取りという方が多いはずです。給付金は、その引かれる分が最初からないので、額面の80%がそのまま手元に残る。結果として、ふだんの手取りとほぼ同じになる、という理屈です。
条件は「両親ともに14日以上」。上乗せは最大28日分
13%の上乗せを受けるには、夫婦それぞれが14日以上休む必要があります。ここが実務でいちばん効いてくる数字です。
母親側は、産後休業が明けたあとに育児休業を14日以上取っていれば条件を満たします。多くの方は産後休業のあとそのまま育休に入るので、母親側はほぼ自動的にクリアします。問題になるのは父親側で、「13日で終わらせると上乗せが1円もつかない」という落とし方をします。
配偶者の14日以上が判定される期間も決まっています。「子の出生日または出産予定日のうち早い日」から「子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日」までのあいだに、通算14日以上の育児休業を取ったかどうかで見ます。
そして上乗せがつくのは最大28日分です。産後パパ育休の上限と同じ日数なので、産後パパ育休を28日フルで取れば、上乗せ枠も使い切れるという対応になっています。
配偶者の育休が条件にならない場合もあります
「相手が自営業だから、両親ともに、は無理」と諦めてしまう方がいますが、例外が用意されています。厚生労働省は、次のような場合には配偶者の育児休業を要件としないとしています。
- 配偶者がいない
- 配偶者が被保険者の子と法律上の親子関係がない
- 被保険者が配偶者から暴力を受け別居中
- 配偶者が無業者
- 配偶者が自営業者やフリーランスなど、雇用される労働者でない
- 配偶者が産後休業中
- 上記以外の理由で配偶者が育児休業をすることができない
太字にした2つは、該当する方が多いはずです。とくに「配偶者が産後休業中」は重要で、父親が産後8週間のうちに産後パパ育休を取る場合、母親はまだ産後休業中であることがほとんどです。この場合は母親の育休取得を待たずに、父親だけで条件を満たせます。
判定がややこしいので、厚生労働省は要件を確認できる簡易診断のページを用意しています。夫婦の状況を入れていくと、対象になるかどうかがわかるようになっています。
休業中に働くと、給付金が減ることがあります
さきほど「産後パパ育休中は働ける」と書きましたが、働くと給付金の側に影響が出ます。労働法上の上限(所定労働日数の2分の1以下)と、給付金の上限は別物なので、ここは分けて理解してください。
厚生労働省のQ&Aは、給付金の側の上限をこう示しています。「出生時育児休業給付金の支給対象期間中、最大10日(10日を超える場合は就業した時間数が80時間)まで就業することが可能です。休業期間が28日間より短い場合には、その日数に比例して短くなります」
| 休業する日数 | 給付金を受けながら働ける上限 |
|---|---|
| 28日間 | 最大10日(10日を超える場合は80時間) |
| 14日間 | 最大5日(5日を超える場合は40時間) |
| 10日間 | 最大4日(4日を超える場合は約28.57時間) |
この上限を超えて働くと、その休業は給付金の対象そのものから外れます。さらに、上限内であっても賃金が支払われた場合には減額があります。厚生労働省は「休業開始時賃金日額×支給日数の80%以上の賃金が支払われている場合は、出生時育児休業給付金の支給額は0円となります」としています。
ちなみ(元看護師)

何日取るのがいい?28日の使い方を考える
制度がわかったら、次は「で、実際どうする?」です。ここからは数字と、産後の体の実際を合わせて考えていきます。
男性の育休は、いま4割が取っています
厚生労働省の「令和6年度雇用均等基本調査」によると、男性の育児休業取得率は40.5%でした。令和5年度は30.1%だったので、1年で10ポイント以上伸びています。ちなみに女性は86.6%です。
「まだ少数派だから言い出しにくい」という感覚は、数字の上ではもう合っていません。4割です。職場に前例がないとしても、世の中の流れとしては珍しいことではなくなりました。
ただし期間は短め。2週間未満が約4割
同じ調査で、取得期間のほうも公表されています。男性は約4割が2週間未満で、女性は9割以上が6か月以上。取得率は伸びましたが、長さはまだ追いついていません。
そしてここが、さきほどの13%の話と正面からぶつかります。2週間未満=14日未満だと、出生後休業支援給付金の条件を満たしません。「10日ほど休んだ」という、いちばんありそうな取り方が、上乗せの対象外になってしまうのです。
2回に分ける使い方の例
28日を2回に分けられる利点を、具体的に考えてみます。よくあるのは次の3パターンです。
| パターン | 1回目 | 2回目 | 向いている家庭 |
|---|---|---|---|
| まとめて取る | 退院日から28日 | – | 里帰りをしない・頼れる人が近くにいない |
| 前後に分ける | 退院前後に14日 | 里帰りから戻るときに14日 | 里帰りをするが、帰宅後がいちばん不安 |
| 出産時と1か月健診 | 出産予定日前後に7日 | 1か月健診の前後に21日 | 上の子がいて、出産時の付き添いが必要 |
真ん中のパターンだけ注意が必要です。産後パパ育休が使えるのは出生後8週間以内までなので、里帰りが長引いて8週間を過ぎると、2回目は産後パパ育休ではなく通常の育児休業として取ることになります。日程を組むときは、8週間のラインをカレンダーに引いておいてください。
いちばん下のパターンで気をつけたいのは、1回目が7日だと、その回だけでは14日に届かない点です。ただし出生後休業支援給付金は「通算して14日以上」で判定されるので、2回の合計が14日を超えていれば条件は満たせます。
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産後の体から見ると、いつがいちばん大変か
ここは元看護師として、いちばんお伝えしたいところです。日程を「会社の都合」だけで決めると、ほんとうに人手が要る時期からずれてしまうことがあります。
産後の体は、おおよそ次のような経過をたどります。
- 産後0〜1週(入院中)……病院にスタッフがいるので、家事の心配はいちばん少ない時期
- 産後1〜3週(退院直後)……体はまだ産褥期の真っただ中。悪露が続き、会陰の痛みや後陣痛も残る。授乳は2〜3時間おき。ここがいちばん人手が要ります
- 産後4〜6週……体は少しずつ戻るが、睡眠不足の蓄積がピークに近づく
- 産後6〜8週……1か月健診が済み、少し外出できるようになる
退院直後の2〜3週間が、いちばん助けが要る時期です。ところが現実には「出産予定日に合わせて休みを取ったら、実際は予定日を過ぎて生まれて、入院中に休みが終わってしまった」という取り方になりがちです。
ですから、日程を決めるときの基準はひとつだけにしてください。「出産日」ではなく「退院日」を起点に考えることです。出産予定日はずれますが、退院日から2〜3週間という組み立てなら、どこにずれてもいちばん必要な時期をカバーできます。
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パパ・ママ育休プラスと組み合わせると1歳2か月まで
両親そろって取ると、期限が2か月延びる制度
もうひとつ知っておきたいのがパパ・ママ育休プラスです。厚生労働省は「両親ともに育児休業する場合で、一定の要件を満たした場合には、育児・介護休業法の対象となる子の年齢が、原則1歳に満たない子から原則1歳2か月に満たない子に延長される特例制度」と説明しています。
ここで勘違いしやすいのですが、1人あたりの休める長さが2か月増えるわけではありません。取得できる期間は1年間(女性は出生日以後の産前・産後休業期間と合わせて1年間)のままです。「締め切りが2か月うしろにずれる」制度だと考えてください。
満たすべき3つの条件
原則として1歳2か月に満たない子を養育する男女の労働者(日々雇用を除く)で、次の3つをすべて満たす場合が対象です。
- 配偶者が、子の1歳に達する日以前において育児休業(産後パパ育休を含む)をしていること
- 本人の育児休業開始予定日が、子の1歳の誕生日以前であること
- 本人の育児休業開始予定日が、配偶者の育児休業(産後パパ育休を含む)の初日以降であること
3つ目がわかりにくいので補足します。「あとから取りはじめるほうが、延長の恩恵を受ける」という意味です。母親が先に育休に入り、父親があとから入る場合、延長の対象になるのは父親のほうになります。
この制度が活きるのは、母親の保育園入園までのすき間を埋めたいときです。4月入園に合わせて母親が復職し、そこから2か月だけ父親が引き受ける、といった使い方ができます。
なお、パパ・ママ育休プラスにも労使協定による除外があります。継続雇用1年未満の労働者、申出の日から1年以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者の3つで、産後パパ育休とほぼ同じ形です。
参考 パパ・ママ育休プラス|育児休業制度特設サイト厚生労働省

申請の流れと、会社に伝えるタイミング
まず妊娠を会社に伝える。そこから会社に義務が生じます
意外と知られていないのが、ここです。厚生労働省は「労働者が事業主に、本人又は配偶者が妊娠又は出産したことを申し出たときは、事業主は申し出た労働者に対して個別に育児休業制度等について周知しなければなりません。さらに、事業主は、育児休業及び産後パパ育休の取得意向を確認するために、面談等の措置を講じなければなりません」としています。
つまり夫が「妻が妊娠しました」と会社に伝えた時点で、会社の側に説明する義務と、意向を確認する義務が発生します。自分から制度の詳細を切り出さなくても、会社から説明が来るのが本来の形です。
もし伝えても何の案内もないようなら、「育休の意向確認って、会社からしてもらえるものだと聞いたのですが」と一言聞いてみるのが、角が立たない切り出し方だと思います。
2週間前までに書面で申し出る
申し出は書面等で行います。社内に様式があればそれを使い、なければ厚生労働省が公開している様式例を使えます。申し出を受けた会社は、休業の開始予定日と終了予定日などを、速やかに書面等で労働者に通知しなければなりません。
口頭で「休みます」と伝えただけだと、記録が残りません。必ず書面かメールなど、形の残るやりとりにしてください。
予定日より早く生まれたときは1週間前まででOK
2週間前の期限には救済があります。厚生労働省は「出産予定日よりも早く子が出生した場合等は、休業開始予定日の1週間前までに申し出ることで、希望どおりの日から休業することができます」としています。
早産で予定が崩れても、1週間前まで巻き戻せるということです。ここは安心材料として覚えておいてください。
給付金の申請は、原則として会社が行います
出生時育児休業給付金と出生後休業支援給付金の手続きは、原則として勤務先がハローワークに対して行います。本人がすることは、会社から渡される申請書に記入し、必要な書類(母子健康手帳の写しなど)を添えて返すことが中心です。
出生時育児休業給付金は産後パパ育休が終わってから申請するので、休みに入ってすぐ振り込まれるわけではありません。休業が終わり、会社が手続きをして、ハローワークが決定してから振り込みという順番になります。お金が入るまでには時間がかかると見込んでおいてください。
取る前に、夫婦で決めておきたいこと
「とるだけ育休」にしないために
制度の話ばかりしてきましたが、最後にいちばん現実的な話をさせてください。休みを取ってもらったのに、かえって負担が増えたという声は、残念ながら少なくありません。
原因はたいてい同じです。「何をするか」を決めないまま休みに入るからです。産後のお母さんは、痛みと睡眠不足と授乳のなかにいます。そこで「何かすることある?」と聞かれても、指示を出す余力がありません。
ですから、休みに入る前に担当を固定してしまうことをおすすめします。その場の判断をなくすのが目的です。
- 夜間の授乳……何時から何時までをどちらが見るか(ミルクや搾母乳を使うなら、その時間帯も決める)
- 沐浴……担当をどちらかに固定する
- 買い物・食事……作るのか、買うのか、宅配を頼むのか
- 上の子……送迎と寝かしつけの担当
- 連絡・手続き……出生届、児童手当、健康保険の加入手続きの担当
- お母さんがひとりで休む時間……1日に何時間、いつ取るか
いちばん下の項目を、ぜひ入れてください。お母さんがまとまって眠れる時間を、あらかじめ予定として押さえておくことです。産後のしんどさは、断片的な睡眠が積み重なって起こります。「空いたら休む」ではなく「この時間は休む」と決めておくほうが、確実に効きます。
ワンオペ育児とは?しんどい理由と場面別の乗り切り方・使える支援を元看護師が解説
家計の「谷」がいつ来るかを書き出す
給付率が80%でも、振り込みまでの時間差は残ります。給料が止まってから給付金が入るまでのあいだ、預金を取り崩す期間が必ずできます。
ですから、日程を決めたらカレンダーに「最後の給料日」と「給付金の見込み振込日」を書き込んでみてください。そのあいだの月に何を支払う予定があるか(住民税、保険料、クレジットカードの引き落とし)を並べると、谷の深さが見えます。
出産育児一時金や出産手当金の入る時期と重ねて考えると、全体の資金繰りが見通せます。産前産後のお金の流れは、別の記事で順を追って整理しています。
産休中の給料はどうなる?出産手当金の計算方法・いつ振り込まれるかを元看護師が解説
職場への伝え方は、早いほうが選択肢が増えます
申し出の期限は2週間前ですが、実際の職場では、引き継ぎができるかどうかで空気が変わります。期限ぎりぎりに出すのは権利としては問題ありませんが、人員の手当てが間に合わないと、休みづらさにつながってしまいます。
現実的なおすすめは、安定期に入ったころに「妻が妊娠しました」と伝える → 会社から制度の説明と意向確認を受ける → 妊娠後期に日程を確定して正式に申し出るという三段階です。制度上の義務が会社側にある以上、最初の一言さえ出せれば、あとは向こうから進んでいきます。
妊娠したらまず何をする?産婦人科・母子手帳・仕事報告まで元看護師が解説
産後の28日を越えたあとの働き方も、早めに見ておくと計画が立てやすくなります。育休から復職して時短勤務にすると、2歳未満の子を育てているあいだは育児時短就業給付金として賃金の10%が支給されます。時短勤務は父親も使える制度で、会社には3歳未満の子を育てる労働者に1日原則6時間の措置を用意する義務があります。給料がいくらになるかと必要な手続きを整理した「時短勤務の給料はいくらになる?」もあわせてどうぞ。
時短勤務の給料はいくらになる?育児時短就業給付金10%の計算と年金を減らさない手続きを元看護師が解説
まとめ|28日をどこに置くかで、産後の1か月は変わります
最後に要点を整理します。
- 産後パパ育休は、出生後8週間のなかで28日まで。1歳までの育児休業とは別枠で、使っても育休の権利は減らない
- 申し出は2週間前まで。予定日より早く生まれたときは1週間前まででよい
- 2回に分けるなら、1回目の申し出でまとめて出す。あとからの追加は原則できない
- 就業規則に書かれていなくても、法律にもとづいて取得でき、会社は拒めない
- 給付は67%+13%=80%。社会保険料免除と非課税が重なり手取り10割相当になるが、上限額と住民税には注意
- 13%の上乗せの分かれ目は14日。10日では対象外になる
- 配偶者が産後休業中・自営業などの場合は、相手の育休がなくても条件を満たせる
- 日程は「出産日」ではなく「退院日」を起点に。退院直後の2〜3週間がいちばん人手が要る
産後パパ育休は、夫婦が「休める権利」を持っているという話であると同時に、産後のいちばん危うい時期を、ふたりで越えるための道具です。数字と日程を先に決めてしまえば、あとは赤ちゃんに集中できます。
今日できるいちばん小さな一歩は、カレンダーに出産予定日と、その8週間後の日付を書き込むことです。使える枠の全体像が見えると、夫婦で話し合うときの土台ができます。そこから「いつ、何日」を決めていってください。
Q産後パパ育休は、会社に制度がなくても取れますか?
A.取れます。厚生労働省は、就業規則に育児休業に関する規定がなくても法律にもとづいて取得でき、会社側は休業の申出を拒めないとしています。産後パパ育休も同じ育児・介護休業法の制度です。まずは人事・総務に書面で申し出てください。
Q産後パパ育休と育児休業は、両方取れますか?
A.両方取れます。産後パパ育休は1歳までの育児休業とは別の枠なので、28日を使い切っても育児休業の権利は残ります。育児休業も男女それぞれ2回に分割できるため、父親は合わせて最大4回に分けて休めます。
Q「手取り10割」になるには、何日休めばいいですか?
A.夫婦それぞれが14日以上休むことが条件です。13%の上乗せ(出生後休業支援給付金)は最大28日分なので、28日フルで取れば上乗せ枠も使い切れます。13日以下だと上乗せは受けられません。ただし賃金日額には上限があり、住民税の支払いは続くため、完全に10割になるとはかぎりません。
Q妻が産後休業中でも、夫は上乗せの給付を受けられますか?
A.受けられます。配偶者が産後休業中の場合は「配偶者の育児休業を要件としない場合」に該当するとされています。配偶者が自営業やフリーランスなど雇用される労働者でない場合も同様です。厚生労働省の簡易診断ページで要件を確認できます。
Q産後パパ育休中に仕事をしてもいいですか?
A.労使協定があり、本人が申し出て同意した範囲でのみ可能です。働ける量は、休業期間中の所定労働日数の2分の1以下などの上限があります。さらに給付金の側でも、28日間の休業なら最大10日(10日を超える場合は80時間)という上限があり、これを超えると給付金の対象から外れます。
Q予定日より早く生まれた場合、申し出はどうなりますか?
A.休業開始予定日の1週間前までに申し出れば、希望どおりの日から休業できます。通常は2週間前が期限ですが、出産予定日より早く生まれた場合などには、この短縮が認められています。
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