「妊娠してから腰が重くなった」「立ち上がるたびに腰が痛い」「妊娠初期なのに腰痛がひどくて眠れない」「このまま立てなくなるんじゃないかと不安」――そんな気持ちを抱えてこの記事にたどり着いてくださった方へ。お体がつらい中、よく調べてくれましたね。
はじめまして、ちなみです。元看護師として病院勤務を経験し、現在は妊娠・出産・育児を中心に情報発信している男女2児のママです。私自身、1人目の妊娠中から腰の重だるさを感じていました。2人目のときは妊娠中期に入ってから骨盤ベルトが手放せなくなり、寝返りのたびに腰をかばっていた記憶があります。「妊娠中の腰痛は仕方ない」と言われても、毎日の生活でつらいものはつらいですよね。
看護師時代も、「夜も腰が痛くて眠れない」「しばらく立っていたら動けなくなってしまった」という妊娠中の方のご相談に何度もお応えしてきました。妊娠中の腰痛は多くの方が経験する症状ですが、「なぜ起きるのか」「どう対処すればいいか」「病院に行くべきサインはどれか」をまとめてお伝えしている場所はなかなかありません。この記事では、妊娠中の腰痛の原因・時期別の特徴・セルフケア・「立てない・歩けない」ときの対処・受診が必要なサインまで、元看護師の視点で中立にお伝えします。なお、腹痛と腰痛が同時に起きている方は、妊娠初期の腹痛に関する記事もあわせてご覧ください。
ちなみ(元看護師)
妊娠中に腰痛が起こる主な原因
妊娠中の腰痛には、主に4つの原因があります。どれかひとつだけでなく、複数が重なって腰への負担が増えるため、妊娠中は特に腰痛が起きやすくなります。それぞれの仕組みを知ると、「なぜ自分に腰痛が起きているか」が見えてきます。
リラキシンによる骨盤・靭帯の弛緩
妊娠中は「リラキシン」というホルモンが分泌されます。リラキシンは出産に備えて骨盤や靭帯を柔らかく弛緩させる大切な働きをしていますが、同時に腰部の靭帯や仙腸関節(骨盤と脊椎が接続するポイント)にも作用します。本来、脊椎を安定させているはずの靭帯が緩むことで、腰椎や骨盤が不安定になり、腰痛が起きやすくなると考えられています。
リラキシンの分泌は妊娠初期から始まり、全妊娠期間にわたって影響が続きます。「妊娠したとたんに腰が重くなった気がする」「妊娠初期なのになぜ腰が痛いの?」と感じている方の多くは、このリラキシンによる靭帯弛緩が影響していることが多いとされています。これは赤ちゃんを守るための体の適応反応であり、「腰が弱い」ということではありません。
子宮の増大による重心の変化と脊椎への負担
妊娠が進むにつれてお腹が大きくなり、体の重心が前方にシフトします。重心が前に傾くと、それを補正しようとして背骨が後ろに反る姿勢になりやすく、腰椎(背骨の腰部分)にかかる負担が増大します。妊娠前は何も感じなかった「立つ」「歩く」という動作でも、お腹の重さを腰で支え続ける状態が続くため、腰が疲弊しやすくなります。
この影響は、お腹が目立ってくる妊娠中期(14週〜)以降に特に強くなり、後期(28週〜)では最も大きくなります。妊娠週数が進むほど腰痛が強くなりやすいのは、このためです。また、お腹が大きくなることで歩き方も変化し、ゆっくりとした歩幅の狭い歩き方になることが多く、これも腰への負担に影響します。
腰椎の前彎増強(反り腰)
お腹が大きくなって重心が前にシフトすると、それとともに腰椎のカーブ(前彎)が強くなります。腰が反った状態が長く続くと、腰椎の椎間板や関節に圧縮力がかかりやすくなり、腰痛の一因になります。「立っているとどんどん腰が痛くなってくる」「座ると少し楽になる」という感覚を持つ方は、この姿勢変化の影響が大きいことが多いです。
妊娠中でも正しい姿勢を意識することや、骨盤ベルトで骨盤を外側から支えることが、腰椎への負担を軽減する助けになります。とはいえ「常に完璧な姿勢でなければ」とプレッシャーに感じる必要はなく、できる範囲で取り入れる程度で十分です。
血流低下・むくみによる筋肉疲労
妊娠中は子宮が大きくなることで骨盤内の静脈が圧迫され、下半身の血液循環が低下しやすくなります。血流が悪くなると、筋肉への酸素や栄養素の供給が低下し、腰周りの筋肉が疲弊しやすくなります。また、むくみが強くなると組織の重さが増し、腰への負担がさらに大きくなることもあります。
特に長時間立ちっぱなしや座りっぱなしの姿勢が続いたあとに腰痛が強くなるのは、この血流低下・筋肉疲労が影響していることが多いとされています。定期的に体勢を変えたり、軽くストレッチしたりするだけでも血流改善のきっかけになることがあります。
腹痛と腰痛が同時に起きている方や、腹痛をきっかけに腰痛が気になり始めた方は、以下の記事もあわせてご参照ください。
妊娠初期の腹痛は大丈夫?チクチク・生理痛のような痛み・下腹部痛の見分け方を元看護師ちなみが解説
妊娠時期別 腰痛の特徴と「どんな痛みか」
妊娠の時期によって、腰痛の出やすさや感じ方が少し異なります。自分が今どの時期かを確認しながら読んでみてください。妊娠週数の数え方に不安がある方は、妊娠週数の数え方を解説した記事もご覧ください。
妊娠超初期(4週前後)の腰痛
「もしかして妊娠してるかも?」という妊娠超初期(生理予定日の前後・妊娠4週頃まで)に腰痛を感じる方がいます。妊娠超初期は着床とともにリラキシンやプロゲステロンの分泌が始まり、腰部の靭帯に少しずつ影響が出ることがあると考えられています。「生理前の腰痛と似た感覚」「骨盤のあたりがうずく感じ」と表現される方が多く、強い痛みというより重だるさとして感じることが多いようです。
ただし、妊娠超初期の腰痛は個人差が非常に大きく、腰痛の有無だけで妊娠の可能性を判断することはできません。まだ妊娠検査薬を使う前の時期に腰痛を感じている方は、焦らず生理予定日を過ぎてから検査薬を使いましょう。妊娠超初期のさまざまな症状については、妊娠超初期症状の専門記事で詳しくまとめていますので、気になる方はそちらもご覧ください。
妊娠初期(5〜13週)の腰痛
妊娠初期は、リラキシンの分泌が急増する時期です。子宮はまだ骨盤内に収まっていますが、靭帯の弛緩が進むことで腰や骨盤のあたりに「チクチクとした刺激感」「鈍痛」「鼠径部(足の付け根あたり)への広がり」などを感じる方もいます。また、子宮が大きくなるにつれて子宮円靭帯が引っ張られることで、下腹部から腰にかけての引っ張り感や鈍痛が出ることもあります。
「妊娠初期の腰痛がひどい」と感じている方の多くは、このリラキシンによる靭帯弛緩が主な原因です。腰痛だけで切迫流産や流産の危険が直接高まるわけではありませんが、腰痛に加えて出血・強いお腹の痛み・お腹の張りや規則的な収縮感が伴う場合は、自己判断せず産婦人科に連絡してください。妊娠初期に起こりやすい症状の全体像は、妊娠初期症状の記事でも詳しく解説しています。
また、妊娠初期はつわりが重なる時期でもあります。つわりで食べられない・水分が摂れない状態が続くと体全体の状態が落ちやすく、腰の重だるさが増すこともあります。つわりの時期の体調管理については以下もご参照ください。
つわりはいつから?ピーク・いつまで続くかと症状・対処法を元看護師ちなみが解説
妊娠中期(14〜27週)の腰痛
妊娠中期になるとお腹が目立ち始め、重心の前方シフトが本格的になってきます。腰椎の前彎が強まり、腰周りの筋肉が継続的に緊張しやすくなる時期です。「妊娠4〜5ヶ月頃から腰が重くなった」「長く歩くと腰が痛くなるようになった」という方が増えるのはこのためで、重心変化が主な原因です。
また、妊娠中期は坐骨神経痛が出始める方もいます。大きくなった子宮や胎児の位置によって坐骨神経が圧迫されると、お尻から太ももの裏・ふくらはぎにかけてしびれや電気が走るような感覚が出ることがあります。「腰が痛いと思ったら脚にも広がってきた」という場合は、後述の「坐骨神経痛との違い」セクションも参考にしてみてください。
妊娠中期は体が動かしやすい時期でもあるため、軽い運動やストレッチを生活に取り入れやすい時期でもあります。一方、骨盤ベルトを始めるタイミングとしても中期が一般的です。セルフケアの詳細は後述のセクションで解説します。
妊娠後期(28週〜)の腰痛
妊娠後期は腰痛が最も強くなりやすい時期です。子宮の増大が最大となり、重心の前方シフトも最大になるためです。「寝返りのたびに腰が痛い」「長時間歩けなくなった」「夜中に腰痛で目が覚める」という方も珍しくありません。また、後期は貧血で鉄剤を処方される方も増え、それによる疲弊感が腰痛のつらさに重なることもあります。
後期特有の症状として、恥骨結合痛(恥骨痛)と腰痛が混同されることがあります。恥骨痛は前側(下腹部・恥骨のあたり)に強く出るのに対し、腰痛は後ろ側が主な部位です。また、産前の数週間になると胎児が下降することで骨盤への圧迫が強まり、腰や骨盤のうずきが増すこともあります。後期には便秘も悪化しやすく、お腹の不快感が腰痛のつらさに重なることもあります。後期の便秘については、妊娠中の便秘に関する記事もあわせてご覧ください。
妊娠中の腰痛セルフケア(自宅でできる対処法)
妊娠中の腰痛は、完全に防ぎきることは難しいですが、自宅でできる工夫でつらさを和らげることができます。私自身も2人目の妊娠中期からストレッチと骨盤ベルトを取り入れていて、日々の腰の重さが少し変わってくる感覚を経験しました。ただし個人差がありますので、「やってみて楽にならない」「かえって痛い」と感じる場合はすぐに中止してください。自分の体の感覚を大切にしながら試してみてください。
ストレッチ(腰・骨盤周りの筋肉をほぐす動作)
腰周りの筋肉をやさしくほぐすストレッチは、妊娠中でも取り入れやすい対策です。1回1〜2分ずつ、体調の良い日に無理のない範囲で試してみてください。
立ってできるストレッチ:壁に軽く手を添えて立ち、片足を後ろに引きながら股関節・お尻の筋肉をゆっくり伸ばします。左右それぞれ1分。前かがみになりすぎず、骨盤を立てた姿勢で行うとお腹への圧を防ぎやすくなります。
座ってできるストレッチ:椅子に浅く腰かけ、両手を膝の上に置きます。腰を丸めながらゆっくり深呼吸し、次にゆっくり腰を起こします(猫背→骨盤立て直し)。これを5〜10回ゆっくり繰り返します。
寝たままできるストレッチ:横向きに寝て(クッションでお腹を支える)、上側の膝を軽く曲げて前に倒し、腰のひねりをゆっくり感じます。1〜2分ずつ、左右で試してみてください。
お腹が張るとき・痛みが増すとき・体調が悪いときはすぐに中止してください。また急激な動きや、うつ伏せになる動作は避けてください。
骨盤ベルトの正しい使い方
骨盤ベルトは、弛緩した骨盤・靭帯を外側からサポートすることで、腰椎や骨盤への負担を軽減する助けになるとされています。私自身も2人目の妊娠中期から使い始め、特に立ち仕事の多い日に腰の疲れ方が少し変わる感覚がありました。
骨盤ベルトは一般的に妊娠中期(16〜18週頃)から使えるものが多いですが、製品によって推奨時期が異なります。購入前に産婦人科・助産師に相談することをおすすめします。妊娠初期や切迫流産の可能性がある時期については、使用する前に必ず産婦人科に確認してください。
装着の基本は、恥骨と仙骨(骨盤の後ろ側)を包む位置に巻くこと。お腹の上(おへその上)に巻いても骨盤への直接的なサポートになりません。骨盤の下側〜お尻にかけての位置に沿って装着します。長時間着けたままにしていると血流への影響が出ることがあるため、就寝前は外し、着用時間について不安がある場合は産婦人科に確認してみてください。
日常動作の工夫
腰痛がある妊娠中は、日常の細かな動作を少し意識するだけで腰への負担を減らせることがあります。
- 立ち上がり:いきなり体を起こさず、まず横向きになり手で体を支えながらゆっくり起き上がる。腰への急な負担を減らせます
- 寝返り:両膝を揃えて曲げ、クッションや抱き枕を活用しながらゆっくり体をひっくり返す。膝をバラバラに動かすと骨盤がねじれやすくなります
- 長時間の立ち仕事:片足を小さな台に置いて交互に体重移動する、もしくは10〜15分に一度は体勢を変えることで腰への一点集中荷重を分散できます
- 重いものを持つ動作:できる限り避ける。どうしても必要な場合は腰を落として物に近づいてから持ち上げ、腰だけでなく太もも・脚の筋肉を使う
- 長時間の同一姿勢:デスクワークや車移動なども30〜40分に一度は立つ・座るを切り替え、筋肉の緊張をリセットする
湿布・温め・冷やし(妊娠中に使える方法の選び方)
腰痛に湿布を使いたいという方も多いと思います。妊娠中の湿布については、種類によって使用できる時期が大きく異なるため、注意が必要です。
NSAIDs系湿布(ロキソプロフェン・ジクロフェナクなどを含む貼り薬):ロキソニンテープ・ボルタレンテープなどが代表的です。これらの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を含む湿布は、妊娠後期(妊娠28週以降)は赤ちゃんの循環器(動脈管の早期収縮)への影響が報告されており、使用を避けるよう指導されることがほとんどです。妊娠中期以前についても、自己判断での使用は避け、必ず産婦人科に相談してから使うようにしてください。
冷却シート・保冷パック:急に腰が痛くなった(ぎっくり腰的な状態)場合には、冷やすことで炎症の広がりを抑える助けになることがあります。肌に直接当てず、タオルなどで包んで使用してください。
温める(カイロ・湯たんぽ等):慢性的な腰の重だるさや筋肉の凝り感には、温めることで楽に感じることがあります。妊娠初期は体全体を長時間高温にすることを避けるよう指導されることがあるため、局所的に温める場合でも産婦人科に確認してから取り入れてください。
マタニティビクス・ウォーキング
体を動かすことで腰周りの筋肉が刺激され、腰痛が楽になることがあります。妊娠中に取り入れやすい運動として、1日15〜30分程度の軽いウォーキング(体調の良い日に)やマタニティビクスが挙げられます。マタニティビクスは専門の指導者のもとで行うことで、お腹への負担を抑えながら骨盤底筋や腰周りの筋肉を穏やかに強化できると言われています。
ただし「動いた方が楽なケース」と「安静の方がいいケース」があります。切迫早産や安静指示が出ている場合は、運動は控えてください。「体を動かすとお腹が張る」「腰痛が悪化する」という場合も中止して産婦人科に相談してください。動いて楽になる感覚があれば続け、逆効果の場合は休む――自分の体の感覚に素直に従うことが一番です。妊娠中の日常生活の過ごし方全般については、妊娠初期の過ごし方に関する記事でも参考情報をまとめています。
ちなみ(元看護師)

「立てない」「歩けない」ときの対処と受診目安
「急に腰が痛くて立ち上がれない」「少し歩いたら腰が痛くて動けなくなった」――そんな状況に置かれると、本当に怖くなりますよね。多くの場合、体の位置を変えること(体位変換)でしばらく安静にすることで楽になってくることがあります。ただし、腰痛とあわせて出てくる症状によっては受診が必要なケースもあります。両方をあわせて確認しておきましょう。
急に動けなくなったときの体位変換
急に腰が痛くて動けなくなった場合は、まず以下を試してみてください。
- 横向き(左右どちらかを向いて寝る):背骨にかかる荷重が分散され、腰が楽になることがあります。お腹が大きい場合は両膝の間にクッション・枕を挟むとさらに楽になることが多いです
- 膝を曲げた仰向け:仰向けに寝て両膝を曲げ、足の裏を床につけた状態にします。腰が床に近くなり、腰椎のカーブが自然な位置に戻りやすくなります
- 四つ這い姿勢:手と膝をついた状態。重力から腰椎を解放し、楽に感じる方もいます。お腹への直接的な圧が最小限になる姿勢のひとつです
無理に体を動かして痛みが増す場合は、まず楽な姿勢でしばらく安静にしてください。安静にしていて楽になってきたら、ゆっくりと動き始めましょう。クッションや枕を活用して体をできるだけ楽に支えられる態勢を整えてください。
「ひどい」腰痛の判断目安
「この腰痛はひどい方なの?」と判断に迷う方へ。以下を参考にしてみてください。
安静にすれば30分〜1時間以内に楽になる:体位変換や休息で改善するなら、一般的な妊娠に伴う腰痛の可能性が高く、セルフケアを続けながら様子を見ることができます。腰痛だけの場合は、切迫流産や切迫早産を過度に心配しすぎる必要はありません。腰痛だけで切迫流産・流産と判断することはできず、出血・腹痛・お腹の張りを伴わない腰痛は一般的な妊娠の経過である可能性が高いと言われています。
安静にしても変わらない・時間が経つにつれて悪化する:腰痛の原因が筋肉疲労・靭帯弛緩だけでない可能性があります。後述の切迫早産・坐骨神経痛・尿路感染症などが関わっていることもあるため、受診を検討してください。
腰痛の「ひどさ」は主観的なものでもあります。「気になる」「心配」と感じたら遠慮せず産婦人科に相談するのが一番安心です。
受診の目安
腰痛とともに以下の症状がある場合は、自己判断せず産婦人科に速やかに連絡・受診してください。
・お腹の張り・規則的な収縮感(10分に1回以上など)を伴う
・性器出血がある
・発熱(38℃以上)がある
・排尿時の痛み・尿の濁り・頻尿が伴う
・腰痛が安静にしても改善しない・急激に悪化している
・脚(お尻・太もも・ふくらはぎ)のしびれ・電気が走る感覚・感覚の消失がある
「これくらいで電話していいの?」と迷ったときは、迷わず連絡してください。産婦人科は妊娠中のあらゆる体調変化に相談できる場所です。

こんな腰痛は受診を(切迫早産・坐骨神経痛・尿路感染症との鑑別)
妊娠中の腰痛のほとんどは、リラキシン・子宮増大・姿勢変化に伴うもので、赤ちゃんへの直接の危険に直結しないことが多いです。しかし、以下のような状態が加わっている場合は別の原因が考えられるため、早めの受診をおすすめします。
切迫早産サインとしての腰痛
腰痛に加えて、お腹の規則的な張り(10分に1回程度以上)・性器出血・水様性のおりもの(破水の可能性)がある場合は、切迫早産(早産になりかけている状態)の可能性を除外するため産婦人科を受診してください。特に妊娠28週以降の後期では、腰痛+お腹の張りのパターンに敏感でいることが大切です。
切迫早産の腰痛は「腰だけが痛い」というより、お腹の規則的な張りと連動していることが多いとされています。「腰痛だけ」という場合は一般的な妊娠の経過である可能性が高く、過度に心配しすぎなくて大丈夫です。ただし、心配であれば受診して確認してもらうことをおすすめします。
坐骨神経痛との違い
坐骨神経痛は、妊娠中に子宮や胎児の位置が坐骨神経を圧迫することで起きます。腰痛との主な違いとして以下があります。
- お尻(臀部)から太ももの裏側・ふくらはぎ・足先にかけて「電気が走るような感覚」「しびれ」「ビリビリとした感覚」が広がる
- 特定の動き(立ち上がり・歩き始め・長時間同じ姿勢でいたあと)で強くなりやすい
- 左右のどちらかに偏って出ることが多い
- 腰の「重だるさ」よりも、お尻や脚への「走る痛み・しびれ」として感じることが多い
「腰が痛いだけでなく、脚もしびれる・電気が走る感じがある」という場合は坐骨神経痛の可能性があります。妊娠中の坐骨神経痛はよくある症状ですが、しびれが強い・脚の力が抜ける・日常生活に支障をきたすレベルになった場合は産婦人科に相談してください。
尿路感染症・腎盂腎炎のサイン
腰痛が左右どちらかの背中の下あたり(腎臓の位置)に強く出る場合で、発熱(38℃以上)・排尿時の痛み・頻尿・尿の濁り・尿の臭いの変化などを伴う場合は、尿路感染症(膀胱炎・腎盂腎炎)の可能性があります。妊娠中は尿路感染症になりやすく、治療が遅れると早産リスクにつながることもあるため、速やかに産婦人科または泌尿器科を受診してください。発熱を伴う腰痛は特に迷わず連絡してください。
産婦人科に相談するときの伝え方
「どんな症状をどう伝えればいい?」と迷う方へ。産婦人科に電話・受診するときは以下を整理して伝えると、診察がスムーズになります。
- 腰痛の部位(右側・左側・両側・真ん中・お尻付近など)
- いつから・どのくらいの強さ(「10点満点で〇点くらい」が伝わりやすい)
- 他の症状の有無(お腹の張り・出血・発熱・排尿の変化・脚のしびれなど)
- 安静にしたら楽になるか、変わらないか
- 何かきっかけがあったか(重いものを持った・長時間歩いたなど)
「腰が痛い」とひと言伝えるよりも、こうした詳細を添えることで、産婦人科側も的確な判断がしやすくなります。遠慮せず、気になることはなんでも相談してくださいね。
妊娠中の腰痛は夜中の寝返りを困難にし、眠れない大きな原因の一つになります。妊娠中の眠れない悩みの原因と対処法を詳しくまとめた記事もあわせてご覧ください。
妊婦さんが寝れない原因6つと今夜から試せる対処法——元看護師ちなみが時期別に解説
妊娠中の股関節痛と腰痛はほぼ同じ原因(リラキシンによる靭帯の弛緩・重心の前方移動)で起こり、同時に悩む方も多いです。妊婦の腰痛の原因と対処法はこちらの記事もあわせてご覧ください。
妊娠中の股関節痛——超初期から後期まで原因・時期別の特徴・対処法を元看護師が解説
妊娠中の坐骨神経痛は腰痛と同じ原因(リラキシンによる骨盤靭帯の弛緩・重心の前方移動)で起こり、同時に悩む方も多いです。妊婦の腰痛の原因と対処法はこちらの記事もあわせてご覧ください。
お腹の張りは、腰の張りや痛みと同時に感じることも少なくありません。腰まわりの不調が気になる方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
妊娠中のお腹の張りはなぜ起こる?時期別の原因と対処法、危険なサインの見分け方を元看護師が解説
妊娠中にゆるんだ靭帯や身についた反り腰のクセは、産んだ瞬間に元へ戻るわけではありません。産後の腰痛がいつまで続くのか、起き上がれないほど痛いときにどう動けばよいのかは、こちらの記事で詳しくまとめています。
産後の腰痛はいつまで続く?起き上がれないほど痛いときの対処法と授乳中の薬・受診の目安を元看護師が解説
まとめ|妊娠中の腰痛と上手に付き合っていくために

妊娠中の腰痛は、リラキシンによる靭帯弛緩・子宮増大による重心変化・腰椎の前彎増強・血流低下など、妊娠に伴う体の自然な変化が原因で起きることがほとんどです。「腰痛があること=危険」ではありませんが、腰痛以外の症状(お腹の張り・出血・発熱・排尿の変化・脚のしびれ)が伴う場合は産婦人科に相談してください。
- 妊娠中の腰痛は主に4つの原因(リラキシン・子宮増大・腰椎前彎・血流低下)が重なって起きる
- 時期別では超初期〜初期はリラキシン急増、中期は重心シフト、後期は子宮最大化が主な原因
- セルフケアとしてストレッチ・骨盤ベルト・日常動作の工夫・適度な運動が有効な可能性がある
- 「立てない・歩けない」ときは体位変換(横向き・膝曲げ仰向け・四つ這い)で楽になることが多い
- NSAIDs系湿布(ロキソニンテープ等)は妊娠後期は禁忌・それ以外も必ず産婦人科に相談してから
- 腰痛+お腹の張り・出血・発熱・排尿痛がある場合は速やかに産婦人科へ
- 「腰痛だけ」の場合は過度に心配しすぎず、気になるときは遠慮なく受診を
あなたが安心してマタニティライフを過ごせるよう、一人で抱えこまず、つらいときは周りの人や産婦人科・助産師に相談してくださいね。あなたと赤ちゃんが健やかに過ごせますように。
よくある質問
Q妊娠初期の腰痛はいつまで続きますか?
A.妊娠初期の腰痛は、リラキシンの影響がある間(妊娠全期)続くことがありますが、多くの方で中期以降は体が変化に慣れてきたり、セルフケアで対処できるようになったりすることがあります。ただし後期に再び強くなる方もいます。完全になくなるかどうかは個人差があるため断言はできませんが、ストレッチ・骨盤ベルトなどのセルフケアを組み合わせながら、つらい場合は産婦人科に相談してください。
Q妊娠中の腰痛がひどくて立てません。危険ですか?
A.腰痛だけで「危険」と判断することはできません。多くの場合、体位変換(横向きに寝る・膝を曲げて仰向けになるなど)で楽になることがあります。ただし、腰痛に加えてお腹の規則的な張り・出血・発熱・排尿時の痛みが伴う場合は別の原因が考えられますので、産婦人科に速やかに連絡してください。腰痛だけの場合は焦らず安静にしてみて、改善しない場合は産婦人科に相談してみてください。
Q妊娠中に湿布(ロキソニンテープ等)は使えますか?
A.NSAIDs系の湿布(ロキソプロフェン・ジクロフェナクなどを含むロキソニンテープ・ボルタレンテープなど)は、妊娠後期(28週以降)は赤ちゃんの循環器への影響が報告されており、使用を避けるよう指導されることがほとんどです。妊娠前期・中期についても、自己判断での使用は避け、必ず産婦人科に相談してください。妊娠中に使える腰のケア方法については産婦人科で相談してみてください。
Q骨盤ベルトは妊娠何週から使えますか?
A.骨盤ベルトの多くは妊娠中期(16〜18週頃)からの使用を推奨していますが、製品によって推奨時期は異なります。妊娠初期(特に切迫流産の可能性があるとき)の使用については、産婦人科に相談してから始めることをおすすめします。また装着方法(骨盤の下側に沿って巻く・就寝時は外す)を正しく守ることも大切です。選び方・使い方について不安がある方は、産婦人科や助産師に確認してみてください。
Q妊娠中の腰痛と切迫早産はどう見分けますか?
A.「腰痛だけ」で切迫早産と判断することはできません。切迫早産の場合は、腰痛に加えてお腹の規則的な張り(10分に1回以上)・性器出血・水様性のおりもの(破水の可能性)など複数の症状が重なることが多いとされています。腰痛だけで他の症状がない場合は、一般的な妊娠に伴う腰痛の可能性が高く、過度に心配しすぎなくて大丈夫です。ただし心配であれば受診して確認してもらうことをおすすめします。
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