産後の恥骨痛はいつまで続く?歩けないほど痛い原因と恥骨結合離開の見分け方を元看護師が解説

手すりにつかまってゆっくり歩くママのイメージ|産後の恥骨痛で歩くのがつらいシーン

「足の付け根の真ん中がズキンとして、寝返りが打てない」「立ち上がるときに脚の間に激痛が走る」「抱っこして歩くと一歩ごとに響く」——産後の恥骨まわりの痛みは、腰痛以上に日常を止めます。

それなのに、この痛みは相談しにくい場所にあります。「骨盤が歪んでいるからですよ」と言われて整体に通ったけれど変わらない、という方も少なくありません。

先にお伝えします。産後の恥骨痛は「骨盤の歪み」ではなく、恥骨結合という関節に起きている変化です。そして、まれに恥骨結合離開という、医療機関で診断がつく状態のことがあります。この見分けが、この記事でいちばん大事なところです。

この記事では、痛みが起きる仕組み、腰痛や股関節痛との違い、恥骨結合離開を疑うサイン、いつまで続くのか、そして今日から変えられる動き方までを整理します。元看護師で2児の母である私が、MSDマニュアルと学会の情報をもとにお伝えします。

ちなみ(元看護師)

「歩けないほど痛い」は、様子を見る段階ではありません。まず医療機関で確認してほしいテーマです。

産後に恥骨が痛くなるのはなぜ?——「骨盤の歪み」ではありません

恥骨結合という「関節」があります

恥骨は、骨盤の前側の中央にある骨です。左右の恥骨は正面でつながっていて、そのつなぎ目を恥骨結合(ちこつけつごう)といいます。

ここは骨どうしがぴったり固まっているわけではなく、軟骨と靭帯でつながれた、わずかに動く関節です。ふだんはほとんど動きませんが、妊娠・出産のときだけ大きく役割が変わります。

妊娠中にゆるみ、産後すぐには戻りません

妊娠中は、赤ちゃんが産道を通れるように、骨盤まわりの靭帯をゆるめるホルモンが分泌されます。恥骨結合もこの影響でゆるみます。

大事なのは、このゆるみは出産した瞬間に元に戻るわけではないということです。靭帯が締まり直すには時間がかかります。つまり産後しばらくは、骨盤が「ゆるいまま」で生活が始まります。

分娩そのものの負荷

分娩では、赤ちゃんの頭が骨盤を通過します。このとき恥骨結合には強い力がかかります。

分娩に時間がかかった、赤ちゃんが大きかった、吸引・鉗子が使われた、分娩時の姿勢を長く保っていた——こうした条件が重なると、恥骨結合への負担が大きくなります。

産後の生活が、ちょうど恥骨に効いてしまう

ここが見落とされがちです。産後の動作は、左右の脚を別々に動かすものが多く、これが恥骨結合にいちばん響きます。

恥骨に響きやすい動作
  • 寝返り・起き上がり(片脚ずつ動く)
  • ベッドや布団から立ち上がる
  • 階段の上り下り
  • 車の乗り降り
  • ズボンや靴下を片脚ずつはく
  • 赤ちゃんを抱っこして片側に重心をかける
  • 床から抱き上げる

どれも1日に何十回も繰り返します。安静にできない場所に痛みが出ているのが、このテーマのつらいところです。

「骨盤が歪んだから」という説明について

産後の痛みは「骨盤の歪み」という言葉で説明されることがとても多いのですが、この言い方は実際に起きていることをぼかしてしまいます。

恥骨痛で起きているのは、恥骨結合の靭帯がゆるみ、そこに負荷がかかって痛みが出ている状態です。左右にずれた骨を「戻す」という話ではありません。

この違いは、対処の順番を決めるうえで重要です。ゆるみと負荷の問題なら、まず負荷を減らし、支えを足し、時間をかけて締まるのを待つ——これが基本になります。

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どんな痛み?——腰痛・股関節痛との見分け方

痛む場所と、痛みが出る動作で、ある程度切り分けられます。受診のときに伝えると診察が早く進みます。

恥骨痛の場所と痛み方

痛むのは下腹部のいちばん下、脚の付け根の真ん中あたりです。押すと痛い、動いた瞬間にズキンとする、ときに「ツーン」と響く、という表現がよく使われます。

片側だけでなく、中央から左右に広がるように感じることもあります。

動作で見分ける

痛みが強く出る場面疑われる場所
寝返り・片脚を持ち上げる・脚を開く恥骨結合
前かがみ・中腰・抱き上げる動作腰(腰椎まわり)
脚の付け根の外側〜お尻・歩くと片側だけ痛い股関節
お尻から太もも裏に、しびれをともなって走る坐骨神経の走行に沿う痛み

複数が重なっていることも珍しくありません。腰痛・股関節痛・坐骨神経痛については、それぞれ別の記事で扱っています。

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妊娠中から続いている場合

妊娠後期から恥骨が痛かった方は、その延長で産後も続いていることがあります。妊娠中の恥骨痛は、産後に自然に軽くなる人が多い一方、産後の抱っこや授乳の負荷でぶり返すこともあります。

妊娠中の恥骨痛については、原因と時期別の特徴を別の記事にまとめています。

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恥骨結合離開——見逃したくない状態

ここがこの記事でいちばん重要な部分です。

恥骨結合が、通常以上に離れてしまった状態

恥骨結合離開(ちこつけつごうりかい)は、左右の恥骨をつなぐ部分が、通常以上に大きく離れてしまった状態を指します。妊娠・出産に関連して起こることがあり、診断名として存在します。

「骨盤の歪み」のような曖昧な言葉ではなく、医療機関で確認できる、はっきりした状態だという点が大切です。

疑うサイン

このサインがあれば、様子を見ずに受診してください
  • 出産のときや産後に、恥骨のあたりで「ボキッ」「ブツッ」という音や感覚があった
  • 歩けない・立ち上がれないほどの強い痛みがある
  • 脚を開くと激痛が走る/脚を持ち上げられない
  • 歩くときに体が左右に大きく揺れる(アヒルのような歩き方になる)
  • 恥骨のあたりを押すと、飛び上がるほど痛い
  • 日ごとに痛みが強くなっている

とくに「歩けない」は、様子を見る段階ではありません。

あわせて確認したい、別の危険なサイン

恥骨の痛みに、次の症状が加わっているときは、恥骨結合の問題以外の可能性も考えます。

別の原因を考えるサイン
  • 発熱をともなう…感染が起きている可能性があります
  • おしっこが出にくい・尿もれが急に増えた
  • 脚に力が入らない・しびれる
  • 片脚だけがむくむ・熱をもつ

これらは恥骨痛とは別に、産後に注意したい症状です。

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診断は画像検査で行われます

恥骨結合の状態は、レントゲンやMRI、超音波といった画像検査で確認できます。「歪んでいるかどうか」を手で触って判断するのとは、まったく別のことです。

痛みの強さだけでは離開かどうかは分からないので、強い痛みが続くなら、まず画像で確認してもらうのが確実です。

何科にかかればいい?

受診先の選び方
  • 産後1か月以内・入院中…まず出産した産婦人科。分娩の経過を知っているので話が早いです
  • 1か月健診のとき…そのまま伝えてください。必要なら紹介してもらえます
  • 歩行が困難・強い痛みが続く…整形外科。画像検査ができます
  • どこか分からない…出産した産院に電話して相談すれば、行き先を教えてもらえます

整体・整骨院に行く前に

通うこと自体を否定するものではありませんが、順番が大切です。

まず医療機関で、離開などの状態がないかを確認しておいてください。強い痛みがあるまま施術を受けると、負荷がかかって悪化することがあります。とくに「骨盤を締める」「矯正する」という説明で強い力を加える施術は、ゆるんでいる時期には向きません。

受けたあとに痛みが強くなったときは続けず、医療機関に相談してください。

受診したら何をされる?——不安を減らすために

「受診してください」と言われても、何をされるか分からないと足が向きません。一般的な流れをお伝えします。

まずは問診と診察

いつから痛いのか、どの動作で痛むのか、分娩の経過はどうだったのか。大がかりな検査から始まるわけではありません。恥骨のあたりを押して痛みを確認したり、脚の動きを見たりします。

この記事を読んで気づいたことをメモして持っていくと、それだけで診察が進みます。

受診前に書き出しておくとよいこと
  • 出産日と分娩方法(経腟/帝王切開・吸引や鉗子の有無)
  • 痛みがいつから始まったか(出産直後か、退院後か)
  • どの動作でいちばん痛むか(寝返り/立ち上がり/階段/脚を開く)
  • 歩けるか、どのくらいの距離で痛むか
  • 音や「ブツッ」という感覚があったか
  • 発熱・排尿の異常・脚のしびれがあるか
  • 授乳中かどうか(薬の選び方に関わります)

必要に応じて画像検査

痛みが強い、歩行が困難といった場合は、レントゲンなどの画像検査で恥骨結合の状態を確認します。授乳中でもレントゲンは受けられますが、心配な点は撮影前に伝えてください。

治療の方針は状態によって変わります

恥骨結合の状態や痛みの程度によって、対応は変わります。ここで一般論を断定してお伝えすることはできません。骨盤ベルトなどで支えて負荷を減らしながら経過を見ることもあれば、痛みのコントロールを優先することもあります。

大事なのは、「何もできない」ではなく「状態に応じてやることが決まる」ということです。方針は必ず主治医から説明を受けてください。

次の妊娠が心配なとき

「次もまた同じことになるのでは」と不安になる方がいます。これは診察のときにそのまま質問していい内容です。あなたの分娩の経過を知っている医師なら、具体的に答えられます。

産後の恥骨痛はいつまで続く?

いちばん知りたいところだと思います。正直にお伝えします。

確立された「何か月で治る」という数字はありません

産後の恥骨痛について、期間を示した公的な基準はありません。数字を断言している情報を見かけたら、その根拠を確かめてください。

そのうえで、体の回復の流れから見通しを整理します。

産後すぐ〜1か月

いちばん痛みが強い時期です。靭帯はまだゆるんだままで、悪露も続き、体は分娩の疲労から回復している最中です。この時期に「動いて治す」は逆効果になりやすいので、動き方を工夫して負荷を減らすことを優先してください。

産後2〜3か月

多くの方が、ここで山を越えます。ゆるんだ靭帯が締まりはじめ、動作にも慣れてくる時期です。

一方で、動ける量が増えるぶん、かえって痛みが表に出ることもあります。抱っこの時間が延び、外出が増えるためです。

産後半年〜1年

この時期まで痛みが残っている方もいます。「まだ痛い」は珍しいことではありません。ただし、半年たっても改善の方向に向かっていない場合は、一度画像で確認しておく価値があります。

長引きやすい条件

痛みが居座りやすい状況
  • 抱っこの時間が長い(上の子がいる・よく泣く赤ちゃん)
  • 片側だけで抱く・片側の腰に乗せるクセがある
  • まとまって眠れていない(回復に必要な時間が取れない)
  • 痛みを我慢して動き続けている
  • 骨盤ベルトの位置が合っていない
  • もともと恥骨結合への負荷が大きい分娩だった

並べてみると分かるとおり、多くは「負荷を減らせていない」ことが原因側にあります。ここは工夫で変えられます。

床に置かれた授乳クッションとブランケットのイメージ|産後の恥骨痛で姿勢を工夫することを表すシーン

動き方を変える——今日からできること

恥骨結合は左右の脚がバラバラに動くときに痛みます。逆に言えば、両脚をそろえて動くようにするだけで、痛みはかなり減ります。これがこの記事でいちばん実用的なコツです。

寝返り・起き上がり——膝をそろえる

あお向けから横を向くとき、まず両膝を立てて、膝とくるぶしをぴったりそろえてから、上半身と下半身を同時に回すようにします。片脚だけを先に動かすと響きます。

起き上がるときは、横向きになってから両脚を一緒にベッドの外へおろし、腕で上半身を押し上げる——この順番です。腹筋で起き上がるのはいちばん痛みます。

寝るときは、膝の間にクッションや丸めたバスタオルをはさむと、骨盤が安定して夜の痛みが減ります。

立ち上がる・座る

立ち上がるときは両脚に均等に体重をかけ、脚を広げすぎないようにします。深く沈み込むソファは立ち上がりがつらいので、この時期は座面の高い椅子のほうが楽です。

抱っこ・抱き上げ

床から抱き上げるときは、前かがみではなく膝を曲げてしゃがみ、赤ちゃんを体に近づけてから立つ。恥骨だけでなく腰も守れます。

抱っこひもは、赤ちゃんの位置が下がっていないかを確認してください。位置が下がると重心が前に落ちて、骨盤まわりへの負担が増します。

片側の腰に乗せる抱き方は、この時期は避けてください。左右差がそのまま恥骨結合への負荷になります。

階段・車の乗り降り

階段は、痛みが強い時期は一段ずつ、両足をそろえてから次の段へ。手すりを使ってください。

車は、先にお尻から座り、両膝をそろえたまま体ごと回して脚を入れるのが基本です。片脚から乗り込むのがいちばん響きます。

着替え

立ったままズボンや靴下を片脚ずつはくのは、恥骨には最も過酷な動作です。座ってはくだけで痛みが減ります。

授乳の姿勢

授乳中は同じ姿勢が長く続きます。足を組まない、左右どちらかに傾かない、背中を丸めない——この3つを意識してください。足台やクッションで高さを合わせると楽になります。

ちなみ(元看護師)

「両脚をそろえて動く」だけは、今日から全部の動作に使えます。これを覚えるだけで、痛い日の過ごしやすさが変わります。

骨盤ベルトの使い方——位置がずれていると意味がありません

何をしてくれるものなのか

骨盤ベルトは、ゆるんでいる骨盤まわりを外から支えて、動きを抑えるものです。骨のずれを「治す」ものではなく、負荷を減らして楽に動けるようにする道具だと考えてください。

位置——腰ではなく、恥骨結合の高さ

いちばん多い失敗が、位置です。ウエストのくびれに巻いてしまうと、支えたい場所を支えられません。

恥骨痛の場合は、おなかのいちばん下、恥骨結合の高さを通るように、水平に当てます。ベルトの前側が恥骨のあたりを通る位置です。

強く締めすぎると、かえって痛みが出たり血流が悪くなったりします。手のひらが1枚入るくらいを目安にしてください。

帝王切開の傷がある場合

ベルトの位置が傷と重なることがあります。無理に使わず、産院で位置を確認してください。

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いつまで使う?

痛みが落ち着いてきたら、家にいる時間だけ外す、というように段階的に減らしていくのが自然です。

外すたびに痛みが強く戻る状態が長く続くなら、支えに頼りきっているサインでもあるので、一度相談してください。

ストレッチと運動——やっていいもの・待つもの

痛みが強い時期にやらないこと

この時期に避けたい動き
  • 股関節を大きく開くストレッチ(開脚・あぐらで前屈など)——恥骨結合に直接ストレスがかかります
  • 片脚立ちのバランス運動
  • 大股で歩く・早歩き
  • 「骨盤を締める」として強い力を加える施術
  • 痛みを我慢して続ける運動全般

「産後 恥骨痛 ストレッチ」で出てくる方法のなかには、脚を大きく開くものが含まれていることがあります。痛みが強い時期には向きません。

骨盤底筋体操(ケーゲル体操)

MSDマニュアル家庭版によれば、経腟分娩の後は、分娩中に肛門括約筋に損傷がなければ通常は分娩後数日以内に、腹筋や骨盤底筋を強化する運動(ケーゲル体操)を始めることができます。帝王切開は大きな手術のため、十分に回復して傷が癒えるまで待つ必要があり、通常この経過には約6週間かかります。

なお、MSDマニュアル プロフェッショナル版は骨盤底筋体操が役立つかどうかは不明としたうえで、患者が準備でき次第これらの運動を始めることができると記しています。効果が確立しているとまでは言えないという点は、正直にお伝えしておきます。

骨盤底筋体操は脚を開かずに、寝たままでもできるのが利点です。恥骨に負担をかけずに始められます。

参考 産褥期のケアの大まかな説明MSDマニュアル家庭版

いつから体を動かしていい?

MSDマニュアル プロフェッショナル版は、運動の推奨は分娩様式・合併症・会陰裂傷や会陰切開の有無などによって個別化されるとしています。そのうえで、通常は分娩による不快感が治まれば開始でき、典型的には経腟分娩で1日以内、帝王切開ではそれより遅く、典型的には6週間以降としています。

つまり一律の答えはなく、あなたのお産の内容によって変わるということです。健診で確認するのがいちばん確実です。

参考 産褥の管理MSDマニュアル プロフェッショナル版

痛み止めは使える?——授乳中の考え方

痛みを我慢し続けると、動き方が悪くなり、睡眠も削られ、回復が遅れます。痛み止めを使うことは、逃げではなく回復のための手段です。

国立成育医療研究センターの「授乳中に安全に使用できると考えられる薬」の一覧には、解熱鎮痛薬としてアセトアミノフェン、イブプロフェン、ロキソプロフェンが掲載されています。ただし同センターは、薬の使用や中止は自己判断ではなく、必ず医師と相談して決めるよう明記しています。

市販薬でしのぐ前に、産後健診や受診の機会に「痛みで動けない」と伝えてください。湿布などの外用薬については、成分の違う複数のタイプがあるため、薬剤師に「授乳中です」と伝えて選んでもらうのが確実です。

参考 授乳中に安全に使用できると考えられる薬(薬効順)国立成育医療研究センター

痛くて抱っこできない日をどうするか

恥骨痛のつらさは、痛みそのものだけではありません。「抱っこしてあげられない」という罪悪感が重なることです。

抱かずにすませる工夫

負荷を減らす方法
  • 床にマットを敷いて、座ったまま世話ができる高さに赤ちゃんの居場所を作る
  • おむつ替えは、しゃがまずにすむ高さで行う
  • 移動は抱っこではなくバウンサーやベビーカーを室内で使う
  • 沐浴・入浴は、痛みが強い時期は誰かに代わってもらう
  • 買い物は宅配に切り替える

外の手を使う

産後ケア事業は、産後の母子が宿泊型・日帰り型・訪問型でケアや育児のサポートを受けられる仕組みで、多くの自治体が実施しています。体の不調を理由に使えます。

痛みで動けない状態は、遠慮する理由ではなく、支援を受ける理由です。

参考 母子保健(産前・産後サポート事業/産後ケア事業)こども家庭庁

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恥骨痛が起きやすいのはどんな人?

この節を読むときに、先にお伝えしておきます。ここに挙がる条件は、あなたが選べたことではありません。

関わるとされている条件

恥骨結合に負担がかかりやすい状況
  • 分娩に時間がかかった
  • 赤ちゃんが大きかった
  • 吸引分娩・鉗子分娩だった
  • 妊娠中から恥骨痛があった
  • 前回の出産でも恥骨痛があった
  • 多胎(双子など)だった
  • 産後すぐから抱っこや家事の量が多い

並べてみると分かるとおり、ほとんどがお産の経過と産後の環境です。

「体幹が弱いから」ではありません

産後の痛みは「筋力不足」「体幹が弱い」と説明されることがあります。たしかに支える筋肉は関わりますが、恥骨結合がゆるむのは妊娠のホルモンによる正常な変化であって、鍛えていれば起きなかった、という種類のものではありません。

妊娠前に運動していた方でも起こります。自分を責める材料にしないでください。

2人目以降のほうが出やすい?

前回の出産で恥骨痛があった方は、次も出やすいと言われることがあります。加えて上の子の抱っこという負荷が増えるぶん、症状が長引きやすい条件はそろいます。

心当たりのある方は、産前のうちに「産後は上の子を抱かずにすむ動線」を家族と決めておくと、実際にかなり違います。

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ちなみから|「骨盤の歪み」で止まらないでください

看護師時代、産後の痛みの相談で多かったのが「整体に通っているけれど変わらない」という話でした。よく聞いてみると、そもそも医療機関で状態を確認しないまま、何か月も施術を受けているという方が少なくありませんでした。

痛みの原因が確認できていない状態で施術を重ねると、必要な受診が遅れます。とくに恥骨結合離開のように画像で確認できる状態があるテーマでは、順番を間違えるとまわり道になります。

私自身、2人の子を育てるなかで、産後は自分の不調を「そのうち治る」で流してしまいがちだと痛感しました。赤ちゃんのことは1日に何十回も見るのに、自分の痛みは後回しになる。でも、抱っこができない状態を我慢し続けることは、誰の得にもなりません。

ちなみ(元看護師)

痛みの強さは、がんばりの量では決まりません。歩けないほど痛いなら、それは受診していい理由です。

まとめ|恥骨痛は「歪み」ではなく、ゆるみと負荷の問題です

この記事のポイント
  • 恥骨結合は軟骨と靭帯でつながれた関節。妊娠中にゆるみ、産後すぐには元に戻らない
  • 痛むのは「骨盤が歪んだから」ではなく、ゆるんだ状態に日常の負荷がかかっているから。だから対処は「戻す」ではなく負荷を減らす・支える・時間を待つ
  • 見分けの目安は動作。寝返り・片脚を上げる・脚を開くで痛むのが恥骨結合。前かがみは腰、外側〜お尻は股関節
  • 恥骨結合離開は診断名として存在し、画像検査で確認できる。「ボキッという音・歩けない・脚を開くと激痛・体が左右に大きく揺れる歩き方」は様子を見ずに受診
  • 発熱・排尿の異常・脚の力が入らないをともなうときは、別の原因も考える
  • 整体に行く前に、まず医療機関で状態を確認する。ゆるんでいる時期に強い力を加える施術は向かない
  • いちばん効く工夫は「両脚をそろえて動く」。寝返り・車の乗り降り・階段すべてに使える
  • 骨盤ベルトはウエストではなく恥骨結合の高さに水平に。手のひら1枚分の余裕を残す
  • 脚を大きく開くストレッチは痛みが強い時期には向かない。骨盤底筋体操は脚を開かずにできる

恥骨痛は、外から見えないぶん「大げさ」と受け取られやすい痛みです。でも、寝返りが打てない・歩けないというのは、生活のすべてに影響する重さがあります。

今日できるいちばん確実な行動は、次の健診や受診の機会に「寝返りのときに恥骨が痛みます」と、場所と動作をセットで伝えることです。それだけで、必要な検査につながります。

よくある質問(産後の恥骨痛|FAQ)

Q産後の恥骨痛はいつまで続きますか?

A.期間を示した公的な基準はありません。体の回復の流れから見ると、産後すぐから1か月ごろが最も痛みが強く、2〜3か月で山を越える方が多い一方、半年から1年たっても残っている方もいます。「まだ痛い」は珍しいことではありませんが、半年たっても改善の方向に向かっていない場合は、一度画像で確認してもらう価値があります。

Q恥骨痛は「骨盤の歪み」が原因ですか?

A.産後の恥骨痛で起きているのは、左右の恥骨をつなぐ恥骨結合の靭帯が妊娠中にゆるみ、そこに日常の負荷がかかって痛みが出ている状態です。左右にずれた骨を戻すという話ではありません。この違いは対処の順番に関わります。ゆるみと負荷の問題なので、まず負荷を減らし、支えを足し、締まるのを待つのが基本になります。

Q恥骨結合離開はどうやって分かりますか?

A.レントゲンやMRI、超音波といった画像検査で確認できます。手で触って「歪んでいるか」を判断するのとはまったく別のことです。痛みの強さだけでは離開かどうか分からないため、出産のときに恥骨のあたりで音や感覚があった、歩けない、脚を開くと激痛が走る、歩くと体が左右に大きく揺れるといった場合は、整形外科か出産した産婦人科で画像検査を相談してください。

Q整体や整骨院の骨盤矯正に行ってもいいですか?

A.行くこと自体を否定するものではありませんが、順番が大切です。まず医療機関で恥骨結合離開などの状態がないかを確認しておいてください。強い痛みがあるまま施術を受けると悪化することがあり、とくに「骨盤を締める」として強い力を加える施術は、靭帯がゆるんでいる時期には向きません。受けたあとに痛みが強くなったときは続けず、医療機関に相談してください。

Q骨盤ベルトはどこに巻けばいいですか?

A.恥骨痛の場合は、ウエストのくびれではなく、おなかのいちばん下、恥骨結合の高さを通るように水平に当てます。位置がずれていると支えたい場所を支えられません。締めすぎるとかえって痛みが出たり血流が悪くなったりするため、手のひらが1枚入るくらいが目安です。帝王切開の傷とベルトの位置が重なるときは無理に使わず、産院で確認してください。

Q恥骨痛に効くストレッチはありますか?

A.痛みが強い時期は、股関節を大きく開くストレッチ(開脚やあぐらでの前屈など)は避けてください。恥骨結合に直接ストレスがかかります。検索で出てくる方法のなかには脚を大きく開くものが含まれていることがあるので注意が必要です。この時期は脚を開かずに寝たままできる骨盤底筋体操のほうが向いています。ただしMSDマニュアル プロフェッショナル版は骨盤底筋体操が役立つかどうかは不明としており、効果が確立しているとまでは言えません。

Q授乳中でも痛み止めは使えますか?

A.国立成育医療研究センターの「授乳中に安全に使用できると考えられる薬」の一覧には、解熱鎮痛薬としてアセトアミノフェン、イブプロフェン、ロキソプロフェンが掲載されています。ただし同センターは、薬の使用や中止は自己判断ではなく必ず医師と相談して決めるよう明記しています。市販薬でしのぐ前に、産後健診などで「痛みで動けない」と伝えてください。湿布などの外用薬は成分の違うタイプがあるため、薬剤師に授乳中であることを伝えて選んでもらうのが確実です。

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